慢性腎不全の治療目標の1つは慢性腎不全の進行を予防し、少しでも透析療法への移行を遅らせることにあります。慢性腎不全は進行性の疾患です。多少の変動はあるものの、良くなることはありません。従って、薬物療法や食事療法、安静療法により、少しでも進行を遅くさせることが目標です。
慢性腎不全治療のもう1つの治療目標は合併症の予防です。慢性腎不全の進行とともにいろんな合併症が現れます。中には、生命をおびやかすようなものもあります。
慢性腎不全が進行しても、透析療法が有りますからすぐに生命にかかわる事はありません。しかし、例えば高血圧が持続するような場合には、もちろん腎臓にも悪影響を及ぼしますが、生命にかかわる心臓病や脳卒中などの合併症の原因となるわけです。さらに生命にかかわることはなくても、不適当な食事療法などを行うと骨がもろくなる、などの合併症が現れます。
腎機能の低下を予防する1つの方法は、腎臓の負担を減らすことです。
腎臓を会社に例えますと、慢性腎不全では、10人いた社員が5人以下に減ったとします。会社の仕事量が同じであれば、残った5人には今まで以上に仕事の量が増え、ついには過労死し、ますます社員は減っていきます。残った社員が減らないようにするには仕事量を減らす必要があります。これが食事療法や安静療法、薬物療法の目的です。