肺がんの検査と診断
肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。
また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。
一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。
さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。
肺がんの症状と合併症
肺癌の症状は、癌の種類や位置、その広がり方によって異なります。普通、初期症状として最も多くみられるのは、長期間続くせきです。慢性気管支炎で、さらに肺癌を発症した患者は、せきの悪化に気づきます。せきに伴うたんの中に血が混ざる、喀血(肺と気道の病気の症状と診断: 喀血を参照)がみられることがあります。肺癌が血管内にまで達すると、ひどい出血を起こします。
肺癌が気管支の内部や周囲で増殖して、気管支を狭くすると、喘鳴(ぜんめい)が生じる場合があります。気管支の閉塞によって、その気管支とつながる肺の一部がつぶれることがあり、この状態を無気肺(無気肺を参照)といいます。また、気管支の閉塞によってせき、発熱、胸痛を伴う息切れや肺炎なども起こります。胸壁の内部で腫瘍が増殖すると、持続的な胸痛が生じることがあります。
肺癌が首の特定の神経の内部で増殖すると、まぶたが垂れ下がったり、瞳孔が縮んだり、目が落ちくぼんだり、顔の半面に汗をかきにくくなるなどの症状が起こることがあり、これらの症状をまとめてホルネル症候群(まぶたが下がるホルネル症候群を参照)と呼びます。肺の上端に生じた癌が腕の動きを支配する神経の内部に増殖すると、腕に痛みや麻痺(まひ)、筋力低下などが生じ、こうした症状をパンコースト症候群といいます。声帯へ続く神経が損傷を受けると、声がしゃがれます。この損傷は主に、左肺を含む部位に癌が発症した人に起こります。
肺癌が直接、食道の内部や周囲で増殖して食道が圧迫されると、ものが飲みこみにくくなります。ときに、癌の進行によって食道と気管支の間にフィステル(瘻[ろう])という異常な通路ができ、食べものや飲みものが肺に入るために、ものを飲みこむ際にひどいせきが出ます。
肺癌が心臓の内部で増殖すると、不整脈、心臓を通る血流の閉塞、心臓の周囲にある心膜嚢への液体の貯留が起こります。癌が胸部にある大静脈の1つ、上大静脈の内部で増殖したりこれを圧迫することがあり、この状態を上大静脈症候群といいます。上大静脈が詰まると、上半身にある他の静脈への血液の逆流が起こります。胸壁内部にある静脈が拡張します。顔、首、乳房を含む胸壁の上部はむくんで、薄い紫色になります。さらに息切れ、頭痛、視覚異常、めまい、眠気なども生じます。これらの症状は普通、前かがみになったり横になると悪化します。
普通、後になって生じる肺癌の症状には、食欲不振、体重減少、疲労感、筋力低下などがあります。肺の周囲に液体がたまる胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)は、癌が胸膜腔の内部にまで広がって起こります。胸水は息切れを起こします。癌が肺の内部にまで広がると、ひどい息切れ、血液中の酸素濃度の低下、肺性心(肺高血圧によって発症する肺性心についてを参照)が生じる場合があります。
肺癌は血流を通って、肝臓、脳、副腎、脊椎、骨に転移することもあります。体の他の部分への転移はあまりみられません。肺癌の、特に小細胞癌の転移は発症早期に起こる場合があります。肺の異常が確認される前に、頭痛、錯乱、けいれん、骨の痛みなどの症状が起こり、早期診断を困難にします。
腫瘍随伴症候群(腫瘍随伴症候群とはを参照)は、肺癌によって生じるさまざまな症状で、代謝系、神経系、筋肉など肺から離れた部位に生じます。腫瘍随伴症候群は、肺癌の大きさや位置とは関係がなく、癌が胸部以外に転移したことを示すわけでもありません。むしろ、癌のために分泌されたホルモン、サイトカインなどのさまざまなタンパク質によって腫瘍随伴症候群が生じます。
肺癌が気管支の内部や周囲で増殖して、気管支を狭くすると、喘鳴(ぜんめい)が生じる場合があります。気管支の閉塞によって、その気管支とつながる肺の一部がつぶれることがあり、この状態を無気肺(無気肺を参照)といいます。また、気管支の閉塞によってせき、発熱、胸痛を伴う息切れや肺炎なども起こります。胸壁の内部で腫瘍が増殖すると、持続的な胸痛が生じることがあります。
肺癌が首の特定の神経の内部で増殖すると、まぶたが垂れ下がったり、瞳孔が縮んだり、目が落ちくぼんだり、顔の半面に汗をかきにくくなるなどの症状が起こることがあり、これらの症状をまとめてホルネル症候群(まぶたが下がるホルネル症候群を参照)と呼びます。肺の上端に生じた癌が腕の動きを支配する神経の内部に増殖すると、腕に痛みや麻痺(まひ)、筋力低下などが生じ、こうした症状をパンコースト症候群といいます。声帯へ続く神経が損傷を受けると、声がしゃがれます。この損傷は主に、左肺を含む部位に癌が発症した人に起こります。
肺癌が直接、食道の内部や周囲で増殖して食道が圧迫されると、ものが飲みこみにくくなります。ときに、癌の進行によって食道と気管支の間にフィステル(瘻[ろう])という異常な通路ができ、食べものや飲みものが肺に入るために、ものを飲みこむ際にひどいせきが出ます。
肺癌が心臓の内部で増殖すると、不整脈、心臓を通る血流の閉塞、心臓の周囲にある心膜嚢への液体の貯留が起こります。癌が胸部にある大静脈の1つ、上大静脈の内部で増殖したりこれを圧迫することがあり、この状態を上大静脈症候群といいます。上大静脈が詰まると、上半身にある他の静脈への血液の逆流が起こります。胸壁内部にある静脈が拡張します。顔、首、乳房を含む胸壁の上部はむくんで、薄い紫色になります。さらに息切れ、頭痛、視覚異常、めまい、眠気なども生じます。これらの症状は普通、前かがみになったり横になると悪化します。
普通、後になって生じる肺癌の症状には、食欲不振、体重減少、疲労感、筋力低下などがあります。肺の周囲に液体がたまる胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)は、癌が胸膜腔の内部にまで広がって起こります。胸水は息切れを起こします。癌が肺の内部にまで広がると、ひどい息切れ、血液中の酸素濃度の低下、肺性心(肺高血圧によって発症する肺性心についてを参照)が生じる場合があります。
肺癌は血流を通って、肝臓、脳、副腎、脊椎、骨に転移することもあります。体の他の部分への転移はあまりみられません。肺癌の、特に小細胞癌の転移は発症早期に起こる場合があります。肺の異常が確認される前に、頭痛、錯乱、けいれん、骨の痛みなどの症状が起こり、早期診断を困難にします。
腫瘍随伴症候群(腫瘍随伴症候群とはを参照)は、肺癌によって生じるさまざまな症状で、代謝系、神経系、筋肉など肺から離れた部位に生じます。腫瘍随伴症候群は、肺癌の大きさや位置とは関係がなく、癌が胸部以外に転移したことを示すわけでもありません。むしろ、癌のために分泌されたホルモン、サイトカインなどのさまざまなタンパク質によって腫瘍随伴症候群が生じます。
肺がんの副作用と対策
がんに対する積極的な治療で苦痛や副作用を伴わない治療はありません。肺がんも同様です。
しかし、それをなるべく少なく、安全にという努力は日夜なされています。治療法ごとの副作用や苦痛、危険性などを列挙します。
外科療法
手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
放射線療法
主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
化学療法
主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
内視鏡治療(レーザー治療)
副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。
しかし、それをなるべく少なく、安全にという努力は日夜なされています。治療法ごとの副作用や苦痛、危険性などを列挙します。
外科療法
手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
放射線療法
主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
化学療法
主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
内視鏡治療(レーザー治療)
副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。
肺がんの簡単な説明
肺がんの分類
肺がん(肺癌)は肺から発生するがんの総称です。肺がんは,その性格,悪性度,今後の見込みを考え,さらに治療法を決定するために,いくつかの分類があります.
肺がんは,肺がんの顕微鏡検査により以下の二つに分類されています.
小細胞肺がん
非小細胞肺がん
小細胞肺がん
小細胞肺癌(しょうさいぼうはいがん)は,比較的少ないです。進行が早いので,発見時にはすでに転移(飛び火)をしてリンパ節や全身に広がっていることが多いです.抗がん剤や放射線治療に対して比較的よく効きます.
非小細胞肺がん
非小細胞肺癌(ひしょうさいぼうはいがん)は,肺がんの多くを占めております. 早い時期に発見して,手術をすれば,治ゆする可能性があります.抗がん剤や放射線治療に対して効きが良くありません.
非小細胞肺がんは,顕微鏡検査によりさらに次のように分類されています.
腺がん
扁平上皮がん
大細胞がん
その他
1).腺がん
腺(せん)がんは,肺の末梢にできることが多く,咳などの自覚症状がでにくいがんです.レントゲン写真に写りやすく,しばしば健康診断で発見されます.
2).扁平上皮がん
扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんは,喫煙との関係が深く,肺の根元にできることが多いです.
3).大細胞がん
大細胞(だいさいぼう)がんは,肺の末梢にできることが多いです.非小細胞肺がんのうちでも性質の悪い肺がんです.
原因
肺がんは遺伝子の病気と考えられています.肺がんに関連した遺伝子がいくつか発見され,研究されています.喫煙の影響は重要で,大気汚染の影響も考えられています。
症状
肺がんはあまり症状は出しません.そのために早い時期に発見するのが難しい病気です.症状としては咳(せき)や痰(たん)がありますが、これはあまり気に止めない人が多いと思います.健康診断や病院で偶然にレントゲンで異常を指摘されて驚く場合が多く見られます.その他の症状としては血痰(けったん)や胸の痛みや腕の痛みそれに顔の腫れなどの症状があります.
検査
胸部レントゲン検査
肺の異常をみるのに適しています.但し,肺の根元に病変があるときや,小さな病変では指摘するのが難しいです.
胸部CT検査
CT(コンピューター断層撮影)検査があります.これは病気の場所や形や広がりを見るのに,役に立ちます.しかし、胸部レントゲン検査やCT検査では肺がんを疑うことはできますが、確実に診断することはできません.
胸部MRI検査
これは病気の周囲との関係や広がりを見るのに役に立ちます.肺の検査ではCT検査の方が有効な情報量が多いので,MRI検査は必ず行われるものではありません.
転移の検査
がん転移(飛び火)の有無を調べるために、脳や肝臓や骨の検査をします。方法はCT検査、超音波検査、アイソトープ検査などを使用します。
痰(たん)
確実に診断するためには病変の細胞を顕微鏡で調べなくてはなりません.細胞をとる検査として、痰(たん)の検査があります.痰の検査は痰を病院に提出すればよいので楽な検査です.しかし、これで診断できるのは一部の肺がんです.
気管支鏡(きかんしきょう)検査
肺の内視鏡検査です.気管支鏡(きかんしきょう)検査と呼ばれています.気管支鏡は外来でできる検査で、喉(のど)や気管の中に麻酔(痛み止め)のスプレーをして行います.局所麻酔ですから,意識ははっきりしています.外来で行うことができます.肺の内部の観察ができます。また顕微鏡で調べるための病変を取ることもできます。
経皮的肺針生検
CT検査やレントゲン検査や超音波検査を行って,病変を直接見ながら肺に外から針を刺す検査です.顕微鏡で調べるための病変を取ることが目的です。局所麻酔(歯医者さんで受けるような一箇所の麻酔)が必要です.検査で肺から空気が漏れる可能性があるので,通常,入院して検査を行います.
胸腔鏡(手術)検査
上記の検査で診断がつかない場合に行います。全身麻酔が必要です。胸腔鏡検査は胸に小さな穴をあけて行う内視鏡手術で、通常の手術よりも痛みや傷が小さくてすみます。
体力検査
手術や治療を行う前に行います。肺活量、心電図、採血(肝機能、腎機能)、検尿などがあります。
進行度
肺がんの治療を考えるときには進行度の評価が重要です.進行度によって手術を受けた方が得か、受けないほうが得か決めなくてはなりません.
外科治療
肺がんの手術内容は肺のひとふさ(葉:よう)とリンパ節を切除することです.手術は皮膚を大きく切って病変に達して行う従来からの方法と皮膚に小さな傷をつけて行う胸腔鏡(きょうくうきょう)手術という方法があります.切る場所は病変の部位や大きさによって違います.
胸腔鏡手術とは胸腔鏡を用いた手術です.胸腔鏡は先端に小型のカメラを装着した棒で、これを直径5-12mm程の穴を通じて胸に入れます.このカメラは拡大した視野が得られるので中を観察することができるのです.穴をさらに1-3個開けて、電気メスやハサミを使用して手術を行います.利点は手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少ないことです.しかし、手術が難しい場合などには従来の方法に途中で変更しなくてはならないこともあります
肺がん(肺癌)は肺から発生するがんの総称です。肺がんは,その性格,悪性度,今後の見込みを考え,さらに治療法を決定するために,いくつかの分類があります.
肺がんは,肺がんの顕微鏡検査により以下の二つに分類されています.
小細胞肺がん
非小細胞肺がん
小細胞肺がん
小細胞肺癌(しょうさいぼうはいがん)は,比較的少ないです。進行が早いので,発見時にはすでに転移(飛び火)をしてリンパ節や全身に広がっていることが多いです.抗がん剤や放射線治療に対して比較的よく効きます.
非小細胞肺がん
非小細胞肺癌(ひしょうさいぼうはいがん)は,肺がんの多くを占めております. 早い時期に発見して,手術をすれば,治ゆする可能性があります.抗がん剤や放射線治療に対して効きが良くありません.
非小細胞肺がんは,顕微鏡検査によりさらに次のように分類されています.
腺がん
扁平上皮がん
大細胞がん
その他
1).腺がん
腺(せん)がんは,肺の末梢にできることが多く,咳などの自覚症状がでにくいがんです.レントゲン写真に写りやすく,しばしば健康診断で発見されます.
2).扁平上皮がん
扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんは,喫煙との関係が深く,肺の根元にできることが多いです.
3).大細胞がん
大細胞(だいさいぼう)がんは,肺の末梢にできることが多いです.非小細胞肺がんのうちでも性質の悪い肺がんです.
原因
肺がんは遺伝子の病気と考えられています.肺がんに関連した遺伝子がいくつか発見され,研究されています.喫煙の影響は重要で,大気汚染の影響も考えられています。
症状
肺がんはあまり症状は出しません.そのために早い時期に発見するのが難しい病気です.症状としては咳(せき)や痰(たん)がありますが、これはあまり気に止めない人が多いと思います.健康診断や病院で偶然にレントゲンで異常を指摘されて驚く場合が多く見られます.その他の症状としては血痰(けったん)や胸の痛みや腕の痛みそれに顔の腫れなどの症状があります.
検査
胸部レントゲン検査
肺の異常をみるのに適しています.但し,肺の根元に病変があるときや,小さな病変では指摘するのが難しいです.
胸部CT検査
CT(コンピューター断層撮影)検査があります.これは病気の場所や形や広がりを見るのに,役に立ちます.しかし、胸部レントゲン検査やCT検査では肺がんを疑うことはできますが、確実に診断することはできません.
胸部MRI検査
これは病気の周囲との関係や広がりを見るのに役に立ちます.肺の検査ではCT検査の方が有効な情報量が多いので,MRI検査は必ず行われるものではありません.
転移の検査
がん転移(飛び火)の有無を調べるために、脳や肝臓や骨の検査をします。方法はCT検査、超音波検査、アイソトープ検査などを使用します。
痰(たん)
確実に診断するためには病変の細胞を顕微鏡で調べなくてはなりません.細胞をとる検査として、痰(たん)の検査があります.痰の検査は痰を病院に提出すればよいので楽な検査です.しかし、これで診断できるのは一部の肺がんです.
気管支鏡(きかんしきょう)検査
肺の内視鏡検査です.気管支鏡(きかんしきょう)検査と呼ばれています.気管支鏡は外来でできる検査で、喉(のど)や気管の中に麻酔(痛み止め)のスプレーをして行います.局所麻酔ですから,意識ははっきりしています.外来で行うことができます.肺の内部の観察ができます。また顕微鏡で調べるための病変を取ることもできます。
経皮的肺針生検
CT検査やレントゲン検査や超音波検査を行って,病変を直接見ながら肺に外から針を刺す検査です.顕微鏡で調べるための病変を取ることが目的です。局所麻酔(歯医者さんで受けるような一箇所の麻酔)が必要です.検査で肺から空気が漏れる可能性があるので,通常,入院して検査を行います.
胸腔鏡(手術)検査
上記の検査で診断がつかない場合に行います。全身麻酔が必要です。胸腔鏡検査は胸に小さな穴をあけて行う内視鏡手術で、通常の手術よりも痛みや傷が小さくてすみます。
体力検査
手術や治療を行う前に行います。肺活量、心電図、採血(肝機能、腎機能)、検尿などがあります。
進行度
肺がんの治療を考えるときには進行度の評価が重要です.進行度によって手術を受けた方が得か、受けないほうが得か決めなくてはなりません.
外科治療
肺がんの手術内容は肺のひとふさ(葉:よう)とリンパ節を切除することです.手術は皮膚を大きく切って病変に達して行う従来からの方法と皮膚に小さな傷をつけて行う胸腔鏡(きょうくうきょう)手術という方法があります.切る場所は病変の部位や大きさによって違います.
胸腔鏡手術とは胸腔鏡を用いた手術です.胸腔鏡は先端に小型のカメラを装着した棒で、これを直径5-12mm程の穴を通じて胸に入れます.このカメラは拡大した視野が得られるので中を観察することができるのです.穴をさらに1-3個開けて、電気メスやハサミを使用して手術を行います.利点は手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少ないことです.しかし、手術が難しい場合などには従来の方法に途中で変更しなくてはならないこともあります
肺がんの症状と検査
肺がんの症状
肺がんは、症状が出る前に健康診断などで発見されることもありますが、多くは4週間以上続く咳(せき)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器の症状をきっかけに発見されます。
まれに、胸膜への転移(胸水貯留)や脳転移の症状(頭痛、吐き気、嘔吐)、骨転移(腰痛や胸痛)などで見つかることもあります。
気管・気管支に発生するタイプの肺がんは、血痰や咳、呼吸困難などの症状が出やすく、早期に発見されることも多いのですが、肺の末梢に発生するタイプの肺がんは、がんが大きくなるまで無症状のことが多く、要注意です。
検査と診断
まず肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。
肺がんは、症状が出る前に健康診断などで発見されることもありますが、多くは4週間以上続く咳(せき)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器の症状をきっかけに発見されます。
まれに、胸膜への転移(胸水貯留)や脳転移の症状(頭痛、吐き気、嘔吐)、骨転移(腰痛や胸痛)などで見つかることもあります。
気管・気管支に発生するタイプの肺がんは、血痰や咳、呼吸困難などの症状が出やすく、早期に発見されることも多いのですが、肺の末梢に発生するタイプの肺がんは、がんが大きくなるまで無症状のことが多く、要注意です。
検査と診断
まず肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。
肺がんの予防
肺がんの予防
疾病を起こす見込みを増加させるものはすべて危険要因と呼ばれます。;疾病をおこす見込みを減少させるものはすべて保護要因と呼ばれます。
癌(がん)の危険要因のいくつかは回避することができますが、多くは回避できません。
例えば、たばこを吸うことをやめることはできますが、親からどの遺伝子を受け継ぐか決めることはできません。
喫煙と特定の遺伝子を継承することをある種類の癌(がん)の危険要因と考えることができますが、喫煙だけが回避することができます。予防は危険要因を回避し、癌(がん)になる見込みが減少するように制御することができる保護要因を増加させることを意味します。
多くの危険要因を回避することができますが、危険要因を回避することがあなたを癌(がん)にしないと保証するわけではないことを心に留めておくことは重要です。
さらに、癌(がん)の特別な危険要因を持ったほとんどの人々は現実に癌(がん)になりません。
癌(がん)の原因となる要因へ他の人より敏感な人がいます。あなたにとって有効かもしれない癌(がん)を防ぐ方法に関してあなたの医師に尋ねてください。
肺は呼吸器の一部です。肺の機能は血液から二酸化炭素を排除する一方、酸素を供給することです。
肺がんは、リンパ節あるいは胸の他の組織(別の肺を含む)に広がるかもしれません。多くの場合、肺癌(はいがん)がさらに骨、脳、肝臓のような身体の他の器官に広がるかもしれません。
肺がんは米国の男性および女性の癌(がん)死の主要な原因です。
肺がんは、しばしば疾病のための既知の危険要因に関係しています。危険要因のすべてを回避することができませんが、多くは限定可能です。
タバコ
研究は、いかなる形式でもタバコ製品を吸うことが肺がんの主な原因であることを示します。環境か受動的なタバコ煙も肺がんを引き起こすことに関連します。ニコチンガム、ニコチンスプレー、ニコチン吸入器のような多くの製品が喫煙を中止するための試みに有用かもしれません。さらに、地域、州、全国的な多くの努力は、喫煙割合を縮小することを支援しました。
ベータ・カロチン
研究はベータ・カロチン使用は比較的高い強度の喫煙者における肺がんの危険を減少させます。
化学予防
化学予防は癌(がん)成長を逆転するか、抑えるか、防ぐ特定の自然か人造の薬の使用です。化学予防は活発な臨床の研究の領域です。これはまだ標準治療になっていません。
肺がんの他の危険要因には石綿およびラドン曝露があります。
疾病を起こす見込みを増加させるものはすべて危険要因と呼ばれます。;疾病をおこす見込みを減少させるものはすべて保護要因と呼ばれます。
癌(がん)の危険要因のいくつかは回避することができますが、多くは回避できません。
例えば、たばこを吸うことをやめることはできますが、親からどの遺伝子を受け継ぐか決めることはできません。
喫煙と特定の遺伝子を継承することをある種類の癌(がん)の危険要因と考えることができますが、喫煙だけが回避することができます。予防は危険要因を回避し、癌(がん)になる見込みが減少するように制御することができる保護要因を増加させることを意味します。
多くの危険要因を回避することができますが、危険要因を回避することがあなたを癌(がん)にしないと保証するわけではないことを心に留めておくことは重要です。
さらに、癌(がん)の特別な危険要因を持ったほとんどの人々は現実に癌(がん)になりません。
癌(がん)の原因となる要因へ他の人より敏感な人がいます。あなたにとって有効かもしれない癌(がん)を防ぐ方法に関してあなたの医師に尋ねてください。
肺は呼吸器の一部です。肺の機能は血液から二酸化炭素を排除する一方、酸素を供給することです。
肺がんは、リンパ節あるいは胸の他の組織(別の肺を含む)に広がるかもしれません。多くの場合、肺癌(はいがん)がさらに骨、脳、肝臓のような身体の他の器官に広がるかもしれません。
肺がんは米国の男性および女性の癌(がん)死の主要な原因です。
肺がんは、しばしば疾病のための既知の危険要因に関係しています。危険要因のすべてを回避することができませんが、多くは限定可能です。
タバコ
研究は、いかなる形式でもタバコ製品を吸うことが肺がんの主な原因であることを示します。環境か受動的なタバコ煙も肺がんを引き起こすことに関連します。ニコチンガム、ニコチンスプレー、ニコチン吸入器のような多くの製品が喫煙を中止するための試みに有用かもしれません。さらに、地域、州、全国的な多くの努力は、喫煙割合を縮小することを支援しました。
ベータ・カロチン
研究はベータ・カロチン使用は比較的高い強度の喫煙者における肺がんの危険を減少させます。
化学予防
化学予防は癌(がん)成長を逆転するか、抑えるか、防ぐ特定の自然か人造の薬の使用です。化学予防は活発な臨床の研究の領域です。これはまだ標準治療になっていません。
肺がんの他の危険要因には石綿およびラドン曝露があります。
肺がんの遺伝子治療とは
肺がんの遺伝子治療とは
最近のめざましい遺伝子工学の進歩によって,多くの病気が遺伝子レベルの異常によって引き起こされていることがわかってきました.病気の原因となっている『異常な遺伝子』を同定し,代わりに人工的に作った『正常な遺伝子』を外部から細胞内に補充して細胞本来の機能を回復させることによって病気の治療を行うというのが遺伝子治療の考え方です.
世界で初めてヒトに対する遺伝子治療が行われたのは1990年のことです.対象となったのは,ADA欠損症という病気の4歳の女児でした.これは生まれながらにADAとういう大切な酵素を産生する遺伝子に異常があるために正常なADAが作られず,結果として重症の免疫不全を生じる病気です.米国国立衛生研究所の医師団はこの患者に正常なADA産生遺伝子を投与して効果をあげたのです。
ADA欠損症のように,体に必要な酵素を産生する遺伝子に生まれつき異常があるような病気(先天性代謝異常症)は正常な遺伝子を投与して酵素を補充するだけで治療効果が得られやすいため,遺伝子治療の良い適応と考えられています.
がん遺伝子とがん抑制遺伝子
がんの発生や進行にはさまざまな遺伝子が関わっています。これらの遺伝子はその働きから大きくがん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に分けられます。これらの遺伝子に異常が起こるとがんが発生したり増殖したりします。がんを自動車に例えると、がん遺伝子は自動車のアクセル、がん抑制遺伝子は自動車のブレーキに相当します。すなわちがん遺伝子の異常はアクセルが踏み込まれ自動車が加速した状態、がん抑制遺伝子の異常はブレーキが壊れて自動車が止まらなくなった状態と考えられます。このようにして自動車が暴走するようにがん細胞は増殖していきます。
がんの遺伝子治療
がんに対する遺伝子治療では,これら遺伝子の異常を同定し,『がん原遺伝子』に異常があればこれを不活化する遺伝子を投与するか,『がん抑制遺伝子』が不活化していれば『正常ながん抑制遺伝子』を投与する,といった方法が基本となっています.また,がん細胞に対する免疫能を強化する目的でがん患者さん自身のリンパ球にある種の遺伝子を組み入れて強力なリンパ球に変化させてから再び体内に戻してがんを攻撃させる方法などもあります。
小細胞肺がんと非小細胞肺がん
肺がんには主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があります。治療方法は小細胞がんとそれ以外の肺がんでは大きく異なるため、小細胞がん以外の肺がんを非小細胞肺がんと総称します。非小細胞肺がんは、早期のものでは手術が最善の治療法ですが、不幸にもがんが進行してしまった場合には手術で病巣を切除することは困難です。また抗がん剤などの治療も効きにくい種類のがんです。このがんに対して新しい治療法として遺伝子治療が試みられるようになりました。
最近のめざましい遺伝子工学の進歩によって,多くの病気が遺伝子レベルの異常によって引き起こされていることがわかってきました.病気の原因となっている『異常な遺伝子』を同定し,代わりに人工的に作った『正常な遺伝子』を外部から細胞内に補充して細胞本来の機能を回復させることによって病気の治療を行うというのが遺伝子治療の考え方です.
世界で初めてヒトに対する遺伝子治療が行われたのは1990年のことです.対象となったのは,ADA欠損症という病気の4歳の女児でした.これは生まれながらにADAとういう大切な酵素を産生する遺伝子に異常があるために正常なADAが作られず,結果として重症の免疫不全を生じる病気です.米国国立衛生研究所の医師団はこの患者に正常なADA産生遺伝子を投与して効果をあげたのです。
ADA欠損症のように,体に必要な酵素を産生する遺伝子に生まれつき異常があるような病気(先天性代謝異常症)は正常な遺伝子を投与して酵素を補充するだけで治療効果が得られやすいため,遺伝子治療の良い適応と考えられています.
がん遺伝子とがん抑制遺伝子
がんの発生や進行にはさまざまな遺伝子が関わっています。これらの遺伝子はその働きから大きくがん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に分けられます。これらの遺伝子に異常が起こるとがんが発生したり増殖したりします。がんを自動車に例えると、がん遺伝子は自動車のアクセル、がん抑制遺伝子は自動車のブレーキに相当します。すなわちがん遺伝子の異常はアクセルが踏み込まれ自動車が加速した状態、がん抑制遺伝子の異常はブレーキが壊れて自動車が止まらなくなった状態と考えられます。このようにして自動車が暴走するようにがん細胞は増殖していきます。
がんの遺伝子治療
がんに対する遺伝子治療では,これら遺伝子の異常を同定し,『がん原遺伝子』に異常があればこれを不活化する遺伝子を投与するか,『がん抑制遺伝子』が不活化していれば『正常ながん抑制遺伝子』を投与する,といった方法が基本となっています.また,がん細胞に対する免疫能を強化する目的でがん患者さん自身のリンパ球にある種の遺伝子を組み入れて強力なリンパ球に変化させてから再び体内に戻してがんを攻撃させる方法などもあります。
小細胞肺がんと非小細胞肺がん
肺がんには主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があります。治療方法は小細胞がんとそれ以外の肺がんでは大きく異なるため、小細胞がん以外の肺がんを非小細胞肺がんと総称します。非小細胞肺がんは、早期のものでは手術が最善の治療法ですが、不幸にもがんが進行してしまった場合には手術で病巣を切除することは困難です。また抗がん剤などの治療も効きにくい種類のがんです。このがんに対して新しい治療法として遺伝子治療が試みられるようになりました。
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