放射線療法は放射性物質から出るγ線や大型の加速器により人工的に作り出したX線などをがん細胞に照射することによって、がん細胞に損傷を与え、がん細胞を死滅させる治療法です。基本的に放射線が照射された範囲にだけ治療効果が及びます。
放射線療法は局所療法であるため肺がんの大きさが小さく、腫瘍が一部分に限られている場合には有効ですが、転移が拡がっている場合などには適応となりません。
放射線療法は手術と異なり患部を切除することがありませんので臓器の機能を温存することができたり、比較的短時間で外来でも治療ができたり、副作用も比較的少ないなどメリットがあります。
放射線治療の副作用のうち治療後数ヶ月以上経過してから現れるものの方がより注意が必要で、同じところに二度照射すると副作用の頻度が増し、放射線治療の効果よりも副作用の方が強く現れるため、一部の例外を除いて一度放射線照射を行ったところには再照射しないのが原則です。
肺がんの放射線治療の目的は2通りある
肺がんの治療において放射線療法の目標とするものは大きく分けて2通りあります。
一つは、肺がんを積極的に治療するために行うもので、手術が難しい患者さんに放射線単独で治療を行ったり、抗がん剤との併用による放射線化学療法を行ったり、あるいは手術前・手術後に放射線治療を行うなどの方法があります。
放射線治療は一般に細胞分裂が盛んなほど効きやすい傾向があります。
特に小細胞肺がん(小細胞肺癌)では放射線化学療法により腫瘍縮小効果が期待できます。
一方、非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)は放射線治療に対する反応はあまり良いとは言えません。
肺がん治療における放射線治療の二つ目の目的は痛みや神経症状を和らげるために行う緩和的放射線治療です。
肺がんの放射線治療(積極的な治療)
肺がんを積極的に治療するために行う放射線治療法には、からだの外から放射線を照射する「外部照射治療」や、からだの中から放射線をかける「密封小線源治療」、陽子線などを利用した「粒子線治療」などがあります。
骨転移・脳転移への放射線療法-肺がんの緩和的放射線治療
肺がんの骨転移や脳転移に伴う痛みなどの症状を和らげるために放射線による症状緩和治療が行われることがあります。
肺がんが骨転移(転移性骨腫瘍)や脳転移(転移性脳腫瘍)などをきたした際、転移巣に対する放射線治療の主な目的は痛みや神経症状のコントロールになります。
肺がんの骨転移(転移性骨腫瘍)に対する放射線治療
肺がんが骨に転移すると激しい痛みを感じますが、放射線をかけることで痛みを和らげることが期待できます。
またもろくなった骨を安定させ骨折対策や脊髄の圧迫による麻痺などの神経症状をコントロールすることも目的となります。
肺がんの骨転移は頚椎や胸椎、腰椎、骨盤骨、肋骨、胸骨、手足の骨(四肢骨)、頭蓋骨などに多く発生します。とくに頚椎や胸椎、腰椎に転移した場合は脊髄ががんによって圧迫されるため強い痛みを感じたり、神経が麻痺することがあります。
また、普通ならば骨折することのないような弱い衝撃でも骨折してしまうことがあります。
骨転移(転移性骨腫瘍)に対して放射線をかけることで痛みが緩和されたり、もろくなった骨を安定化させ骨折が予防できたり、神経症状が改善されたりします。
肺がんの脳転移(転移性脳腫瘍)に対する放射線治療
肺がんの脳転移に対する放射線治療では、頭痛や吐き気、嘔吐、ふらつき、歩行困難、視力の異常などの症状緩和が目的となります。
転移は脳の中のどこにでも起こる可能性があり、大きさや数も様々ですから、治療法の選択肢もいくつかあります。
全脳照射は脳全体に放射線をかける治療法で脳のいろいろな所に転移がある場合などに行います。手術で腫瘍を摘出した後に放射線を照射する方法もあります。また、リニアック装置やガンマナイフによって多方向から放射線を集中してかける治療法も行われています。
放射線療法の副作用について
正常な細胞に放射線が照射されると正常な細胞がダメージを受け副作用が出ることがあります。副作用には治療中又は治療直後にでるものと、半年~数年後にでてくるものとがあります。
放射線治療による副作用が現れるのは照射した部分に限られますので、肺がんの場合には、頭髪が抜けたり、吐き気やめまいが起こることはほとんどありません。
数ヶ月以内に現れる副作用としては、皮膚が日焼けしたときのように赤くなることがあります。皮膚が弱くなっているため刺激に弱くなります。他に皮膚がカサカサしたり、黒ずんだりすることもあります。また倦怠感を感じることもあります。