すい臓がんは難治がんの最たるものといわれる。
見つかったときはすでに進行していることが多く、
すい臓がんと診断されて手術ができるのは30%に過ぎない。
そのすい臓がん治療で成果を挙げている病院はどこなのか。
●東海大学病院(神奈川県)
東海大学病院消化器外科は、外科、放射線科、内科などのチーム医療で好成績を
挙げている。手術ができたすい臓がんの5年生存率は約25%、手術数も年間約50例で、
いずれも全国トップクラスを誇る。同科の今泉俊秀教授はすい臓の手術をこれまで
1000例以上経験している。
「すい臓の頭の部分(すい頭部)にできたすい臓がんには、すい臓、胆のう、胆管、
十二指腸を切除して、残ったすい臓、胆管などを腸とつなぐすい頭十二指腸切除術を
行います。手術時間は平均約4時間半と非常に短く無輸血です。再発予防のために
術中照射にも取り組んでいます」と今泉教授。
術中照射とは手術中に、がんを切除した後、がんのあったところに放射線を照射する
治療だ。外科手術室から放射線治療室に患者を移動させて、約5分間放射線を照射する。
退院後は外来で、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)を中心にした化学療法を続ける。
週1回ずつ3週間注射して1週間休みを繰り返す。約6カ月間行う。
「最近ではほかの経口抗がん剤も試みて、治療成績の向上に努力しています」(今泉教授)
●大阪府立成人病センター(大阪府)
すい臓がんは肝臓に転移しやすいが、大阪府立成人病センターの消化器外科は、98年に
肝転移の予防に有効な術後2―チャンネル化学療法を世界に先駆けて開発したことで
知られる。この療法は手術後に、肝臓につながる肝動脈と門脈の2つの血管から抗がん剤を
注入して、肝転移を予防するという治療法だ。
現在、同科では手術前に放射線療法でがんの進行を抑えたうえで手術を実施し、術後
2―チャンネル化学療法を加えた治療法などにも取り組み、進行すい臓がん(ステージⅣ)に
対しても40%以上の術後5年生存率を誇る。
「すい臓がんは、手術をしても局所再発や肝転移が高い確率で起こります。そこで、
局所再発予防を目指した術前放射線療法や、肝転移予防に有効な術後2―チャンネル
化学療法を組み合わせることで、手術後の5年生存率を向上させてきました」と
石川治副院長は言う。
また、すい臓がんの早期診断のための検診システムも世界に先駆けて導入し、
早期微小すい臓がんの発見に取り組む。
「早期のすい臓がんで手術を行った場合、5年生存率はほぼ100%です」(石川副院長)
●名古屋大学病院(愛知県)
名古屋大学病院の消化器外科2は、81年に肝臓につながる門脈(静脈)に浸潤した
進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発したことで知られる。
「それまでは門脈への浸潤を伴うすい臓がんは切除困難で、手術を行うことが
できませんでした。新しい術式の開発で、手術が安全に行えるようになりました」と
中尾昭公教授。
この新術式の登場と普及によって、手術のできるすい臓がんの症例数が増加し、
その安全性も飛躍的に上昇したという。 また、術後の再発予防を目的にした抗がん剤の
感受性試験でも治療実績を持つ。手術時に切除したがん細胞の一部をシャーレに移し、
その中に抗がん剤を入れて培養し、効かない抗がん剤、効く抗がん剤を調べる検査である。
「この検査で個々の患者さんに最も効果的な抗がん剤を選び出して、術後の
補助化学療法を行っています。こうしたオーダーメード治療で成績の向上に努めています」
(中尾教授)
最近では遺伝子研究を応用した抗がん剤の感受性試験にも取り組んでいる。
すい臓がんは難治がんの最たるものといわれる。
見つかったときはすでに進行していることが多く、
すい臓がんと診断されて手術ができるのは30%に過ぎない。
そのすい臓がん治療で成果を挙げている病院はどこなのか。
●東海大学病院(神奈川県)
東海大学病院消化器外科は、外科、放射線科、内科などのチーム医療で好成績を
挙げている。手術ができたすい臓がんの5年生存率は約25%、手術数も年間約50例で、
いずれも全国トップクラスを誇る。同科の今泉俊秀教授はすい臓の手術をこれまで
1000例以上経験している。
「すい臓の頭の部分(すい頭部)にできたすい臓がんには、すい臓、胆のう、胆管、
十二指腸を切除して、残ったすい臓、胆管などを腸とつなぐすい頭十二指腸切除術を
行います。手術時間は平均約4時間半と非常に短く無輸血です。再発予防のために
術中照射にも取り組んでいます」と今泉教授。
術中照射とは手術中に、がんを切除した後、がんのあったところに放射線を照射する
治療だ。外科手術室から放射線治療室に患者を移動させて、約5分間放射線を照射する。
退院後は外来で、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)を中心にした化学療法を続ける。
週1回ずつ3週間注射して1週間休みを繰り返す。約6カ月間行う。
「最近ではほかの経口抗がん剤も試みて、治療成績の向上に努力しています」(今泉教授)
●大阪府立成人病センター(大阪府)
すい臓がんは肝臓に転移しやすいが、大阪府立成人病センターの消化器外科は、98年に
肝転移の予防に有効な術後2―チャンネル化学療法を世界に先駆けて開発したことで
知られる。この療法は手術後に、肝臓につながる肝動脈と門脈の2つの血管から抗がん剤を
注入して、肝転移を予防するという治療法だ。
現在、同科では手術前に放射線療法でがんの進行を抑えたうえで手術を実施し、術後
2―チャンネル化学療法を加えた治療法などにも取り組み、進行すい臓がん(ステージⅣ)に
対しても40%以上の術後5年生存率を誇る。
「すい臓がんは、手術をしても局所再発や肝転移が高い確率で起こります。そこで、
局所再発予防を目指した術前放射線療法や、肝転移予防に有効な術後2―チャンネル
化学療法を組み合わせることで、手術後の5年生存率を向上させてきました」と
石川治副院長は言う。
また、すい臓がんの早期診断のための検診システムも世界に先駆けて導入し、
早期微小すい臓がんの発見に取り組む。
「早期のすい臓がんで手術を行った場合、5年生存率はほぼ100%です」(石川副院長)
●名古屋大学病院(愛知県)
名古屋大学病院の消化器外科2は、81年に肝臓につながる門脈(静脈)に浸潤した
進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発したことで知られる。
「それまでは門脈への浸潤を伴うすい臓がんは切除困難で、手術を行うことが
できませんでした。新しい術式の開発で、手術が安全に行えるようになりました」と
中尾昭公教授。
この新術式の登場と普及によって、手術のできるすい臓がんの症例数が増加し、
その安全性も飛躍的に上昇したという。 また、術後の再発予防を目的にした抗がん剤の
感受性試験でも治療実績を持つ。手術時に切除したがん細胞の一部をシャーレに移し、
その中に抗がん剤を入れて培養し、効かない抗がん剤、効く抗がん剤を調べる検査である。
「この検査で個々の患者さんに最も効果的な抗がん剤を選び出して、術後の
補助化学療法を行っています。こうしたオーダーメード治療で成績の向上に努めています」
(中尾教授)
最近では遺伝子研究を応用した抗がん剤の感受性試験にも取り組んでいる。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
●手稲渓仁会病院 消化器病センター
真口宏介センター長(電話)011・681・8111(北海道)
すい臓がん延べ症例数400例。超音波内視鏡を中心にした診断に力を入れ、
手術適応には的確な手術、切除不能には化学療法等を選択
●東北大学病院 肝胆膵外科
砂村眞琴助教授(電話)022・717・7000(宮城県)
治癒切除をめざして補助化学療法、放射線療法、免疫療法を併用。
抗がん剤の感受性に基づいた個別化治療を導入し、外来治療も重視
●千葉県がんセンター 消化器外科
浅野武秀部長(電話)043・264・5431(千葉県)
重粒子線治療を組み合わせた治療、ヨーロッパすい臓がん研究グループとの
国際共同研究、腫瘍溶解ウイルス研究等で治療成績を向上
●東京女子医科大学病院 消化器外科
羽鳥隆講師(電話)03・3353・8111(東京都)
すい臓がんの年間手術数60~70例。臓器機能の温存を考えながらがん病巣を
積極的に切除し、術後化学療法、免疫療法等で生存率向上
●東京都立駒込病院 肝胆膵外科
岡本篤武副院長 鶴田耕二部長 放射線科 唐澤克之部長
(電話)03・3823・2101(東京都)
局所進行すい臓がんに対して、術中照射と術後照射、血行の改善、抗がん剤の動注療法で
2年近い生存期間を記録している
●国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科
奥坂拓志医長(電話)03・3542・2511(東京都)
すい臓がんの化学療法、放射線療法で実績があり、治療者数は全国トップ。
標準治療のほか、新しい治療の開発を積極的に行っている
●東海大学病院 消化器外科
今泉俊秀教授(電話)0463・93・1121(神奈川県)
熟練した外科医の手術、術中照射、外来の化学療法を組み合わせたチーム医療を実践。
術後5年生存率約25%と好成績を挙げる
●名古屋大学病院 消化器外科2
中尾昭公教授(電話)052・741・2111(愛知県)
進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発し、その症例数も多い。
オーダーメードの術後補助化学療法で成績向上に努める
●大阪府立成人病センター 消化器外科
石川治副院長(電話)06・6972・1181(大阪府)
術前放射線療法や肝転移防止に有効な術後2―チャンネル化学療法などを開発し、
すい臓がん切除成績を画期的に向上させてきた
●九州がんセンター 消化器内科
船越顕博医長(電話)092・541・3231(福岡県)
局所進行すい臓がんに対しては抗がん剤前投与と化学放射線療法を組み合わせて行う。
遠隔転移にはゲムシタビンを中心とした化学療法を実施