大腸がんの中でも、直腸がんについては、治療や手術には注意が必要です。
直腸は、骨盤内の深く狭いところにあるので、部位によっては、開腹手術であっても決して簡単に切除できるというわけではありません。
直腸の周囲には、子宮や卵巣、膀胱や前立腺などがあり、これらは自律神経という細い神経繊維によって、排便や排尿、性機能など日常生活を送るうえでは欠かすことが出来ない機能がコントロールされています。
大腸がんでも直腸にできたがんの手術をすると、少し前まではこれらの自律神経を傷つけてしまうことが多く、排便や排尿、性機能に大きな障害が残ってしまっていました。
最近では、自律神経温存術という自律神経をできる限り残しつつ、がん部分を取り除くという方法が用いられています。
直腸がん患者で自律神経温存術を行った人のうち、約8割以上の人が人工肛門を付けずに済んでいます。
男性の場合では、勃起機能や射精機能を残すことも可能となりました。
直腸がんの手術では、このように自律神経を温存出来るかが、その後の日常生活を左右する要因でもありますが、がんが自律神経のすぐ近くに出来てしまった場合など、自律神経を犠牲にしてでもがんを取り除かなければならないケースもあります。
直腸がんでも、早期発見・早期治療が出来た場合には、開腹手術ではなく、肛門と仙骨付近の皮膚や直腸を切開してがん部分にまでたどり着き、がんを取り除くという局所切除をいう方法を用いる場合もあります。