乳がんの特徴

乳がんは「女性がかかり、亡くなるがん」の中では、胃、肺、結腸、肝臓に次いで第5位で、2万人以上の方が亡くなっています。
 日本人の女性で乳がんにかかる人は年々増加していて、毎年約3万人もの女性が、乳がんにかかっています。
 男性でも乳がんになることがありますが、女性の1/100くらいの発生率です
 乳がんの特徴
 進行はゆっくりですが、転移しやすいことがいちばんの特徴です。
 乳がん増加の背景に見えることは…
 月経期間が長い 卵巣から分泌される『エストロゲン』という女性ホルモンが乳腺組織に作用する期間が長いほど、乳がんの発生率が高くなることが知られています。近年、食生活の欧米化により、日本人は発育も体格もよくなりそれによって、初経が早くなったり、閉経が遅くなる傾向があります。その結果、エストロゲンの作用期間が長くなったことが、乳がん増加につながっていると考えられます。
 初産年齢の高齢化 妊娠中はホルモン環境が大きく変わり、これが乳がんの発生を抑える方向に作用すると言われています。ですが、現代は初産年齢が高齢化し、乳がんの発生が始まる若年期に出産を経験しない女性や、子供を産まない、あるいは出産回数の少ない女性が増えています。
 肥満 閉経後は卵巣に代わって、副腎から分泌される『アンドロゲン』というホルモンが、脂肪組織に豊富に含まれる『アロマターゼ』という酵素により、エストロゲンに変換されます。そのため、肥満の人は乳がんのリスクが高くなります。
 全身に転移しやすい 乳がんは、がん細胞の発育自体はゆっくりしているのですが、全身に転移しやすいのが特徴です。乳房にがんが発生した時点ですぐに、ごく一部のがん細胞が血管やリンパ管に侵入し、全身に目に見えない転移を起こしている可能性が高いのです。
 乳がんが特に転移しやすいのは、骨や肺、肝臓です。がん細胞がリンパ管を伝わって、わきの下や鎖骨上のリンパ節に 広がってしまうこともあります。
 症 状
『乳房のしこり』で見つかるケースが多い
 約9割は『乳房のしこり』で受診し、そのうち痛みがあるのは約15%ほどですが、一般的に 『痛みを伴わないしこり』とされています。
 また、がんが皮膚近くの乳腺組織にできると、早期から皮膚にくぼみやひきつれが見られることがあります。乳頭の増したにがんが発生したり、がんで乳腺がひきつれを起こすと、乳頭が凹んだりします。まれに、乳頭から分泌物が出ることがあり、これを「乳頭異常分泌」といいます。
 健康な人でもホルモンの影響で、乳頭の数箇所から透明、またはミルク色の分泌物が見られることはありますが、乳がんの場合は血液の混ざった分泌物が、乳頭の乳管開口部の1つからだけでるのが特徴です。
 検 査
乳房のしこりは、乳腺症や乳腺線維線種など良性の病気でも見られるため、鑑別のために次のような検査が行われます。 視診・触診 まず最初に行われるもので、経験豊富な専門医であれば視診と触診だけでも、約7割の確立で乳がんを診断できます。
 マンモグラフィー 乳房を上下と左右からプラスチックの板で押し挟み、平らにしてからエックス線撮影をします。ごく小さな乳腺組織の変化や石灰化をとらえることができ、しこりをつくる前の早期の乳がんを発見します。
 超音波検査 しこりの内部を調べるのに優れています。乳がんの多くは、マンモグラフィーと超音波検査でほぼ診断がつきます。
 穿刺吸引細胞診 細かい注射針を、皮膚のうえからしこりに向かって刺し、病巣部の細胞を吸引して、顕微鏡で調べます。多くの場合、この検査で診断は確定しますが、ごく一部は診断がつかないこともあります。その場合、以前は手術で乳房を切開して、しこりの一部を摘出する「外科生検」が行われていましたが、現在は太い針を刺し、しこりの組織を採取する「針生検」が主流です。
 乳管造影検査 しこりがなく、乳頭異常分泌だけが見られる場合に行われる検査です。先端が丸くて細い針を乳頭の入管開口部に挿入し、造影剤を注入してエックス線撮影をします。このほか、直径1mm以下の細いファイバースコープ(内視鏡)を、乳頭の乳管開口部から挿入し、乳管を観察する「内視鏡検査」もあります。
 転移を調べる検査 乳がんと診断されたら、骨シンチグラフィーや超音波検査、CT検査などで骨や肺、肝臓などへの転移の有無も調べます。
 治 療
 乳房温存療法 早期の段階なら、がんだけを切除して乳房を残す方法が可能です
 乳房切除術 がんが乳房内に広がっている場合は、乳房を切除します
ホルモン療法・化学療法 残ったがん細胞を死滅させるため、全身的な治療を行います