ポイント
60歳代前後を中心に、年々増えている
早期では内視鏡で治療できる
直腸がんの80~90%程度は肛門を残せる
◆特徴
「大腸がん」は大腸に発生するガンの総称で、できる部位によって、「結腸がん」と「直腸がん」に分類されています。直腸がんと結腸がんの発生する比率は、大体 1 対 1.3 です。
日本では、大腸がんは、増加の一途をたどっており、現在では、毎年約8万人以上が大腸がんになっています。
発祥のピークは60歳代で、70歳代、50歳代が続きます。
男女比はほぼ 1対1 ですが、やや男性に多い傾向があります。
日本で大腸がんがふえている要因としては次の2つが考えられています。
1つは社会の恒例にかによる高齢者人口の増加です。
これは多くのがんで言えることですが、高齢者に発祥しやすい病気なので、高齢者が増えれば患者さんの数も増えることになります。
もう1つは、食生活の欧米化が関係していると考えられています。
食生活が欧米化していることによって、脂質や、動物性たんぱく質の
摂取量が増え、炭水化物や食物繊維の摂取量が減っています。
そのため、便が大腸内に停留する時間が長くなり、食べたものに含まれていたり、代謝によって生じた発がん性の物質が大腸の粘膜に接している時間が長くなってしまうのです。
しかし一方で、大腸がんは、適切な治療を受ければ、直る確率の高いがんでもあります。大腸がんの約70%は「高分化腺がん」でこのタイプは、比較的穏やかな性質です。
進行のスピードもそれほど速くはありません。
早い時期に発見できれば、内視鏡による手術や手術でほぼ完全に治すことができます。
また、肝臓などへの転移がある場合でも、そのうちの約3~4割は手術が適応となり、その約4割が治っています。
さらに再発した場合も手術によって、対処できるケースも少なくありません。
◆大腸ポリープとの関係
ポリープとは、「出っぱっているこぶのようなもの」という総称で間違いありません。
大腸がんの多くは、ポリープを経て発症します。
そのため大腸のポリープはがんの芽のようなものだと考えられがちですが、決してそうでもないのです。
健康な人に大腸の内視鏡検査を行っても、60歳代では約6割、50歳代は約5割の確率でポリープが見つかります。
がん化するのは、このなかのごく一部に過ぎません。
ポリープが5mm前後の大きさであれば、がんの心配はまずありません。
そのまま放置して、2~3年後に内視鏡による観察を行います。
そこで1cm以上に大きくなっていた場合には内視鏡で切除します。
◆症状
がんがある程度大きくなると、がんから出血が起きたり、
がんによって大腸の内腔が狭くなることによって、「血便」や「排便異常」などの症状が現れてきます。
血便は、がんから出血した血液が便に混じることで起こり、
がんができた部位が肛門に近いほど、はっきりした真っ赤な血液がついた便になります。
がんが肛門から少しはなれたS字結腸にできた場合は、
血液が変色して黒っぽくなります。
また、血液と粘液が便に付着した粘血便となります。
このような血便の症状は、痔による出血と勘違いして、発見が遅れることもあります。血便があった場合には、医療機関できちんと検査を受けることが大切です。
肛門から遠く離れた上行結腸などにできたがんでは、たとえ出血があっても、血液が便に混ざってしまい、肉眼では分からないことも少なくありません。
そのため、がんがかなり進行して、「腹部にしこり」ができたり、がんからの出血が続くことで貧血になり「動悸・息切れ」などの症状が現れてから発見されることもあります。
また、大腸の内腔ががんで狭くなった場合には、「便が細くなる、排便後に残便感がある」といった症状が出やすくなります。
便の通りが悪くなることによって、「腹痛」が引き起こされることもあります。
こうした排便異常や腹痛も、がんが肛門に近い位置にできている場合に現れやすい症状です。
肛門から遠い部位では、通過する内容物がまだ水分を多く含んでいて
ドロドロの状態なので、例え内腔が狭くなっていても通過できます。
そのため、これらの症状は出にくいのです。
このように、がんのできる部位によっては、症状が出ないこともあります。
早期発見のためには、定期的な検査を受けることが大切になります。