胃の切除によって栄養素の消化・吸収が阻害されると、下痢や体重減少などを招きます。
排便の状態は、消化・吸収の状態を反映するものです。
胃を切除すると、食物がきちんと攪拌されずに小腸に送られてしまい、小腸の働きが不十分になります。結果として大腸の通過時間が短くなり、下痢を引き起こしてしまうのです。
特に全摘の場合は、飲み込んだ食物が直接小腸に達するわけですから、消化吸収障害を起こしやすいのは当然といえば当然です。手術後の1ヶ月は、特に下痢を起こしやすい時期といえます。
下痢については、まず脂肪分の多い食品や牛乳、乳製品を控え、整腸剤や消化剤などを服用します。
胃の切除手術を受けると、程度の差こそあれ体重の減少を招きます。肥満傾向にあった人は、体重がある程度減少することで生活習慣病の大きな危険因子を取り除いたことにもなりますが、病的な状態になってしまった時は問題です。低タンパク血症、浮腫、血清コレステロールの低下などがみられます。
消化吸収障害は、疲れや脱力感の誘因にもなりますが、これらの症状は栄養不足に加え、多分に心身症的な側面ももっています。胃の切除というハンディを背負ったことによる軽いうつ状態が、だるさの原因となることがあります。
日常生活の注意点
胃切除後症候群は適切な治療によって、ある程度軽減させることが出来ますが、大きな鍵を握るのは、患者本人の術後管理です。
切除前のからだの状態、切除方法、そして術後の回復度によって、症状の現れ方は個人差がでます。自分にはいつどうような症状がでやすいのか、何を食べた時、何を飲んだ時に起こるのかきちんと把握し、それに合わせた食習慣をつくることが大切です。
食べ物は十分に噛むようにします。
一口50回を目標に、少しずつゆっくりと食べましょう。十分噛むことは、下痢の予防にもなります。
暴飲暴食は厳禁です。1回の食事量については、自分の適量を把握しましょう。
食べ過ぎないように、常に腹6~7分目を目安にします。
からだに取り入れるエネルギーと消費するエネルギーのバランスをとり、ウォーキングなど適度な有酸素運動を続けて骨量と筋肉量を増やし、体重の増加を図ることも大切です。