初期段階から食事療法を行うことにより、腎不全の進行を遅らせることができます。
食事の成分中で注意深く管理しなければならないのは、塩分・水分、タンパク質、エネルギー(カロリー)、カリウム、リンなどです。
食事療法で最も重要な事は、1日3度の食事をきちんととる事です。
タンパク質の制限
タンパク質を摂りすぎると腎臓に無理がかかります。タンパク質を制限すると腎不全の進行を遅らせる事が知られています。
しかし余り制限しすぎると栄養状態が悪くなって、ばい菌などに対する抵抗力が低下する場合があります。タンパク質を制限しすぎるとカロリー不足になりがちです。
十分なカロリーを摂ってタンパク質を制限するには、低タンパクご飯などの特殊栄養食品を使う必要があります。しかし勝手に行うのは危険ですので、主治医や栄養士さんに相談しましょう。
カリウムの制限
一般に腎不全の患者さんでは、カリウムの排泄が低下し体内に蓄積してきます。血液のカリウム濃度が高くなりすぎると非常に危険で、不整脈が起きたり心臓が止まることさえあります。
また腎臓の保護作用の強い降圧薬の中にはカリウム濃度を上げる副作用を有する物があります。これらの薬を十分に使用して腎臓を守るためにもカリウムの制限が必要です。
カリウムは、タンパク質の多い食品や果物、野菜に多く含まれています
リンの制限
リンは体内のカルシウムと結合して、骨や歯を丈夫にします。腎機能が低下すると、血中にリンがたまり、血管や腎臓に石灰化が起こり、動脈硬化や腎不全を悪化します。
体はリンのバランスを保つために副甲状腺ホルモンを分泌して、腎臓からリンを排泄する代償機能が働きますが、皮肉にも副甲状腺ホルモンは骨を溶かす作用もあり、骨がもろく弱くなります。
従って、リンの摂取量を減らすことが必要です。健康な方はリンやカルシウムの多い乳製品や小魚を食べると骨が丈夫になりますが、腎機能の低下した患者さんでは全く逆で、これらの食品を食べると骨がもろくなります。
骨を丈夫に保つためにも、動脈硬化や腎不全の進行を予防するためにも、リンの制限が必要です。一般にタンパク質の多い食品にはリンも多いので、タンパク質を制限すればリンの制限にもつながります。
塩分の制限
大部分の腎不全患者さんは腎臓から塩分を排泄する力が落ちています。従って塩分を普通に摂ると体の中に貯まり、血圧が上昇します。高血圧は腎不全にとって最も悪い要因ですから、塩分制限は極めて重要な食事療法です。
また浮腫の強い患者さんでは、塩分の摂りすぎは浮腫を悪化します。しかし稀に塩分喪失性腎炎という病気による腎不全の患者さんがいます。この様な患者さんが塩分制限をすると、逆に脱水となって腎不全が悪化する事があり注意をする必要があります