腎臓に流れる血液が減少すると、腎臓の細胞が生きていくのに必要な酸素の運搬も出来なくなります。この場合、特に酸素不足に弱い尿細管細胞が死んでしまいます(尿細管壊死)。尿細管が働かなくなれば、いくら糸球体が正常でも、ネフロンとしての働きが出来ず、急性腎不全となります。いくら血圧を上げて十分な血液を腎臓に流しても手遅れで、新しい尿細管細胞が生まれるまで、腎臓の働きは停止します。このような状態を腎性急性腎不全と呼びます。
心臓が止まってから腎臓を取り出し、腎機能を失った透析患者さんに移植する、献腎移植の場合も尿細管壊死が起こります。この場合、取り出された腎臓の尿細管は死んでいるため、移植が成功してもすぐには尿は出ません。尿細管が再生して尿が出るまで1週間程度かかります。もし、脳死状態で腎臓を摘出すれば、尿細管細胞は生きていますから、移植後すぐに尿が出ます。
尿細管細胞は毒性物質にも弱く、阪神大震災の時にはガレキの下敷になって筋肉が傷害され、筋肉の中から遊出した様々な物質が尿細管細胞を傷害して急性腎不全をきたした、いわゆる挫滅症候群(クラッシュ症候群)が発症しました。