胃がん ペプシノゲン検査とは

胃がんの検査の1つに、血清(血液の一部)を用いた検査方法があります。
 大規模な人数の検査をするとき、第1段階として疑わしい症例を見つけだすのに効率的な方法です。
 胃の細胞から分泌されている酵素に「ペプシノゲンI」「ペプシノゲンII」という酵素があります。この酵素は萎縮(いしゅく)性胃炎に関係が深いことがわかっています。
 血液中のこの酵素の量を測り、IとIIの比率から萎縮性胃炎を予測することができます。
 萎縮性胃炎の粘膜からは分化型の腺癌(せんがん:腺管構造をしているがん)が発症するリスクが高いため、血液検査によりリスクの高い方々を選別し、早期発見につなげます。
 この方法による胃がん発見率は間接X線検査(集団検診で行われている)に近い成績ともいわれています。
 簡便で経済的なこと、また一度にたくさんの検体を調べられる効率性から、集団検診に間接X線検査とともに組み入れられています。

胃がん PET(陽電子放射断層撮影)検査とは

PET(陽電子放射断層撮影)検査は、がん細胞が正常細胞よりも糖分を多く必要とする性質を活かし、陽電子を放出するブドウ糖に似た薬剤を利用し、体内での薬剤の分布を画像化する診断法です。
 CT検査やMRI検査が形態を画像化するのに対し、PET検査は細胞の活動性に応じて薬剤が集まる原理を利用することで、細胞の代謝の状態を画像化する検査です。また、PET検査は1回の検査で全身において、がんの検査を行うことができることが大きな特徴です。
 しかし、全てのがんをPET検査で早期に発見できるわけでありません。薬剤の集積が少ない性質のがんもありますし、消化管粘膜に発生する極早期のがんの発見は困難です。また、薬剤は炎症部にも集まる性質をもつため炎症部とがんとの区別が難しいという問題もあります。
 PET検査で発見されやすいがんとしては、肺がん、食道がん、膵臓がん、大腸がん、乳がんがあげられ、さらに、いままでの検診では見つけることが困難であった甲状腺がん、悪性リンパ腫、卵巣がん、子宮体がんが発見できることが期待されています。
 他胃がん、腎がん、尿道がん、膀胱がん、前立腺がん、肝細胞がん、胆道がん、白血病など場所によっては有用性が低い場合があるともいわれています。
 PET検査は平成14年度に一部の疾患の診断に限って保険が適応されるようになりましたが、その他の適応外の疾患や検診は全額自己負担となるため、かなり高額な検査になります。
 また、薬剤の製造装置および撮影装置の設備費用が非常に高く、検査可能な医療機関は限られています。

胃がん CT検査

CT検査は身体にあらゆる角度からX線照射し、得られた情報をコンピューターで解析するものです。造影剤を使う場合と使わない場合がありますが、造影剤を用いる方法では病変がより鮮明に描き出され、検査したい臓器やその周辺をミリ単位の断層写真として観察できます。
 CT検査の結果はX線検査や内視鏡検査の結果と総合して病気を判断することに役立っています。また、がん治療(化学療法や放射線療法など)の効果の把握などにも用いられています。
 胃がんが疑われた場合の精密検査のひとつとしてCT検査を行います。
 CT検査は、胃がんそのものの発見には有益とはいえませんが、胃がんの周りの臓器への浸潤(しんじゅん)や転移している病変の発見に有用です。

胃がん 超音波内視鏡検査とは

胃がんの超音波内視鏡検査(EUS)は組織の構造が変化する部位で、音波が跳ね返ってくる現象(エコー)を利用して、跳ね返りの強さや部位を画像として映し出す検査です。
 体表からの超音波検査では胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔(ふくくう)の脂肪、骨が、エコーをとらえて画像にする際に妨げになることがあります。
 また、体表からのエコー検査では検査目的とする対象臓器近辺までの画像を得るために超音波の減衰が少ない比較的低周波数の超音波により検査を行いますが、低周波数の超音波検査では分解能に限界があり、高い分解能を持った詳細な画像情報が必要となるがんの壁深達度(へきしんたつど)診断などには適しません。
 その欠点を改良したものが、超音波内視鏡検査です。超音波内視鏡は、内視鏡先端部にエコーを送受信する「超音波振動子」を兼ね備えた内視鏡です。
 超音波内視鏡検査では、超音波が胃など体腔内に溜まったガスを透過できない為、超音波振動子と観察部位との間に水を介在させて対応(脱気水充満法等)をしています。
 胃壁の表面を観察する内視鏡検査に異なり、また、粘膜下の状態をエコー像として観察する役割を果たします。5~30MHzという比較的高い周波数の分解能に優れた超音波内視鏡検査により、粘膜上皮(じょうひ)の病巣(びょうそう)だけでなく、病巣がどのくらいまで深く進展しているか、リンパ節の転移や、周りの臓器への浸潤(しんじゅん)などについての詳細な情報を得ることができます。
 その結果、内視鏡的治療が適応するかどうかの判断、進行性胃がんの場合はどこまで切除するかの境界線を決めるうえでの重要な情報を得ることができます。
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胃がん X線検査とは

胃がんX線検査とはバリウム溶液を飲んでX線写真を撮影するもので、胃の検査には間接X線検査と直接X線検査とがあります。
 間接X線検査は、病変の発見を第一の目標とするもので、時間的、経済性、被験者の負担などから集団検診などで行っています。
 しかし、小サイズのフィルムを使用し、マニュアルどおりの体位で撮影するため、小さな胃がんや部位によっては進行性の胃がんも見逃す可能性があるので、近年、胃内視鏡検査を選択することが多くなっているようです。
 一方、直接X線検査はいわゆる精密検査で行われるX線検査で、2種類の造影剤の量を変えた二重造影法と、圧迫したり体位や方向を様々にかえて撮影する方法があります。
 良性・悪性の鑑別や病巣(びょうそう)の形態、浸潤(しんじゅん)範囲、深達度(しんたつど)の推定ができます。
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胃がん 内視鏡検査

胃がんの内視鏡検査はファイバースコープや先端にCCD(固体撮影素子)を搭載した電子スコープを用いて、直接、消化器粘膜を観察する方法です。
 内視鏡検査は病巣(びょうそう)部を直接観察できることが大きな特徴です。主病巣の位置や大きさだけでなく、病巣の拡がりや表面の形状(隆起(りゅうき)や陥凹(かんおう))、色調などから、病巣の数やある程度の深達度(しんたつど)が判断できます。
 色素内視鏡検査といい、発見困難な凹凸のない病巣は色素と呼ばれる染色液を使って探す方法もあります。
 もう1つの内視鏡検査の大きなメリットは、直接細胞を採り(生検:せいけん)、病理検査ができるため、病気の判定に役立っています。
 胃内視鏡検査は早期胃がんの発見に大きく貢献しています。内視鏡での胃集団検診により発見されるがんの中で約60%は早期がんという成績も報告されています。
 胃内視鏡検査は、のどの麻酔や消化管の運動を抑える処置をした後に、胃内視鏡を口から挿入し、胃の内部を観察します。粘膜の様子、色、形態の変化から胃がんのほか炎症や潰瘍などを見つけることができます。
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胃がん 薬物療法

化学療法は抗がん剤を使用する目的によって、(1)手術で取りきれずに残ってしまった少量のがん細胞を死滅させて再発を予防する(これを術後補助化学療法と言います)、(2)がんに伴う苦痛を改善したり予後を延長させる目的で使用する、の2つに分類されます。
 (1)の術後補助化学療法は、手術で完全にとりきれなかったがん細胞を死滅させることで、手術単独では治らない患者さんを治す治療です。 一方、この治療は手術で治ってしまう患者さんにまで抗がん剤を投与することが問題です。使用する抗がん剤の効果と副作用を検討した結果、ティーエスワンの1年間の投与が有効であることが知られています。
 (2)の目的で用いられる主な抗がん剤は5-フルオロウラシル、シスプラチン、イリノテカン、タキサン系薬剤(パクリタキセルとドセタキセル)です。最初に行うべき治療は5-フルオロウラシル系薬剤であるティーエスワンとシスプラチンを組み合わせた治療法です。
 この他にも、ティーエスワンにタキサン系薬剤を組み合わせた治療法も期待されていますが、現在までに有効性の証明はされていません。この他、ティーエスワンとシスプラチンにタキサン系薬剤であるドセタキセルを組み合わせた3剤併用療法も検討されていますが、その効果や安全性の十分なデータはありません。
 最近の研究で、胃がんの約20%にHER2(ハーツウ)という細胞増殖にかかわるたんぱく質が多く発現していることが分かりました。2009年の米国臨床腫瘍学会において、HER2を多く発現している胃がんにHER2の働きを抑える分子標的治療薬(トラスツズマブ)を併用すると、予後の改善することが報告されました。この薬剤は乳がんの治療薬として使われていますが、近い将来、胃がんにおける治療薬になると期待されています。
 また、手術成績向上のため、手術可能な患者さんに対する術前化学療法の研究も進んでいます。高度リンパ節転移症例に対するティーエスワンとシスプラチンによる術前化学療法は、術前化学療法なしに比べて優れている可能性が高いことが示されています。現在、高度リンパ節転移を伴う症例に対して、術前化学療法がおこなわれるようになってきています。