胃がん治療中の食事 食事指導

胃がんの場合、健康だったときと比較すると、食生活が大きく変化するため、手術後や退院時期になると、多くの病院では、食事指導が行われます。
ですから、退院後の食生活に対して、不安を感じている人や、わからないことがある人は、しっかり聞いておくようにしましょう。
病院の食事指導は、その時点の患者さんの状態によっても異なりますが、主に食事の回数や、食べるときの注意点などについてお話があります。
まず、胃の手術後は、一度に食べられる量が減っているので、食事回数を増やすことになります。
その場合、3食に加え、10時や3時の間食で補うことをお勧めします。
そして、胃を全摘出した場合は、胃の働きがなくなるため、ダンピング症状という低血糖が起こります。
それを防ぐためには、ゆっくり唾液と混ぜ合わせながら食べることが大切です。
そして、水分を摂り過ぎないようにしましょう。水分で流し込みながら食事をすると、胃に負担がかかります。
また、食後は食べたものが逆流しないように、上半身を少しあげた状態で、休むことをお勧めします。
このように、食事の摂り方に関しては、今までと同じというわけにはいかないので、しばらくは、気を配る必要があります。
食材に関しては、栄養のバランスがとれていて、消化の良いものであれば、好きなものを食べても構わないという指導がされています。
しかし、術後はすぐに満腹感を感じ、少しでも食べ過ぎてしまうと気持ちが悪くなったりするので、思うようには食べられないかもしれません。
しかし、胃のない生活であっても、体も徐々に慣れてきて、時が来れば、食事を楽しめるようになることでしょう。

胃がん治療中の食事 末期がん患者の食事

末期がんになると、治療の副作用で、吐き気や味覚の変化、下痢、便秘などの症状がおこり、食欲がなくなることがあります。
また、体力がなくなって、抵抗力が低下すると、口内炎ができたり、飲み込み辛くなったりします。
このように、末期がんでは、食事も固形物、流動食、水分の順に、口から食べることも難しくなってきます。
そのような場合、点滴を受けたり、中心静脈栄養法や経管栄養法などから、栄養を摂る方法もあります。
しかし、できることなら、少しでも食事を摂れるようにしたいものです。
そこで、患者さんが食べやすいように、食事の際に、少し工夫をしてみることをお勧めします。
まず、冷たいものは食べやすい傾向があります。冷めても、おいしく食べられるようなメニューを考えてみましょう。
そして、口内炎があることによって食べ辛い場合は、できるだけ、歯磨きやうがいを頻繁に行うようにします。
こうすることで、粘膜の荒れを予防することが可能です。
また、嚥下障害がある場合は、食材を細かく刻んだり、とろみをつけると食べやすくなります。
プリンやゼリー、茶碗蒸しなども食べやすいので、お勧めの食品です。
このように、末期がんになると、食事をすることさえ困難になります。
しかし、食事は、栄養補給だけでなく、生活の楽しみの1つでもあります。
できるだけ、患者さんが食事をしたいと思える環境作りをしてあげましょう。

胃がん治療中の食事 化学療法中の食事

化学療法中の食事は、どのようなものを食べれば良いのでしょうか。
化学療法を行うと、患者さんは、さまざまな副作用に悩まされることが考えられます。
患者さんの状態によって使用する薬も異なり、また、体質によっても副作用の現れ方は様々ですが、
なかでも、主な症状としては、食欲減退、吐き気、嘔吐、脱毛などの症状があらわれます。
そして、化学療法中は、白血球が減少して、感染を起こしやすくなったり、血小板が減少して出血しやすくなることも考えられます。
また、赤血球が減少して、貧血を起こしやすくなる場合があります。
このような状況のなかで、どのような食事をすれば良いのか、果たして食事を楽しむことができるのか悩みます。
そこで、少しでも症状を緩和し、食べやすいお勧めの食材をいくつか紹介します。
まず、吐き気がある時は、生姜がお勧めです。
生姜には、殺菌効果や、吐き気を抑える作用があります。
梅やエンドウ豆、にら、みかんなどにも、吐き気に対して、同様の効果があります。
そして、食欲がない時は、酸味をきかせたり、料理に香りをつけることも効果的です。
特に、ゆずやレモンといったさわやかな香りは、食欲をそそることでしょう。
また、貧血気味の時は、鉄分の多い牛や豚、鶏のレバーがお勧めです。
その他、血液をつくるために必要なビタミン、ミネラルを多く含む食品には、卵や乳製品、サバやイワシなどの魚類、野菜や果物でいえば、かぼちゃやブロッコリー、バナナやキウイフルーツ、イチジクなども効果があります。
このように、副作用によって、さまざまな症状があり、食事をすることも、苦痛に感じる場合があると思いますが、少しでも食べられる物を食べて栄養を摂り、体力をつけるようにしましょう。

胃がん治療中の食事 健康食品

それでは、胃がんに効果的なサプリメントとは、どのようなものがあり、どのようなものを選べばよいのでしょうか。
胃の手術後には、胃を切ったために、胃の働きが悪くなり、いくつかの症状に悩まされることがあります。
代表的な症状として、鉄分や葉酸、ビタミンが不足することにより、貧血をおこしてしまうことがあります。
そして、カルシウムの吸収が悪くなったり、ビタミンDの吸収障害が起こることもあります。
その結果、長期的にみると、骨の障害を引き起こすことにもつながります。
このような、症状を緩和する為にも、必要な栄養を摂る必要があります。
そのためには、バランスの良い食事を摂ることが大切です。
しかし、それだけでは、必要な栄養を全て摂取するのが困難な面もあります。
そこで、時としては、サプリメントによって、食事だけでは十分に摂れない栄養を、補助的にとることは、効果的です。
しかしながら、なかには、効果の感じられないものや、かえって有害なものもあり、選ぶ際には注意が必要です。
まず、化学合成品は避け、天然成分のものを選びましょう。
そして、同じ成分からできていても、商品によって、成分のとれた産地や、成分の含まれる量など、情報提供がはっきりしているものを選択しましょう。
胃がんの患者さんの中には、術後不足しがちな鉄分やビタミン、カルシウムなどの成分を、サプリメントで補給されている方もいらっしゃいます。
このように、サプリメントを選ぶ際に、良質なものを選択することができれば、必要な栄養を摂るために有効な方法です。

胃がん治療中の食事 おススメの食材

それでは、胃がんの治療中におすすめの食材とは、どのようなものがあるのでしょうか?
まず、ごはんやパン、麺類といった穀物は、力のもとになるので、主食としてお勧めです。
しかし、おかゆや麺類などは、あまりかまずに食べてしまうことがあるので、意識してゆっくり食べることが必要です。
ただし、穀物の中でも、お赤飯やラーメンは、しばらく控えた方が無難です。
そして、魚や肉類、大豆製品などのたんぱく質は、体力の回復にも貢献してくれます。
できることなら、1日あたり70から80グラムのたんぱく質を、摂取することをお勧めします。
しかし、同じものばかりから摂ると、栄養が偏ってしまうので、さまざまな食品から摂るように心がけましょう。
魚は、脂肪の少ない白身魚を使います。
肉類も、脂肪の少ない赤身を摂取しましょう。
鶏肉の場合であれば、ささみのような脂肪が少ない部位を選びます。
その他、レバーは消化も良く、貧血予防にもなるので、積極的に摂りたい食品の1つです。
牛乳や卵は、消化も良いので、毎日とっても構いません。
ただし、牛乳は、満腹感があるので、間食に飲む方が良いでしょう。
野菜、海藻類においては、繊維質の多いものは消化が悪いので、手術後などは避け、症状が落ち着いてからにすることをお勧めします。
果物に関しても、繊維質が少なく、やわらかいものから食べることが大切です。
とくに、体の調子が回復していない時期は、
加熱したコンポートやももの缶詰などが最適です。
このように、胃がんの治療中に関しては、消化の良いものを中心に、ゆっくりよくかんで食べることが大切です。
食事時間をたっぷりとって、ゆとりをもって食事をしましょう。

胃がん治療中の食事 必要な栄養素

胃がんの治療中は、どの栄養素を、どれくらい摂取すればよいのでしょうか?
胃がんの治療中といっても、手術前と手術後、また、退院してからと、状況によっても、必要なエネルギー量は異なります。
しかし、体にとって良い食品の選び方や、必要な栄養素は似通っています。
ですから、必要に応じて、それぞれの栄養素を摂取するときの参考に、役立てていただければと思います。
まず、ごはんやパンといった穀物はエネルギーにもなり、体温を保つためにも必要な栄養なので、三度の食事にはできるだけ主食として取り入れましょう。
そして、魚や肉、豆腐などの良質のたんぱく質は、傷を治したり、体力の回復を手助けしてくれます。ですから、献立には積極的に取り入れるようにしましょう。
その際、牡蠣以外の貝類は消化が悪いので、避けるようにしましょう。
また、練りものや干物は塩分も高めなので、やめておいた方が無難です。
肉類に関しては、脂肪分の多いベーコンやバラ肉、ハムなどはしばらくは控えておきましょう。
そして、牛乳や卵といったたんぱく質は、消化も良いので、積極的に食事に取り入れるようにしても大丈夫です。
その他、野菜や海藻類については、ビタミンやミネラルの補給ができます。
ごぼうやタケノコ、セロリなどの繊維が多い野菜については、消化があまりよくないので、細かく刻んで使うようにしましょう。
そして、繊維質の多い海藻については、少量のワカメやのりは構いませんが、昆布やヒジキはしばらくやめておくことをお勧めします。
このように、健康体であれば良さそうなものでも、消化の良くないものもあります。ですから、胃に優しいかどうかに気を配りながら、必要な栄養素を摂るように心がけましょう。

胃がん治療中の食事 調理法

それでは、どのような調理法をすれば、食べやすくなるのでしょうか。
とくに、手術後間もない頃には、消化の良いもを食べたり、消化を良くする工夫が大切です。
消化不良を避けるためには、刻む、裏ごしをする、つぶす、すりおろす、ミキサーにかける、煮るなどの方法が、食べやすくなります。
なかでも、消化の良いメニューとして、お勧めのものが、いくつかあります。
まず、ロールキャベツをお勧めします。この料理は、キャベツが胃腸を丈夫に保ち、ひき肉は柔らかく煮込むので、食べやすくなっています。
そして、マカロニグラタンや、牛乳なべなどの乳製品をつかった料理も、消化が良いので、メニューに取り入れてみてください。
その時は、ホワイトソースを柔らかめにつくることで、さらに、消化がよくなります。
また、鶏レバーの串焼きは、鉄分やビタミンが豊富で、消化の良いメニューです。
レモンをかけて食べると、さっぱりして、より食べやすくなります。
その他、山かけを使った料理や、つみれ、卵とじなども柔らかく、食べやすい料理です。
そして、味付けは、全体的に薄味にしましょう。
強い甘みや、塩分は胃壁に刺激を与えてしまいます。
ですから、できるだけ避けるように心がけてください。
このように、患者さんが食べやすくなるように調理し、消化の良いメニューを取り入れると、術後に出やすい症状を、緩和することも可能です。

胃がん治療中の食事 食事の注意点

胃がんの治療中には、どのような点に気をつけながら食事をすれば良いのでしょうか。
まず、穀物については、おかゆから始め、少しずつ慣らしていく必要があります。
うどんなど、麺類でも食べやすいものはありますが、早食いをしてしまうことがあるので、ゆっくり食べるように気をつけましょう。
たんぱく質については、魚介類の中では、貝類は消化に悪いので、できるだけ避けるようにします。
そして、肉類であれば、脂肪分の多いベーコンやバラ肉、ハム、コーンビーフなどは、しばらく食べないように気をつけましょう。
また、調理をするときには、焦げないように、火の通し方に気を配ることが大切です。
豆類に関しては、大豆そのものは消化が悪いので、豆腐や納豆などを、良くかんで食べるようにすると安心です。
乳製品や卵などのたんぱく質は消化が良いので積極的に摂っても良いのですが、最初のころは調理をするときに、油を使わない料理にすることをお勧めします。
これらの乳製品や卵は、デザートでも食べやすいので、間食の時に、摂取する方法も良いでしょう。
野菜や海藻類に関しては、繊維が多く含まれていて、消化はあまりよくありませんが、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいるので、調理法を工夫して、できるだけ食べるようにしたいものです。軟らかく煮たり、皮をむいたり、細かく刻むなどの手を加えて食べやすくしてください。
このように、栄養素別にいくつかの注意点があります。その点に気をつければ、治療中であっても、比較的色々なものを食べることができます。
さまざまなものをバランスよく食べ、力をつけて治療に臨みましょう。

胃がん治療中の食事 治療効果のある食事

胃がんの治療中には、どのような食事を摂れば良いのでしょうか。
治療の効果をあげるためには、少しでも体力をつけ、免疫力を低下させないようにすることが大切です。
そのためには、できるだけ色々なものを食べ、バランスの良い食事を心がけましょう。
まず、エネルギー源である穀物は、退院直後であれば、おかゆや軟らかいごはん、トーストしたパン、うどんが食べやすい食品です。
退院して、しばらくたった頃になると、そばやマカロニなども、食べることができます。
そして、退院3カ月を過ぎると、スパゲティーやお寿司、赤飯やラーメンも少量であれば、食べても構いません。
次に、たんぱく質である魚や肉、豆製品は、
退院直後の場合、白身魚、かき、はんぺんがお勧めです。
そして、ペースト状のレバーや、ほぐしたささみ、
豆腐や豆乳も食べやすいでしょう。
しばらくして食事が安定してくると、エビやつみれ、
赤身のひき肉、納豆や湯葉も食べられます。
退院後三カ月過ぎた頃には、イカやタコ、牛肉、
油揚げやがんもどきなどを食べても、問題がありません。
最後に、ビタミン、ミネラル類に関しては、
退院直後の場合、野菜は、皮をむいて軟らかく煮て食べると、
人参や大根、かぼちゃやホウレンソウでも、
食べることができます。
果物は、缶詰やコンポート、
ジュースにすることをお勧めします。
そして、しばらくして体が慣れてくると、
トマトやキュウリ、レタスなども食べることが可能です。
また、退院して3カ月を超えると、ブロッコリーやキャベツ、
のりやわかめも、少量であれば構いません。
このように、エネルギーのもとになる穀物やたんぱく質、
ビタミン、ミネラルを中心に、消化の良いものから順に食べていくと、
不快な症状も起こしにくくなります。
焦らず、ゆっくりと体を慣らしていきましょう。

逆流性食道炎の代表的なむねやけの症状

逆流性食道炎の代表的な症状が、むねやけです。
むねやけと一言にいっても、その症状は様々です。
「胸が焼け付くような感じ」「胸からのどにかけて、食べ物がつまったような感じ」「みぞおちの辺りがチリチリと熱い」などは、いずれもむねやけの症状と言えます。
食道はのどから胃までをつなぐように位置していますから、逆流性食道炎では、胸からみぞおちにかけての症状を感じやすくなるのです。
むねやけのこれらの症状は、胃酸が逆流することで食道が炎症を起こしている証拠です。
先にも触れたように、食道は胃酸から粘膜を守るための機能が備わっていません。
そもそも食道は胃に食べ物を送り込むことが本来の目的ですから、胃から逆流する胃酸に対する防護機能は必要ないのです。
一方、胃酸は肉も溶かすほどの強い酸性の成分を含みます。
そのことからも想像できるように、胃酸が逆流するということは、食道の組織を溶かすことになるのです。
食道の粘膜が溶けてただれることで、上に挙げたような不快感が起こります。
むねやけが続けば続くほど、食道の炎症は進んでいると考えられますから、たかがむねやけと放置しておくことは危険です。
むねやけは食べすぎなどでも起こるため、症状の深刻さに気づきにくいものです。
しかし自覚症状のあるなしに関わらず、症状が進行すると出血なども起こす可能性があります。
逆流性食道炎が原因で、食道がんに至るケースもありますから、早めに対処して、症状を慢性化させないようにしましょう。

逆流性食道炎によるげっぷの症状

げっぷが食後や炭酸系の飲料水を摂取した後には、誰でも出やすくなるものです。
げっぷは飲食の際に一緒に飲み込んだ空気を、胃から外に逃がすために大切な機能の一つです。
乳児がミルクを与えた後にげっぷをさせることは、ミルクと一緒に飲み込んだ空気が胃を圧迫して、ミルクをを吐き出すことを防ぐためです。
胃の中で、適度な空気は消化の助けになりますが、過剰な空気は胃に負担をかけます。
げっぷを出すためには、食道と胃の境目にある食道括約筋や横隔膜によって締められている部分を開けて、胃の空気を逃がす必要があります。
胃の空気圧が上がると、自然と空気を逃がすために締まっている部分が開く仕組みになっており、食後などの通常の頻度であれば、特に問題はありません。
しかし頻繁にげっぷが出るようになると、こうした開閉システムを頻繁に使うようになり、締まりが緩くなる可能性があるのです。
締りが緩くなるということは、食道括約筋や横隔膜の力が弱くなっている証拠です。
当然ながら、胃酸も逆流しやすくなります。
更に、この状態が続くと、食道裂孔ヘルニアを起こしやすくなるため、逆流性食道炎が進行していきます。
げっぷが頻回に起こる場合は、食事の仕方を見直したり、炭酸飲料を控えるなどして、げっぷが起こる状況事態を減らしていくことが大切です。
しかし一方で、逆流性食道炎が原因でげっぷが頻繁に起きている可能性も考えられます。
げっぷはむねやけなどに比べて、それほどつらい症状ではないため、ついつい見落としがちです。
生活を振り返っても、げっぷの原因が分からない場合には、既にに逆流性食道炎が進行している可能性も考えられますので、早めに医療機関を受診しましょう。

逆流性食道炎による胸の痛みの症状

胸に痛みや、強く締めつけられるような症状がある時、気になるのは心臓疾患などの循環機器に関わる病気でしょう。
循環器系の病気は、重症でなおかつ致命的なものもありますので、胸の痛みを感じたら、まずは循環器系の検査を行いましょう。
それでも異常が見つからない場合は、逆流性食道炎の症状の可能性も考えられます。
逆流性食道炎も胸に痛みを伴う場合があるのです。
繰り返しになりますが、胃酸が逆流すると食道の粘膜は大きいダメージを受けます。
肌が敏感な人がいるように、食道の粘膜の強さも個人差があります。
たった一度の嘔吐でも、食道の粘膜がただれてしまう人もいるでしょう。
食道の粘膜も皮膚と同じく、ただれれば痛みも伴います。
その痛みが、胸の痛みとなって表れている可能性があるのです。
非常に激しい痛みとなって表れ、呼吸が苦しくなる場合もあります。
その場合、いくら循環器系や胃の検査をしても原因は分かりません。
原因不明のため、鎮痛剤を処方されることが多いようです。
日頃から、むねやけなどの症状にも心当たりがある場合は、逆流性食道炎による可能性も疑ってみましょう。
また食道が荒れている限り、胸の痛みは繰り返す可能性があります。
食べすぎやアルコール摂取の後にも、胃酸が逆流することがありますから、胸の痛みを感じる前の行動を確認してみることも大切です。
その上で食道の検査をしてもらうと、問診の際に状況を伝えることができるので、より正しい診断を得ることができます。
また原因が分からないからと、自己判断で痛みを我慢することは危険です。
苦痛が続くだけですし、最悪の場合には、深刻な疾患を見逃してしまうことにもなりかねません。
痛みが出たら、必ず医療機関を受診することが大切です。

逆流性食道炎によるのどの痛みの症状

逆流性食道炎の症状で、口の中にすっぱい液が上がってきたり、苦味を感じることがあります。
これは、胃酸の逆流がのどまで達している証拠です。
のどの粘膜にとっても、胃酸は強い刺激であることは同じですから、こうした症状が頻繁に起こると、のどの粘膜も炎症を起こすことがあります。
のどの炎症は痛みを伴うだけでなく、粘膜がただれれると、のどに違和感を感じたり、食事の際にはのどに食べ物がつかえた感じがするようになります。
この症状が慢性化してくると、のどの周辺の器官にも影響を及ぼすことがあります。
鼻の奥がひりひりと痛くなったり、声がかすれたり、更に胃酸を気管に吸い込んで気管支炎を起こすこともあります。
一見、逆流性食道炎の症状とは関係の無いように思われるかもしれませんが、それだけ胃酸の刺激が強いということです。
のどの粘膜の炎症は、風邪などのウィルス疾患による場合は、風邪症状の緩和と乾燥対策によって自然に治ります。
しかし、逆流性食道炎の場合は胃酸が逆流している限りは症状は続きますので、のどのケアの前に胃酸の逆流を改善することが先決です。
症状を放置して炎症がひどくなると、扁桃腺やリンパ腺に影響を及ぼして発熱を伴う症状に至ることもあります。
また逆流性食道炎によってのどの痛みが起こっている場合には、胃酸が逆流する過程で食道もかなり荒れた状態になっていることが予想されます。
のどのケアは飴をなめたり、うがいをしたりと事故治癒力に頼りがちですが、痛みが慢性化している場合は逆流性食道炎の可能性が高いと考えて良いでしょう。

逆流性食道炎でもっともつらい吐き気や嘔吐の症状

逆流性食道炎の症状が進んでくると、吐き気や嘔吐症状が出ることがあります。
逆流性食道炎の原因のところで触れたように、食道括約筋や横隔膜の機能の低下に加えて、胃酸の過剰な分泌は、胃酸が逆流しやすくなる条件に挙げられます。
逆流性食道炎は、単一の原因によって起こるというよりは、これらの原因がいくつか重なっている場合が多く、またその症状も多岐に渡ります。
例えば、「食道括約筋の機能低下で食道と胃の境目の締りが緩くなり、胃酸の逆流が頻繁に起こっている時に、胃酸が気管支に逆流して、激しく咳き込むことで腹部に圧力がかかり、胃の内容物まで逆流してしまう」といった複合的な症状です。
逆流性食道炎の症状はどれも、生活の質を低下させるものばかりですが、中でも嘔吐は最もつらい症状と言って良いでしょう。
実際には、アルコールの過剰摂取や食べすぎなどが原因で嘔吐した際に、逆流性食道炎を煩っている方も少なくありません。
食生活の中に、嘔吐を誘発させる原因が無いか考えてみましょう。
また、吐くと楽になるからと、嘔吐を習慣化させることも体への影響を考えると非常に危険ですから、絶対に止めましょう。
嘔吐は、生活の質を低下させ、ひどい時は社会生活に支障をきたすこともある症状です。
また、嘔吐は精神的なストレスによっても起こりやすくなりますので、嘔吐を繰り返すことで更にストレスとなって嘔吐が慢性化している可能性もあります。
頻繁に嘔吐が起こるようであれば、逆流性食道炎の治療に加えて、心療内科などの精神的なケアも必要な場合もあることを覚えておきましょう。

逆流性食道炎に必要な受診料と検査方法

逆流性食道炎と思われる症状が出たら、何科を受診すれば良いのでしょうか。
現在では、逆流性食道炎の患者の増加に加え、症状に対する医師の知識も豊富になって来ていますから、その症状ごとに違う科を受診しても、大抵は同様の検査が行われるようです。
むねやけの場合には、内科や消化器科、胃腸科などを受診する方が殆どでしょうし、これらの科は逆流性食道炎の治療には最も適した科と言えます。
また胸の痛みが辛い時には、まずは循環器科を受診して問題なければ、上記の科を受診すると良いでしょう。
胸の痛みには深刻な病気が隠れている場合もあるので、まずは心臓に問題が無いかを優先して確認するようにしましょう。
また鼻やのど、耳などに症状が見られる場合には、耳鼻科を受診することになると思いますが、こちらでも逆流性食道炎の場合には内科の診断と同様の処方をするところが多いようです。
こちらも耳自体に炎症が無いか、確認する上でもまずは耳鼻科を受診することをお勧めします。
逆流性食道炎の検査には、主として内視鏡検査が行われます。
内視鏡とは細い管の先にカメラがついた医療検査器具で、一般に胃カメラと呼ばれるものです。
この内視鏡を口や鼻から挿入し、食道や胃の状態を確認する検査が行われます。
嘔吐の症状がある方には辛い検査ですが、食道粘膜の状態を直接カメラで確認することができるので、最も信頼できる検査と言えます。
またphモニタリングと言う、食道内の酸性度を測る検査が行われる場合もあります。
この検査では、胃酸の逆流の程度を調べることができますが、最低でも丸一日のモニタリングが必要になります。
その他にも、レントゲン検査や問診などが行われて、総合的に診断が行われます。

薬物治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療では、薬の服用による対処療法が一般的です。
対処療法ですから、逆流性食道炎の根治療法とはとは言えませんが、逆流性食道炎の症状は日常生活の質を下げるような深刻な症状もありますから、まずは症状を緩和させることがとても重要なのです。
逆流性食道炎の原因は、当然のことながら胃酸の逆流です。
この胃酸の分泌を抑えることを目的に投与されるのが、プロトポンプ阻害剤(通称PPI)とH2ブロッカーなどの、胃酸分泌抑制剤です。
特にプロトポンプ阻害剤の効果は高く、数種類を組み合わせて処方されることもあります。
胃酸を中和させる制酸剤という薬がありますが、こちらは効果が持続しないため、胃酸分泌抑制剤一緒に処方されることが多いようです。
次に食道のぜん動運動を促す目的で処方されるのが、消化管運動機能改善剤です。
食道の運動機能を高めることで、胃酸の逆流があっても押し戻すことができます。
更に食道に限らず、消化器官全般に作用するため、胃の消化機能も高めて内部に食物が長く滞留しないようにする効果も期待できます。
また、食道の粘膜がすでにただれたり炎症を起こしている場合には、これによる不快症状を緩和させることが先決ですので、粘膜保護剤も用いることがあります。
傷ついた粘膜を修復するだけでなく、粘膜の保護にも効果があります。
逆流性食道炎の原因には、複数の要因が関わっていることが多いと説明しました。
そのことからも、投薬にも複数の薬が組み合わされることが殆どです。
繰り返しになりますが、薬では逆流性食道炎を完治することは難しいので、症状が改善しないのに我慢して服用を続ける意味はありません。
症状や体質などによっては、薬が合わないこともありますので、症状が改善しないときには、すぐに医師に伝えて、薬を変えてもらいましょう。

外科治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療には、薬の服用が最も一般的ですが、薬を服用しても症状が改善しなかったり、食道裂孔ヘルニアの場合には、外科的な手術が行われることもあります。
手術では、食道側にはみ出した胃を正しい位置に戻し、緩くなった食道と胃の境目を締めるように縫合します。
胸や腹部に開けた穴から内視鏡を挿入して行う、ニッセン法という手術方法は広く行われている方法です。
しかしこの方法は、開腹して行う手術ですから、全身麻酔と1週間程度の入院期間が必要なため、体への負担が大きい方法でもあります。
現在では、開腹せずに口から挿入した内視鏡などで手術をする方法もあり、手術時間も短時間で済み、入院期間も3日程度と負担が少ないことが魅力です。
ただし、この手術については健康保険が適用になってから、まだ日が浅く実施している医療機関が限られるなど、課題が多いことも事実です。
こうした手術による治療は、胃酸が逆流する原因を根本的に取り除くことができますから、短期間で症状を改善したい場合には、最も効果的な方法です。
特に、若い方で逆流性食道炎を患っている場合には、PPIなどの強い薬を長期間服用することによる副作用も気になるところですから、手術を検討してみても良いでしょう。
一方で、開腹や内臓の縫合などによるダメージは避けられませんので、その点のリスクも理解する必要があります。
胃や腸の手術に比べて、食道の手術は技術を要すると言われます。
治療方法の選択は、患者自身の意思が尊重されるべきですが、正しい知識を持たずに手術などの重大な選択をすることは危険ですから、担当医とよく相談して決めるようにしましょう。
また手術で症状が改善しても、生活習慣自体に逆流性食道炎を誘発する要素を抱えたままでは、症状が再発することもあります。
その点では、手術をした場合も同様に生活改善を併せて行っていくことが大切になるのです。

生活習慣を見直して逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の症状改善に、生活習慣を見直すことは欠かせません。
そもそも逆流性食道炎の原因である、食道下部の緩みは加齢によるものだけでなく、生活習慣からの影響も大きく受けているのです。
同じ高齢の方でも、逆流性食道炎の症状が見られない方もたくさんいらっしゃいますから、若いうちから食事や生活習慣に気を配ることが大切です。
たとえ薬物療法や手術治療などで、症状が改善しても生活習慣の中にその要素がある限りは、症状は再発する可能性が高いのです。
特に次に挙げる習慣があれば、改善することが望ましいでしょう。
<胃酸の分泌が過剰になっている可能性があります>
・日ごろから、過食や飲酒を繰り返している方。
・脂っこい料理や刺激の強い食品をよく摂取する方。
・肉食を好む方。
<胃に過剰な圧力がかかり、腹圧が上がっている可能性があります>
・肥満や便秘体質で、腹部が常に圧迫されている方。
・妊娠中の方。
・猫背で前かがみの姿勢の方。
・ベルトや下着で腹部を締めるている方。
・腹部を圧迫する運動をされる方。
また食後、すぐに横になる方は胃酸が逆流しやすくなります。
これらの習慣に加えて、ストレスが強くなると胃酸の分泌が増え、胃潰瘍などの症状を起こすことも知られています。
胃酸が増えているわけですから、当然逆流する可能性も高くなります。
こうした習慣は、現代では該当しない人の方が少ないかもしれません。
その点では逆流性食道炎は、現代病の一つと言っても良いほどなのです。
だからこそ改善が難しいとも言えます。
しかし、逆流性食道炎の症状は一度進行すると、生活の質の低下は避けられません。
症状に苦しむことになる前に、思い切って生活改善に取り組んでみましょう。

逆流性食道炎と症状が似ている食道がん

道がんは、他のがんと比べて死亡率が高いことが知られています。
そして食道がんの症状には、逆流性食道炎と同じ症状が見られることが多いのです。
飲食時にしみたり、飲み込めずにつかえる、声がかすれるなどが代表的な食道がんの症状ですが、どれも逆流性食道炎の症状でもあります。
ただし、食道がんの場合は自覚症状がある場合には、既にがんが進行していることが多いです。
食道がんの主だった原因として挙げられるのが、飲酒や喫煙など食道に負担をかける行為です。
また、逆流性食道炎を悪化させたまま治療をしないでいると、食道がんの原因になることがありますので、注意が必要です。
これは、食道の粘膜が胃酸の刺激を受け続けることによって、胃の粘膜に似た組織に変わるバレット食道という症状に関係しています。
欧米では逆流性食道炎の患者が多いことに比例して、食道がんの原因にもバレット食道の症状を持つ方が多いという報告があります。
現在日本では、食道がん自体はそれほど患者数が多くなく、またバレット食道から食道がんを発症するケースも欧米に比べて少なくなっています。
しかし、逆流性食道炎をうったえる方が増加している背景を考えると、今後はバレット食道が原因の食道がんが増える可能性が高いのです。
バレット食道になると、もとの食道粘膜の状態に戻すことは非常に難しくなります。
バレット食道と診断されたら、定期的に内視鏡の検査を受けることが重要です。
上でも触れたように、食道がんは自覚症状がでてからでは手遅れな場合もありますから、がんの早期段階での発見が最も有効な治療と言えます。
しかしバレット食道になる前に、逆流性食道炎を放置せずに治療することが、何よりも大切なことは忘れてはいけません。

逆流性食道炎と症状が似ている狭心症

狭心症とは、心臓に血液を供給する血管が細くなったり、つまったりすることで起こる症状です。
心臓は心筋という筋肉によって、その絶え間ない動きを保っています。
心筋には、冠動脈という血管から送られる酸素と栄養が必要不可欠ですが、この冠動脈に何らかの異常が起きると、心筋が正常に働くことができなくなります。
その結果、胸が締め付けられるように苦しくなったり、胸の周辺が痛くなるという症状が現れます。
この症状は一時的に発生し、十数分以内には症状が治まることが多いですが、ひどい場合は呼吸困難や嘔吐を伴うこともあります。
こうした症状が出たときには、すぐに医療機関を受診しましょう。
症状が辛い割には、一時的に症状が治まってしまい、心電図検査などでは狭心症の診断が難しい場合もあります。
その際に、症状が似ていることから、逆流性食道炎と診断されることもあります。
狭心症を発症する方に、高血圧や肥満の傾向があり、逆流性食道炎の原因とも重なることも、診断を難しくする一つの理由になっています。
しかしながら、逆流性食道炎と狭心症では治療法は全く異なります。
逆流性食道炎と診断されて、薬を服用しても症状が改善しない場合には、狭心症の症状も疑ってみましょう。
逆流性食道炎の場合は、胸の痛みだけでなく、その他の症状も同時に現れることが多いので、実際に起こっている症状を冷静に判断することも必要です。
一方で、気にしすぎてストレスを抱えすぎないことも大切です。
ストレスは、逆流性食道炎と狭心症のいずれも引き起こす原因になることを、覚えておきましょう。

逆流性食道炎と症状が似ている心筋梗塞

心筋梗塞の症状は、先に紹介した狭心症と殆ど同じです。
心筋梗塞は狭心症の悪化した状態ですから、原因も症状も狭心症と重なるのは当然のことです。
心筋梗塞になると冠動脈が長時間詰まり、血液が心臓の細胞に届かなくなるため、心筋の壊死が起こっている状態になります。
そのため症状が似ていても、狭心症に比べて事態は深刻です。
胸の痛みや苦しさが、30分以上続く場合には急性心筋梗塞の可能性が高くなります。
また心筋梗塞では、胸の痛みや締め付けるような苦しさに加えて、左の肩や顎にも痛みが広がる場合もあります。
最悪の場合には、死に至ることもある病ですから、正しい処置が重要になります。
狭心症の段階で治療を開始していれば、心筋梗塞に至らずに症状を改善することも可能です。
逆流性食道炎と診断されていても、胸の継続的な痛がある場合には、定期的に循環器系の検査も行うようにしましょう。
心筋梗塞では動脈硬化も大きな原因の一つになりますので、コレステロールの多い食事を摂っていたり、肥満の傾向がある人は、食生活を改善することが重要です。
繰り返しになりますが、逆流性食道炎も心臓疾患も生活習慣が大きく関係している点では、生活改善は欠かせません。
また症状を悪化させないためには、日ごろから健康状態の変化を見逃さないことが大切です。
忙しい現代では、症状さえ治まれば何も無かったかのように、体の不調を忘れてしまいがちです。
しかし、逆流性食道炎にしても心筋梗塞にしても、初期段階でのサインに気づくか気づかないかが、その後の症状を左右します。
また、体の不調を敏感に読み取ることで、受診の際の誤診を防ぐこともできます。
医者まかせにするのではなく、自分の体を知り、知識を持つことが、病気予防には重要なのです。

食道や消化器官の働き

逆流性食道炎の原因を理解する上で、まずは食道や消化器官の働きを知ることが重要です。
これらの器官が、どのような機能を持っているのか説明しましょう。
そもそも食道は消化器官の一部です。
口から入った食物が肛門から排出されるまでの、一連の流れを行う器官を消化器官と呼びます。
消化器官は、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門が一本の管でつながれています。
そしてそれぞれの臓器が、食物を消化・吸収するための役割を果たしています。
食道は、消化器官の中で消化液を分泌しない臓器です。
その大きな役割は、食べた物を胃へ送ることです。
食べた物は食道のぜん動運動によって、胃に送られます。
このぜん動運動は食べ物を胃に送るだけでなく、胃からの逆流を防ぐ役目を果たします。
更に、食道と胃の境目には横隔膜があり、食道を支えたり、食道を締めて胃に入った食物が逆流するのを防いでいます。
その他、食道括約筋も食道と胃の境目で食道を閉じるために働いています。
なぜこうした機能が必要なのでしょうか。
一度食べたものが、逆流すると栄養が吸収されなくなってしまいますから、消化器官は食べ物を下へ下へと運ぶ仕組みになっています。
加えて、胃酸はとても強い酸性の消化液です。
消化液を分泌しない食道の粘膜は、消化液から自身を守る機能が備わっていないのです。
そのため、胃酸が逆流すると粘膜がダメージを受け、炎症を起こしやすいのです。
このように、消化吸収を正常に行い、臓器を健康に保つためには、食物を逆流させない仕組みが必要です。

逆流性食道炎を引き起こす原因は?

逆流性食道炎は、胃に入った食物が食道へ逆流することで起こります。
なぜ、食物が胃から食道へ逆流するのでしょうか。
この原因には、次のようなことが挙げられます。
一番大きな原因は、食道括約筋や横隔膜の働きによって閉じていた、胃と食道の境目が緩んでしまうことです。
実は食道括約筋や横隔膜の圧力は、年齢とともに力が弱くなっていくことが分かっています。
食道はこの二つの力によって締められていますから、これらが緩くなると、食べ物を飲み込む時に開いた食道が、なかなか閉じなくなるのです。
そのため胃から逆流が起こりやすくなります。
また、胃が食道側へはみ出してしまう、食道裂孔ヘルニアという症状がありますが、この症状も横隔膜の圧力が弱くなることで起こります。
胃が食道側にはみ出た状態になりますから、逆流は当然ひどくなります。
二つ目の原因は、食道のぜん動運動が鈍くなることで、食物を胃へ運ぶ機能が低下することです。
こちらも加齢による影響が大きいとされています。
食べた物は、もちろん重力によって下に降りていきますが、食道のぜん動運動が活発に行われることで、食物がスムーズに胃に送り込まれます。
そのため食道のぜん動運動が低下すると、胸の辺りに食べ物が詰まったような感覚になりやすいのです。
また、胃から逆流した食物を戻すこともできなくなるので、逆流した食物がのど元まで上がってくることもあります。
三つ目は、胃からの圧力が上がることです。
炭酸飲料を一気に飲んだり、食べ過ぎたりすると、胃の圧力が一時的に上がり、ゲップがでたり胃酸が戻るような感覚になることがあるでしょう。
胃の圧力は食事の量や内容などによっては、誰でも一時的に上昇することがありますが、繰り返すことで逆流性食道炎を起こしやすくなりますので、注意が必要です。
次の章では、こうした原因に陥りやすい人について、詳しく見ていきましょう。

逆流性食道炎の基礎知識

逆流性食道炎になりやすいのはどんな人?
逆流性食道炎になりやすい人とはこの原因に陥りやすい人と言えます。
まず挙げられるのが、高齢の方です。
高齢になると、その他の身体機能の低下と同様に、食道括約筋や横隔膜の力も衰えます。
更に食道のぜん動運動も活発でなくなりますから、逆流性食道炎になりやすいのです。
その意味では、老化によって胃酸の逆流が増えるのは仕方の無いことと言えるでしょう。
また、胃の手術などを受けたた方も、食道括約筋の機能が低下する場合があります。
こちらも病気によっては必要な手術もありますから、老化と同様に避けることが難しいのです。
一方、胃の圧力が上昇しやすい人は、肥満の方や妊婦の方、前かがみの姿勢の方、肉や脂肪を多く採る方、などです。
肥満や妊娠、前かがみの姿勢では、胃が押し上げられたり、圧迫されることが多くなります。
特に肥満や前かがみの姿勢が慢性的に続くと、胃が長期にわたり押し出されて、食道裂孔ヘルニアになる場合もあります。
また、肉や脂肪の多い食事は胃酸の分泌が活発になるため、胃の圧力が上昇しやすいのです。
こうした食の好みは、肥満の原因にもなりますから、その点でも逆流性食道炎を起こしやすい人と言えるでしょう。
日本では、近年になって逆流性食道炎の症状をうったえる方が増えてきました。
これには、社会の高齢化や欧米志向の食事などが大きく関係しています。
妊娠や加齢は仕方のないことですが、姿勢や食生活など思い当たることがある場合は、これらを改善することで、症状が緩和される場合もありますから、一度生活を振り返ってみることが大切です。
ただし気になる症状がある場合には、必ず医療機関を受診しましょう。
実は、深刻な病気が隠れていることもあるのです。

乳がんの検査ーしこり・分泌物の検査方法

乳房にしこりができたり、乳頭からの分泌物があった場合に検査をすることになります。もちろん年代や乳房の大きさ状態により有効な検査方法は変わります。身体への負担をできる限り少なくしようと考えると、まずは撮影検査がいいでしょう。
乳頭からの分泌物がある場合は乳頭分泌細胞診があります。これは分泌物そのものを顕微鏡で調べる検査なので、身体への負担は掛かりません。
撮影検査として一般的なものには、超音波検査とマンモグラフィー検診があります。この2つの検査方法は長所と短所がそれぞれあります。ですが併用することで、お互いの短所を補うことができるので精度が上がります。
この検査をしてもはっきりとした検査結果が出ない場合に、穿刺(せんし)吸引細胞診でを受けることになるでしょう。これは細胞を少し採り検査をします。
これでも分からない場合は、針生検で組織をとって調べます。組織は細胞の集まりなので、穿刺(せんし)吸引細胞診よりも少し身体への負担が大きくなります。
穿刺(せんし)吸引細胞診を行わずに針生検を行う医師がいるようですが、身体への負担や、がん細胞への刺激を少なくする観点からあまりオススメできません。もちろん針生検を行ったほうが良い場合もあるでしょう。
こういう場合は、医師に検査方法の決定基準を伺いましょう。納得できる回答をもらえなければ、他の施設で検査を受ける選択も必要かもしれません。
このように身体への負担を少なくすることと、がん細胞への刺激を少なくすることを考えて検査方法を選んでください。摘出生検もありますが、あまりオススメできません。
現在は検査技術が向上したので、針生検で摘出生検に匹敵する情報を得ることができるからです。

乳がんの検査ー検査と進行度の確認

検査を受けて「乳がんです」と言われたら、さぞかし動揺するでしょう。でも、冷静になって自分が受けた検査を思い出してください。針生検や摘出生検を受けて診断されたのならば、残念ながら検査結果は正しいと思われます。
穿刺(せんし)吸引細胞診の場合は、【クラスV】と言われたらほぼ正しい診断でしょう。ですが、【?Vb】や【?W】の場合はがんでないこともあるので再検査を希望されたほうがいいと思います。
もう一度、穿刺(せんし)吸引細胞診を受けるか針生検を受けるかは医師と相談して決めてください。
超音波検査やマンモグラフィの画像診断だけの場合は、診断の根拠を聞いてみるといいと思います。いろいろと聞くことは悪いことではありません。自分が納得できるまで聞くべきです。
いずれにしろ自分の納得のいく説明が得られない場合は、他の乳腺専門医のいるところへ相談してみましょう。その時は、検査を受けた病院の資料があるといいのですが、言い出せない場合は話だけでも聞きに行きましょう。ただ、「乳がんでない」と言われるのを期待して、違う病院回りをするのはよくありません。治療も遅れますし、余計にがんに刺激を与えてしまいます。
診断に納得できたら、進行具合を聞いておきましょう。ステージ?Uまでならひと安心というところです。ただ安心しすぎて手術を数ヶ月も先延ばしにするのはどうかと思います。
たしかに乳がんは痛みもない場合が多く、急いで行うべき種類ではないかもしれません。ですが検査結果に納得できたならば、なるべく早いに越したことはありません。

乳がんの検査ー針生検

針生検にはコア針生検とマンモトーム生検があります。これらの検査では細胞より大きい組織というものを採取します。細胞よりも組織のほうが確実な診断ができるからです。
コア針生検は、局部麻酔を行い皮膚を少し切って、穿刺(せんし)吸引細胞診より少し太い針を刺して組織を採取します。針を刺す位置は超音波で見ながら針を刺します。
皮膚の切開については、傷跡は数ミリ程度しかありません。このため検査後の傷跡も身体にかける負担も少なくなり検査がしやすくなりました。しかも、得られる情報がほぼ摘出生検に匹敵します。
この針生検が普及したことにより通常の摘出生検の必要性が下がりました。摘出生検をした場合のリスクを回避できる検査方法と言えると思います。
マンモトーム生検はさらに太い針を使います。吸引機と接続されているので、かなり大きな組織を採取できます。この器械とマンモグラフィが一緒になったのがステレオガイド下マンモトーム生検です。
この機器を使った検査では、コア針生検では採取が難しい小さな石灰化した組織も見逃しません。針が太いので、検査後は一日圧迫が必要になります。
これらの針生検では、針が太くなるほど挿し穴からがんが再発する可能性が上がるとされていますが、頻度は低いとされています。それよりも検査の有用性の方が高い、という考え方が一般的になっています。
ただし、まずは穿刺(せんし)吸引細胞診を受けた方が良いでしょう。身体への負担やがん細胞への刺激は、できるだけ少ないほうが良いからです。

乳がんの検査ー穿刺(せんし)吸引細胞診

穿刺(せんし)吸引細胞診とは、直接乳房のしこりに細い注射針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で細胞を調べる検査方法のことを言います。
触れないぐらい小さいしこりの場合は、超音波で見ながら注射針を刺して細胞を吸引します。注射針を刺すため痛みがありますが、局部麻酔をする場合と無麻酔の場合があります。
痛みはチクッとする程度のようですが、人それぞれ違うでしょうし、乳房の刺す場所によっても違います。医師の判断で麻酔をするかは決まるでしょうが、痛いことがどうしても嫌ならば事前に申告しておきましょう。
この検査の長所は身体をほとんど傷つけないということです。負担が少ないため何度でも行えますし、この検査が原因でがんが全身に回る危険性はほとんどありません。ごくごくまれに注射針を抜いた傷のところにがんが出てくることがあります。
短所としては注射針を刺して細胞を吸引するには、かなりの熟練した技術が必要であること。また、採取した細胞の診断がとても難しいことが挙げられます。
もちろん「細胞診指導医」または「認定病理医」という専門家が診断結果を出します。乳がんであった場合の診断結果は日本中どこでも同じようなものなので構わないのですが、逆の場合が問題です。
がんでない細胞をがんだと診断する誤診の差が、10倍程度の開きがあります。だから医師により、診断結果の正確さに差が出ることがあります。

乳がんの検査ーマンモグラフィ検診

乳房の放射線(X線)検査をマンモグラフィ検診と言います。省略してマンモグラフィと呼ばれることが多いでしょうか。
この検査は超音波検査とならんで、乳房の検査としてはとても重要視されています。理由は、触れることができない非浸潤がん(顕微鏡で見ないと分からない大きさのがん)さえも発見可能な検査方法だからです。
ただし、放射線を使用するので妊娠中の方は避けた方がいいでしょう。また、若くて乳腺が発達している方の乳房は、乳腺もしこりも白く映ることになるので、鑑別がほとんどできないことがあります。このような方には超音波検査の方が有効です。
検査の仕方は、2枚の透明な板で乳房をはさんで圧迫し、軟線という弱い放射線で写真を撮ります。この時に乳房が圧迫されるので、マンモグラフィ検診は痛いと言われる方も少なからずいます。
特に小ぶりの乳房の方が痛がるようですが、個人差がかなりあるようです。圧迫により、放射線の被曝量を少なくする効果もあるので、何とか我慢してください。
マンモグラフィ検診では、しこりの形やしこりになっていない乳がんも発見できるのですが、鑑別には相当な技量が必要とされています。
NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会では試験を行い、医師の技量に評価を与えています。B判定相当の医師が望ましいとされているので、希望されるならこちらで検索してみてください。
NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会
http://www.mammography.jp/

乳がんの検査ー超音波検査

超音波検査は全く痛みがありません。しかもレントゲン検査と違い、放射線被爆の心配がないので、妊娠していても検査することができます。また身体に害がないため何回でも検査ができますし、かかる時間も10分程度と短時間で済みます。
触っても分からない数ミリ程度の小さなしこりの発見だけでなく、形やしこり内部の状況まで見ることができます。これにより、熟練の医師なら超音波検査だけで約9割の乳がんの診断が可能だと言われています。
ですが、短所もあります。超音波検査では、乳房内の石灰化を映すことはできないので、非浸潤がん(顕微鏡で見える大きさ)を発見することはできません。
それと脂肪の多い乳腺(閉経後に多い)の場合は、脂肪と乳がんの違いを読み取ることが困難な場合もあります。本当に小さながんの発見や、脂肪の多い乳腺の場合はマンモグラフィー検診のほう有効でしょう。
でも、この2つの事がら以外では、超音波検査はとても優秀と言えるでしょう。乳腺の発達している若い方や、乳房に傷や痛みがありマンモグラフィー検診をうけることが難しい方にとっては最適な検査方法でしょう。
最後に他の検査と同様、医師や技師の能力により診断結果に差が出ることは否めません。情報を集めて、信頼できる医師の検査を受けることも大切になってくるでしょう。

乳がんの検査ー受診日

受診日は、できれば女性ホルモンの影響が大きい月経日前は避けて、月経後1週間前後がいいでしょう。乳房は月経前には張りやすかったり、しこりのようなものが出来やすかったりします。
この状態でも診察は出来ますが月経前にできるしこりがあると、担当した医師も診察が難しくなるでしょう。正確な診断結果を出して頂くためにも、気を付けたいことですね。
それから乳房が最も柔らかくなるのは、月経後1週間以内だと言われています。乳房が柔らかいほうが、硬いものがあった場合は分かりやすいでしょうから、その観点からも1週間前後が受診日としては一番良いと思います。
服装は上半身は脱ぎやすいものにしましょう。正確な診察をするためには、上半身は裸にならないとダメだからです。診察は、問診に始まり、視診、触診となります。その後は、各医師の判断で機材を使った診察に移ると思います。(マンモグラフィや超音波検査など)
問診は聞かれたことに落ち着いて正確に言いましょう。動揺する必要はまったくないのですから。医師は協力者です。気が付いたことや少し気に掛かるということがあれば遠慮なく言うようにしましょう。
それを聞いて、医師が何かに気付くことがあるかもしれません。視診、触診でも自分が気付いたことや痛みがあればドンドン言うようにしましょう。言って得をすることはあっても、損をすることは何もありません。

検査・検診 乳がんの検査ー乳腺専門医

日本乳癌学会は、2004年10月5日広告できる「乳腺専門医」が認可されたことを受け、乳癌学会乳腺専門医を公開しています。また専門医だけではなく認定施設・関連施設も公開されています。
この専門医の資格を取るためには、一定数の診療経験と数個の論文や学会報告を有することが必要です。さらに、乳腺専門医認定試験に合格することも必要です。
このことから乳腺専門医の資格を持っている医師は、乳がんの治療に関して知識もあり、経験豊富であると言えるでしょう。
最近では乳腺専門のクリニックもあります。でも、中には専門外の医師がクリニックを開いていることもあるようなので、診察を受ける医師は慎重に選ぶ必要があるでしょう。選ぶ基準としては、乳腺専門医の資格を持っていることが条件です。
日本乳癌学会
http://www.jbcs.gr.jp/
それから、マンモグラフィ検診制度管理中央委員会の試験でB判定以上の医師が望ましいとされています。現在、B級以上の読影医は約4600人います。これらの医師を見つけたい方は、
マンモグラフィ検診精度管理中央委員会http://mammography.jp/de
を検索してください。
他にも、優れた投影技師もいたほうが良いでしょう。検査を受る上で大事なことは、優れた投影技師、優れた読影医、精度の高い装置のある病院を選ぶことです。

肝臓がん治療の名医と言われているドクター

肝臓がん治療の名医
北海道・東北ドクター名(敬称略) 病院名            病院所在地
  藤堂省    北海道大学病院       北海道札幌市北区北14条西5丁目
℡011-716-1161 
  佐々木大輔  弘前大学医学部付属病院   青森県弘前市本町53 
℡0172-33-5111 
  海野倫明    東北大学医学部付属病院   宮城県仙台市青葉区星陵町1-1
℡022-717-7000
関東
ドクター名(敬称略)   病院名              病院所在地
 吉見富洋      茨城県立中央病院         茨城県笠間市鯉淵6528
℡0296-77-1121
 宮崎勝       千葉大学医学部付属病院      千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
℡043-222-7171
 幕内雅敏      東京大学医学部付属病院      東京都文京区本郷7-3-1
℡03-3815-5411
 川崎誠治      順天堂大学医学部付属順天堂医院  東京都文京区本郷3-1-3 
℡03-3813-3111 
 高山忠利      日本大学医学部付属板橋病院    東京都板橋区大谷口上町30-1
℡03-3468-1251 
 小菅智男      国立がんセンター中央病院     東京都中央区築地5-1-1 
℡03-3542-2511
 山本雅一      東京女子医科大学病院       東京都新宿区河田町8-1
℡03-3353-8111
 泉並木       武蔵野赤十字病院         東京都武蔵野市境南町1-26-1
℡0422-32-3111
 窪田敬一      獨協医科大学病院         栃木県下都賀郡壬生町北小林880
℡0282-86-1111 
 永井秀雄      自治医科大学付属病院       栃木県河内郡南河内町薬師寺
3311-1 ℡0285-44-2111 
中部・北陸・東海
ドクター名(敬称略)     病院名             病院所在地
 上坂克彦      静岡県立静岡がんセンター    静岡県浜松市三方原町3453 
℡053-436-1251 
 金岡祐次      大垣市民病院          岐阜県大垣市南頬町4-86 
℡0584-81-33411 
 二村雄次      名古屋大学医学部付属病院    愛知県名古屋市昭和区舞鶴町65
℡052-741-2111
 城卓志       名古屋市立大学病院       名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
℡ 052-851-551 
関西
ドクター名(敬称略)   病院名           病院所在地
 中村武史      北野病院            大阪府大阪市北区扇町2-4-20
℡06-6312-1221 
 佐々木洋      大阪府立成人病センター     大阪府大阪市東成区中道1-3-3
℡06-6972-1181 
 藤元治朗      兵庫医科大学病院        兵庫県西宮市武庫川町1-1
℡0798-45-6111
 浮草実       大阪赤十字病院         大阪府大阪市天王寺区筆ヶ崎町
5-30 ℡06-6774-5111 
 門田守人      大阪大学医学部付属病院     大阪府吹田市山田丘2-15
℡06-6879-5111
 齋田宏主      兵庫県立尼崎病院        兵庫県尼崎市東大物町1-1-1
℡06-6482-1521
 福井博       奈良県立医科大学付属病院    奈良県橿原市四条町840
℡0744-22-3051
中国・四国ドクター名(敬称略)   病院名             病院所在地
 東俊宏       岡山市立市民病院        岡山県岡山市天瀬6-10
℡086-225-3171
 三村哲重      岡山済生会総合病院       岡山県岡山市異伊福町1-17-18
℡086-252-2211
九州・沖縄ドクター名(敬称略)   病院名            病院所在地
 佐田通夫      久留米大学病院         福岡県久留米市旭町67
℡0942-35-3311

肝臓がん 名医

大阪大学医学部付属病院〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2番15号
TEL. 06-6879-5111(代表)
中村仁信
(放射線医学講座教授)
肝細胞ガンに対して、
ガン存在区域への塞栓化学療法で壊死させる
 
大阪府立成人病センター〒537-8511
大阪市東成区中道1-3-3
TEL. 06-6972-1181(代表)
佐々木洋
(参事兼第一外科医長)
内科、放射線科とのチーム医療による集学的治療。
症例は関西最多
 
市立芦屋病院〒659-8502
兵庫県芦屋市朝日ヶ丘町39-1
TEL:0797-31-2156 FAX:0797-22-8822
高安幸生
(放射線科部長)
IVR手法で肝臓ガン患部に直接抗ガン剤を投与し、
好成績を実現
国立病院九州医療センター〒810-8563 福岡県福岡市中央区地行浜1丁目8番1号
TEL 092-852-0700 FAX 092-847-8802
才津秀樹
(外科医長)
マイクロ波焼灼治療で
内視鏡肝切除と遜色ない低侵襲を達成した
国立がんセンター中央病院〒104-0045
東京都中央区築地5-1-1
電話03-3542-2511
山崎 晋
(肝臓科医長)
肝腫瘍の手術数国内最多。
難度の高い肝硬変合併症にも実績大
東京大学医学部付属病院〒113-8655
東京都文京区本郷7-3-1
TEL 03-3815-5411(代)
小俣政男
(消化器内科科長)
肝動脈塞栓術など、
原発性肝細胞ガンに対する内科的治療が有名
椎名秀一郎
(消化器内科医局長)高周波でガン細胞を死滅させる
ラジオ波焼灼療法のトップランナー
幕内雅敏
(肝・胆・膵外科科長)
肝切除手術の死亡例ゼロ、
どう手術の名手として世界的に知られる
茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター〒309-1793
茨城県笠間市鯉淵6528
電話 0296-77-1121 FAX 0296-77-2886
岡崎伸生
(副院長兼センター長)
末期ガンにも治癒を断念せず、
QOLを考慮した懇切な治療を実施
大西内科〒620-0887
京都府福知山市東小谷ヶ丘1306-2
大西久仁彦
(病院長)
肝臓の画像診断、切らずに治す
開発した経皮的腫瘍内酢酸注入法は画期的効果
三浦病院〒354-0004
埼玉県富士見市下南畑3166
TEL:0492-54-7111
FAX:0492-54-2707
三浦 健
(病院長)
手術不能の患部動脈に抗ガン剤を注入。
切除手術に匹敵する好成績
愛知県がんセンター052-762-6111
荒井保明
(放射線診断部部長)
局所麻酔で肝動脈にカテーテルを挿入し、
抗ガン剤を投与し高実績
東京大学医学部付属病院幕内雅敏教授
肝胆膵外科教授
彼の元には他で断れた人が全国から訪れる
彼の特徴は腫瘍部位の特定と出血を最小限に防ぐ技術
世界で初めて術中エコーを使い、肝臓手術の成功率を世界標準70%から99%にUP
東大病院小俣政男教授
消火器内科
(ラジオ波焼灼術を日本で初めて取り入れた人物)
患者の体を切らずに治す(体にメスは入れたくない人)
*注意点*
手術器の急激な出力上昇による肝破裂
焼灼が不十分なことによる再発・転移
隣接する組織または血管の損傷
のリスクがあります。

精度が飛躍的に向上した肝臓がん手術

胃がんや大腸がんなど他の消化器がんに比べると、肝臓がんの外科治療の歴史はきわめて浅い。たとえば胃がん手術の場合には150年の歴史があるが、肝臓がんのそれは60年ほどにすぎない。それは肝臓がん手術の難しさを物語っていると高山さんはいう。
 「肝臓がんは発見された時点で、すでにかなり進行していることが多いことに加え、肝臓そのものが血液の塊りのような臓器で、手術には大量出血の危険がともないます。そのために手術は現実の治療法として定着せず、手術が始められてからも、なかなか成績は上がりませんでした。それが1985年に肝臓を8ブロックに分けて、それぞれの部分だけを切除する区域切除術が行われるようになって、治療成績は飛躍的に向上したのです」
 これは当時、国立がんセンターに在籍していた幕内雅敏さんが考案したもので、幕内術式とも呼ばれる。この区域切除術が定着してからは、それまでは5~6000ccにも達していた出血量が平均1000cc程度に減少し、手術による死亡率も80年代で15パーセント、90年代で5パーセント、現在では1パーセント前後にまで減少している。
 高山さんが在籍している日本大学付属板橋病院消化器外科では、手術にともなう平均出血量は、献血量と同程度の400cc前後で、この数年間は手術による死亡は0に抑えられているという。

肝臓がんはウイルスが主な原因

一口に「肝臓がん」と言うが、実際には、肝臓に発生する「原発性肝臓がん」と他臓器のがんが肝臓に転移する「転移性肝臓がん」の2つに大別される。さらに原発性肝臓がんの95パーセントは「肝細胞がん」。残りの5パーセントが、「肝内胆管がん」のほか、成人の「肝細胞・胆管細胞混合がん」、小児の肝臓がんである「肝芽腫」などに分けられる。
 このように日本では、肝臓がんの約95パーセントが肝細胞がんであることから、一般的に「肝臓がん」と言えば、肝細胞がんのことを指す。
 肝臓がんの特徴は、子宮頸がんと並んで、主要な発生要因が明らかになっている点だ。最大の要因となるのは肝炎ウイルスで、日本では、肝臓がんの原因の約90パーセントを占めている。その内訳は、約75パーセントがC型肝炎ウイルス、約15~20パーセントがB型肝炎ウイルス、残りの約5パーセントは、非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)などとなっている。
 ある報告では、C型慢性肝炎(肝組織検査でF1→F3)の進行とともに発がん率も高くなり、慢性肝炎が進んだ場合は年率3パーセント、肝硬変の場合は年率5~7パーセントと発表されている。こうしたことから、B型やC型肝炎ウイルスに感染した人は、「肝臓がんの高危険群」と呼ばれる。
 こうした事実は、逆に言えば、ウイルスを持っている患者(キャリア)は肝臓がんになりやすいと特定できるということでもある。もちろん、ウイルスを持っているからと言って、必ずしも肝臓がんになるわけではないが、それでもキャリアの患者を定期的に検査することで、肝臓がんの早期発見と予防が可能となる。

肝臓の位置と働き

肝臓は右腹部に位置し、横長の三角に近い形をしている臓器です。重さは1キロから1.5キロほどと大きな臓器となっており、およそ3000億の肝細胞を持っています。
 肝実質と肝小葉から作られており、肝実質は肝臓そのものとなっており、肝小葉は肝動脈や門脈、胆管で構成されています。肝動脈は酸素を豊富に含んだ血液を肝臓に送る役割を持つ血管です。門脈は消化管から吸収された栄養分を送り、胆管は肝細胞で作られた胆汁を送り出す働きを持っています。
 肝臓にはいくつかの働きがあります。胆汁を作ることによって食物の分解や消化を助ける作用や、体内に入った有害物質を無害化する解毒作用、アンモニアを尿素に変えて尿として排出できるようにする機能、栄養分を貯蔵しておく働き、血液を溜めて体に流れる循環量を調整する役割があります。
 沈黙の臓器と呼ばれるだけあって、病気になっても症状はすぐに出るものではありません。これは癌の場合にも言えることです。したがって、自覚症状が現れた時には、進行している可能性が高いと言えます。

肝炎ウイルスが原因となる原発性肝臓がん

原発性肝臓がんの原因としては、肝炎ウイルスが大きな要素となっています。肝炎ウイルスには色々なタイプがあるのですが、その中でも癌と関係しているのは主にB型とC型の2種類です。
 この肝炎ウイルスに感染すると、正常な肝細胞に作用して突然変異を起こすことによって癌になるものと推測されています。したがって、ウイルス感染者は高リスク群ということになります。
 ただし、肝炎ウイルスに感染したら、その段階で癌になることが決まっているわけではありません。あくまでリスクが高いということになりますので、健康に過ごしている方も多くいます。感染後は肝炎という病気になることが多く、症状としては食欲不振や黄疸、全身の倦怠感といったものがありますが、自覚症状がなく治癒したり、発症しなかったりすることもあります。
 肝炎ウイルスの感染ルートは母子感染や注射針など、いくつかの経路があるのですが、血液製剤によって感染してしまった例も多くあります。現在では、輸血に使われる血液の検査が行われて危険性は低くなっていますが、それでも見つけられない例もわずかに存在しています。
 肝炎ウイルスの影響で、原発性肝臓がんになることを予防する方法については研究が進行しており、現状としてはC型肝炎にインターフェロンを用いる治療法が注目されています。ただし、完全に予防できるほどの効果は得られていませんので、リスクが高い場合には定期的に検査を受けて早期発見の可能性を高め、症状が進行する前に治療を行っておくことが大切です。

転移性肝臓がんの余命と生存率

原発巣から見ると、他の臓器にまで転移してしまっている状態になりますので、生存率はとても低いことが一般的です。たとえば、大腸がんが原発巣になっている場合には、遠隔転移が見られるステージ4期の5年生存率は10%程度です。
 転移性肝臓がんの場合には、原発巣がどの部位であるかによっても影響を受けますが、もはや余命が長くはないことが多いことも理解しておく必要があります。他の臓器に症状が広がってしまっている場合には、生存率が低いことが一般的なのです。

原発性肝臓がんと転移性肝臓がんの治療の違い

原発性肝臓がんの場合には、他の場所に広がっていない限り、局所療法で寛解する可能性があります。治療法について詳しい説明はページを改めて行いますが、手術や経皮的治療、ラジオ波療法といったものがあります。
 これに対し、転移性肝臓がんの場合には同じようにはいきません。なぜなら、他に原発巣(ガン細胞が発生した場所)があるわけですから、その場所も含めて治療しなくてはならないためです。さらに、他の場所にも散らばっている可能性もあります。
 転移性肝臓がんの場合には、原発巣が大腸であることが多いのですが、この場合には肝臓だけを治しても寛解にはなりません。そこで、治療は体全体をトータルに捉える必要があります。
 原発巣が手術によって治療でき、肝臓についても手術やラジオ波療法が行える場合には寛解の可能性があります。ただし、血流に乗って他の場所にも広がってしまっていることが多く、再発の危険性も高いと言わざるを得ません。

肝臓がんの食事療法

肝臓がんの食事療法ときくと、病気になった後の治療方法の1つとしての食事かなと思いますが、肝臓がんにならないような食事ということもいえます。
 肝臓がんは、肝臓に負担をかけたりして病気になりやすいような環境を作ってしまうことでかかってしまうこともある病気です。
 肝臓がんにかかってしまった後の食事についても、やはり肝臓に負担をかけないようにするなどの注意点はあるような気がします。
 肝臓がんは食事で予防するという方法もあるみたいです。肝臓と聞くとアルコールが思い浮かぶ人もいるかもしれませんが、暴飲は控えること、また、食事面では、繊維質を多く含む食材や緑黄色野菜を食べたり、豆腐などの大豆でできた食品を食べるということもいわれています。
 肝臓がんは、脂肪肝といって、脂肪の多い食事を多く食べることによって、肝細胞に中性脂肪がたまってしまい、肝臓の機能が低下することでかかってしまうこともあるようです。よって、動物性たんぱく質を多く含むような食事は、大量に食べないということもいえるかもしれません。
 肝臓がんを含めて、がんの発生原因といわれることがある活性酸素をおさえるようなものを多く含んだ食品を食べるということもいわれているみたいです。たとえば、ビタミンA、ベータカロチン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB、ポリフェノール、カロチノイド、イソフラボンなどの名前を聞くことがあります。
 肝臓がんは肝硬変や肝炎が元になることもあるようなので、それらの病気に対して、肝臓の機能を強めるために、貝類の牡蠣肉のエキスを含んだ健康食品も売られているみたいです。肝臓がんに対する成分としてフコイダンというものがあります。
 これは、民間療法の1つとしてつかわれるもので、海藻類のヌルヌルした成分に含まれている多糖類のことをいい、ここにアルギン酸やラミニンなどの成分が入っているということで、抗がん作用があるのではないかといわれているものです。
 肝臓がんにかかって化学療法をしている場合、においや吐き気、食欲不振などの副作用によって、しっかりと食事ができないこともあるようです。
 こういった場合、果物や麺類だと食べられることもあるということで出されることがあります。

がん予防に良い食べ物

発ガン予防にごぼう 植物繊維とは人間の体内では消化されない物質のことで、セルロース、ペクチン、リグニンなどがあります。最近ではこらの成分が血中のコレステロール値を下げる働きをするというので注目されています。 リグニンは、お茶に含まれるタンニンと似た構造をしており、制ガン効果があることもわかっています。
 ですから中高年以上で、高血圧、動脈硬化、ガンなどの恐れがある人は、いつもきんぴらごぼうなどの“おふくろの味”を食べることをすすめます。
ガン予防に椎茸(しいたけ) 椎茸(しいたけ)の子実体といわれるかさには、エシチンという抗ガン物質があることが発見されました。子実体だけではなく、菌糸体にも、その成分中の多糖類に抗ガン作用があることもわかっています。
 レニチナンは消化器等から吸収されないので注射で投与しなくてはいけませんが、菌糸体の抽出液は経口投与でも効果はあります。 またレンチナンはガンの発育を阻害させるだけではなく、ガンの発生を抑える作用があることもわかっています。これら多糖類が直接ガンを殺すのではなく、体の免疫機能を高めるからといわれています。
 いずれにしても、椎茸(しいたけ)は副作用もなく、ふだんからきちんと食べていればガンを防ぐ特効薬になるといえます。
ガンを抑える大根(だいこん) 大根(だいこん)は含有量から言えば、根の部分よりも葉の部分の方が多く含んでいますが、葉は熱に弱いので、むしろ生で食べられる根の方が、体にとり入れやすいといえます。
 ビタミンCは、風邪を予防したりストレスを和らげたりします。また、発ガン性物質の生成も妨げると言われています。
がん予防にチーズ チーズはビタミンAが豊富です。ビタミンAは、皮膚や粘膜、目を守る働きをします。不足すると視力が低下し、とりめになったり、肌がカサカサしてきたり、風邪を引きやすくなったりします。
 ビタミンAもがんの予防に効果があることがわかっています。
発がん性を防ぐ緑茶 緑茶に含まれているタンニンの還元作用で六価クロムなどの有害重金属イオンを三価にする働きや、有害変異原物質の抑制力もあることから、発がん性をおさえてくれます。
がん予防に納豆 ヨーグルトの乳酸菌は、発がん物質ができるのを防いでくれます。胃がんや肝臓がんの原因であるらしいニトロソアミンや、膀胱がんの原因とみられるインドール、直腸がん胆汁酸誘導体などの発がん物質は、体に悪い作用をする腸内細菌が働いて作られるのです。こうした働きを防ぐのが、ヨーグルトの乳酸菌です。
ガンを防ぐ大豆 大豆には、タンパク質の消化酵素の働きを阻止する、トリプシンインヒビターという成分があります。これは生では消化不良の原因となりますが、加熱するとほとんど壊れてしまいます。 そのわずかに残ったトリプシンインヒビターに、ガンや糖尿病を防ぐ効果があるのです。
 トリプシンインヒビターは水といっしょに長時間加熱すると効力を失います。いり豆や、きな粉等の加工食品に多く含まれています。
がん予防にゆず(柚子) ゆず(柚子)に含まれているビタミンCにはウイルスへの抵抗を強める働きがあるので、がんの予防にもなります。これはビタミンCによってインターフェロンが、ウイルスを防ぐからです。
 またビタミンC自体が代謝されるときに活酸が発生し、これがウイルスやがんの核をそこなわさせて、がんが大きくなるのを防ぐ働きをするとされています。
がんを抑制するマッシュルーム キノコ類には多糖質を含んだものが多く、レンチナンなどが含まれています。レンチナンには、免疫機能を高め、がんの発育を抑えて退縮させるだけでなく、がんが発生するのを抑える力もあります。
がん予防にピーナッツ ピーナッツにはビタミンEが含まれています。発がん物質や過酸化脂質からフリーラジカルが生成されて、細胞が異常増加を続ければがんになりますが、このフローラジカルを生成されないように予防する効果が、ピーナッツのビタミンEにあります。
がん予防ににんにく にんにくの成分の中に有機ゲルマニウムがあり、生物が生きていくのに欠かせない酵素を運ぶ働きをし、尿と一緒に全部排出されるので副作用などの害がありません。
 ゲルマニウムは、体内で臓器中の有害重金属の除去、肝機能障害や悪性腫瘍の予防に役立つといわれています。がんの治療では、放射線の効果を上げるとともに、体内での酵素の利用を高めることによって、放射線のマイナスを防ぐものと見られています。
 にんにくを食用するとき、取りすぎは危険です。取りすぎると、にんにく精油の溶血作用により、血液中の色素ヘモグロビンをとかし、貧血を起こすこともあります。
がん予防ににんじん(人参) にんじん(人参)は、ビタミンAの宝庫と言われ、これには上皮細胞を形成し、機能を調整して、体内の粘膜を正常に働かす力があります。
 ビタミンAが欠乏して、上皮細胞が扁平上皮化して粘膜を分泌しない細胞に変わることを化生といいますが、これは前がん状態によく見られます。これが目の粘膜に現れると、夜盲症になり、皮膚上部の皮脂腺を冒すと、ニキビや吹き出物になるのです。
 にんじん(人参)は、ビタミンAと同じ効用のあるカロチンを豊富に含み、やはりがん予防に効果があるとされているビタミンCもあります。大腸がんの予防に効果的な食物繊維の多い栄養野菜の一つです。
がん予防になるにら にらに多いビタミンAは、粘膜細胞を正常に働かす作用があることから、粘膜に関するがんに影響があると報告されています。
 ビタミンAを含む物質を、日常的に多量に摂取していれば、皮膚や粘膜細胞の異常増殖を予防し、ひいてはがんを予防するということになります。
がんを防ぐしそ しその強い防菌性を持つペリアアルデヒドが、腸内の細菌の腐敗を防ぎ、血液をきれいにし、造血を促進して貧血を治す効力を発揮します。また、制菌作用があるということは、このペルアアルデヒドがタンパク質を破壊し、その作用によって菌が殺されるということなのです。
 非常に効力が強いこのタンパク質分解作用は、そのまま制がんとしての働きにも応用できます。ただ体内でのこのペリアアルデヒドが増えすぎると、がん細胞だけでなく、普通の体内のタンパク質にまで作用するという危険があります。ですから、1日に2~3枚が適量です。
 この量なら毎日続けてもかまいませんが、2~3枚を毎日摂ってしまったら、体内の細胞にペリアアルデヒドが蓄積するかもしれないので、次の数日はしそを食べないという風にバランスをとっていくことが大切です。

転移性肝臓がんの治療

大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、膵臓がんなどを含む多くの臓器から肝臓には転移します。肝臓に転移したがんを転移性肝臓がんといいます。転移性肝臓がんの治療として最も確率の良いものは外科的手術になります。
 しかし、転移性肝臓がんで手術が適応となるのは全身状態が手術に耐えられること、手術により肝臓にあるがんが取り除くことができること、原発巣(転移してきたがん)と肝臓以外にがんがないことなどが条件となります。
 肝臓に転移した場合の多くは、がんが進行していて手術ができない場合も少なくありません。
 大腸がんの肝転移の場合には比較的手術ができることが多く、良好な結果を得られる場合も少なくありません。胃がんや乳がんでは一部の方で手術が、肺がんや膵臓がんではほとんど適応になることはありません。
 手術ができない場合は抗がん剤を肝動注または点滴で静脈投与することになります。
 転移性肝臓がんは、もともとあった癌の性質を持っているので、使用する抗がん剤の種類は元のがんに応じて選択されます。一時的に抗がん剤が有効な例もありますが、手術以外の方法で根治させることは困難です。
 肝臓がんの有力な治療法である肝動脈塞栓療法(TAE)とエタノール注入療法(PEI)は転移性肝がんでは残念ながらあまり有効ではなく、これらの治療を行うことは稀です。

肝臓がんの治療-局所化学療法

動注抗がん剤はここ数年の間に普及し始めた治療方法で、太ももの付け根の部分からカテーテルと呼ばれる管を肝動脈まで挿入し、肝動脈から抗がん剤を注入する方法です。
 一度の注入だけでは効果があまり効果が望めない場合には、手術で開腹して直接肝動脈にカテーテルを挿入するか、足のつけ根の動脈(大腿動脈の枝)からカテーテルを肝動脈まで進めるか、どちらかの方法でカテーテルを留置して、おなかの皮膚の下に埋め込んだ、薬液注入用の小さい貯留容器(リザーバーまたはポートと呼びます)から抗がん剤を注入します。
 新しい治療方法であるため、現在のところどの程度効果が期待できるのか分かっていないのが現状であり、肝動脈塞栓術やエタノール注入などができない場合に次善の策として行われています。
 肝臓がんの化学療法に使われる抗がん剤はマイトマイシンC、5-FU、シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)、アドリアマイシン、ファルモルビシン、ノバントロンなどが使われます。
 
 放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。 免疫力を賦活させることが大切です。
 また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

肝臓がんの治療-マイクロ波凝固療法

マイクロ波凝固療法は、電子レンジにも使われているマイクロ波を利用してがんを焼いて殺す治療法です。電子レンジはマイクロ波を使って水分子を振動させ食べ物を加熱しますが、この治療法では体表から長い針を刺し、針の先からマイクロ波を出します。
 この療法の問題点は、とても高熱になるということです。そのためがん以外にも正常な組織も焼かれてしまう危険性が高く、肝臓の周りの臓器までも傷ついてしまう危険性があります。
 また、マイクロ波ではなくラジオ波を使ってがんを焼いて殺すラジオ波凝固療法もあります。ラジオ波はマイクロ波と比べて温度が高くならないため正常な肝細胞や周りの臓器を焼いてしまう危険性が少なく、小さながんであれば壊死できる可能性も高く、 入院期間も短縮できるという利点があり、現在積極的に行われつつあります。
 しかし、この治療法はまだ新しい方法で、長期的な効果は不明です。世界的にもいまだまとまった治療成績の報告が少なく、日本では保険適用が認められておらず、 医療側も患者側も「実験的治療」であることを認識した上で施行するべき治療といえます。

肝臓がんの治療-経皮的エタノール注入療法

経皮的エタノール注入療法とは超音波画像でがんの位置を確認しながら体外から100%エタノール、 すなわち純アルコールを肝臓がんの部分へ注射して、アルコールの化学作用によりがん組織を死滅させる治療法です。 エタノールにはタンパク質を凝固させる作用があり、エタノールを注入された癌細胞は瞬時に固まって壊死します。
 問題点としては体内の直接見えない部分にあるがんの位置をいかに正確に把握しエタノールを接触させられるか、 がん以外の部分へのエタノールの接触を最小限にとどめ副作用を抑えられるかが重要になってきます。
 エタノールは正常な肝細胞も破壊してしまうため、多量のエタノールを注入してしまうと広範囲にわたり肝細胞が 壊死してしまい肝臓の機能が失われてしまいます。また、肝がんが超音波画像で見えにくい場合や、 がんが肝臓内部の重要な血管に接している場合にはアルコール注射が安全かつ十分にできないこともあり、すべての場合で可能とは限りません。
 一般にがんの直径が3cm以下で、がんの個数は3個以下がこの治療の対象とされています。しかし、 よい効果が得られるのは2cm以下のもので、2cmを超えるとアルコールとの接触が完全に行うことができない場合もあり、治療成績は落ちます。
 黄疸や腹水が見られるほど肝機能が低下している患者さんに対しても治療ができない場合があります。
 エタノール注入療法は癌の大きさや個数に応じて複数回の治療を行うことになります。副作用は塞栓術に比べて軽微で3-4日毎に治療を行うことができます。

肝臓がん(肝臓癌)の治療-肝動脈塞栓術

肝動脈塞栓術は、がんが進行しているため、完全に切除できないと判断された場合や、 患者さんの肝機能の状態が悪くて手術ができないと判断された場合に行われる肝臓がんの治療方の1つです。
 肝臓には肝動脈と門脈という二つの血管から酸素や栄養分を受けていますが、 一方で肝臓がんはほとんど肝動脈のみからそれらの供給を受けています。この性質を利用して行う治療が肝動脈塞栓術なのです。
 つまり肝動脈塞栓療法は肝臓がんに栄養を送っている肝動脈を塞いで、 肝臓がんが酸素や栄養を供給されないようにし、壊死させることができるのです。
 
 具体的には太ももの付け根の部分からカテーテルと呼ばれる管を肝動脈まで挿入し、 抗がん剤をしみこませた「ゼラチン・スポンジ」という小さなスポンジ状のゼラチンを詰めて肝動脈を詰まらせます。 肝動脈が詰まっているためがんは酸素などの供給を受けることができなくなり壊死します。その後スポンジは自然に溶けて血流は元通りに回復します。
 肝動脈塞栓術は1回の治療で1週間ほどの入院が必要です。1回の治療で癌細胞が完全に壊死できなくても 繰り返し同じ治療を行えばほぼ消滅させることができます。
 この治療法はがんの進み具合についての制限はほとんどなく、適応範囲が広い治療ですが、 癌細胞が門脈を塞いでしまっている場合には行うことができません。また黄疸や腹水が見られるほど 肝機能が低下している患者さんに対しても治療ができない場合があります。
 治療中や後に発熱がみられたり、食欲不振や腹痛、吐き気などの副作用が現れる場合がありますが数日で収まり、 1週間程度で以前と同じ生活ができるようになります。
 このように、肝動脈塞栓術は他の治療法に比べ治療対象の制限が少なく、長所も多く、 最近の肝臓がん治療成績の向上に最も寄与しています。しかし、延命効果は多大ですが、完全に治りきる確率(完全治癒率)は現在のところ10%程度です。

肝臓がん(肝臓癌)の治療-外科手術(肝切除術)

肝切除はがんを含めて肝臓の一部を切り取る手術で、最大の利点はがんが治る可能性がもっとも高いということです。 デメリットは合併症が起こる場合が少なからずあり、1-2%ですが手術に起因する死亡があります。
  また入院期間が1-2ヶ月さらに退院してからの自宅療養が1-2ヶ月必要で長期に及ぶことがあげられます。
 肝臓はひとかたまりの臓器ですが、肝臓内を走る血管の分布によっていくつかの区画に分けて考えられます。
 まず大きく左葉と右葉の二つに分かれます。左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に分かれます。
さらに外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます。
 肝臓の切り取り方は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。 がんが区域をまたいでいる場合には複数の区域を切除します。
 肝機能が低下していて大きく切除できない場合には安全のために、亜区域切除や部分切除などより 小さい取り方を選ぶのが普通です。がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。
 残念ながら肝臓がんは再発の非常に多いがんであり、肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても 3-5年後までに再発する確立は70%にも達してしまいます。しかし再発した場合でも条件によっては再手術することもできます。

肝臓がん(肝臓癌)の診断

肝臓がんの診断には血液検査と画像診断法が行われます。どちらか一方だけでは不十分です。 また、血液検査や画像診断法を駆使しても「肝臓がん」と診断がつけられないこともあり、 その場合は針生検といって、肝臓の腫瘍部分に針を刺して少量の組織片をとり、顕微鏡で調べることも行われます。
<血液検査>(肝臓癌の検査)
肝臓がんの検査に使用される血液検査と基準値を示します。基準値は施設によって基準値が異なりますので詳しくは検査機関にお問合せ下さい。
◆GOT、GPT 基準値 GOT(AST) 13-35U/l,GPT(ALT) 8-48U/l
肝機能に異常がないかを調べるために血液中の「GOT(AST)」と「GPT(ALT)」の値を調べます。 こららは肝細胞に含まれている酵素で、肝細胞が壊されると血液中に大量に流れでてくるため数値が上昇します。 肝細胞がどの程度障害を受けているのかの指標になります。
◆血小板(Plt) 基準値 12-40万/ul
血小板は血液を固めるために必要な血球成分です。肝硬変になると血液の中の血小板が減ってきてしまいます。 肝硬変の進行具合の指標になり10万/ul以下に低下すると肝臓がんの発症率が高くなります。
◆アルブミン(Alb) 基準値 4.1-5.1 g/dl
アルブミンは血液蛋白の一部で肝臓でしか作られないため肝機能が低下してくるとアルブミンの数値も低下してきます。 著しく低下してくると腹水や浮腫みがでます。
◆総ビリルビン(T-Bil) 基準値 0.3-1.2 mg/dl
肝細胞に障害があるときにあがってくる数値で、血液中の総ビリルビンが増えると黄疸であるといわれます。
◆α-フェトプロテイン(AFP) 基準値 20 ng/ml以下
肝細胞がんのおよそ90%で陽性になる腫瘍マーカーです。元来は胎児の肝臓と卵黄嚢で 産生される糖タンパクで出生後には急速に低下しますが、肝癌になるとこのタンパク質の合成が活発になるため陽性になります。
◆PIVKA-II 基準値 0.1 AU/ml以下(肝臓がんの腫瘍マーカー)
肝細胞がんに特有の腫瘍マーカーで他の疾患では上昇することは少ないのですが、 ビタミンK欠乏の時にも上昇するのでワーファリンなどの薬を服用しているときにも上昇することがあります。
<画像検査>
◆超音波検査(肝臓癌の検査)
肝臓がんを早期に発見するうえで有効な検査になります。超音波診断装置を使用する検査で、 直径が1~2cm程度の小さな肝がんでも見つける事ができる確率が高く一般にも普及している検査です。
◆CT検査(肝臓癌の検査)
CT検査(CTスキャン)はいろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って 非常に鮮明な画像を得ることができます。超音波検査で調べきれなかった場合でもがんを見つけることができます。
◆MRI検査(肝臓癌の検査)
MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。 放射線の被曝がなく超音波検査では見分けの付きにくいがんもMRI検査で診断できる場合があります。
◆肝血管造影検査(肝臓癌の検査)
足の付け根かの動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を肝臓まで挿入し、造影剤を注入してエックス線撮影を行う検査です。
<肝生検>
超音波検査の画像で肝臓がんの位置を確認しながら、体表から細い針をさして癌の組織の一部を採取し顕微鏡で詳しく検査する方法です。
ただし、針を刺すとがんが回りに散ってしまう危険性があるため血液検査や画像検査で診断が付かなかった場合のみ行われる検査になります。