肺がんを防ぐ12カ条

1.バランスのとれた栄養をとる食物は、生命の根源。私たちの健康を守る第1のカギが、毎日の食事であることはいうまでもありません。栄養のバランスがくずれると、さまざまなかたちで体に支障があらわれ、さらには病気の原因にもなります。今や日本人の死亡原因の第1位となった病気、がんもその例外ではありません。最近、食物のかたよりと発がんの関係が、疫学調査や動物実験によって明らかになってきました。わかってきたのは、私たちが日々食べている食品群の中に、がんを引きおこす物質とがんを抑える物質がともに存在しているということです。
発がんを抑える栄養素として、ビタミンAやビタミンC、Eなどがクローズアップされ、食物繊維にも発がん抑制の効果が知られています。ですから、食事の際はできるだけ多くの種類の食品をとり、食物中の発がん物質の作用を相殺していくことが大切です。
最近では、調理済み食品の利用が高まり、材料の種類も限られるせいか、栄養の面でかなりのアンバランスをきたしていることが、国民栄養調査の結果にもでています。脂肪の摂取は昭和30年当時の約3倍に増える一方、食べる野菜の量は少なくなってきています。野菜料理をどんどん食卓に加え、偏食せずにいろいろなものをバランスよく食べることは、栄養の面ばかりではなく、発がんの危険を低下させるという点からも大切なことです。
2.毎日、変化のある食生活を多くの人は特定の食物に対して嗜好があるので、好きなものを繰り返し食べがちです。問題は度がすぎることです。食物中の発がん物質の濃度は、たいていはそれほど高くないのですが、同じ食品ばかり食べ続けることは、体をいつもがんの危険にさらすことになります。バランスのよい栄養をとること、ただ、それも、にんじんにカロテンがあっていいからと、そればかり食べるのではなく、できるだけ多くの緑黄色野菜からカロテンをとることが望ましいのです。バランスよく、そしてバラエティーのある食生活を心がけてください。同じものを繰り返さないという注意は、薬にもいえます。医師の指示で必要とされる場合以外は、同一の薬を飲み続けることは極力さけたほうが賢明です。
○3.食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに「長生きの秘けつは腹八分目にあり」とよくいわれますが、がんについても同じことがいえそうです。ネズミの実験によると、好きなだけ食べさせたグループと、食事量を60パーセントくらいに制限したグループとでは、制限グループのほうが発がん率が低く、長生きしているという結果がでています。食べすぎの中でも、とくに問題とされるのが脂肪の量で、脂肪をとりすぎると乳がんになりやすいという報告があります。食べすぎと脂肪のとりすぎには、十分気をつけましょう。
4.お酒はほどほどにお酒が健康を害するといえば、一般に肝臓を考えますね。でも、飲みすぎが及ぼす悪影響は、肝臓だけにはとどまりません。WHO(世界保健機関)の調査では、過度の飲酒と、口腔がん、喉頭がん、食道がんは関係があるという報告がなされています。アルコールの多量摂取と肝臓がんの発生にも関係がみとめられています。また、酒好きの人は、つまみを食べずにお酒だけを飲むことが多いので、栄養のバランスがくずれて、がんになりやすい体の条件をつくる可能性も高いわけです。とくに、飲みすぎのうえにたばこが重なると、悪い因子が相乗的にはたらいて、がんの危険も増します。飲酒中のたばこは極力ひかえるよう努力し、強いお酒は薄めて飲むか、水といっしょに飲むようにしましょう。まずはお酒をほどほどに。
5.タバコは吸わないようにタバコと肺がんの間に深い関係があることはみなさんもご存知でしょう。40歳以上の日本人男性、12万人以上を、長期間にわたって調査した結果、1日 25本以上たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、喉頭がんが90倍以上、肺がんが7倍の死亡比になることがわかっています。しかし、禁煙すればがんになる危険はそれ以上増えず、禁煙後5年くらいたつとほとんど吸わない人と同じくらいの状態に近づきます。最近は、吸っている本人だけでなく、周囲の人に与えるたばこの害が問題になっています。紙巻たばこの火のついているほうから出る紫色の煙は、吸い口のほうから出る煙よりも、ある種の発がん物質については含有量が高いことが知られています。
妻が吸わなくても、夫が1日20本以上吸うヘビースモーカーの場合、喫煙しない夫をもつ妻と比べて、肺がんの死亡率が2倍も高いという報告もあります。日本でも諸外国と同様、肺がんが年々増え、平成10年(1998年)には、胃がんを抜いてがん死亡のトップになりました。肺がんの予防のために禁煙を心がけましょう。どうしてもというなら、できるだけ本数を減らしてください。また、たばこを吸いはじめる年齢が低いほど肺がんにかかりやすいということもわかっています。未成年の喫煙にはまわりでも気を配って、絶対に止めるようにしていきたいものです。
6.食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとるビタミン類は、人間の体にとって「潤滑油」のようなもの。なかでも、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには、発がんを防ぐはたらきもあることが知られています。また、野菜などに含まれる繊維質にも、同じような効果があることは、第1項でもお話ししたとおりです。
<ビタミンA・カロテンを多く含む食品>
にんじん、ほうれん草、小松菜、春菊、にら、レバー、うなぎ、バター、チーズ
<ビタミンCを多く含む食品>
パセリ、ブロッコリー、ピーマン、たか菜、ほうれん草、いちご、キウイフルーツ、柿、レモン
<ビタミンEを多く含む食品>
落花生、胚芽米、大豆、ごま油、えんどう、いわし、うなぎ、卵
<食物繊維を多く含む食品>
干し柿、ひじき、ライ麦パン、甘栗、ファイバーパン、いんげん豆(乾)、そら豆(乾)、ポップコーン、糸引納豆、おから
7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから日本人の代表的ながんといえば、胃がんがあげられます。その割合は、少しずつ減ってきているとはいえ、肺がんをわずかに下回る状況であり、大腸がん、肝臓がんや乳がんなど他のがんに比べるとまだ圧倒的に多いのが現状です。この胃がんの発生に密接な関係があると指摘されているのが、塩分の摂取です。1日にとる食塩の望ましい量は、10グラム以下とされています。食塩のとりすぎが脳卒中や心臓病などの循環器疾患を起こしやすく、一般に塩をひかえる傾向にあり、胃がんの死亡率も確実に下がってきていますが、全国平均1人1日当たりの食塩摂取量は、下図に示すとおり、まだ10グラム以下にはなっていません。特に最近では摂取量の下がり方が鈍ってきています。また、胃がん死亡率には地域差があることが知られていますが、この差も塩分の摂取との間に密接な関係があります。しおからなど塩分の多い食品を大量に食べないことと、できるだけ塩味を抑えた調理を心がけましょう。また、熱い茶がゆをよく食べる地方に食道がんが多いという報告もあり、食塩の場合と同じように、熱いものはがんが発生しやすい状況をつくります。あまり熱いものはさましてから食べることをおすすめします。
8.焦げた部分はさける魚や肉を焼いて焦がすと、細菌などに突然変異を引きおこす物質が生じることが、最近明らかになってきました。この焼け焦げに含まれる発がん物質は、調理温度が高く、調理時間が長くなるほど、量が増え、とくに、肉や魚、野菜などを直火で焼いたり、フライパンの上で熱を加えて焦がした場合に多くできます。普通、焦げた魚や肉の1食分で口に入る発がん物質の量は、ごくわずかです。しかし、焼け焦げの中に含まれる発がん物質は数種類が確認されていますし、また、でんぷんや糖などの炭水化物のお焦げにも、細菌の変異を引きおこすもとになる物質が含まれています。あまり神経質になる必要はありませんが、焦げた部分を大量に食べることはさけたほうがいいでしょう。
9.かびの生えたものに注意ひとくちにかびといっても、いろいろな種類があります。有害なのは、ピーナッツなどのナッツ類やとうもろこしにつくかびで、これには強い発がん性が認められています。東洋人に肝臓がんが多い理由として、B型肝炎ウィルスなどのほかに、このかびもが関わっているのではないかと疑う学者もいるほどです。外国のある地域で売られているピーナッツのほぼ50パーセントに、微量ながら発がん性のあるかびが認められたという報告もあります。日本では輸入の際に厳重にチェックされているので危険はありませんが、一応、食べる前によく確かめましょう。日本産のピーナッツは安全です。また、ある種のチーズのように意図的にかびを用いた食品については発がんの心配はありません。
10.日光に当たりすぎないかつて、海や山で太陽の日ざしを浴びて肌をかっ色にやくことが、健康のシンボルであるかのようにいわれた時期がありました。ところが、最近では、紫外線が皮膚に有害であることがわかって、肌のやきすぎはなるべく避けたほうがいいといわれています。紫外線でやけた肌は、一種のやけどの状態にあります。炎症が続くと、細胞の遺伝子が傷つけられ、がんを誘発する可能性も高いわけです。人種的にみると、紫外線に過敏に反応するのは、メラニン色素の少ない白人で、熱帯地方にすむ白人には皮膚がんや悪性黒色腫が多いといわれます。それに比べると黒人はずっと紫外線に強く、日本人も黒人並みに耐性があります。そのため、わが国では比較的、皮膚がんや悪性黒色腫が少ないのですが、まっ黒に日焼けするほど肌をやくことは、なるべくなら避けましょう。
11.適度にスポーツをする「栄養」、「運動」、そして「休養」は健康な生活をおくるための条件といえます。疲労がたまれば、気分も憂うつになりがちです。さらに疲労が慢性化し、ストレスが続くと、体のいろいろな生理機能が低下して、病気にかかりやすくなります。がんになる危険も高いわけです。最近、1日中いすに座って仕事をしている人々の間に大腸がんが多いという研究結果もだされています。気分転換のためにも、そして健康づくりのためにも、積極的に機会をつくって、適度なスポーツを楽しみたいものです。
12.体を清潔に毎日、シャワーを浴びたり、入浴したりして体を清潔に保つことで、皮膚がんや陰茎がん、子宮頸がんなどがある程度予防できることをご存知ですか?200年ほど前のイギリスでの話ですが、煙突掃除を職業としている人々の間に陰嚢の皮膚がんが発生し、問題になりました。その後、煙突のススの中に皮膚がんの原因となるものが見つかり、仕事をしたあとは体を洗うようになって、この皮膚がんはみられなくなりました。これは、体を清潔にすることでがんの発生が予防できたいい例です。皮膚の汚れのたまりやすい部分を、いつも清潔に保つよう心がけましょう。

ピロリ菌検査とは?

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の強い酸の中でも生きることができる菌です。
螺旋状の形をしていて、胃の粘膜に住みついています。胃の中に入ってきた細菌は通常、胃酸によって殺菌されますが、ピロリ菌は持っている酵素によって、胃の中にある尿素をアンモニアに変え、アルカリ性のアンモニアで胃酸を中和して、胃酸の殺菌作用を逃れています。
 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の90%異常でピロリ菌が陽性を占めているといわれ、胃がんにも大きく関係していると考えられています。ただしピロリ菌が陽性でも潰瘍にならない人、陰性でも潰瘍になる人がいて、ピロリ菌だけが胃・十二指腸潰瘍の原因とはいえません。ストレス、暴飲暴食、喫煙、体質などのほかの因子も深く関係していると考えられています。
 
 ピロリ菌検査で何がわかるのか?
 胃・十二指腸潰瘍を繰り返して再発する人に、その原因としてピロリ菌が関与しているかどうかを調べます。陽性と出ればピロリ菌の関与が濃厚になります。また、最近の研究では胃がんの発生との関連も注目されており、陽性の場合はさらに検査をすることが望ましいでしょう。
 ピロリ菌検査はどのように行うのか?
 検査方法には、ピロリ菌が尿素をアンモニアに変えるときに二酸化炭素が発生する性質を利用して、尿素の入ったカプセルを服用する前と、服用後10~20分に、吐く息を採取してそこに含まれる二酸化炭素の量を調べる「呼気検査」、血液を採取して、そこにピロリ菌に対抗する抗体が含まれているかどうかを調べる「血液検査」、内視鏡で潰瘍を調べるとともに、胃粘膜も採取してピロリ菌を培養して調べる「内視鏡検査」の3つがあります。なかでも、呼気検査は簡単なうえに、信頼性も高いため広く行われています。
 異常があったらどうするか?
 除菌治療を行ないます。胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ・インヒビター(PPI)とアモキシシリン、クラリスロマイシンの抗生物質をあわせて1週間服用します。この3剤併用で、90%以上が除菌できるとされています。
 除菌治療では逆流性食道炎など色々な副作用が見られますが、自分で判断して薬を中止すると直りにくくなります。また、併せてペプシノーゲン検査を行なうと、慢性胃炎や萎縮性胃炎の進行が判別できます。

進行・再発胃がんの最新抗がん剤治療

拡大手術は生存を延長しない
 進行・再発胃がんに対する治療法が掲載されている『胃癌治療ガイドライン 第2版』 胃がんの最大の特徴は発見が早ければ内視鏡やメスを使った手術で比較的簡単に治る反面、転移性進行がん、再発がんの段階に入ると、とたんに「治らないがん」になってしまうことだ。治癒が望める治療法はあまりなく、治療は状況や症状に応じて行われる。
 日本胃癌学会がまとめた『胃癌治療ガイドライン 第2版』(2004年4月改訂)には進行・再発胃がんの治療法として、次の5つが紹介されている。
・拡大手術
・緩和手術(姑息手術)
・放射線治療
・化学療法
・緩和医療
 拡大手術というのは、切除するリンパ節の範囲を拡大したり、大腸、膵臓など、がんが転移した周辺臓器まで併せて切除する手術のことを言う。拡大手術が適応となるのは、あるレベル以上のリンパ節転移(N2)がある場合や、原発巣、転移巣が胃の周辺臓器に直接拡がり、一緒に切除しないと治癒が望めない場合だ。
 手術の最大のメリットは治癒を望めることにありますが、治癒を目指すには、がん細胞を最後の1つまで取らないと意味がない。そのため、拡大手術も検討されるわけですが、胃がんの場合、転移性進行がん、再発がんのレベルに入ると、それでは対応しきれない。理由は、遠隔転移がある胃がんの場合、検査画像あるいは術中の肉眼的に確認できる転移巣以外にも顕微鏡的レベルですでに拡がっていることが多く、同時多発的に何箇所にも出る傾向が強いからです。そのため拡大手術をしてもすぐ再発することが多く、生存期間を延ばすことにつながらないケースが多いのです
 実際に、リンパ節を拡大郭清する手術と、通常に郭清する手術との生存日数を比較した臨床試験でも、生存日数に統計学的な差はないとの結果が出ている。
 拡大手術は体に与えるダメージも大きく、長時間に及ぶ手術による出血量の増大、術後合併症などのリスクも増えるので、今後は選択されるケースが減少するものと思われる。
 一方で、がんの根治手術が望めないケースでは、緩和手術という選択もある。とくに進行胃がんでは狭窄、出血、低栄養などの切迫した症状を伴うことが多いため、食事摂取期間や在宅期間の延長などのQOL(生活の質)を高める目的で緩和手術が行われることがある。
 放射線治療が普及しなかった理由
 わが国では進行・再発胃がんの治療に積極的に放射線を使う機会は少なく、骨転移がある場合やがんの浸潤による疼痛がひどい場合に緩和的治療として行う程度だ。しかし、海外では手術と放射線治療を組み合わせた治療が標準治療になっている。その辺の事情を佐藤さんはこう話す。
 「海外で放射線治療が広く行われている背景には、海外の外科手術のレベルが日本ほど高くないという事情があります。日本は、胃がんの手術では世界のトップレベルにあり、海外なら放射線を併用するケースでも、手術のみで十分な成績が得られていた。日本で放射線治療が普及しなかった背景にはそんな事情があるのです」
 このように進行・再発胃がんに関してはどの治療法も一長一短があり、これまで生存期間の延長につながる有効な治療法がなかった。化学療法に関してもこれまで様々な取り組みがされてきたが、つい最近まで標準治療となるような有効な治療法がなかった。
 抗がん剤治療をしたほうが生存によい
 これまでわが国では切除不能の進行・再発胃がんの患者に対しては、60年代からずっと5-FU(一般名フルオロウラシル)を中心とした抗がん剤治療が行われてきた。
 しかし、はっきりとした効果が認められないケースが多かったため、80年代には、そもそも抗がん剤治療をする必要があるのかという声が上がり、抗がん剤治療をしたグループと、対症療法のグループの生存期間を比較する研究が行われた。
 その結果、やはり抗がん剤治療をしたほうが明らかに生存期間が伸びるという結果がでた。その後も様々な抗がん剤を組み合わせて生存期間の延長を目指す取り組みがなされてきたが、がんを縮小する面では一定の効果を上げたものの、患者さんの生存期間(中央値)を1年以上延ばすような顕著な延命効果を上げられるものはなく、標準と言えるような治療法は存在しなかった。
「抗がん剤の併用療法に関しては5-FUやその経口剤として開発されたUFT(一般名テガフール・ウラシル配合剤)などのフッ化ピリミジン系の抗がん剤やシスプラチン(商品名ブリプラチンなど)、アントラサイクリン系薬剤などを組み合わせる形で様々な研究がなされ、がんの縮小効果が50パーセント前後に達するものもありましたが、最終目標である生存期間の延長にはなかなか結びつかないのが実情でした」(佐藤さん)
『胃癌治療ガイドライン 第2版』では、切除不能進行胃がんに関しては標準治療と見なすことができるものはないと書かれているのもそのためだ。

化学放射線治療は胃がんにも有効

胃がん治療というと、誰もが思い浮かべるのが手術による外科治療だろう。じっさい胃がんに対しては抗がん剤も効きにくく、放射線治療にいたっては、ただ危険なだけと治療そのものが否定的に捉えられている。
 しかしこの数年で、そうした固定的ながん治療の捉え方に風穴をあけるような動きが見られ始めている。ごく少数の病院で、限られた症状の患者に対してだが、胃がん治療にも他の臓器のがんと同じように、放射線と抗がん剤を併用する化学放射線治療を導入され始めているのだ。
 そのひとつ、慶応大学病院では4年前から、病態がステージ4以上(一部ステージ3Bを含む)で手術不能と判断される胃がん患者を対象に同じ治療が行われている。腹腔鏡手術でも有名な同外科教授の北島政樹さん指導のもとでの新しい治療だ。
 現在にいたるまでの間に慶応大学病院で化学放射線治療を受けた胃がん患者は約40名に上っている。治療成績は従来の抗がん剤の単独治療によるそれをはるかに上回っており、現時点でのがんの完全消失率は10パーセントにも達している。同じく現時点での平均生存期間は18カ月。なかにはすでに4年以上、命を生き延びている患者もいるという。
 もっとも欧米では胃がんに対する化学放射線治療の可能性は、ずっと以前から注目されていた。たとえば01年5月に米国医学誌に発表されたマクドナルド医師らの臨床研究では、ステージ1B~ステージ4の胃がん患者556人を対象に根治手術後に化学放射線治療を施したグループ(281人)と、根治手術を単独で行った人たち(275人)の生存期間中央値、5年生存率を比較しているが、それぞれ35カ月と27カ月、50パーセントと41パーセントと明確な差異が生じていることが明らかになっている。慶応大学病院での取り組みはこうした胃がんに対する化学放射線治療の効果を裏づけるものといえるだろう。

胃がんの原因は本当にピロリ菌?

私たちの胃や腸には多くの細菌が生息しており、多くは病原性がなく、消化を助けるなどの有用な働きを持っています。ところが、胃の粘膜に生息するピロリ菌は、胃炎をはじめ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの様々な病気を引き起こすと問題視されています。
 現在、世界で約半数がピロリ菌の感染者だと考えられ、日本では約6千万人が感染しているとされています。とくに50歳以上に感染者が多く、60~70パーセントが感染者であるとする調査結果もあります。
 日本では毎年20万人から25万人が新たに胃がんと診断されています。6千万人がピロリ菌に感染しているのに、25万人しか胃がんにならないのであれば、ピロリ菌と胃がんの関係を疑問視する声が上がるのもしかたがないのかもしれません。
 「ピロリ菌に感染しているからといって、高い確率で胃がんになるわけではありませんが、疫学研究により、胃がん患者の胃粘膜に高頻度にピロリ菌が確認されています。発がんメカニズムはまだ明らかになっていませんが、ピロリ菌が産生するタンパク質(CagAというタンパク質)を胃の粘膜細胞に注入しがんを誘発するのではないかとの仮説が提唱されています」
 ピロリ菌が産生する毒素(VacAタンパク質)には胃粘膜の免疫を弱める働きがあるとの指摘もあり、間接的に胃がんの発症を促進するとも考えられているのです。
 1994年、ピロリ菌感染は胃がんの確実発がん因子であると世界保健機関(WHO)によって認定されました。最高の危険性を示す「グループ1」に分類されました。強力な発がん性で知られるタバコやアスベストと同じ分類です。神谷さんはこう続けます。
 「ピロリ菌による感染が進むと萎縮性胃炎になります。病理学の見地からは、萎縮性胃炎は、前がん病変と考えられています。また、粘膜上皮細胞ががん化する胃がんに加え、胃のリンパ節にがんができる胃MALTリンパ腫もピロリ菌の関連が疑われています。胃潰瘍、十二指腸潰瘍を引き起こすという問題もありますから、ピロリ菌に感染しているなら、除菌することをお勧めします」

胃がんの活性リンパ球治療

がん細胞を直接攻撃する免疫細胞は、活性化リンパ球です。
この活性化リンパ球は、進行がんから末期がんへのがんとの闘いが長期化することにより不足していきます。 赤血球なら家族や他人から輸血することはできますが、活性化リンパ球は、GVHDという拒絶反応を起こすため、自分のリンパ球しか使えません。
そこで、自分のリンパ球を取り出し、試験管の中で、1000倍に増やしてから、そのリンパ球を投与する方法が活性化リンパ球治療です。
 体内のリンパ球が不足すると、がんに対する攻撃と防御の療法が低いため、がんの進行が急速になります。
また、細菌やウイルスに対する抵抗力も低くなり、肺炎や腸炎になりやすくなります。
検査でリンパ球の不足を調べ、無駄なく活性化リンパ球治療をしましょう!
リンパ球数・活性が低下する時とは…
・ がん患者さん
・ 肝転移、肺転移、腹膜播種、局所再発
・ 肺がん・胃がん
・大腸がんなどのがんでステージ3期、4期、再発時
・ 骨盤に放射線治療を行う前立腺、子宮頸がん、直腸がん
・ 抗がん剤治療・放射線治療
・ 身体的ストレス(手術・過労)や精神的ストレス(痛み・がん)
 血液検査の時と同じ様に、腕の静脈から血液を8mlか16mlを採取。
遠心分離で白血球の層を採取し、細胞培養液と一緒に、培養用バッグに入れます。
リンパ球にとって最高の環境にしてある培養液の中で、最適な温度と酸バランスのインキュベーター(培養装置)で37.0℃に保ちます。
1000倍に増やすには、11日から14日かかり、個人差があります。
増えていくと培養液を増やしていき、1000mlから2000ml以上まで増やしていきます。
血液検査の時と同じ様に、腕の静脈から血液を8mlか16mlを採取。
遠心分離で白血球の層を採取し、細胞培養液と一緒に、培養用バッグに入れます。
リンパ球などの免疫細胞の不足を調べる血液検査血液検査の白血球数(WBC)で免疫細胞の総数がわかります。 それに、血液像で、好中球数やリンパ球数など%や数でわかります。
リンパ数は、通常、1000-1500 個/μL必要です。 がんがある場合、1500個/μL以上必要です。 1000個/μL以下になると疲労感やだるさがでて、肺炎や腸炎などになりやすくなります。 500個/μL以下になるとがんに対する免疫不全状態で、がんの進行が急速になり、生命を維持する日和見感染などの危険も高くなります。
活性化リンパ球治療では、1500個/μL以上を維持することを目標のひとつとします。
グラニュライシン(リンパ球活性量)は、活性化リンパ球が分泌するケモカインの一種で、がん細胞や細菌の膜に穴を空け、細胞をこわします。
このグラニュライシンは、健康な中高年で、4.0ng/ml以上持っているため、健康維持には欠かせないものです。 このグラニュライシンは、がん患者さんでは、平均値 2.7ng/ml、胃がんの再発では、2.2ng/mlとがんの進行で低下していきます。 この数値が3.0ng/mlを切るとだるさや疲労感を訴えることが多く、4.0ng/ml以上で元気になりましたといわれることが多く、免疫治療の評価として有用です

胃がん治療の有名病院(九州地区)

福岡県
国立病院機構九州がんセンター 消化器外科  福岡県福岡市南区野多目3-1-1 ℡092-541-3231 
胃癌や大腸癌の外科治療では、すぐれた治療成績をあげており、九州地区では大変評価の高い病院。
国立病院機構九州医療センター 外科  福岡県福岡市中央区地行浜1-8-1 ℡092-852-0700 
胃がんのみならず、がん治療の実力病院として高い評価を得ており、書籍等でも常に取り上げられている。
小倉記念病院 外科  福岡県北九州市小倉北区貴船町1-1 ℡093-921-2231 
心臓血管外科で大変有名な病院だが、胃がん治療においてもその実力は高く評価されている。
麻生飯塚病院 外科  福岡県飯塚市芳雄町3-83 ℡0948-22-3800 
九州で初めて、自宅や職場で胃がん等の検診ができる「検診宅配便」のサービスを始めた病院。
済生会福岡総合病院 外科  福岡県福岡市中央区天神1-3-46 ℡092-771-8151 
各専門医の指導のもとにチーム医療を実践。胃がん等の消化器癌に対する集学的治療、特に化学療法を充実させ、外来化学療法を行っている。
佐賀県
佐賀県立病院好生館 外科  佐賀県佐賀市水ヶ江1-12-9 ℡0952-24-2171 
「地域がん診療拠点病院」に指定されており、胃がんの手術件数では佐賀県でトップ。地域医療を確保し、地域の人々が質の高いがん診療を受けることができる体制確保を目指す。
長崎県
佐世保市立総合病院 外科  長崎県佐世保市平瀬町9-3 ℡0956-24-1515 
胃がんの手術件数では長崎大学病院に続いて県内第2位。胃がん治療のガイドラインに準じた治療を実施。
長崎市立市民病院 外科  長崎県長崎市新地町6-39 ℡095-822-3251
長崎で胃がん治療のお勧め病院として名前が上位に挙がる病院。早期胃癌では内視鏡切除や腹腔鏡下切除を実施。