肝臓がんは年々増加傾向にあり、平成16年には約3万5000人が死亡している。肝臓がんの多くは肝硬変を伴っているので治療が難しいが、いろいろな治療法が開発され、治療の選択肢は広がりつつある。定評のある病院はどこなのか。
●東大病院(東京都)
東京大学医学部付属病院の消化器内科では、ラジオ波焼灼療法をこれまでに
約2300例、昨年は約500例行っている。合計数、年間数ともに世界トップを誇る。
ラジオ波焼灼療法とは超音波装置などでがんの位置を確かめながら、長さ20センチ、
太さ1.5ミリの針状の電極をがんに刺して、その電極に電磁波の一種であるラジオ波を
流して、100度前後の熱でがんを焼き切る治療法である。
肝臓がんが「3センチ以下で3個以内」が治療にはよい条件だが、これを超えても
肝機能が良ければ治療対象になる。
「がんが多発していたり、肝硬変を合併していたりするため、肝臓がんを切除できるのは
20~30%です。しかも、手術ができても1年で20%、5年で80%が再発します。
このため、体への負担が少なく、根治性が高く再治療が容易なラジオ波療法が広く
行われるようになったのです」(椎名秀一朗講師)
また、「ラジオ波療法は転移性の肝臓がんにも有効です」と椎名講師は言う。
大腸がんの肝転移36例にラジオ波焼灼療法を行い、5年生存率が76%という
驚くべきいい成績を挙げている。今後、ラジオ波療法と全身化学療法を組み合わせた
治療も行っていく予定だ。
●国立がんセンター中央病院(東京都)
国立がんセンター中央病院の肝胆膵グループが行う肝臓がんの切除手術は、
年間約180例に上り全国トップクラスだ。がんを含めて肝臓の一部を切除する治療で、
がんを確実に取り除くことができるのが長所だ。肝機能が十分に保たれていて、
がんが1~3個の場合などがいい対象になる。
「切除手術では出血量を極力少なくし、スピーディーに行い、在院日数を短くするように
取り組んでいます」と島田和明医師。
切除手術の80%は輸血なしで行うことができる。入院日数も10日から2週間ほどと短い。
「手術時間を短くすることで、患者さんの体への負担を軽減することができます」(島田医師)
難易度の高い症例も含めて、すべてのステージ(進行度)を合わせた5年生存率は
約50%だ。
●京都大学病院(京都府)
京都大学病院の移植外科は、肝臓がんに対する肝移植手術で先駆的な役割と
実績を誇る。これまでに肝臓がんに対する生体肝移植を123例(05年10月1日現在)
実施している。
特に04年1月からは一定の条件内での生体肝移植手術が保険適用となり、
手術数が増えている。
「生体肝移植が保険適用となるのは、“がんの直径が3センチ以下のものが3個以内”、
あるいは“がんが1個なら直径5センチ以下”です。ただし遠隔転移やリンパ節転移がなく、
門脈や肝静脈にも浸潤がないことが条件となります」(江川裕人助教授)
生体肝移植ではドナー(臓器提供者)が必要となる。一般的にはドナーは3親等以内の
親族で健康な肝臓を持つ65歳以下の人で、肝移植を受ける患者と血液型が同じか
適合すること(輸血が可能な組み合わせ)が原則だ。
患者の手術時間(切除と移植)は10~12時間。入院期間は約1カ月。ドナーの
手術時間は6、7時間。入院期間は約2週間。
「肝臓がんの生体肝移植の5年生存率は60~70%です。進行がんなどの患者さんに
とって有力な治療の選択肢の一つになりつつあります」(江川助教授)
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
●北海道大学病院 第1外科
藤堂省教授(電話)011・716・1161(北海道)
これまでの方法では治療困難だった症例に対しても積極的に肝切除を行う。
肝移植も肝臓がんの治療法として組み込んでいる
●武蔵野赤十字病院 消化器科
泉並木部長(電話)0422・32・3111(東京都)
ラジオ波穿刺針は確実性と安全性を考慮した特殊な針を使用。
ラジオ波療法延べ1150例で5年生存率67%。腹腔鏡も使う
●国立がんセンター中央病院 肝胆膵グループ
島田和明医師(電話)03・3542・2511(東京都)
切除手術の年間数で全国トップクラス。「治療ガイドライン」に基づいて
切除手術を実施。難易度の高い症例にも対応している
●東京女子医科大学病院 消化器病センター外科
高崎健教授(電話)03・3353・8111(東京都)
肝臓がんの年間手術数200例。手術のみならず、免疫療法、
化学療法も組み合わせる。ラジオ波療法120例、肝動脈塞栓療法350例
●東京大学医学部付属病院 消化器内科
椎名秀一朗講師(電話)03・3815・5411(東京都)
ラジオ波療法の合計数、年間数で世界トップの実績。原発性肝がんだけでなく、
大腸がんの肝転移などにも積極的に取り組んでいる
●名古屋大学付属病院 消化器外科I
二村雄次教授(電話)052・741・2111(愛知県)
手術不能例が多い胆管細胞がん(肝臓がんの一つ)の患者が全国から来る。
切除症例数160、切除率約80%は世界でもトップクラス
●京都大学病院 移植外科
江川裕人助教授 高田泰次助教授(電話)075・751・3111(京都府)
肝臓がんの生体肝移植手術数で全国一。95年に移植外科、99年に
臓器移植医療部を発足。生体肝移植手術で先駆的役割を果たす
●大阪府立成人病センター 消化器外科
佐々木洋部長(電話)06・6972・1181(大阪府)
肝臓がんの年間手術数90例。個々の状態に応じて肝切除と開発工夫した
補助療法の複合治療を行う。ラジオ波を含む最適治療を実施
●近畿大学病院 消化器内科
工藤正俊教授(電話)072・366・0221(大阪府)
99年以後のラジオ波療法延べ2000例。3センチ以下3個以内の5年生存率76%。
ラジオ波後のインターフェロン併用では5年生存率100%
●久留米大学病院 肝がんセンター・第2外科
佐田通夫教授(電話)0942・35・3311(福岡県)
外来診察、治療は肝がんセンターで内科、外科、放射線科が共同で実施。
月約500人受診。ラジオ波、肝動注化学療法を積極的に行う
胃がんに強い病院ベスト10
胃がんの死亡率は肺がんに次いで第2位、死亡者数は年間5万人に上る。
がんの進行度によって治療の選択肢も異なるが、胃がんの治療で専門家の評価が高い病院はどこなのか。
●国立がんセンター中央病院(東京都)
国立がんセンター中央病院の内視鏡部は、早期胃がんに対する内視鏡治療数が年間約450例で全国トップを誇る。
内視鏡治療とは胃カメラを介して行う治療。がんの根元にワイヤをかけ高周波電流を流して焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、ITナイフ(高周波針状ナイフの先端にセラミック製のチップを付けたもの)などを用いてがんをまくり上げるように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)がある。
同病院では96年に胃壁を傷つけないように工夫したITナイフを開発し、2000年からESDを本格的に始めた。
「現在、内視鏡治療の99%はESDです。EMRは最大径2センチまでのがんが対象で、がんを焼き切るため、大変大事な病理判定を不正確にすることがあります。しかし、ESDの対象は最大径2センチ以上のがんと広く、しかもがんの組織を傷つけないように切除する方法なので、病理判定が正確にできるという利点があります」(斉藤大三部長)
ESDは通常、全身麻酔で行われるが、患者が検査室のベッドに寝いいる時間は30分~3時間、平均60~70分だ。開腹手術より体への負担ははるかに少なく、入院も4~7日間ですむ。
●大阪市立総合医療センター(大阪府)
胃がんの進行度にはステージⅠ期からⅣ期まである。大阪市立総合医療センターの消化器外科は手術後の5年生存率がすべての病期で全国平均を上回る。I期が96・2%(全国平均91.4%)、II期が75.7%(68.6%)、III期が56.8%(39.7%)、
IV期が25.8%(6.7%)で、全体でも全国トップだ。
同科での胃がんの年間手術数は約200例で、そのうち60~70%は腹腔鏡手術。 「おなかに0.5~1.2センチの穴を数カ所開け、その穴から手術用具を入れて、従来の開腹手術と同じ操作をするものです。原則としてII期以下の患者さんを対象にしています」(谷村愼哉副部長)
この腹腔鏡手術のメリットは(1)手術後の痛みが少ない(2)傷がほとんど目立たない
3)手術の翌日に歩ける(4)術後の内臓の癒着や腸閉塞などの合併症が少ない
5)入院期間が短く、短期間で仕事に復帰できる――などである。
「腹腔鏡手術の術後の治療成績は、通常の開腹手術と比べてまったく遜色ありません」(谷村副部長)
III期以上では病状と進行度に応じて、開腹手術や化学療法が行われる。
●都立駒込病院(東京都)
都立駒込病院化学療法科では、手術ができないほど進行した胃がんや、手術後に再発した胃がんに、抗がん剤治療を実施し、治療効果を上げている。症状の改善や生存期間の延長が目的だ。
「現在、経口抗がん剤のTS―1(一般名テガフール・ウラシル)を基本にし、ほかの抗がん剤も併用して治療効果を高めています。がんが半分以下に縮小し、その状態が1カ月以上続いた患者さんの割合(奏効率)は50%程度です。ここ2、3年で、抗がん剤治療の奏効率は飛躍的に向上しています」(佐々木常雄副院長)
抗がん剤治療でがんを縮小させてから手術を行うケースもあるという。 抗がん剤治療のために短期入院中の進行・再発胃がんの患者は常時20人ほど。外来通院で治療を受けている患者は50人ほどだ。
「患者さんが元気なら、最初に用いた抗がん剤が効かなくなったら次の抗がん剤、さらに別の抗がん剤といくつものメニューが選べるようになりました。その結果、かなりの延命効果が得られるようになっています」と佐々木副院長。
●埼玉県立がんセンター 消化器外科
田中洋一部長 (電話)048・722・1111(埼玉県)
年間症例数は350例を超え、うち手術は180~200例で良好な5年生存率を得ている。
術式や術前化学療法の臨床試験も行う
●国立がんセンター東病院 上腹部外科
木下平外来部長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
治療方針はすべて腫瘍内科医とのカンファランスで決定。ガイドラインに基づき、
進行度に応じた治療を選択。臨床試験も多数実施中
●国立がんセンター中央病院 内視鏡部
斉藤大三部長 (電話)03・3542・2511(東京都)
早期胃がんのESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は年間約450例で全国一。
斉藤部長はESD研究会の代表世話人で技術向上に尽力
●癌研究会有明病院 消化器センター外科
山口俊晴部長 (電話)03・3520・0111(東京都)
延べ症例数は1万5000例に達し日本一。内科、外科などが合同で診療にあたる
チーム医療を推進。患者負担の少ない腹腔鏡手術にも熱心
●都立駒込病院 化学療法科
佐々木常雄副院長 (電話)03・3823・2101(東京都)
1975年、全国で初めて発足した化学療法科。抗がん剤の専門医7人が治療。
抗がん剤の臨床試験、新薬開発の治験にも力を入れる
●新潟県立がんセンター新潟病院
外科 梨本篤部長 (電話)025・266・5111(新潟県)
術後合併症が低率で治療成績はトップレベル。機能温存縮小手術、根治を目指す
拡大手術、高度進行がんへの化学療法を中心に治療
●静岡県立静岡がんセンター 胃外科
米村豊副院長 (電話)055・989・5222(静岡県)
QOLを保証するため、進み具合に応じて、内視鏡的粘膜切除・腹腔鏡的胃切除・
最も適切なリンパ節郭清による胃切除術を行う
●大阪府立成人病センター 消化器外科
矢野雅彦医長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
内科とも連携して早期から進行まで進行度に応じたあらゆる治療を提供。
年間症例数300例以上。研究的な治療も積極的に取り組む
●大阪市立総合医療センター
消化 器外科 東野正幸副院長 谷村愼 哉副部長(電話)06・6929・1221(大阪府)
手術数は年間約200例、そのうち60~70%は腹腔鏡手術で行う。
III期以上には病状と進行度に応じた治療でQOLを向上
●九州大学病院 消化器・総合外科(第二外科)
前原喜彦教授 (電話)092・642・5466(福岡県)
進行度に応じた手術と抗がん剤感受性試験に基づく化学療法を実践。
新規の抗がん剤による最適個別化療法を実施している
がんの進行度によって治療の選択肢も異なるが、胃がんの治療で専門家の評価が高い病院はどこなのか。
●国立がんセンター中央病院(東京都)
国立がんセンター中央病院の内視鏡部は、早期胃がんに対する内視鏡治療数が年間約450例で全国トップを誇る。
内視鏡治療とは胃カメラを介して行う治療。がんの根元にワイヤをかけ高周波電流を流して焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、ITナイフ(高周波針状ナイフの先端にセラミック製のチップを付けたもの)などを用いてがんをまくり上げるように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)がある。
同病院では96年に胃壁を傷つけないように工夫したITナイフを開発し、2000年からESDを本格的に始めた。
「現在、内視鏡治療の99%はESDです。EMRは最大径2センチまでのがんが対象で、がんを焼き切るため、大変大事な病理判定を不正確にすることがあります。しかし、ESDの対象は最大径2センチ以上のがんと広く、しかもがんの組織を傷つけないように切除する方法なので、病理判定が正確にできるという利点があります」(斉藤大三部長)
ESDは通常、全身麻酔で行われるが、患者が検査室のベッドに寝いいる時間は30分~3時間、平均60~70分だ。開腹手術より体への負担ははるかに少なく、入院も4~7日間ですむ。
●大阪市立総合医療センター(大阪府)
胃がんの進行度にはステージⅠ期からⅣ期まである。大阪市立総合医療センターの消化器外科は手術後の5年生存率がすべての病期で全国平均を上回る。I期が96・2%(全国平均91.4%)、II期が75.7%(68.6%)、III期が56.8%(39.7%)、
IV期が25.8%(6.7%)で、全体でも全国トップだ。
同科での胃がんの年間手術数は約200例で、そのうち60~70%は腹腔鏡手術。 「おなかに0.5~1.2センチの穴を数カ所開け、その穴から手術用具を入れて、従来の開腹手術と同じ操作をするものです。原則としてII期以下の患者さんを対象にしています」(谷村愼哉副部長)
この腹腔鏡手術のメリットは(1)手術後の痛みが少ない(2)傷がほとんど目立たない
3)手術の翌日に歩ける(4)術後の内臓の癒着や腸閉塞などの合併症が少ない
5)入院期間が短く、短期間で仕事に復帰できる――などである。
「腹腔鏡手術の術後の治療成績は、通常の開腹手術と比べてまったく遜色ありません」(谷村副部長)
III期以上では病状と進行度に応じて、開腹手術や化学療法が行われる。
●都立駒込病院(東京都)
都立駒込病院化学療法科では、手術ができないほど進行した胃がんや、手術後に再発した胃がんに、抗がん剤治療を実施し、治療効果を上げている。症状の改善や生存期間の延長が目的だ。
「現在、経口抗がん剤のTS―1(一般名テガフール・ウラシル)を基本にし、ほかの抗がん剤も併用して治療効果を高めています。がんが半分以下に縮小し、その状態が1カ月以上続いた患者さんの割合(奏効率)は50%程度です。ここ2、3年で、抗がん剤治療の奏効率は飛躍的に向上しています」(佐々木常雄副院長)
抗がん剤治療でがんを縮小させてから手術を行うケースもあるという。 抗がん剤治療のために短期入院中の進行・再発胃がんの患者は常時20人ほど。外来通院で治療を受けている患者は50人ほどだ。
「患者さんが元気なら、最初に用いた抗がん剤が効かなくなったら次の抗がん剤、さらに別の抗がん剤といくつものメニューが選べるようになりました。その結果、かなりの延命効果が得られるようになっています」と佐々木副院長。
●埼玉県立がんセンター 消化器外科
田中洋一部長 (電話)048・722・1111(埼玉県)
年間症例数は350例を超え、うち手術は180~200例で良好な5年生存率を得ている。
術式や術前化学療法の臨床試験も行う
●国立がんセンター東病院 上腹部外科
木下平外来部長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
治療方針はすべて腫瘍内科医とのカンファランスで決定。ガイドラインに基づき、
進行度に応じた治療を選択。臨床試験も多数実施中
●国立がんセンター中央病院 内視鏡部
斉藤大三部長 (電話)03・3542・2511(東京都)
早期胃がんのESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は年間約450例で全国一。
斉藤部長はESD研究会の代表世話人で技術向上に尽力
●癌研究会有明病院 消化器センター外科
山口俊晴部長 (電話)03・3520・0111(東京都)
延べ症例数は1万5000例に達し日本一。内科、外科などが合同で診療にあたる
チーム医療を推進。患者負担の少ない腹腔鏡手術にも熱心
●都立駒込病院 化学療法科
佐々木常雄副院長 (電話)03・3823・2101(東京都)
1975年、全国で初めて発足した化学療法科。抗がん剤の専門医7人が治療。
抗がん剤の臨床試験、新薬開発の治験にも力を入れる
●新潟県立がんセンター新潟病院
外科 梨本篤部長 (電話)025・266・5111(新潟県)
術後合併症が低率で治療成績はトップレベル。機能温存縮小手術、根治を目指す
拡大手術、高度進行がんへの化学療法を中心に治療
●静岡県立静岡がんセンター 胃外科
米村豊副院長 (電話)055・989・5222(静岡県)
QOLを保証するため、進み具合に応じて、内視鏡的粘膜切除・腹腔鏡的胃切除・
最も適切なリンパ節郭清による胃切除術を行う
●大阪府立成人病センター 消化器外科
矢野雅彦医長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
内科とも連携して早期から進行まで進行度に応じたあらゆる治療を提供。
年間症例数300例以上。研究的な治療も積極的に取り組む
●大阪市立総合医療センター
消化 器外科 東野正幸副院長 谷村愼 哉副部長(電話)06・6929・1221(大阪府)
手術数は年間約200例、そのうち60~70%は腹腔鏡手術で行う。
III期以上には病状と進行度に応じた治療でQOLを向上
●九州大学病院 消化器・総合外科(第二外科)
前原喜彦教授 (電話)092・642・5466(福岡県)
進行度に応じた手術と抗がん剤感受性試験に基づく化学療法を実践。
新規の抗がん剤による最適個別化療法を実施している
肺がんの検査方法 2(喀痰細胞診)
剥がれ落ちて痰に混じったがん細胞を検出しようとする方法です。機械で痰を分析しようという喀痰細胞診の自動化は残念ながら実用化されておらず、人間の目でチェックします。専門のスクリーナーという技師がおり、熟練したスクリーナーの判断は相当正確です。
検査の手順は、できるだけ早朝の喀痰を容器に入れて乾かないようにして提出するだけです。苦痛のない簡単な検査なのですが、肺がんがあれば必ず痰にがん細胞が混じっているとは限りません。
気管支鏡で見える範囲に肺がんがあった人(おそらく確実に痰にがん細胞が出てくるであろうと予測される人)でも1回だけの検査では55%の人の痰にしかがん細胞は検出されませんでした。
この数字は2回繰り返すことにより70%、3回で84%となり、喀痰細胞診は3回必要ということが言われています。
医療施設から遠方の人、忙しい人などに自宅で3日間痰をためてもらう方法もありますが、どうしても細胞が変性してしまうため、少し見にくい標本になってしまうようです。
繰り返しになるかもしれませんが、喀痰細胞診が正常であったからといって肺がんがないという証拠にはなりません。
検体(この場合痰のことです)をスライドグラスに伸ばしてアルコールで固定し、染色して顕微鏡で見る。怪しければもう一度医師が確認するという手順を踏みますので結果が出るまで数日かかります。
検査の手順は、できるだけ早朝の喀痰を容器に入れて乾かないようにして提出するだけです。苦痛のない簡単な検査なのですが、肺がんがあれば必ず痰にがん細胞が混じっているとは限りません。
気管支鏡で見える範囲に肺がんがあった人(おそらく確実に痰にがん細胞が出てくるであろうと予測される人)でも1回だけの検査では55%の人の痰にしかがん細胞は検出されませんでした。
この数字は2回繰り返すことにより70%、3回で84%となり、喀痰細胞診は3回必要ということが言われています。
医療施設から遠方の人、忙しい人などに自宅で3日間痰をためてもらう方法もありますが、どうしても細胞が変性してしまうため、少し見にくい標本になってしまうようです。
繰り返しになるかもしれませんが、喀痰細胞診が正常であったからといって肺がんがないという証拠にはなりません。
検体(この場合痰のことです)をスライドグラスに伸ばしてアルコールで固定し、染色して顕微鏡で見る。怪しければもう一度医師が確認するという手順を踏みますので結果が出るまで数日かかります。
肺がんの検査方法 1(レントゲン)
レントゲンによって発見されたX線は物質を透過し(突き抜けることです)、写真のフィルムを感光させる性質をもちます。このとき通り抜ける物質によってX線は吸収され、エネルギーが下がります。
そこで、写真フィルムの入ったカセットの前に立ち、胸を押し付けて、背中側からX線を照射するとカセットの中のフィルムが感光し、写真ができます。その写真はX線が通り抜けてきた体の部分によって濃淡ができます。
例えば骨はX線を吸収する度合いが強いので、骨のある部分に相当するフィルムは感光されにくく、現像したときに白くなります。
逆にほとんどが空気である肺の場合は通り抜けたX線のエネルギーが高いのでフィルムは十分に感光され、現像したときに黒くなります。
このようにして胸部全体を半透明の影絵にして写したものが胸部正面単純X線写真です。
胸部正面単純X線写真
横からでも、斜めからでも撮ることはありますが、なじみが深いのは正面写真でしょう。しかし、単純X線写真では見えない部分(見えにくい部分)があります。
余談ですが、レントゲンという博士はこのX線の発見で第1回のノーベル賞を受賞しています。彼の功績をたたえてX線写真のことをレントゲンと呼ぶわけですが、本来一般名詞ではありません(人の名前です)。この説明ではできるだけ「X線写真」と表記するようにします。
注意しておかなければならないのは、単純X線写真は、立体を平面の写真に投影していることです。
つまり、邪魔者があるとそれの影になったものは見えません。邪魔者とは、肺を中心として考えたときには、骨、心臓、血管、横隔膜などです。胸部X線写真ではこれらの臓器に隠されて見えない肺の部分がかなり大きく存在します。
この欠点を克服しようとして、肺尖撮影や、断層撮影が行われていましたが、CTの導入により特殊な場合に限られるようになりました。
邪魔者がなくても見えないものがあります。気管支は空気の管ですので、同じ空気の塊である肺の中にあると見分けることが困難です。
このために気管支の中に造影剤を入れて気管支の状況を確認するという、気管支造影がありますが、これもCTによって得られる情報でほとんどが代用できるので、最近は特殊な目的以外には使われなくなりました。
そこで、写真フィルムの入ったカセットの前に立ち、胸を押し付けて、背中側からX線を照射するとカセットの中のフィルムが感光し、写真ができます。その写真はX線が通り抜けてきた体の部分によって濃淡ができます。
例えば骨はX線を吸収する度合いが強いので、骨のある部分に相当するフィルムは感光されにくく、現像したときに白くなります。
逆にほとんどが空気である肺の場合は通り抜けたX線のエネルギーが高いのでフィルムは十分に感光され、現像したときに黒くなります。
このようにして胸部全体を半透明の影絵にして写したものが胸部正面単純X線写真です。
胸部正面単純X線写真
横からでも、斜めからでも撮ることはありますが、なじみが深いのは正面写真でしょう。しかし、単純X線写真では見えない部分(見えにくい部分)があります。
余談ですが、レントゲンという博士はこのX線の発見で第1回のノーベル賞を受賞しています。彼の功績をたたえてX線写真のことをレントゲンと呼ぶわけですが、本来一般名詞ではありません(人の名前です)。この説明ではできるだけ「X線写真」と表記するようにします。
注意しておかなければならないのは、単純X線写真は、立体を平面の写真に投影していることです。
つまり、邪魔者があるとそれの影になったものは見えません。邪魔者とは、肺を中心として考えたときには、骨、心臓、血管、横隔膜などです。胸部X線写真ではこれらの臓器に隠されて見えない肺の部分がかなり大きく存在します。
この欠点を克服しようとして、肺尖撮影や、断層撮影が行われていましたが、CTの導入により特殊な場合に限られるようになりました。
邪魔者がなくても見えないものがあります。気管支は空気の管ですので、同じ空気の塊である肺の中にあると見分けることが困難です。
このために気管支の中に造影剤を入れて気管支の状況を確認するという、気管支造影がありますが、これもCTによって得られる情報でほとんどが代用できるので、最近は特殊な目的以外には使われなくなりました。
肺がんの予防
一次予防と二次予防
がんの予防には一次予防と二次予防があります。
一次予防とはがんにならないように工夫することをいい、二次予防とは検診によって早期発見、早期治療をして、がんで命を落さないようにすることをいいます。
一次予防
なんといっても禁煙です。
タバコが存在しなければ、理論的には男で70%、女で26%(男女合計で58%)の肺がんがが減少すると考えられています。
一方、喫煙者が禁煙した後の肺がん発生のリスクは、喫煙を継続している人のリスクを1とすると、禁煙後5年以内では0.9倍、5年以上経過して半分に、20年を経過して約3分の1になります。
このように、禁煙の効果はすぐにでるものではありません。一方、喫煙の年数が長いほど肺がん発生のリスクは高いので、一次予防の面からはなるべく早く禁煙をして下さい。
肺がんの他にもタバコによって罹りやすくなるがんは多く、非喫煙者に比し、毎日喫煙する人では30倍以上も喉頭がんになりやすくなります。食道がんで2倍です。しかし、5年の禁煙で食道がんは50%減らすことができ、膀胱がんでは2年の禁煙で50%減少の効果が出ます。今からでも遅くありません。禁煙に心がけましょう。
二次予防
二次予防としての検診を受けていただきたいものです。
一般外来で発見された肺がんと、検診で発見された肺がんを比較するすと、検診で見つかった人は手術を受けられる率が高く、またその病期も治癒率の高い1期の割合が高くなっています。
肺がん検診は、胸部レントゲン撮影と喀痰細胞診により行います。
肺門型肺がんは喫煙との関係が強く、早期にはレントゲン写真無所見が多いのですが、喀痰細胞診で発見することができます。特に50歳以上のヘビースモーカーは、肺門部肺がんに罹る率が高いので定期的に喀痰細胞診を行う必要があります。
肺野型肺がんは早期には無症状でレントゲン写真でしか発見されません。40歳以上では少なくとも年1回は検査が望ましいのです。この利点はX線の被曝線量がごく少なく、時間も短時間で、費用も安いことです。欠点として、がんが1cm以下ではなかなか見つからないこと、肺の全体が写るわけではなく死角があることです。
最近では死角のないヘリカルCTが検診にも応用されれるようになり、普通のレントゲン写真では見つけにくい部位のものや、治る確立のより高い、より小さな肺がんも発見されるようになっています。欠点は被曝線量が多くなること、人手がかかり費用も高いことです。
がんの予防には一次予防と二次予防があります。
一次予防とはがんにならないように工夫することをいい、二次予防とは検診によって早期発見、早期治療をして、がんで命を落さないようにすることをいいます。
一次予防
なんといっても禁煙です。
タバコが存在しなければ、理論的には男で70%、女で26%(男女合計で58%)の肺がんがが減少すると考えられています。
一方、喫煙者が禁煙した後の肺がん発生のリスクは、喫煙を継続している人のリスクを1とすると、禁煙後5年以内では0.9倍、5年以上経過して半分に、20年を経過して約3分の1になります。
このように、禁煙の効果はすぐにでるものではありません。一方、喫煙の年数が長いほど肺がん発生のリスクは高いので、一次予防の面からはなるべく早く禁煙をして下さい。
肺がんの他にもタバコによって罹りやすくなるがんは多く、非喫煙者に比し、毎日喫煙する人では30倍以上も喉頭がんになりやすくなります。食道がんで2倍です。しかし、5年の禁煙で食道がんは50%減らすことができ、膀胱がんでは2年の禁煙で50%減少の効果が出ます。今からでも遅くありません。禁煙に心がけましょう。
二次予防
二次予防としての検診を受けていただきたいものです。
一般外来で発見された肺がんと、検診で発見された肺がんを比較するすと、検診で見つかった人は手術を受けられる率が高く、またその病期も治癒率の高い1期の割合が高くなっています。
肺がん検診は、胸部レントゲン撮影と喀痰細胞診により行います。
肺門型肺がんは喫煙との関係が強く、早期にはレントゲン写真無所見が多いのですが、喀痰細胞診で発見することができます。特に50歳以上のヘビースモーカーは、肺門部肺がんに罹る率が高いので定期的に喀痰細胞診を行う必要があります。
肺野型肺がんは早期には無症状でレントゲン写真でしか発見されません。40歳以上では少なくとも年1回は検査が望ましいのです。この利点はX線の被曝線量がごく少なく、時間も短時間で、費用も安いことです。欠点として、がんが1cm以下ではなかなか見つからないこと、肺の全体が写るわけではなく死角があることです。
最近では死角のないヘリカルCTが検診にも応用されれるようになり、普通のレントゲン写真では見つけにくい部位のものや、治る確立のより高い、より小さな肺がんも発見されるようになっています。欠点は被曝線量が多くなること、人手がかかり費用も高いことです。
肺がんの副作用と対策
外科療法
手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
放射線療法
主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
化学療法
主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
内視鏡治療(レーザー治療)
副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。
手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
放射線療法
主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
化学療法
主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
内視鏡治療(レーザー治療)
副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。
肺がんの治療
治療法は原則的には病期により決定されます。
それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。肺がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、免疫療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。
外科療法
手術方法の原則は、肺野末梢部肺がんには腫瘍を含めた肺葉切除(右は上、中、下の3葉に、左は上、下の2葉に分かれており、その葉の単位で切除すること) とリンパ節郭清(リンパ節を一つ一つつまみとるのではなく、まわりの脂肪と一緒にまとめて切除すること)、肺門部肺がんには、気管支形成術(切り取った気管支の残りをつなぎ合わせる手術)を伴った肺葉切除とリンパ節郭清です。病巣の進行が軽ければ肺の部分切除で済むこともあり、進行していると1側肺の全摘にることもあり、隣接臓器を合併切除する場合もあります。
非小細胞がんの場合、通常、I期から3A期が手術の対象となります。肺は切り取っても生えてくる臓器ではありませんので、残る予定の肺機能が悪いと手術ができないこともあります。術後の5年生存率は、術後病期で見てI期:80%、2期:60%、3期:40%、IV期:10%未満です。
小細胞がんでは抗がん剤の効果が大きいので、手術を行う場合でも、手術前あるいは手術後に抗がん剤による治療を行うのが原則です。
放射線療法
X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。
非小細胞がんの場合手術できないI期、2期、胸水を認めない3期が対象です。小細胞がんの場合には限局型が対象となります。
肺がんの場合、通常、体外から肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的には1日1回週5回照射し、5週間から6週間の治療期間が必要です。最近では、1 日2回週10回照射する多分割照射も試みられています。症例によっては、副作用を軽減できて、十分な量の放射線照射の出来る3次元照射が出来る場合もあります。
化学療法
外科療法・放射線療法が局所治療であるのに対し、抗がん剤による化学療法は全身治療です。
小細胞がんには抗がん剤の効果が著しいことから、化学療法は小細胞がんに対するもっとも一般的な治療です。非小細胞がんに対する化学療法の対象は、原則的には手術適応がない3期とIV期の症例です。
抗がん剤は通常、2種類以上を使用します。治療期間は、通常3~4週を1コースとして複数回繰り返します。毎週抗がん剤を投与する治療も行われています。
一方、非小細胞がんでは小細胞がんに比べ抗がん剤の効果が低く、抗がん剤のみでがんが治癒することは稀です。
抗がん剤による治療は化学単独で行うこともありますが、最近は、手術や放射線治療に化学療法を組み合わせる治療も積極的に行なわれるようになって来ました。このようにいろいろな治療法を組み合わせて行う治療を集学的治療と呼びますが、進行した肺がんの多くには集学的治療が必要です。
内視鏡治療(レーザー治療)
気管支鏡の可視範囲内の早期がんにはレーザー光線を照射して治療できるものがあります。
肺門型肺がんはヘビースモーカーのがんですので、高齢者や肺機能の悪い人が多く、また多発することも多く、手術ができない場合があり、レーザーを用いた「光線力学的療法」が開発されました。
「光線力学的療法」とは、がん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与後、レーザー光線を照射し、肺門部の早期肺がんを選択的に治療する方法です。
腫瘍に集まりやすい光感受性物質(ヘマトポルフィリン誘導体)を静脈注射してから腫瘍にレーザー光を照射することにより、腫瘍細胞が選択的に破壊するという治療です。レーザー照射後は、壊死組織の器質化による気道の閉塞を防止するため、翌日より2~3日は連日、その後1カ月間は1週間に1回、気管支鏡による壊死物質の除去が必要です。
免疫療法
免疫は外敵(細菌やウイルス等)の排除に活躍していますが、体の中にできるがんに対しても作用します。
この体に備わった免疫力を強化してがんを克服しようとするのが免疫療法です。体の免疫機能を高めるとか、がん細胞を特異的に殺す免疫担当細胞を点滴するなどの種々の免疫療法が試みられています。しかし、いずれも実験段階であり、現状では肺がんに有効な免疫療法はありません。
それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。肺がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、免疫療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。
外科療法
手術方法の原則は、肺野末梢部肺がんには腫瘍を含めた肺葉切除(右は上、中、下の3葉に、左は上、下の2葉に分かれており、その葉の単位で切除すること) とリンパ節郭清(リンパ節を一つ一つつまみとるのではなく、まわりの脂肪と一緒にまとめて切除すること)、肺門部肺がんには、気管支形成術(切り取った気管支の残りをつなぎ合わせる手術)を伴った肺葉切除とリンパ節郭清です。病巣の進行が軽ければ肺の部分切除で済むこともあり、進行していると1側肺の全摘にることもあり、隣接臓器を合併切除する場合もあります。
非小細胞がんの場合、通常、I期から3A期が手術の対象となります。肺は切り取っても生えてくる臓器ではありませんので、残る予定の肺機能が悪いと手術ができないこともあります。術後の5年生存率は、術後病期で見てI期:80%、2期:60%、3期:40%、IV期:10%未満です。
小細胞がんでは抗がん剤の効果が大きいので、手術を行う場合でも、手術前あるいは手術後に抗がん剤による治療を行うのが原則です。
放射線療法
X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。
非小細胞がんの場合手術できないI期、2期、胸水を認めない3期が対象です。小細胞がんの場合には限局型が対象となります。
肺がんの場合、通常、体外から肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的には1日1回週5回照射し、5週間から6週間の治療期間が必要です。最近では、1 日2回週10回照射する多分割照射も試みられています。症例によっては、副作用を軽減できて、十分な量の放射線照射の出来る3次元照射が出来る場合もあります。
化学療法
外科療法・放射線療法が局所治療であるのに対し、抗がん剤による化学療法は全身治療です。
小細胞がんには抗がん剤の効果が著しいことから、化学療法は小細胞がんに対するもっとも一般的な治療です。非小細胞がんに対する化学療法の対象は、原則的には手術適応がない3期とIV期の症例です。
抗がん剤は通常、2種類以上を使用します。治療期間は、通常3~4週を1コースとして複数回繰り返します。毎週抗がん剤を投与する治療も行われています。
一方、非小細胞がんでは小細胞がんに比べ抗がん剤の効果が低く、抗がん剤のみでがんが治癒することは稀です。
抗がん剤による治療は化学単独で行うこともありますが、最近は、手術や放射線治療に化学療法を組み合わせる治療も積極的に行なわれるようになって来ました。このようにいろいろな治療法を組み合わせて行う治療を集学的治療と呼びますが、進行した肺がんの多くには集学的治療が必要です。
内視鏡治療(レーザー治療)
気管支鏡の可視範囲内の早期がんにはレーザー光線を照射して治療できるものがあります。
肺門型肺がんはヘビースモーカーのがんですので、高齢者や肺機能の悪い人が多く、また多発することも多く、手術ができない場合があり、レーザーを用いた「光線力学的療法」が開発されました。
「光線力学的療法」とは、がん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与後、レーザー光線を照射し、肺門部の早期肺がんを選択的に治療する方法です。
腫瘍に集まりやすい光感受性物質(ヘマトポルフィリン誘導体)を静脈注射してから腫瘍にレーザー光を照射することにより、腫瘍細胞が選択的に破壊するという治療です。レーザー照射後は、壊死組織の器質化による気道の閉塞を防止するため、翌日より2~3日は連日、その後1カ月間は1週間に1回、気管支鏡による壊死物質の除去が必要です。
免疫療法
免疫は外敵(細菌やウイルス等)の排除に活躍していますが、体の中にできるがんに対しても作用します。
この体に備わった免疫力を強化してがんを克服しようとするのが免疫療法です。体の免疫機能を高めるとか、がん細胞を特異的に殺す免疫担当細胞を点滴するなどの種々の免疫療法が試みられています。しかし、いずれも実験段階であり、現状では肺がんに有効な免疫療法はありません。
肺がん病期(ステージ)
がんの拡がりぐあいで治療方法が変わります。
肺がんが診断されると、がんが肺から他の臓器に拡がっているかどうか、病期診断の検査が必要になります。通常行われる検査は、脳MRI、胸部CT、腹部のCTあるいは超音波検査、骨シンチグラフィーなどです。
病期分類
がん細胞の拡がり具合で病気の進行を1~4期の病期に分類します。
1~3期は、さらにその病期の中で軽いものをA、重いものをBともう一段階細分化します。
1 期 がんが肺の中にとどまっており、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階。
2 期 原発巣のがんは肺内にとどまっており、同側の肺門リンパ節には転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。
3 期 原発巣のがんが肺を越えて隣接臓器に浸潤しているか、縦隔リンパ節に転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。両方あっても・期です。
4 期 原発巣の他に、肺、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合。
小細胞肺がんでの進行度分類
小細胞がんでは手術の適応の時期を逸した進行がんで発見される症例が多いことから、限局型、進展型に大別する進行度分類も使われています。
1.限局型:
がんが1側の肺と近くのリンパ節に存在する場合。
2.進展型:
がんが肺の外に拡がり、遠隔転移のある場合。
手術を考慮している時には、1)の病期分類を使います。
肺がんが診断されると、がんが肺から他の臓器に拡がっているかどうか、病期診断の検査が必要になります。通常行われる検査は、脳MRI、胸部CT、腹部のCTあるいは超音波検査、骨シンチグラフィーなどです。
病期分類
がん細胞の拡がり具合で病気の進行を1~4期の病期に分類します。
1~3期は、さらにその病期の中で軽いものをA、重いものをBともう一段階細分化します。
1 期 がんが肺の中にとどまっており、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階。
2 期 原発巣のがんは肺内にとどまっており、同側の肺門リンパ節には転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。
3 期 原発巣のがんが肺を越えて隣接臓器に浸潤しているか、縦隔リンパ節に転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。両方あっても・期です。
4 期 原発巣の他に、肺、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合。
小細胞肺がんでの進行度分類
小細胞がんでは手術の適応の時期を逸した進行がんで発見される症例が多いことから、限局型、進展型に大別する進行度分類も使われています。
1.限局型:
がんが1側の肺と近くのリンパ節に存在する場合。
2.進展型:
がんが肺の外に拡がり、遠隔転移のある場合。
手術を考慮している時には、1)の病期分類を使います。
肺がんの検査
確定診断
がんであることの確定診断はがん細胞を確認することです。
喀痰の中のがん細胞を確認する場合(喀痰細胞診)、気管支経由で細胞を採取する器具を病変に挿入する場合(気管支鏡検査)と、体外から針を刺して病変から細胞を採取する方法(経皮的肺穿刺法)の3種類があります。これで診断がつかない時には、手術により診断をつける場合(開胸生検)があります。
1.喀痰細胞診:
喀痰細胞診は血痰、継続する咳、痰などの呼吸器症状を訴える患者に対して、必須の検査です。
特に、太い気管支に発生した肺門部早期肺がんでは、胸部・線写真に異常がないことが多く、喀痰細胞診が発見手段となります。喀痰細胞診の陽性率は、回数を重ねるとともに向上するので最低3日間の検査が必要です。
2.気管支鏡検査:
気管支鏡で病巣を観察しながらブラシなどで目的の部位を擦過する病巣擦過法、あるいは病巣を針で穿刺する経気管支的穿刺吸引細胞診を行います。気管支鏡の可視範囲外の末梢病巣に対しては、X線透視下にブラシや針を誘導オ病巣から細胞を採取します。
よく気管支鏡検査は非常に苦しいといわれますが、決してそんなことはありません。喉に局所麻酔剤をよく効かせて検査を行いますので、胃カメラ検査よりも楽に検査ができます。
3.経皮的肺穿刺法:
経気管支的に検索が困難な末梢病巣には、穿刺針を用いて細胞を採取します。
・線透視下に病巣を確認しながら、皮膚を通して目的の部位まで穿刺針を挿入し、腫瘤に到達したら注射器で吸引します。
・線透視で確認できない微小病変では、CTガイド下に穿刺をします。経皮針生検の場合は肺を覆っている胸膜に外から穴をあけることになりますので、そこから空気が漏れて、気胸という合併症をおこす可能性が10%ほどあります。
これに対応できるように、基本的には短期の入院が必要な検査です。
4.開胸生検:
手術により直接腫瘍から組織をとり診断する方法です。近年は胸腔鏡という技術ができて、負担の少ない手術で診断がつくようになりました。
病期(ステージ)診断
がんは発生した部位で大きくなるのみではなく、リンパ節やいろいろな臓器に転移をおこす可能性があります。その程度によって適切な治療方法が異なります。すなわち肺がんの進行の程度を示す病期を決める検査です。これらを調べるために胸部のみならず、いろいろな臓器のCT、MR、超音波、アイソトープの検査などが目的に応じて行われます。詳しくは「Chapter.9 病期(ステージ)」を参照して下さい。
耐術能検査
肺は生命の維持に必須の臓器であり、切除の限界は、肺機能の正常な人で左右の肺のどちらか一方を全部切除するところまでです。肺や胸膜の病気により肺活量が減少したり、肺気腫などの肺の疾患で肺から血液に酸素を取り入れる効率の低下したりしている時には、片方の肺全部を切除すると残りの肺では生きてゆくことが困難な場合もあります。
そこで、がんを治すために必要十分な切除の範囲を決定し、予定手術の術後にどれだけの肺機能になるかを正確に予測すること、また予定以上に進行していた場合には、どこまで手術を拡大できるかを把握しておくことは非常に重要なのです。
このために、通常の肺機能検査のほかに、肺血流シンチや肺換気シンチなどが行なわれます。
手術適応から外れる人にはここまで詳しく調べる必要はありません。
がんであることの確定診断はがん細胞を確認することです。
喀痰の中のがん細胞を確認する場合(喀痰細胞診)、気管支経由で細胞を採取する器具を病変に挿入する場合(気管支鏡検査)と、体外から針を刺して病変から細胞を採取する方法(経皮的肺穿刺法)の3種類があります。これで診断がつかない時には、手術により診断をつける場合(開胸生検)があります。
1.喀痰細胞診:
喀痰細胞診は血痰、継続する咳、痰などの呼吸器症状を訴える患者に対して、必須の検査です。
特に、太い気管支に発生した肺門部早期肺がんでは、胸部・線写真に異常がないことが多く、喀痰細胞診が発見手段となります。喀痰細胞診の陽性率は、回数を重ねるとともに向上するので最低3日間の検査が必要です。
2.気管支鏡検査:
気管支鏡で病巣を観察しながらブラシなどで目的の部位を擦過する病巣擦過法、あるいは病巣を針で穿刺する経気管支的穿刺吸引細胞診を行います。気管支鏡の可視範囲外の末梢病巣に対しては、X線透視下にブラシや針を誘導オ病巣から細胞を採取します。
よく気管支鏡検査は非常に苦しいといわれますが、決してそんなことはありません。喉に局所麻酔剤をよく効かせて検査を行いますので、胃カメラ検査よりも楽に検査ができます。
3.経皮的肺穿刺法:
経気管支的に検索が困難な末梢病巣には、穿刺針を用いて細胞を採取します。
・線透視下に病巣を確認しながら、皮膚を通して目的の部位まで穿刺針を挿入し、腫瘤に到達したら注射器で吸引します。
・線透視で確認できない微小病変では、CTガイド下に穿刺をします。経皮針生検の場合は肺を覆っている胸膜に外から穴をあけることになりますので、そこから空気が漏れて、気胸という合併症をおこす可能性が10%ほどあります。
これに対応できるように、基本的には短期の入院が必要な検査です。
4.開胸生検:
手術により直接腫瘍から組織をとり診断する方法です。近年は胸腔鏡という技術ができて、負担の少ない手術で診断がつくようになりました。
病期(ステージ)診断
がんは発生した部位で大きくなるのみではなく、リンパ節やいろいろな臓器に転移をおこす可能性があります。その程度によって適切な治療方法が異なります。すなわち肺がんの進行の程度を示す病期を決める検査です。これらを調べるために胸部のみならず、いろいろな臓器のCT、MR、超音波、アイソトープの検査などが目的に応じて行われます。詳しくは「Chapter.9 病期(ステージ)」を参照して下さい。
耐術能検査
肺は生命の維持に必須の臓器であり、切除の限界は、肺機能の正常な人で左右の肺のどちらか一方を全部切除するところまでです。肺や胸膜の病気により肺活量が減少したり、肺気腫などの肺の疾患で肺から血液に酸素を取り入れる効率の低下したりしている時には、片方の肺全部を切除すると残りの肺では生きてゆくことが困難な場合もあります。
そこで、がんを治すために必要十分な切除の範囲を決定し、予定手術の術後にどれだけの肺機能になるかを正確に予測すること、また予定以上に進行していた場合には、どこまで手術を拡大できるかを把握しておくことは非常に重要なのです。
このために、通常の肺機能検査のほかに、肺血流シンチや肺換気シンチなどが行なわれます。
手術適応から外れる人にはここまで詳しく調べる必要はありません。
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