慢性膵炎の治療はまず膵炎のどの時期かを把握することが大切で代償期、非代償期を診断した後治療の決定が行われます。治療の原則は日常生活の管理・指導・アルコールの禁止・脂肪食の制限などにより膵臓に負担をかけない生活をすることです。また症状が出現している場合には対症療法も重要で、痛みに対しては鎮痛剤や抗コリン剤、消化吸収障害に対しては酵素剤の大量投与などが行われています。また、慢性膵炎の治療法として最近注目されているのが、膵臓の炎症を抑えるための抗酵素療法です。
膵炎の炎症の原因は、タンパク分解酵素であるトリプシンの膵内での活性化であるとされています。本来トリプシンは食物中のタンパク質を消化するために十二指腸で活性化され、その役割を果たしますが、さまざまな原因により膵臓の中でトリプシンが活性化することにより膵臓を自己消化して膵炎を起こします。またトリプシンは他の消化酵素を活性化し膵炎を増悪させ、慢性膵炎の病態を形成する中心的な役割を果たすため、膵炎のキーエンザイムといわれています。
慢性膵炎は進行性の疾患であるため、治療の基本は早期に診断し早期に治療を開始することです。そのためには、膵臓に器質的変化が起こっていない代償期の段階で経口タンパク分解酵素阻害剤を使って膵臓の炎症を抑えることにより、膵炎の病態をそれ以上進行させないようにすることが重要です。