化学療法(抗がん剤)の副作用

化学療法(抗がん剤)の副作用
 骨髄毒性-白血球減少(好中球減少)、赤血球減少、血小板減少
肺がん(肺癌)の抗がん剤治療により血液をつくる細胞がダメージを受け、白血球減少や赤血球減少、血小板減少などの副作用を高頻度で生じます。
 肺がんに対する化学療法では、患者さんが抗がん剤の副作用により死亡することが約2%程度起こると報告されています。治療関連死で最も多いのは白血球や好中球減少による重篤な肺炎や敗血症などの感染によるものですから、これらの血液検査の数値が低下した場合には注意が必要です。
 白血球減少(好中球減少)が起きると肺炎などの感染症を起こしやすくなります。また発熱が続くこともあります。白血球や好中球の減少に対しては、G-CFS(顆粒球コロニー刺激因子)などを使用することがあります。
 赤血球が減少することで貧血になったり、血小板減少により出血しやすくなったり、あざができやすくなったり、注射の跡が消えにくくなるなどの副作用が現れることがあります。
 これらの副作用を骨髄毒性といいます。骨髄毒性は目に見える副作用ではないため一般の方は軽視しがちですが、実は命にかかわることが少なくない副作用ですから抗がん剤の投与中は注意深く骨髄毒性が許容範囲内であるかをチェックする必要があります。
     吐き気・嘔吐・悪心・下痢・便秘・食欲不振
 肺がん(肺癌)治療で抗がん剤が投与されると多くの方で吐き気や嘔吐をおこします。下痢や便秘をする方もいらっしゃいます。
 使用する抗がん剤の種類により吐き気や嘔吐が起きやすい抗がん剤もあれば、あまり激しい副作用を伴わないものもあります。場合によっては極度の脱水症状により衰弱してしまう可能性もあります。
              脱毛
 肺がん治療で使用する抗がん剤によっては脱毛を起こすこともあります。治療が終われば髪の毛は再び生えてきます。
           その他の副作用
 肺がん治療で用いられる抗がん剤の副作用として、動悸や息切れ、体のむくみ、筋肉や関節の痛みなどが現れることがあります。
 手足症候群といって手のひらや足の裏に刺すような痛みがあったり、手足の感覚がまひしたり、皮膚の乾燥やかゆみ、変色などの症状が現れることがあります。
 口内炎や倦怠感(だるさ)、皮膚や爪の変色、味覚障害、肝機能障害、腎機能障害なども副作用で現れることがあります。

肺がんの治療法 肺がんの化学療法(抗がん剤治療)

肺がんの抗がん剤治療はどのような時に行われるのか
 肺がんは進行すると周囲のリンパ節に転移し、さらに血流にのって反対側の肺や副腎、肝臓、骨、脳などに転移します。
 肺がんの転移の可能性が極めて低い局所にとどまった癌である場合には手術や放射線療法による治療だけを行います。
しかし、リンパ節に転移があった場合や、転移は無くとも再発の危険が高いと判断された場合には抗がん剤療法が行われることがあります。
また、肺がんが肺内や副腎、肝臓、骨、脳など遠隔転移があり手術ができない場合にも化学療法(抗がん剤治療)が使われることがあります。
 肺がんの組織型の違いによる化学療法(抗がん剤治療)小細胞肺がん(小細胞肺癌)の化学療法
小細胞肺がんは極めて進行の早いタイプのがんであり、手術の適応となる事はまれですが、一方で放射線療法や化学療法(抗がん剤)には反応しやすいという点で他の肺がんとは異なった特徴を持っています。
 小細胞肺がんの患者さんに化学療法(抗がん剤)を行うと、大凡80%程度の方に反応が見られるため、腫瘍は一時的に縮小することが期待できますが、根治は困難であり、再発してしまうのが現状です。
     使用される抗がん剤-小細胞肺がんの化学療法
 小細胞肺がんの化学療法では、シスプラチン+エトポシド(PE療法)、イリノテカン+シスプラチン(IP療法)、シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン(CAV療法)などが代表的な抗がん剤の組み合わせになります。
 病状によっては、これらの抗がん剤の代わりにエトポシドやカルボプラチン、シクロフォスファミド、ドキソルビシンなどの抗がん剤を使用することもあります。
         非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)は抗がん剤治療お効果があまり期待できません。
 非小細胞肺がんにおいて化学療法が適応となるのは、臨床病期IIIB期あるいはIV期の進行例になります。
 小細胞肺がんに比べると非小細胞肺がんは抗がん剤が効きにくく、腫瘍縮小効果が得られるのは20%~30%程度になります。また、一度効き目があった場合でもがんが耐性を持ってしまい次第に化学療法の効き目がなくなってしまうので、腫瘍縮小効果が認められたケースでも残念ながら根治は困難です。
 非小細胞肺がんでは体力が低下している患者さんに抗がん剤治療をすると、抗がん剤の効果よりも体力を弱めて寿命を短くしてしまうことが懸念されます。一般に非小細胞肺がんの患者さんの場合、化学療法(抗がん剤治療)の効果が期待できるのはPS(全身状態)が0~2までの患者さんです。
    使用される抗がん剤-非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がんの化学療法では、プラチナ製剤とそれ以外の抗がん剤を組み合わせた治療が主流です。
 具体的にはイリノテカン+シスプラチン(IP療法)やシスプラチン+ビノレルビン、シスプラチン+ゲムシタビン、シスプラチン+ドセタキセル、シスプラチン+エトポシド(PE療法)、カルボプラチン+パクリタキセル、カルボプラチン+エトポシド(CE療法)などの組み合わせで治療が行われます。また、単剤ではパクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン(イレッサ)などが代表的な抗がん剤になります。
 分子標的薬イレッサ(ゲフィチニブ)-非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がんの治療ではイレッサという分子標的薬が2002年7月から使われるようになりました。
 イレッサは手術ができない、あるいは再発した非小細胞肺がんの治療薬として承認されています。
 イレッサは吐き気や嘔吐、食欲不振や脱毛、骨髄毒性(白血球減少など)といった副作用は比較的出にくいのですが、肝機能障害や間質性肺炎などの副作用が出る傾向があります。
 特に間質性肺炎は肺が線維化して硬くなり肺活量減少や酸素不足になるため、呼吸困難や咳、発熱などの症状から、悪化すると肺線維症という予後不良の状態になることがあります。一時期、イレッサによる間質性肺炎で死亡者が多く出たため社会問題化したことがありましたが、他の抗がん剤でも死亡する可能性が2%程度あり、決してイレッサだけが怖い薬ではないといえます。

肺がんの血液検査(腫瘍マーカー)

肺がんの腫瘍マーカーの利点・欠点
腫瘍マーカーは正常な細胞からも多少はつくられますが、がん細胞から特に多くつくりだされるたんぱく質や酵素で、がんの有無や種類、進行状態を示す指標となります。
腫瘍マーカーの検査は、一般に血液を採取するだけで用意に検査できるため広く普及しています。また、腫瘍マーカーの数も50を超えるまでになっています。
肺がんでは腫瘍マーカーの数値を調べることで手術後の取り残しがないか、抗がん剤や放射線治療の効果があったか、再発の兆候がないかなどをおおよその目安として判断することができます。
腫瘍マーカーの検査は採血するだけで簡便な方法ですが、いくつかの不確実な面もあります。
腫瘍マーカーは偽陽性を示すこともある
ある程度肺がんが進行しなければ陽性(高い値)を示さないことがある
進行肺がんでも陽性にならないこともある
複数の臓器でつくられるためがんがある臓器を特定できない

そのため、腫瘍マーカーが高い値を示した場合でも、がんの疑いがあるに過ぎず確定検査には画像検査などを平行して行う必要があります。腫瘍マーカーが高値というだけではがんの確定診断はできません。

肺がんの4つのタイプ(扁平上皮がん)

扁平上皮がん
 扁平上皮がんは比較的太い気管支から発生します。
 このために血痰等の症状が割合に出現しやすく、これをきっかけに発見されることもあります。
 扁平上皮がんは肺門型がんが多いため、ある程度進行すると咳や血痰などの症状が現れるようになります。
 さらに進行した場合には喘鳴(ぜいめい)、息切れなどを起こすことがあります。
 さらに胸壁や胸膜に浸潤した場合には胸椎が溜まってきたり(胸水貯留)、胸部痛や呼吸困難が見られることがあります。
 時には、神経が侵されることにより腕の痛みやしびれ、胸や肩の痛み、顔面や上肢の浮腫などが見られることもあります。
 肺扁平上皮がんは、喫煙による影響の可能性が強いといわれています。
 男性の喫煙者率は約5割弱、女性の喫煙者率はほぼ1割となっています。
 年齢層別にみると、20代、30代、40代が多く、高年齢になるにつれて喫煙者率が下がるという結果が出ています。
 喫煙は生活習慣ですし、さまざまな生活習慣病の要因となっていますので、早めの禁煙が大切になります。
 肺扁平上皮がんの予防には、次のことに気をつけましょう。
  禁煙をする
  食生活を整える
  緑黄色野菜の摂取
  ビタミンAやカロチンの摂取

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肺がんの4つのタイプ(大細胞癌)

肺大細胞がんとは
 肺がんの組織学的分類は多様であるという特徴を持っており、さまざまな種類のがんが存在します。
 しかし、肺がんの90%以上は腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4大組織型で占められています。
 肺がんのうち大細胞肺がんは、腺がんや扁平上皮がん等と比較して珍しいがんになります。
 大細胞肺がんは顕微鏡でみると、大きな細胞からなり、腺がんや扁平上皮がんなどの特徴を持ちません。
 神経内分泌大細胞がんという比較的新しく分類されたがんの種類があり、小細胞肺がんに似た性質を持ちます。
 肺の末梢(気管支の細い部分)に発生する肺野型の肺がんが多く、また、扁平上皮がんや小細胞がん程喫煙との関係ははっきりしていません。
        肺大細胞がんの症状
 大細胞肺がんは肺野型(末梢肺野に発生する)がんが多く、初期段階ではなかなか症状は出ません。
 しかし、がんが進行してくると様々な症状が見られるようになります。
 さらに進行した場合には喘鳴(ぜいめい)、息切れなどを起こすことがあります。
 さらに胸壁や胸膜に浸潤した場合には胸椎が溜まってきたり(胸水貯留)、胸部痛や呼吸困難が見られることがあります。
 時には、神経が侵されることにより腕の痛みやしびれ、胸や肩の痛み、顔面や上肢の浮腫などが見られることもあります。
 大細胞肺がんは喫煙と関係が少ないという意見もありますが、本人がタバコを吸わなくとも回りの方が影響される受動喫煙が影響している可能性は高いと考えられています。
 タバコの煙には多くの発癌性物質が含まれていますが、そのうちのいくつかは主流煙(直接口の中に吸い込まれる煙)よりも副流煙(主として他人の吸っているタバコの煙)に多く含まれていることがわかっています。
 フィルターつきのタバコが普及してから大細胞がんを患う方は多くなってきているという事実からも、喫煙・受動喫煙と大細胞がんとの関係はあると考えて良いと思います。
 一般に喫煙指数(1日の喫煙本数と喫煙年数をかけあわせた数値)が600以上の人は、肺癌になるリスクが高いといわれています。
 また、毎日喫煙する人の肺がんになるリスクは非喫煙者と比較して4~5倍、さらに喫煙開始年齢が低いほど肺がんになるリスクが高くなり20歳前に喫煙を開始した場合には非喫煙者の実に6倍もリスクが高くなるというデータもあります。
 一般に10年間禁煙した場合には肺がんに罹患するリスクは1/3~1/2までに減少します。今からでは遅いということはありません。すぐにでも喫煙習慣を見直してください。

肺がんの4つのタイプ(小細胞がん)

肺がんの4つのタイプ(小細胞がん)
 原発性肺がんのおよそ20%が小細胞がんです。
 顕微鏡で見ると、その名のとおり、小さな細胞の集団に見えます。以前は「小細胞型未分化がん」などと呼ばれたことがありますが、現在では「未分化」という言葉は使いません。
 また、燕麦細胞がんと呼ばれたこともあります。これは病理組織を見た感じが「オートミール(燕麦がゆ)」に似ているという事からの命名ですが、日本人にはなじみの薄いものですし、最近では国際的にも使われません。
 小細胞がんは進行が非常に速く、悪性度の高いがんです。一方で、放射線や抗がん剤に対する感受性が高く、治療は内科が主体となります。
 ただし、最近では治療法の進歩に伴って、I期やII期の小細胞がんでは手術も積極的に考慮されます。
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転移性肺がんとは

転移性肺がんとは
 大腸がんや腎がんの細胞は血液に入り他の場所に移動して、そこで成長を開始します。これが転移(てんい)です。がんの治療が複雑で難しいのは転移を起こすためです。
 がん細胞は血液に入り心臓に戻ります、その後肺に入ってガス交換を行い、今度は全身に流れていきます。がん細胞の多くは肺を通過するので、肺への転移がしばしば経験されます。これが転移性肺がんです。
 ここで重要なのは、大腸がん細胞は肺に転移しても肺がん細胞にはならないことです。大腸の細胞ががん化してがん細胞になるのですが、肺に移動しても肺の細胞に変化するわけではありません。これは日本人の夫婦がアメリカに移住して、子供が生まれると日本人の子供が生まれることを考えると理解しやすいでしょう。
        転移性肺がんのでき方
 大腸がんや腎臓がんのがん細胞は、がんから剥がれてリンパ管に入り流れてリンパ節に達し、リンパ節転移を起こします。また、がん細胞はがんから剥がれて血管に入り血液とともに体内を流れ、体の他の場所に転移を形成します。といっても実際、がん細胞がリンパ管や血流に乗って流れていっても、環境が変わるので生き延びるのは難しいです。しかし、多くのがん細胞が流れていれば、中には生き延びて成長するがん細胞もいるのです。
 体にある血液は心臓に還流し、その後、肺に流れ込んでガス交換を行い心臓に還ります。がん細胞が血液に混じって肺に達して生育すれば、肺に転移性肺がんが出現します。
        手術後の転移性肺がん
 例えば、大腸がんの手術後2年目に転移性肺がんが起きたときのことを考えてみます。大腸がんはすでに手術を終わったので、大腸がんは存在しません。この状態で大腸がんの転移が突然肺に発生するのではありません。大腸がんの手術を受けた時点に、すでに肺に小さな転移性肺がんがあったと考えられます。転移性肺がんがあっても、胸部レントゲン検査や胸部CT検査などで転移性肺がんが発見されなかったのです。このような場合は、“大腸がんが肺に再発した”と表現しますが、実際は“当時は発見されなかった転移性肺がんが、今回は増大して発見された”ということなのです。

肺がんの第四の治療法 免疫細胞療法とは

肺がん免疫細胞療法とは、がん細胞を攻撃する機能を持つ免疫細胞(リンパ球)を体外に取り出し、専門の培養施設で加工・処理することで大量に数を増やしたり、機能を付加した上で再び体内に戻す、副作用のほとんどないがん治療法です。
 最先端の免疫学や分子生物学に基づいた先進的治療であり、いわゆる三大治療(手術・抗がん剤・放射線療法)と併用することも可能で、進行がんへの治療効果や、手術後の再発予防効果が期待できます。
 既に、厚生労働省が定めた先進医療として、適応疾患を限定する形で各地の大学病院やがんセンターでも実施されています。
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肺がんは自覚症状がない

肺がんの症状で最も怖いのは、初期の段階で自覚症状が無いことでしょう。
 肺がんは一般的に初期で見つかると治せる可能性が高いとも言われています。
 肺がんの症状は風邪のように咳をしたりするために、軽い風邪程度に考えやすく、早期発見が遅れる原因の一つにもなっているようです。
 仮に検査で小さながん腫瘍が発見されたとしてもすでに進行しているようで、手術は15%程度だそうです。
 そしてもう一つ怖いのは、肺がん自体転移しやすいと言われ、再発する可能性が高いようです。
 転移はとても厄介で、様々な臓器にがん細胞が血液中を流れていくことで、離れた臓器もがん化してしまうというものです。
 肺がんで転移しやすいと言われる臓器として、肺、脳、骨、肝臓、副腎などが挙げられているようです。
 手術が成功したとしても再発する可能性が高いと言われ、手術後に約20%の確率で局所再発や、5割から6割に遠隔への転移が見られるそうです。
 特にタバコを吸う方は検査でレントゲンをして異常なしでも、精密検査を受けてみるのが良いでしょう。

肺がんの脳転移とは

肺がんの脳転移の経路
 血液によって癌細胞が運ばれ、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜に転移します。
       肺がんが脳転移したことによる症状
 原発巣とはまったく別の症状です。
 部位によってけいれんや麻痺、感覚障害、精神症状、ふらつきなどがあり、悪化すると頭痛や吐き気、嘔吐などが現われます。脳の表面を流れている髄液に転移すると背中の痛みや手足のしびれが起きます。
        肺がんの脳転移の治療
 手術や全脳照射ガンマナイフ化学療法があります。
 一般に、抗がん剤は効果が薄いとされていますが、イレッサを使用して良い結果を残している症例もあります。
 大きさが3センチ以下の場合には、全脳照射ではなく、放射線を様々な方向から集中させるSMARTという方法が採用されることもあります。
 手術の場合には、十分な体力が残されていることと、成功した場合に余命が期待できることが条件となります。
 ガンマナイフを適用した後に再発した場合には、再びガンマナイフで治療することや、手術を行う、全脳照射を行うという選択肢があります。
        肺がんの脳転移の予防
 治療のためではなく、予防を目的とした放射線治療を行うことがあります。これを予防的全脳照射といいます。

肺がん治療の名医といわれているドクター

一瀬幸人氏(肺がん 福岡県・国立病院機構九州がんセンター)
 九州がんセンター統括診療部長兼呼吸器部部長を務めています。
 週刊誌や書籍、マスコミ等でもしばしば名前が挙がる、肺がん治療の名医です。
 今まで治療法がなく、治ることが困難であるがん性胸膜炎(一側の胸の中にがんが広がった状態)、胸壁や血管にがんが進展した局所進行肺がんに対し、放射線、化学療法そして手術療法を組み入れた治療法の確立に力を入れています。
 九州がんセンターでは、肺癌、中皮腫、縦隔腫瘍などの胸部腫瘍に対し 内科、外科、放射線科という科ごとの壁はなく総合的、集学的な治療を行っています。
     中川健氏(肺がん 東京都・癌研有明病院)
  
 癌研有明病院の呼吸器外科部長を務めており、吸器疾患、特に悪性腫瘍の外科療法を専門にしています。
 従来手術が非適応とされた進行肺がんに対する拡大手術に取組む一方、負担の少ない縮小手術についても研究しています。
 肺転移に対する外科療法にも積極的に取組んでおり、多くの治癒実績を誇っています。
 肺がんケアの最新情報を紹介した「肺がん患者ケアガイド」を執筆。
   有田健一氏(肺がん 広島県・広島赤十字・原爆病院)
 1974年広島大学医学部を卒業。
 2004年に広島県医師会常任理事(腫癌登録・地域がん登録・医務・薬務・医療秘書担当)に就任しました。
 肺がんに対する抗がん剤治療の中でも特に、早期に転移しやすく悪性度の高い肺の小細胞がんに対して「抹消血幹細胞移植を併用した超大量化学療法」で完治に導く治療法において、全国レベルの実績を残しています。
 有田健一氏らは、全国規模の臨床研究グループの一員として、常に治療内容・成績を検討しながら、この治療法の確立に努力しています。

肺がん治療の名医といわれているドクター

近藤晴彦氏(肺がん 静岡県・静岡県立静岡がんセンター)
 我が国を代表する肺がん手術の第一人者として知られています。
 静岡県立静岡がんセンター呼吸器外科部長を務めており、肺がんに関する著書も多数あります。
 静岡がんセンターでは、診断や治療方針は原則として呼吸器外科・内科・画像診断科・放射線治療科・陽子線治療科との合同カンファレンスで決定しているため、受診される曜日によって治療方針が異なることはなく、決定した方針に従って、呼吸器グループとして各診療科が協力して質の高い診療を提供しています。
   光冨徹哉氏(肺がん 愛知県・愛知県がんセンター)
 1980年九州大学医学部を卒業。
 1989年に米国立がん研究所(NCI)に留学し、肺がんの遺伝子研究などに従事。
 その後九州大学講師等を経て1995年に愛知県がんセンターの副院長に就任しました。
 光冨徹哉氏は平成17年に、日本癌学会とスイスの製薬会社Debiopharm社が設けている日本癌学会学術賞「JCAMauvernay(モヴェルネ)Award(がんの基礎的および臨床的研究領域においてすぐれた研究者それぞれ1名に授与される)」を受賞しています。

肺がんの標準的な手術

肺は右が三つ、左が二つの肺葉に分かれています。
 ぶどうの房が太いつるに右に三つ、左に二つぶら下がっているのを想像してください。それぞれの房には気管支と血管が入り込んでいます。
 この房のうちどこかにがんが発生したとき、房を単位として切り離すのが確実で、技術的にもやりやすいのです。
 一番多く行われているのが房の一つを切り離す「肺葉切除」。
 右肺の場合は上葉と中葉、中葉と下葉という二つの房をあわせて切り離す2葉切除も割合に多く行われます。
 がんが房の根元付近にまで食い込んでいると、右あるいは左の全部の房を取り除く必要がでてくることがあります。片肺全摘出術です。
 全摘出は手術後の肺活量の低下が大きく、身体への負担も大きいので、そうするべきかどうかの判断は慎重になります。
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胸のレントゲン写真の見方

肺がんの知識を得る前に、正常な肺についての知識をある程度深めておく必要があります。そうでないと、一体何の話か分からなくなってしまいます。
 胸のレントゲン写真やCTで目立って見える部分を覚えれば十分です。
下の写真と図に正常のレントゲンで質問の多い部分を示してあります。
 一番大きなポイントはレントゲンは自分の正面に立った人が半透明に見えていると考えるところでしょう。
 黒い部分はX線の通りやすい、つまり空気の多い部分。白い部分はX線の通りにくい部分、筋肉や脂肪、骨などです。
 中心にある白い部分を縦隔と呼び、心臓や大動脈があります。また、縦隔にはたくさんのリンパ節があります。
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肺がんの4つのタイプ(腺がん)

腺がん
 唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺などの腺組織とよく似た形をしているがんのことです。
 腺がんは、多くの場合、肺の奥のほうのこまかく枝分かれした先にできます。女性やタバコを吸わない人にできる肺がんの多くがこの腺がんで、肺がん全体の半数程度を占めます。
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肺がんの進行度

肺がんの進行度
        リンパ節転移 
     
         N1
  同側気管支周囲および/または同側肺門リンパ節および肺内リンパ節転移で、 原発腫瘍の直接浸潤を含む
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         N2
  同側縦隔リンパ節転移および/または気管分岐部リンパ節転移
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         N3
 対側縦隔、対側肺門、同側または対側斜角筋前、または鎖骨上窩リンパ節転移
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肺がんの進行度

肺がんは、がんの大きさと広がりによって進行度を分類します。
 その分類には、TNM分類が用いられ、T―原発腫瘍の大きさ、N―リンパ節転移、 M―遠隔転移の組み合わせにより病期が 定められます。 自分のがんの病期(進行度)をきちんと把握しましょう。
        T―原発腫瘍の大きさ
          T1
 腫瘍の最大径が3cm以下で、肺組織または臓側胸膜に囲まれており、気管支鏡的に 癌浸潤が葉気管支より中枢に及ばないもの(即ち主気管支に及んでいない)
       t1_photo01.gif
           T2
  腫瘍の大きさまたは進展度が以下のいずれかであるもの
 最大径が3cmをこえるもの
 主気管支に浸潤が及ぶが、腫瘍の中枢側が気管分岐部より2cm以上離れているもの
 臓側胸膜に浸潤のあるもの
 肺門に及ぶ無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが一側肺全体に及ばないもの
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          T3
  大きさと無関係に隣接臓器、即ち胸壁(superior sulcus tumourを含む)、 横隔膜、縦隔胸膜、壁側心膜のいずれかに直接浸潤する腫瘍
または腫瘍が気管分岐部から2cm未満に及ぶが、気管分岐部に浸潤のないもの
 または無気肺あるいは閉塞性肺炎が一側肺全体に及ぶもの
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肺がんの第四の治療法 免疫細胞療法とは

肺がん免疫細胞療法とは、がん細胞を攻撃する機能を持つ免疫細胞(リンパ球)を体外に取り出し、専門の培養施設で加工・処理することで大量に数を増やしたり、機能を付加した上で再び体内に戻す、副作用のほとんどないがん治療法です。
 最先端の免疫学や分子生物学に基づいた先進的治療であり、いわゆる三大治療(手術・抗がん剤・放射線療法)と併用することも可能で、進行がんへの治療効果や、手術後の再発予防効果が期待できます。
 既に、厚生労働省が定めた先進医療として、適応疾患を限定する形で各地の大学病院やがんセンターでも実施されています。
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肺がんの種類

肺がんを分類すると腺がんや扁平上皮がん、大細胞がんの総称である非小細胞がんと、小細胞がんに分かれます。
 この中でもっとも多いのは腺がんで、肺がんの男性の40%、女性の70%を占めています。次に多いのが扁平上皮がんで、男性の40%、女性の15%ほどの割合です。
 小細胞がんは全体の15~20%ほど、そして大細胞がんはおよそ5%です。こうしてみると、肺がんは腺がんを始めとした非小細胞がんが多いことが分かります。以下でそれぞれの特徴について見ていきましょう。
             腺がん
 肺がんの中で最も多く見られるもので、唾液腺や胃腺などの腺組織と似た形をしています。肺の奥の方の細かく枝分かれした末梢部分に発生する肺野型ことがほとんどです。タバコによる影響は、他のタイプに比べると弱い傾向があり、無症状の段階でも検査によって発見できることがよくあります。
 特に女性に多い傾向があります。肺がんの中でも、腺がんは進行のスピードが様々ですので、一概に速いか遅いかということはできません。
           扁平上皮がん
 皮膚や粘膜を覆っている扁平上皮という組織に似た形をしており、大部分は肺の入り口に近い肺門部に発生します。タバコとの関係が深く、血痰等の症状が出やすいため、これが原因で発見されることが多くあります。
            大細胞がん
 癌細胞が大きいもので、他のタイプに分類できないものが入っていることもあるため、あまり同質的なものばかりではありません。増殖のスピードは速いものの、自覚できる症状がなかなか出ないため、診断時には進行していることもあります。
            小細胞がん
 癌細胞が小さいもので、他の組織型よりも進行が早く、脳や骨、リンパ節、肝臓、副腎などに転移しやすいという特徴を持った悪性度が高い癌です。肺門部にできることが多く、タバコとの関係が比較的強いとされています。
 
 放射線治療抗がん剤が効果的という特徴があります。およそ80%は癌細胞が種々のホルモンを産生していることも、このタイプの特徴でしょう。
 上記が肺がん腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんに分類した場合の、それぞれの特徴です。どの組織型に属するかによって、同じ肺がんでも性質が異なりますので、自分の症状を知るために役立つことと思います。
 非小細胞がんと小細胞がんでは、治療に使われることの多い抗がん剤の種類も変わってきます。多くの方は腺がんに該当すると思いますが、自分がどの組織型に該当するのか、すでに発症している方は確認しておきましょう。治療の際には、それぞれの組織型や症状の進行度、転移の状態にあった治療法を選択する必要があります。

肺がんの再発について

肺がんが再発しやすい時期
 治療後5年以内が多く、その中でも2年までの期間は要注意です。治療が終わったからと言って油断せず、定期的に病院で検査を受けておきましょう。
           再発肺がんの症状
 咳や痰、血痰、呼吸困難といった原発巣の症状に加え、脳転移によって頭痛や吐き気、歩行障害、言語障害が起こることや骨転移によって腰や背中の痛みを伴う場合など、転移先によってそれぞれの症状が出る場合があります。
       肺がんが再発した場合の治療
 再発に対応して行う治療の中心は抗がん剤です。
 手術ができる場合や、放射線治療で対応できる場合もありますが、これは少数の場合で、多くは全身療法である化学療法を必要とします。
        再発肺がんの治療の目的 完治を目指すのではなく、余命を延長することや、日々の生活水準を高めることを目的とすることが多いことに注意が必要です。悪性度の高い小細胞がんだけではなく、非小細胞がんにおいても再発した場合には、完治を望めるケースは多くありません。
 脳や骨へ転移した場合、放置しておくと生活に大きな支障をきたすこともありますので、それを緩和するために放射線治療を行うこともあります。
      再発肺がんに対する抗がん剤の進歩
 抗がん剤を投与しても完治が難しいという現実はありますが、それでも抗がん剤が進化を遂げているのも事実です。たとえば、新しい抗がん剤としてTS-1やカルセド、イレッサがこれに当たります。従来から用いられていたシスプラチンは現在でも重要な役割を果たしていますが、組み合わせて使う薬剤の進歩が見られます。
 また、化学療法は同じ薬剤を使用していると効果が落ちるのですが、タキソテールに切り替えることで大きな効果を発揮することも判明しています。
 抗がん剤の副作用を抑えるための薬剤も登場していますので、副作用を緩和させることによって、患者さんの負担を少なくすることもできるようになっています。
             再発予防
 手術を行う場合、術後に化学療法を用いることがあります。手術によってすべての癌細胞を摘出できなかった場合に、残った癌細胞の増殖を抑える目的で行われます。もし再発してしまうと、完治が難しくなってしまいますので、あらかじめ予防することが重要です。

肺がんの脳転移とは

肺がんの脳転移の経路
 血液によって癌細胞が運ばれ、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜に転移します。
       肺がんが脳転移したことによる症状
 原発巣とはまったく別の症状です。
 部位によってけいれんや麻痺、感覚障害、精神症状、ふらつきなどがあり、悪化すると頭痛や吐き気、嘔吐などが現われます。脳の表面を流れている髄液に転移すると背中の痛みや手足のしびれが起きます。
        肺がんの脳転移の治療
 手術や全脳照射ガンマナイフ化学療法があります。
 一般に、抗がん剤は効果が薄いとされていますが、イレッサを使用して良い結果を残している症例もあります。
 大きさが3センチ以下の場合には、全脳照射ではなく、放射線を様々な方向から集中させるSMARTという方法が採用されることもあります。
 手術の場合には、十分な体力が残されていることと、成功した場合に余命が期待できることが条件となります。
 ガンマナイフを適用した後に再発した場合には、再びガンマナイフで治療することや、手術を行う、全脳照射を行うという選択肢があります。
        肺がんの脳転移の予防
 治療のためではなく、予防を目的とした放射線治療を行うことがあります。これを予防的全脳照射といいます。