ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の強い酸の中でも生きることができる菌です。
螺旋状の形をしていて、胃の粘膜に住みついています。胃の中に入ってきた細菌は通常、胃酸によって殺菌されますが、ピロリ菌は持っている酵素によって、胃の中にある尿素をアンモニアに変え、アルカリ性のアンモニアで胃酸を中和して、胃酸の殺菌作用を逃れています。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の90%異常でピロリ菌が陽性を占めているといわれ、胃がんにも大きく関係していると考えられています。ただしピロリ菌が陽性でも潰瘍にならない人、陰性でも潰瘍になる人がいて、ピロリ菌だけが胃・十二指腸潰瘍の原因とはいえません。ストレス、暴飲暴食、喫煙、体質などのほかの因子も深く関係していると考えられています。
ピロリ菌検査で何がわかるのか?
胃・十二指腸潰瘍を繰り返して再発する人に、その原因としてピロリ菌が関与しているかどうかを調べます。陽性と出ればピロリ菌の関与が濃厚になります。また、最近の研究では胃がんの発生との関連も注目されており、陽性の場合はさらに検査をすることが望ましいでしょう。
ピロリ菌検査はどのように行うのか?
検査方法には、ピロリ菌が尿素をアンモニアに変えるときに二酸化炭素が発生する性質を利用して、尿素の入ったカプセルを服用する前と、服用後10~20分に、吐く息を採取してそこに含まれる二酸化炭素の量を調べる「呼気検査」、血液を採取して、そこにピロリ菌に対抗する抗体が含まれているかどうかを調べる「血液検査」、内視鏡で潰瘍を調べるとともに、胃粘膜も採取してピロリ菌を培養して調べる「内視鏡検査」の3つがあります。なかでも、呼気検査は簡単なうえに、信頼性も高いため広く行われています。
異常があったらどうするか?
除菌治療を行ないます。胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ・インヒビター(PPI)とアモキシシリン、クラリスロマイシンの抗生物質をあわせて1週間服用します。この3剤併用で、90%以上が除菌できるとされています。
除菌治療では逆流性食道炎など色々な副作用が見られますが、自分で判断して薬を中止すると直りにくくなります。また、併せてペプシノーゲン検査を行なうと、慢性胃炎や萎縮性胃炎の進行が判別できます。