胆道がんは肝臓で作られた胆汁の通り道にできるがんで、その発生部位によって「胆管がん」と「胆のうがん」に大別される。進行がんで発見されることが多いため、胆道がん全体の約3割は手術ができないといわれるが、このがんの治療で定評がある病院はどこなのか。
●順天堂大学順天堂医院 (東京都)
順天堂大学順天堂医院肝胆膵外科は、胆道がんの中で治療の難しい肝門部胆管がんと
上部胆管がんに対して、安全性の高い手術で全国トップクラスの実績を持つ。
「肝切除を必要とする肝門部胆管がんと上部胆管がんに対して、術前に門脈塞栓術を行って
から拡大手術をしています。十数年間で約100例に実施し、入院死亡例は1例だけ。
それも胆道がん以外の原因によるものです。かなり大きな手術も安全に行うことが
できます」(川崎誠治教授)
門脈塞栓術とは手術で切除する側の肝臓に栄養を送る血管の門脈をふさいで、
肝臓を小さくして、残す側の肝臓の機能を高めておこうというもの。
例えば、拡大手術で肝臓の右葉を切除するときは、右葉に栄養を送る門脈をふさいで
委縮させる。局所麻酔で2時間ほど。この塞栓術の2、3週間後に肝切除を含む拡大手術を
行う。
「がんが血管や神経に浸潤していれば、その切除が必要になるし、すい頭十二指腸切除も
加わる場合もあります」(川崎教授)
拡大手術は10時間以上かかるが、術前の門脈塞栓術を含むさまざまな工夫で、手術の
安全性はかなり向上したという。
●名古屋大学病院(愛知県)
名古屋大学病院消化器外科1は、胆道がんの年間手術数79例(05年)で全国トップ
クラスの実績を持つ。また、胆道がんの診療合計数、手術合計数でも抜群の実績だ。
「1970年代から胆道がんの治療に積極的に取り組んでいます。胆管がん、胆のうがん
ともに、現時点では治療法の第一選択である手術を行えるように努めています」と
二村雄次教授。
三十数年間で胆管がんは合計605例診療して手術合計数475例、胆のうがんでは
合計355例診療して手術合計数239例に上る。
「肝門部胆管がんは治療の難しいケースが多いにもかかわらず、当科での手術合計数は
352例に達しています。世界的にも豊富な症例数です」(二村教授)
この肝門部胆管がん手術全体の5年生存率は22%と良好な成績だ。マンパワーを
必要とする手術後の管理も綿密に実施し、治療成績の向上に努めている。
●国立がんセンター東病院(千葉県)
胆道がんの初診患者数は年間80~90例で全国有数だ。内科、外科、放射線科との
緊密な連携で最適な治療を目指す。
「胆道がんは胆管、胆のう、乳頭部と部位によって病態が異なります。進行度もさまざまで
病状に応じた治療選択が必要です」と肝胆膵内科の古瀬純司医長。
手術のできない進行した胆道がんには化学療法を行う。最近では、内服薬の
テガフール・ウラシルと注射薬の塩酸ドキソルビシンの併用療法で効果を上げている。
「この2剤併用療法は、従来のテガフール・ウラシル単独療法よりも、がんの縮小効果が
2倍以上になることがわかってきました」(古瀬医長)
胆道がんに対する化学療法をしっかり行える病院は数少ない。同病院はそこでも
リーダー的な役割を果たす。
がんが大きくなって胆汁の通り道の胆管をふさぐと閉塞性黄疸(おうだん)を起こす。
そこで、ステント留置法にも力を入れる。ふさがった場所にステントと呼ばれる金属製の
筒を留置して、胆管を広げて胆汁の流れを改善する治療だ。
「積極的な治療と同時にQOL向上にはステント留置なども大切です」と古瀬医長。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
●手稲渓仁会病院 消化器病センター 真口宏介センター長
(電話)011・681・8111(北海道)
正確な進展度診断により胆管がんの60%以上が手術適応となる。切除不能の場合、
放射線・化学療法、胆管ステンティングを行う
●国立がんセンター東病院 肝胆膵内科
古瀬純司医長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
外科、放射線科との緊密な連携で、切除、化学療法、QOLへの配慮を含め最適な診断と
治療選択を行う。治験など臨床試験も積極的
●千葉大学病院 肝胆膵外科
宮崎勝教授 (電話)043・222・7171(千葉県)
胆道がん年間手術約40例。血管合併切除や門脈塞栓術を併用した積極的な外科切除で
高い根治率。化学療法との集学的治療も行う
●東京大学病院 肝胆膵外科 幕内雅敏教授 (電話)03・3815・5411(東京都)
胆道がん年間切除25例。難易度の高い胆道がんに対し安全性と根治性を追求する
治療(門脈塞栓術等)で拡大切除し治療成績向上
●順天堂大学順天堂医院 肝胆膵外科
川崎誠治教授 (電話)03・3813・3111(東京都)
肝門部胆管がん、上部胆管がんの手術数約100例のうち入院死亡1例のみ。
肝機能を維持する門脈塞栓術などで手術の安全性を向上
●国立がんセンター中央病院 外科肝胆膵外科グループ
島田和明医長 (電話)03・3542・2511(東京都)
胆道系の閉塞をきたし黄疸を発生した場合でも迅速に対応している。高度な技術を要する
肝門部胆管がんの手術件数も全国有数
●慶応義塾大学病院 一般消化器外科
島津元秀講師 (電話)03・3353・1211(東京都)
3次元画像を駆使して胆道がんの浸潤範囲を正確に診断するため、取り残しのない手術が
多い。他院で切除不能な進行がんも治癒
●名古屋大学病院 消化器外科1
二村雄次教授 (電話)052・741・2111(愛知県)
安全面に十分配慮したうえで拡大肝切除、動脈・門脈の合併切除再建、
肝膵十二指腸切除を常に実施し、治療成績の向上に努めている
●奈良県立医科大学病院 放射線治療・核医学科
玉本哲郎講師 (電話)0744・22・3051(奈良県)
放射線科と連携し、手術困難症例に放射線療法(小線源、定位放射線)と
IⅤR(ステント、動注化学)を併用した集学的治療を行う
●九州がんセンター 消化器内科
船越顕博医長(電話)092・541・3231(福岡県)
遠隔転移を有する胆道がんに、UFT、アドリアシンの組み合わせ療法を班会議で
共同治験中。近々、保険適応予定の抗がん剤も使用