喫煙以外の肺がんの要因

受動喫煙タバコの副流煙に含まれる発がん性物質の量は、喫煙者の本人が吸っている煙(主流煙)の3~20倍というデータがあります。ですので、自分が吸っていなくても、よく喫煙している人の側にいれば肺がん発生のリスクは高まってしまいます。
遺伝遺伝も肺がんの発生に大きく関わっています。家族に肺がんの患者さんがいるだけで、そのリスクは約3倍にも高まってしまいます。遺伝子の修復能力の違いや、体に入ってきた発がん性物質を無効化する酵素の働き具合の違いなどが要因です。
大気汚染車の排気ガスや工場の煙に接する機会の多い方は、肺がんのリスクも高くなるといわれています。
アスベスト(石綿)石綿の粉じんを吸い込んでしまうと、「じん肺」という肺が線維化してしまう状態になり、肺がんが発生するおそれがあります。石綿は昔は建築材になっており、現在建物の取り壊しがすすんでいますが、ごく一部の建造物の中にはまだ使われている場合があります。
その他大きなストレスに長期間さらされていたり、栄養状態が悪く体の抵抗力が弱い状態が続いていたりすると、肺の病気にも関係してきます。

肺がんの種類で変わる生存率

肺がんの生存率は、肺がんの種類や生活習慣や年齢など、さまざまな条件で変わってきます。また、肺がんの再発や転移した場合には、更に生存率は低くなります。
肺がんの生存率は、肺がんの種類の小細胞がんと非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)で、生存率を割り出します。
肺がんが非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)の場合の生存率について説明します。
非小細胞がんで、他に転移がない肺がんの場合、早期の1期だと5年生存率が50~70%、10年生存率は90%とされます。2期では5年生存率40%、3期では2年生存率30%、4期になると1年生存率が30%程になります。
非小細胞がんの場合、3期になると外科手術や放射線療法の選択肢が狭くなります。
更に進行すれば、治療法は更に少なくなります。
3年間にがんの再発がなければ、肺がんは監視に近い状態と判断されます。
小細胞がんは限局型と進展型があり、生存率は限局型のほうが良いと考えられています。進展型野は胃がんは全身に広がり、さまざまな箇所へがんが転移しますので、3年後の生存率は10%と、とても厳しい結果になります。
これは、同じ肺がんでも、種類によってこれほど生存率に差が生じます。
小細胞がんの再発については、限局型で80%、進展型では、ほとんどの場合再発することから、再発した時の生存率は、更に低くなります。
ここに示した生存率は、あくまで統計上の数値で、必ず数年先に死を約束したものではありません。
生存率は肺がんの治療の上では、どちらかといえば邪魔な存在です。
これは患者が治療へ向かう意欲や志気を失いかねません。
生存率は結果であるので、治療とは意味が違います。
積極的な治療を心掛け得ることが大切です。

肺がんを防ぐ12カ条

1.バランスのとれた栄養をとる食物は、生命の根源。私たちの健康を守る第1のカギが、毎日の食事であることはいうまでもありません。栄養のバランスがくずれると、さまざまなかたちで体に支障があらわれ、さらには病気の原因にもなります。今や日本人の死亡原因の第1位となった病気、がんもその例外ではありません。最近、食物のかたよりと発がんの関係が、疫学調査や動物実験によって明らかになってきました。わかってきたのは、私たちが日々食べている食品群の中に、がんを引きおこす物質とがんを抑える物質がともに存在しているということです。
発がんを抑える栄養素として、ビタミンAやビタミンC、Eなどがクローズアップされ、食物繊維にも発がん抑制の効果が知られています。ですから、食事の際はできるだけ多くの種類の食品をとり、食物中の発がん物質の作用を相殺していくことが大切です。
最近では、調理済み食品の利用が高まり、材料の種類も限られるせいか、栄養の面でかなりのアンバランスをきたしていることが、国民栄養調査の結果にもでています。脂肪の摂取は昭和30年当時の約3倍に増える一方、食べる野菜の量は少なくなってきています。野菜料理をどんどん食卓に加え、偏食せずにいろいろなものをバランスよく食べることは、栄養の面ばかりではなく、発がんの危険を低下させるという点からも大切なことです。
2.毎日、変化のある食生活を多くの人は特定の食物に対して嗜好があるので、好きなものを繰り返し食べがちです。問題は度がすぎることです。食物中の発がん物質の濃度は、たいていはそれほど高くないのですが、同じ食品ばかり食べ続けることは、体をいつもがんの危険にさらすことになります。バランスのよい栄養をとること、ただ、それも、にんじんにカロテンがあっていいからと、そればかり食べるのではなく、できるだけ多くの緑黄色野菜からカロテンをとることが望ましいのです。バランスよく、そしてバラエティーのある食生活を心がけてください。同じものを繰り返さないという注意は、薬にもいえます。医師の指示で必要とされる場合以外は、同一の薬を飲み続けることは極力さけたほうが賢明です。
○3.食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに「長生きの秘けつは腹八分目にあり」とよくいわれますが、がんについても同じことがいえそうです。ネズミの実験によると、好きなだけ食べさせたグループと、食事量を60パーセントくらいに制限したグループとでは、制限グループのほうが発がん率が低く、長生きしているという結果がでています。食べすぎの中でも、とくに問題とされるのが脂肪の量で、脂肪をとりすぎると乳がんになりやすいという報告があります。食べすぎと脂肪のとりすぎには、十分気をつけましょう。
4.お酒はほどほどにお酒が健康を害するといえば、一般に肝臓を考えますね。でも、飲みすぎが及ぼす悪影響は、肝臓だけにはとどまりません。WHO(世界保健機関)の調査では、過度の飲酒と、口腔がん、喉頭がん、食道がんは関係があるという報告がなされています。アルコールの多量摂取と肝臓がんの発生にも関係がみとめられています。また、酒好きの人は、つまみを食べずにお酒だけを飲むことが多いので、栄養のバランスがくずれて、がんになりやすい体の条件をつくる可能性も高いわけです。とくに、飲みすぎのうえにたばこが重なると、悪い因子が相乗的にはたらいて、がんの危険も増します。飲酒中のたばこは極力ひかえるよう努力し、強いお酒は薄めて飲むか、水といっしょに飲むようにしましょう。まずはお酒をほどほどに。
5.タバコは吸わないようにタバコと肺がんの間に深い関係があることはみなさんもご存知でしょう。40歳以上の日本人男性、12万人以上を、長期間にわたって調査した結果、1日 25本以上たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、喉頭がんが90倍以上、肺がんが7倍の死亡比になることがわかっています。しかし、禁煙すればがんになる危険はそれ以上増えず、禁煙後5年くらいたつとほとんど吸わない人と同じくらいの状態に近づきます。最近は、吸っている本人だけでなく、周囲の人に与えるたばこの害が問題になっています。紙巻たばこの火のついているほうから出る紫色の煙は、吸い口のほうから出る煙よりも、ある種の発がん物質については含有量が高いことが知られています。
妻が吸わなくても、夫が1日20本以上吸うヘビースモーカーの場合、喫煙しない夫をもつ妻と比べて、肺がんの死亡率が2倍も高いという報告もあります。日本でも諸外国と同様、肺がんが年々増え、平成10年(1998年)には、胃がんを抜いてがん死亡のトップになりました。肺がんの予防のために禁煙を心がけましょう。どうしてもというなら、できるだけ本数を減らしてください。また、たばこを吸いはじめる年齢が低いほど肺がんにかかりやすいということもわかっています。未成年の喫煙にはまわりでも気を配って、絶対に止めるようにしていきたいものです。
6.食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとるビタミン類は、人間の体にとって「潤滑油」のようなもの。なかでも、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには、発がんを防ぐはたらきもあることが知られています。また、野菜などに含まれる繊維質にも、同じような効果があることは、第1項でもお話ししたとおりです。
<ビタミンA・カロテンを多く含む食品>
にんじん、ほうれん草、小松菜、春菊、にら、レバー、うなぎ、バター、チーズ
<ビタミンCを多く含む食品>
パセリ、ブロッコリー、ピーマン、たか菜、ほうれん草、いちご、キウイフルーツ、柿、レモン
<ビタミンEを多く含む食品>
落花生、胚芽米、大豆、ごま油、えんどう、いわし、うなぎ、卵
<食物繊維を多く含む食品>
干し柿、ひじき、ライ麦パン、甘栗、ファイバーパン、いんげん豆(乾)、そら豆(乾)、ポップコーン、糸引納豆、おから
7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから日本人の代表的ながんといえば、胃がんがあげられます。その割合は、少しずつ減ってきているとはいえ、肺がんをわずかに下回る状況であり、大腸がん、肝臓がんや乳がんなど他のがんに比べるとまだ圧倒的に多いのが現状です。この胃がんの発生に密接な関係があると指摘されているのが、塩分の摂取です。1日にとる食塩の望ましい量は、10グラム以下とされています。食塩のとりすぎが脳卒中や心臓病などの循環器疾患を起こしやすく、一般に塩をひかえる傾向にあり、胃がんの死亡率も確実に下がってきていますが、全国平均1人1日当たりの食塩摂取量は、下図に示すとおり、まだ10グラム以下にはなっていません。特に最近では摂取量の下がり方が鈍ってきています。また、胃がん死亡率には地域差があることが知られていますが、この差も塩分の摂取との間に密接な関係があります。しおからなど塩分の多い食品を大量に食べないことと、できるだけ塩味を抑えた調理を心がけましょう。また、熱い茶がゆをよく食べる地方に食道がんが多いという報告もあり、食塩の場合と同じように、熱いものはがんが発生しやすい状況をつくります。あまり熱いものはさましてから食べることをおすすめします。
8.焦げた部分はさける魚や肉を焼いて焦がすと、細菌などに突然変異を引きおこす物質が生じることが、最近明らかになってきました。この焼け焦げに含まれる発がん物質は、調理温度が高く、調理時間が長くなるほど、量が増え、とくに、肉や魚、野菜などを直火で焼いたり、フライパンの上で熱を加えて焦がした場合に多くできます。普通、焦げた魚や肉の1食分で口に入る発がん物質の量は、ごくわずかです。しかし、焼け焦げの中に含まれる発がん物質は数種類が確認されていますし、また、でんぷんや糖などの炭水化物のお焦げにも、細菌の変異を引きおこすもとになる物質が含まれています。あまり神経質になる必要はありませんが、焦げた部分を大量に食べることはさけたほうがいいでしょう。
9.かびの生えたものに注意ひとくちにかびといっても、いろいろな種類があります。有害なのは、ピーナッツなどのナッツ類やとうもろこしにつくかびで、これには強い発がん性が認められています。東洋人に肝臓がんが多い理由として、B型肝炎ウィルスなどのほかに、このかびもが関わっているのではないかと疑う学者もいるほどです。外国のある地域で売られているピーナッツのほぼ50パーセントに、微量ながら発がん性のあるかびが認められたという報告もあります。日本では輸入の際に厳重にチェックされているので危険はありませんが、一応、食べる前によく確かめましょう。日本産のピーナッツは安全です。また、ある種のチーズのように意図的にかびを用いた食品については発がんの心配はありません。
10.日光に当たりすぎないかつて、海や山で太陽の日ざしを浴びて肌をかっ色にやくことが、健康のシンボルであるかのようにいわれた時期がありました。ところが、最近では、紫外線が皮膚に有害であることがわかって、肌のやきすぎはなるべく避けたほうがいいといわれています。紫外線でやけた肌は、一種のやけどの状態にあります。炎症が続くと、細胞の遺伝子が傷つけられ、がんを誘発する可能性も高いわけです。人種的にみると、紫外線に過敏に反応するのは、メラニン色素の少ない白人で、熱帯地方にすむ白人には皮膚がんや悪性黒色腫が多いといわれます。それに比べると黒人はずっと紫外線に強く、日本人も黒人並みに耐性があります。そのため、わが国では比較的、皮膚がんや悪性黒色腫が少ないのですが、まっ黒に日焼けするほど肌をやくことは、なるべくなら避けましょう。
11.適度にスポーツをする「栄養」、「運動」、そして「休養」は健康な生活をおくるための条件といえます。疲労がたまれば、気分も憂うつになりがちです。さらに疲労が慢性化し、ストレスが続くと、体のいろいろな生理機能が低下して、病気にかかりやすくなります。がんになる危険も高いわけです。最近、1日中いすに座って仕事をしている人々の間に大腸がんが多いという研究結果もだされています。気分転換のためにも、そして健康づくりのためにも、積極的に機会をつくって、適度なスポーツを楽しみたいものです。
12.体を清潔に毎日、シャワーを浴びたり、入浴したりして体を清潔に保つことで、皮膚がんや陰茎がん、子宮頸がんなどがある程度予防できることをご存知ですか?200年ほど前のイギリスでの話ですが、煙突掃除を職業としている人々の間に陰嚢の皮膚がんが発生し、問題になりました。その後、煙突のススの中に皮膚がんの原因となるものが見つかり、仕事をしたあとは体を洗うようになって、この皮膚がんはみられなくなりました。これは、体を清潔にすることでがんの発生が予防できたいい例です。皮膚の汚れのたまりやすい部分を、いつも清潔に保つよう心がけましょう。

胃がん治療中の食事 食事指導

胃がんの場合、健康だったときと比較すると、食生活が大きく変化するため、手術後や退院時期になると、多くの病院では、食事指導が行われます。
ですから、退院後の食生活に対して、不安を感じている人や、わからないことがある人は、しっかり聞いておくようにしましょう。
病院の食事指導は、その時点の患者さんの状態によっても異なりますが、主に食事の回数や、食べるときの注意点などについてお話があります。
まず、胃の手術後は、一度に食べられる量が減っているので、食事回数を増やすことになります。
その場合、3食に加え、10時や3時の間食で補うことをお勧めします。
そして、胃を全摘出した場合は、胃の働きがなくなるため、ダンピング症状という低血糖が起こります。
それを防ぐためには、ゆっくり唾液と混ぜ合わせながら食べることが大切です。
そして、水分を摂り過ぎないようにしましょう。水分で流し込みながら食事をすると、胃に負担がかかります。
また、食後は食べたものが逆流しないように、上半身を少しあげた状態で、休むことをお勧めします。
このように、食事の摂り方に関しては、今までと同じというわけにはいかないので、しばらくは、気を配る必要があります。
食材に関しては、栄養のバランスがとれていて、消化の良いものであれば、好きなものを食べても構わないという指導がされています。
しかし、術後はすぐに満腹感を感じ、少しでも食べ過ぎてしまうと気持ちが悪くなったりするので、思うようには食べられないかもしれません。
しかし、胃のない生活であっても、体も徐々に慣れてきて、時が来れば、食事を楽しめるようになることでしょう。

胃がん治療中の食事 末期がん患者の食事

末期がんになると、治療の副作用で、吐き気や味覚の変化、下痢、便秘などの症状がおこり、食欲がなくなることがあります。
また、体力がなくなって、抵抗力が低下すると、口内炎ができたり、飲み込み辛くなったりします。
このように、末期がんでは、食事も固形物、流動食、水分の順に、口から食べることも難しくなってきます。
そのような場合、点滴を受けたり、中心静脈栄養法や経管栄養法などから、栄養を摂る方法もあります。
しかし、できることなら、少しでも食事を摂れるようにしたいものです。
そこで、患者さんが食べやすいように、食事の際に、少し工夫をしてみることをお勧めします。
まず、冷たいものは食べやすい傾向があります。冷めても、おいしく食べられるようなメニューを考えてみましょう。
そして、口内炎があることによって食べ辛い場合は、できるだけ、歯磨きやうがいを頻繁に行うようにします。
こうすることで、粘膜の荒れを予防することが可能です。
また、嚥下障害がある場合は、食材を細かく刻んだり、とろみをつけると食べやすくなります。
プリンやゼリー、茶碗蒸しなども食べやすいので、お勧めの食品です。
このように、末期がんになると、食事をすることさえ困難になります。
しかし、食事は、栄養補給だけでなく、生活の楽しみの1つでもあります。
できるだけ、患者さんが食事をしたいと思える環境作りをしてあげましょう。

胃がん治療中の食事 化学療法中の食事

化学療法中の食事は、どのようなものを食べれば良いのでしょうか。
化学療法を行うと、患者さんは、さまざまな副作用に悩まされることが考えられます。
患者さんの状態によって使用する薬も異なり、また、体質によっても副作用の現れ方は様々ですが、
なかでも、主な症状としては、食欲減退、吐き気、嘔吐、脱毛などの症状があらわれます。
そして、化学療法中は、白血球が減少して、感染を起こしやすくなったり、血小板が減少して出血しやすくなることも考えられます。
また、赤血球が減少して、貧血を起こしやすくなる場合があります。
このような状況のなかで、どのような食事をすれば良いのか、果たして食事を楽しむことができるのか悩みます。
そこで、少しでも症状を緩和し、食べやすいお勧めの食材をいくつか紹介します。
まず、吐き気がある時は、生姜がお勧めです。
生姜には、殺菌効果や、吐き気を抑える作用があります。
梅やエンドウ豆、にら、みかんなどにも、吐き気に対して、同様の効果があります。
そして、食欲がない時は、酸味をきかせたり、料理に香りをつけることも効果的です。
特に、ゆずやレモンといったさわやかな香りは、食欲をそそることでしょう。
また、貧血気味の時は、鉄分の多い牛や豚、鶏のレバーがお勧めです。
その他、血液をつくるために必要なビタミン、ミネラルを多く含む食品には、卵や乳製品、サバやイワシなどの魚類、野菜や果物でいえば、かぼちゃやブロッコリー、バナナやキウイフルーツ、イチジクなども効果があります。
このように、副作用によって、さまざまな症状があり、食事をすることも、苦痛に感じる場合があると思いますが、少しでも食べられる物を食べて栄養を摂り、体力をつけるようにしましょう。

胃がん治療中の食事 健康食品

それでは、胃がんに効果的なサプリメントとは、どのようなものがあり、どのようなものを選べばよいのでしょうか。
胃の手術後には、胃を切ったために、胃の働きが悪くなり、いくつかの症状に悩まされることがあります。
代表的な症状として、鉄分や葉酸、ビタミンが不足することにより、貧血をおこしてしまうことがあります。
そして、カルシウムの吸収が悪くなったり、ビタミンDの吸収障害が起こることもあります。
その結果、長期的にみると、骨の障害を引き起こすことにもつながります。
このような、症状を緩和する為にも、必要な栄養を摂る必要があります。
そのためには、バランスの良い食事を摂ることが大切です。
しかし、それだけでは、必要な栄養を全て摂取するのが困難な面もあります。
そこで、時としては、サプリメントによって、食事だけでは十分に摂れない栄養を、補助的にとることは、効果的です。
しかしながら、なかには、効果の感じられないものや、かえって有害なものもあり、選ぶ際には注意が必要です。
まず、化学合成品は避け、天然成分のものを選びましょう。
そして、同じ成分からできていても、商品によって、成分のとれた産地や、成分の含まれる量など、情報提供がはっきりしているものを選択しましょう。
胃がんの患者さんの中には、術後不足しがちな鉄分やビタミン、カルシウムなどの成分を、サプリメントで補給されている方もいらっしゃいます。
このように、サプリメントを選ぶ際に、良質なものを選択することができれば、必要な栄養を摂るために有効な方法です。

胃がん治療中の食事 おススメの食材

それでは、胃がんの治療中におすすめの食材とは、どのようなものがあるのでしょうか?
まず、ごはんやパン、麺類といった穀物は、力のもとになるので、主食としてお勧めです。
しかし、おかゆや麺類などは、あまりかまずに食べてしまうことがあるので、意識してゆっくり食べることが必要です。
ただし、穀物の中でも、お赤飯やラーメンは、しばらく控えた方が無難です。
そして、魚や肉類、大豆製品などのたんぱく質は、体力の回復にも貢献してくれます。
できることなら、1日あたり70から80グラムのたんぱく質を、摂取することをお勧めします。
しかし、同じものばかりから摂ると、栄養が偏ってしまうので、さまざまな食品から摂るように心がけましょう。
魚は、脂肪の少ない白身魚を使います。
肉類も、脂肪の少ない赤身を摂取しましょう。
鶏肉の場合であれば、ささみのような脂肪が少ない部位を選びます。
その他、レバーは消化も良く、貧血予防にもなるので、積極的に摂りたい食品の1つです。
牛乳や卵は、消化も良いので、毎日とっても構いません。
ただし、牛乳は、満腹感があるので、間食に飲む方が良いでしょう。
野菜、海藻類においては、繊維質の多いものは消化が悪いので、手術後などは避け、症状が落ち着いてからにすることをお勧めします。
果物に関しても、繊維質が少なく、やわらかいものから食べることが大切です。
とくに、体の調子が回復していない時期は、
加熱したコンポートやももの缶詰などが最適です。
このように、胃がんの治療中に関しては、消化の良いものを中心に、ゆっくりよくかんで食べることが大切です。
食事時間をたっぷりとって、ゆとりをもって食事をしましょう。

胃がん治療中の食事 必要な栄養素

胃がんの治療中は、どの栄養素を、どれくらい摂取すればよいのでしょうか?
胃がんの治療中といっても、手術前と手術後、また、退院してからと、状況によっても、必要なエネルギー量は異なります。
しかし、体にとって良い食品の選び方や、必要な栄養素は似通っています。
ですから、必要に応じて、それぞれの栄養素を摂取するときの参考に、役立てていただければと思います。
まず、ごはんやパンといった穀物はエネルギーにもなり、体温を保つためにも必要な栄養なので、三度の食事にはできるだけ主食として取り入れましょう。
そして、魚や肉、豆腐などの良質のたんぱく質は、傷を治したり、体力の回復を手助けしてくれます。ですから、献立には積極的に取り入れるようにしましょう。
その際、牡蠣以外の貝類は消化が悪いので、避けるようにしましょう。
また、練りものや干物は塩分も高めなので、やめておいた方が無難です。
肉類に関しては、脂肪分の多いベーコンやバラ肉、ハムなどはしばらくは控えておきましょう。
そして、牛乳や卵といったたんぱく質は、消化も良いので、積極的に食事に取り入れるようにしても大丈夫です。
その他、野菜や海藻類については、ビタミンやミネラルの補給ができます。
ごぼうやタケノコ、セロリなどの繊維が多い野菜については、消化があまりよくないので、細かく刻んで使うようにしましょう。
そして、繊維質の多い海藻については、少量のワカメやのりは構いませんが、昆布やヒジキはしばらくやめておくことをお勧めします。
このように、健康体であれば良さそうなものでも、消化の良くないものもあります。ですから、胃に優しいかどうかに気を配りながら、必要な栄養素を摂るように心がけましょう。

胃がん治療中の食事 調理法

それでは、どのような調理法をすれば、食べやすくなるのでしょうか。
とくに、手術後間もない頃には、消化の良いもを食べたり、消化を良くする工夫が大切です。
消化不良を避けるためには、刻む、裏ごしをする、つぶす、すりおろす、ミキサーにかける、煮るなどの方法が、食べやすくなります。
なかでも、消化の良いメニューとして、お勧めのものが、いくつかあります。
まず、ロールキャベツをお勧めします。この料理は、キャベツが胃腸を丈夫に保ち、ひき肉は柔らかく煮込むので、食べやすくなっています。
そして、マカロニグラタンや、牛乳なべなどの乳製品をつかった料理も、消化が良いので、メニューに取り入れてみてください。
その時は、ホワイトソースを柔らかめにつくることで、さらに、消化がよくなります。
また、鶏レバーの串焼きは、鉄分やビタミンが豊富で、消化の良いメニューです。
レモンをかけて食べると、さっぱりして、より食べやすくなります。
その他、山かけを使った料理や、つみれ、卵とじなども柔らかく、食べやすい料理です。
そして、味付けは、全体的に薄味にしましょう。
強い甘みや、塩分は胃壁に刺激を与えてしまいます。
ですから、できるだけ避けるように心がけてください。
このように、患者さんが食べやすくなるように調理し、消化の良いメニューを取り入れると、術後に出やすい症状を、緩和することも可能です。

胃がん治療中の食事 食事の注意点

胃がんの治療中には、どのような点に気をつけながら食事をすれば良いのでしょうか。
まず、穀物については、おかゆから始め、少しずつ慣らしていく必要があります。
うどんなど、麺類でも食べやすいものはありますが、早食いをしてしまうことがあるので、ゆっくり食べるように気をつけましょう。
たんぱく質については、魚介類の中では、貝類は消化に悪いので、できるだけ避けるようにします。
そして、肉類であれば、脂肪分の多いベーコンやバラ肉、ハム、コーンビーフなどは、しばらく食べないように気をつけましょう。
また、調理をするときには、焦げないように、火の通し方に気を配ることが大切です。
豆類に関しては、大豆そのものは消化が悪いので、豆腐や納豆などを、良くかんで食べるようにすると安心です。
乳製品や卵などのたんぱく質は消化が良いので積極的に摂っても良いのですが、最初のころは調理をするときに、油を使わない料理にすることをお勧めします。
これらの乳製品や卵は、デザートでも食べやすいので、間食の時に、摂取する方法も良いでしょう。
野菜や海藻類に関しては、繊維が多く含まれていて、消化はあまりよくありませんが、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいるので、調理法を工夫して、できるだけ食べるようにしたいものです。軟らかく煮たり、皮をむいたり、細かく刻むなどの手を加えて食べやすくしてください。
このように、栄養素別にいくつかの注意点があります。その点に気をつければ、治療中であっても、比較的色々なものを食べることができます。
さまざまなものをバランスよく食べ、力をつけて治療に臨みましょう。

胃がん治療中の食事 治療効果のある食事

胃がんの治療中には、どのような食事を摂れば良いのでしょうか。
治療の効果をあげるためには、少しでも体力をつけ、免疫力を低下させないようにすることが大切です。
そのためには、できるだけ色々なものを食べ、バランスの良い食事を心がけましょう。
まず、エネルギー源である穀物は、退院直後であれば、おかゆや軟らかいごはん、トーストしたパン、うどんが食べやすい食品です。
退院して、しばらくたった頃になると、そばやマカロニなども、食べることができます。
そして、退院3カ月を過ぎると、スパゲティーやお寿司、赤飯やラーメンも少量であれば、食べても構いません。
次に、たんぱく質である魚や肉、豆製品は、
退院直後の場合、白身魚、かき、はんぺんがお勧めです。
そして、ペースト状のレバーや、ほぐしたささみ、
豆腐や豆乳も食べやすいでしょう。
しばらくして食事が安定してくると、エビやつみれ、
赤身のひき肉、納豆や湯葉も食べられます。
退院後三カ月過ぎた頃には、イカやタコ、牛肉、
油揚げやがんもどきなどを食べても、問題がありません。
最後に、ビタミン、ミネラル類に関しては、
退院直後の場合、野菜は、皮をむいて軟らかく煮て食べると、
人参や大根、かぼちゃやホウレンソウでも、
食べることができます。
果物は、缶詰やコンポート、
ジュースにすることをお勧めします。
そして、しばらくして体が慣れてくると、
トマトやキュウリ、レタスなども食べることが可能です。
また、退院して3カ月を超えると、ブロッコリーやキャベツ、
のりやわかめも、少量であれば構いません。
このように、エネルギーのもとになる穀物やたんぱく質、
ビタミン、ミネラルを中心に、消化の良いものから順に食べていくと、
不快な症状も起こしにくくなります。
焦らず、ゆっくりと体を慣らしていきましょう。

逆流性食道炎の代表的なむねやけの症状

逆流性食道炎の代表的な症状が、むねやけです。
むねやけと一言にいっても、その症状は様々です。
「胸が焼け付くような感じ」「胸からのどにかけて、食べ物がつまったような感じ」「みぞおちの辺りがチリチリと熱い」などは、いずれもむねやけの症状と言えます。
食道はのどから胃までをつなぐように位置していますから、逆流性食道炎では、胸からみぞおちにかけての症状を感じやすくなるのです。
むねやけのこれらの症状は、胃酸が逆流することで食道が炎症を起こしている証拠です。
先にも触れたように、食道は胃酸から粘膜を守るための機能が備わっていません。
そもそも食道は胃に食べ物を送り込むことが本来の目的ですから、胃から逆流する胃酸に対する防護機能は必要ないのです。
一方、胃酸は肉も溶かすほどの強い酸性の成分を含みます。
そのことからも想像できるように、胃酸が逆流するということは、食道の組織を溶かすことになるのです。
食道の粘膜が溶けてただれることで、上に挙げたような不快感が起こります。
むねやけが続けば続くほど、食道の炎症は進んでいると考えられますから、たかがむねやけと放置しておくことは危険です。
むねやけは食べすぎなどでも起こるため、症状の深刻さに気づきにくいものです。
しかし自覚症状のあるなしに関わらず、症状が進行すると出血なども起こす可能性があります。
逆流性食道炎が原因で、食道がんに至るケースもありますから、早めに対処して、症状を慢性化させないようにしましょう。

逆流性食道炎によるげっぷの症状

げっぷが食後や炭酸系の飲料水を摂取した後には、誰でも出やすくなるものです。
げっぷは飲食の際に一緒に飲み込んだ空気を、胃から外に逃がすために大切な機能の一つです。
乳児がミルクを与えた後にげっぷをさせることは、ミルクと一緒に飲み込んだ空気が胃を圧迫して、ミルクをを吐き出すことを防ぐためです。
胃の中で、適度な空気は消化の助けになりますが、過剰な空気は胃に負担をかけます。
げっぷを出すためには、食道と胃の境目にある食道括約筋や横隔膜によって締められている部分を開けて、胃の空気を逃がす必要があります。
胃の空気圧が上がると、自然と空気を逃がすために締まっている部分が開く仕組みになっており、食後などの通常の頻度であれば、特に問題はありません。
しかし頻繁にげっぷが出るようになると、こうした開閉システムを頻繁に使うようになり、締まりが緩くなる可能性があるのです。
締りが緩くなるということは、食道括約筋や横隔膜の力が弱くなっている証拠です。
当然ながら、胃酸も逆流しやすくなります。
更に、この状態が続くと、食道裂孔ヘルニアを起こしやすくなるため、逆流性食道炎が進行していきます。
げっぷが頻回に起こる場合は、食事の仕方を見直したり、炭酸飲料を控えるなどして、げっぷが起こる状況事態を減らしていくことが大切です。
しかし一方で、逆流性食道炎が原因でげっぷが頻繁に起きている可能性も考えられます。
げっぷはむねやけなどに比べて、それほどつらい症状ではないため、ついつい見落としがちです。
生活を振り返っても、げっぷの原因が分からない場合には、既にに逆流性食道炎が進行している可能性も考えられますので、早めに医療機関を受診しましょう。

逆流性食道炎による胸の痛みの症状

胸に痛みや、強く締めつけられるような症状がある時、気になるのは心臓疾患などの循環機器に関わる病気でしょう。
循環器系の病気は、重症でなおかつ致命的なものもありますので、胸の痛みを感じたら、まずは循環器系の検査を行いましょう。
それでも異常が見つからない場合は、逆流性食道炎の症状の可能性も考えられます。
逆流性食道炎も胸に痛みを伴う場合があるのです。
繰り返しになりますが、胃酸が逆流すると食道の粘膜は大きいダメージを受けます。
肌が敏感な人がいるように、食道の粘膜の強さも個人差があります。
たった一度の嘔吐でも、食道の粘膜がただれてしまう人もいるでしょう。
食道の粘膜も皮膚と同じく、ただれれば痛みも伴います。
その痛みが、胸の痛みとなって表れている可能性があるのです。
非常に激しい痛みとなって表れ、呼吸が苦しくなる場合もあります。
その場合、いくら循環器系や胃の検査をしても原因は分かりません。
原因不明のため、鎮痛剤を処方されることが多いようです。
日頃から、むねやけなどの症状にも心当たりがある場合は、逆流性食道炎による可能性も疑ってみましょう。
また食道が荒れている限り、胸の痛みは繰り返す可能性があります。
食べすぎやアルコール摂取の後にも、胃酸が逆流することがありますから、胸の痛みを感じる前の行動を確認してみることも大切です。
その上で食道の検査をしてもらうと、問診の際に状況を伝えることができるので、より正しい診断を得ることができます。
また原因が分からないからと、自己判断で痛みを我慢することは危険です。
苦痛が続くだけですし、最悪の場合には、深刻な疾患を見逃してしまうことにもなりかねません。
痛みが出たら、必ず医療機関を受診することが大切です。

逆流性食道炎によるのどの痛みの症状

逆流性食道炎の症状で、口の中にすっぱい液が上がってきたり、苦味を感じることがあります。
これは、胃酸の逆流がのどまで達している証拠です。
のどの粘膜にとっても、胃酸は強い刺激であることは同じですから、こうした症状が頻繁に起こると、のどの粘膜も炎症を起こすことがあります。
のどの炎症は痛みを伴うだけでなく、粘膜がただれれると、のどに違和感を感じたり、食事の際にはのどに食べ物がつかえた感じがするようになります。
この症状が慢性化してくると、のどの周辺の器官にも影響を及ぼすことがあります。
鼻の奥がひりひりと痛くなったり、声がかすれたり、更に胃酸を気管に吸い込んで気管支炎を起こすこともあります。
一見、逆流性食道炎の症状とは関係の無いように思われるかもしれませんが、それだけ胃酸の刺激が強いということです。
のどの粘膜の炎症は、風邪などのウィルス疾患による場合は、風邪症状の緩和と乾燥対策によって自然に治ります。
しかし、逆流性食道炎の場合は胃酸が逆流している限りは症状は続きますので、のどのケアの前に胃酸の逆流を改善することが先決です。
症状を放置して炎症がひどくなると、扁桃腺やリンパ腺に影響を及ぼして発熱を伴う症状に至ることもあります。
また逆流性食道炎によってのどの痛みが起こっている場合には、胃酸が逆流する過程で食道もかなり荒れた状態になっていることが予想されます。
のどのケアは飴をなめたり、うがいをしたりと事故治癒力に頼りがちですが、痛みが慢性化している場合は逆流性食道炎の可能性が高いと考えて良いでしょう。

逆流性食道炎でもっともつらい吐き気や嘔吐の症状

逆流性食道炎の症状が進んでくると、吐き気や嘔吐症状が出ることがあります。
逆流性食道炎の原因のところで触れたように、食道括約筋や横隔膜の機能の低下に加えて、胃酸の過剰な分泌は、胃酸が逆流しやすくなる条件に挙げられます。
逆流性食道炎は、単一の原因によって起こるというよりは、これらの原因がいくつか重なっている場合が多く、またその症状も多岐に渡ります。
例えば、「食道括約筋の機能低下で食道と胃の境目の締りが緩くなり、胃酸の逆流が頻繁に起こっている時に、胃酸が気管支に逆流して、激しく咳き込むことで腹部に圧力がかかり、胃の内容物まで逆流してしまう」といった複合的な症状です。
逆流性食道炎の症状はどれも、生活の質を低下させるものばかりですが、中でも嘔吐は最もつらい症状と言って良いでしょう。
実際には、アルコールの過剰摂取や食べすぎなどが原因で嘔吐した際に、逆流性食道炎を煩っている方も少なくありません。
食生活の中に、嘔吐を誘発させる原因が無いか考えてみましょう。
また、吐くと楽になるからと、嘔吐を習慣化させることも体への影響を考えると非常に危険ですから、絶対に止めましょう。
嘔吐は、生活の質を低下させ、ひどい時は社会生活に支障をきたすこともある症状です。
また、嘔吐は精神的なストレスによっても起こりやすくなりますので、嘔吐を繰り返すことで更にストレスとなって嘔吐が慢性化している可能性もあります。
頻繁に嘔吐が起こるようであれば、逆流性食道炎の治療に加えて、心療内科などの精神的なケアも必要な場合もあることを覚えておきましょう。

逆流性食道炎に必要な受診料と検査方法

逆流性食道炎と思われる症状が出たら、何科を受診すれば良いのでしょうか。
現在では、逆流性食道炎の患者の増加に加え、症状に対する医師の知識も豊富になって来ていますから、その症状ごとに違う科を受診しても、大抵は同様の検査が行われるようです。
むねやけの場合には、内科や消化器科、胃腸科などを受診する方が殆どでしょうし、これらの科は逆流性食道炎の治療には最も適した科と言えます。
また胸の痛みが辛い時には、まずは循環器科を受診して問題なければ、上記の科を受診すると良いでしょう。
胸の痛みには深刻な病気が隠れている場合もあるので、まずは心臓に問題が無いかを優先して確認するようにしましょう。
また鼻やのど、耳などに症状が見られる場合には、耳鼻科を受診することになると思いますが、こちらでも逆流性食道炎の場合には内科の診断と同様の処方をするところが多いようです。
こちらも耳自体に炎症が無いか、確認する上でもまずは耳鼻科を受診することをお勧めします。
逆流性食道炎の検査には、主として内視鏡検査が行われます。
内視鏡とは細い管の先にカメラがついた医療検査器具で、一般に胃カメラと呼ばれるものです。
この内視鏡を口や鼻から挿入し、食道や胃の状態を確認する検査が行われます。
嘔吐の症状がある方には辛い検査ですが、食道粘膜の状態を直接カメラで確認することができるので、最も信頼できる検査と言えます。
またphモニタリングと言う、食道内の酸性度を測る検査が行われる場合もあります。
この検査では、胃酸の逆流の程度を調べることができますが、最低でも丸一日のモニタリングが必要になります。
その他にも、レントゲン検査や問診などが行われて、総合的に診断が行われます。

薬物治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療では、薬の服用による対処療法が一般的です。
対処療法ですから、逆流性食道炎の根治療法とはとは言えませんが、逆流性食道炎の症状は日常生活の質を下げるような深刻な症状もありますから、まずは症状を緩和させることがとても重要なのです。
逆流性食道炎の原因は、当然のことながら胃酸の逆流です。
この胃酸の分泌を抑えることを目的に投与されるのが、プロトポンプ阻害剤(通称PPI)とH2ブロッカーなどの、胃酸分泌抑制剤です。
特にプロトポンプ阻害剤の効果は高く、数種類を組み合わせて処方されることもあります。
胃酸を中和させる制酸剤という薬がありますが、こちらは効果が持続しないため、胃酸分泌抑制剤一緒に処方されることが多いようです。
次に食道のぜん動運動を促す目的で処方されるのが、消化管運動機能改善剤です。
食道の運動機能を高めることで、胃酸の逆流があっても押し戻すことができます。
更に食道に限らず、消化器官全般に作用するため、胃の消化機能も高めて内部に食物が長く滞留しないようにする効果も期待できます。
また、食道の粘膜がすでにただれたり炎症を起こしている場合には、これによる不快症状を緩和させることが先決ですので、粘膜保護剤も用いることがあります。
傷ついた粘膜を修復するだけでなく、粘膜の保護にも効果があります。
逆流性食道炎の原因には、複数の要因が関わっていることが多いと説明しました。
そのことからも、投薬にも複数の薬が組み合わされることが殆どです。
繰り返しになりますが、薬では逆流性食道炎を完治することは難しいので、症状が改善しないのに我慢して服用を続ける意味はありません。
症状や体質などによっては、薬が合わないこともありますので、症状が改善しないときには、すぐに医師に伝えて、薬を変えてもらいましょう。

外科治療により逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の治療には、薬の服用が最も一般的ですが、薬を服用しても症状が改善しなかったり、食道裂孔ヘルニアの場合には、外科的な手術が行われることもあります。
手術では、食道側にはみ出した胃を正しい位置に戻し、緩くなった食道と胃の境目を締めるように縫合します。
胸や腹部に開けた穴から内視鏡を挿入して行う、ニッセン法という手術方法は広く行われている方法です。
しかしこの方法は、開腹して行う手術ですから、全身麻酔と1週間程度の入院期間が必要なため、体への負担が大きい方法でもあります。
現在では、開腹せずに口から挿入した内視鏡などで手術をする方法もあり、手術時間も短時間で済み、入院期間も3日程度と負担が少ないことが魅力です。
ただし、この手術については健康保険が適用になってから、まだ日が浅く実施している医療機関が限られるなど、課題が多いことも事実です。
こうした手術による治療は、胃酸が逆流する原因を根本的に取り除くことができますから、短期間で症状を改善したい場合には、最も効果的な方法です。
特に、若い方で逆流性食道炎を患っている場合には、PPIなどの強い薬を長期間服用することによる副作用も気になるところですから、手術を検討してみても良いでしょう。
一方で、開腹や内臓の縫合などによるダメージは避けられませんので、その点のリスクも理解する必要があります。
胃や腸の手術に比べて、食道の手術は技術を要すると言われます。
治療方法の選択は、患者自身の意思が尊重されるべきですが、正しい知識を持たずに手術などの重大な選択をすることは危険ですから、担当医とよく相談して決めるようにしましょう。
また手術で症状が改善しても、生活習慣自体に逆流性食道炎を誘発する要素を抱えたままでは、症状が再発することもあります。
その点では、手術をした場合も同様に生活改善を併せて行っていくことが大切になるのです。

生活習慣を見直して逆流性食道炎を改善

逆流性食道炎の症状改善に、生活習慣を見直すことは欠かせません。
そもそも逆流性食道炎の原因である、食道下部の緩みは加齢によるものだけでなく、生活習慣からの影響も大きく受けているのです。
同じ高齢の方でも、逆流性食道炎の症状が見られない方もたくさんいらっしゃいますから、若いうちから食事や生活習慣に気を配ることが大切です。
たとえ薬物療法や手術治療などで、症状が改善しても生活習慣の中にその要素がある限りは、症状は再発する可能性が高いのです。
特に次に挙げる習慣があれば、改善することが望ましいでしょう。
<胃酸の分泌が過剰になっている可能性があります>
・日ごろから、過食や飲酒を繰り返している方。
・脂っこい料理や刺激の強い食品をよく摂取する方。
・肉食を好む方。
<胃に過剰な圧力がかかり、腹圧が上がっている可能性があります>
・肥満や便秘体質で、腹部が常に圧迫されている方。
・妊娠中の方。
・猫背で前かがみの姿勢の方。
・ベルトや下着で腹部を締めるている方。
・腹部を圧迫する運動をされる方。
また食後、すぐに横になる方は胃酸が逆流しやすくなります。
これらの習慣に加えて、ストレスが強くなると胃酸の分泌が増え、胃潰瘍などの症状を起こすことも知られています。
胃酸が増えているわけですから、当然逆流する可能性も高くなります。
こうした習慣は、現代では該当しない人の方が少ないかもしれません。
その点では逆流性食道炎は、現代病の一つと言っても良いほどなのです。
だからこそ改善が難しいとも言えます。
しかし、逆流性食道炎の症状は一度進行すると、生活の質の低下は避けられません。
症状に苦しむことになる前に、思い切って生活改善に取り組んでみましょう。

逆流性食道炎と症状が似ている食道がん

道がんは、他のがんと比べて死亡率が高いことが知られています。
そして食道がんの症状には、逆流性食道炎と同じ症状が見られることが多いのです。
飲食時にしみたり、飲み込めずにつかえる、声がかすれるなどが代表的な食道がんの症状ですが、どれも逆流性食道炎の症状でもあります。
ただし、食道がんの場合は自覚症状がある場合には、既にがんが進行していることが多いです。
食道がんの主だった原因として挙げられるのが、飲酒や喫煙など食道に負担をかける行為です。
また、逆流性食道炎を悪化させたまま治療をしないでいると、食道がんの原因になることがありますので、注意が必要です。
これは、食道の粘膜が胃酸の刺激を受け続けることによって、胃の粘膜に似た組織に変わるバレット食道という症状に関係しています。
欧米では逆流性食道炎の患者が多いことに比例して、食道がんの原因にもバレット食道の症状を持つ方が多いという報告があります。
現在日本では、食道がん自体はそれほど患者数が多くなく、またバレット食道から食道がんを発症するケースも欧米に比べて少なくなっています。
しかし、逆流性食道炎をうったえる方が増加している背景を考えると、今後はバレット食道が原因の食道がんが増える可能性が高いのです。
バレット食道になると、もとの食道粘膜の状態に戻すことは非常に難しくなります。
バレット食道と診断されたら、定期的に内視鏡の検査を受けることが重要です。
上でも触れたように、食道がんは自覚症状がでてからでは手遅れな場合もありますから、がんの早期段階での発見が最も有効な治療と言えます。
しかしバレット食道になる前に、逆流性食道炎を放置せずに治療することが、何よりも大切なことは忘れてはいけません。

逆流性食道炎と症状が似ている狭心症

狭心症とは、心臓に血液を供給する血管が細くなったり、つまったりすることで起こる症状です。
心臓は心筋という筋肉によって、その絶え間ない動きを保っています。
心筋には、冠動脈という血管から送られる酸素と栄養が必要不可欠ですが、この冠動脈に何らかの異常が起きると、心筋が正常に働くことができなくなります。
その結果、胸が締め付けられるように苦しくなったり、胸の周辺が痛くなるという症状が現れます。
この症状は一時的に発生し、十数分以内には症状が治まることが多いですが、ひどい場合は呼吸困難や嘔吐を伴うこともあります。
こうした症状が出たときには、すぐに医療機関を受診しましょう。
症状が辛い割には、一時的に症状が治まってしまい、心電図検査などでは狭心症の診断が難しい場合もあります。
その際に、症状が似ていることから、逆流性食道炎と診断されることもあります。
狭心症を発症する方に、高血圧や肥満の傾向があり、逆流性食道炎の原因とも重なることも、診断を難しくする一つの理由になっています。
しかしながら、逆流性食道炎と狭心症では治療法は全く異なります。
逆流性食道炎と診断されて、薬を服用しても症状が改善しない場合には、狭心症の症状も疑ってみましょう。
逆流性食道炎の場合は、胸の痛みだけでなく、その他の症状も同時に現れることが多いので、実際に起こっている症状を冷静に判断することも必要です。
一方で、気にしすぎてストレスを抱えすぎないことも大切です。
ストレスは、逆流性食道炎と狭心症のいずれも引き起こす原因になることを、覚えておきましょう。

逆流性食道炎と症状が似ている心筋梗塞

心筋梗塞の症状は、先に紹介した狭心症と殆ど同じです。
心筋梗塞は狭心症の悪化した状態ですから、原因も症状も狭心症と重なるのは当然のことです。
心筋梗塞になると冠動脈が長時間詰まり、血液が心臓の細胞に届かなくなるため、心筋の壊死が起こっている状態になります。
そのため症状が似ていても、狭心症に比べて事態は深刻です。
胸の痛みや苦しさが、30分以上続く場合には急性心筋梗塞の可能性が高くなります。
また心筋梗塞では、胸の痛みや締め付けるような苦しさに加えて、左の肩や顎にも痛みが広がる場合もあります。
最悪の場合には、死に至ることもある病ですから、正しい処置が重要になります。
狭心症の段階で治療を開始していれば、心筋梗塞に至らずに症状を改善することも可能です。
逆流性食道炎と診断されていても、胸の継続的な痛がある場合には、定期的に循環器系の検査も行うようにしましょう。
心筋梗塞では動脈硬化も大きな原因の一つになりますので、コレステロールの多い食事を摂っていたり、肥満の傾向がある人は、食生活を改善することが重要です。
繰り返しになりますが、逆流性食道炎も心臓疾患も生活習慣が大きく関係している点では、生活改善は欠かせません。
また症状を悪化させないためには、日ごろから健康状態の変化を見逃さないことが大切です。
忙しい現代では、症状さえ治まれば何も無かったかのように、体の不調を忘れてしまいがちです。
しかし、逆流性食道炎にしても心筋梗塞にしても、初期段階でのサインに気づくか気づかないかが、その後の症状を左右します。
また、体の不調を敏感に読み取ることで、受診の際の誤診を防ぐこともできます。
医者まかせにするのではなく、自分の体を知り、知識を持つことが、病気予防には重要なのです。

食道や消化器官の働き

逆流性食道炎の原因を理解する上で、まずは食道や消化器官の働きを知ることが重要です。
これらの器官が、どのような機能を持っているのか説明しましょう。
そもそも食道は消化器官の一部です。
口から入った食物が肛門から排出されるまでの、一連の流れを行う器官を消化器官と呼びます。
消化器官は、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門が一本の管でつながれています。
そしてそれぞれの臓器が、食物を消化・吸収するための役割を果たしています。
食道は、消化器官の中で消化液を分泌しない臓器です。
その大きな役割は、食べた物を胃へ送ることです。
食べた物は食道のぜん動運動によって、胃に送られます。
このぜん動運動は食べ物を胃に送るだけでなく、胃からの逆流を防ぐ役目を果たします。
更に、食道と胃の境目には横隔膜があり、食道を支えたり、食道を締めて胃に入った食物が逆流するのを防いでいます。
その他、食道括約筋も食道と胃の境目で食道を閉じるために働いています。
なぜこうした機能が必要なのでしょうか。
一度食べたものが、逆流すると栄養が吸収されなくなってしまいますから、消化器官は食べ物を下へ下へと運ぶ仕組みになっています。
加えて、胃酸はとても強い酸性の消化液です。
消化液を分泌しない食道の粘膜は、消化液から自身を守る機能が備わっていないのです。
そのため、胃酸が逆流すると粘膜がダメージを受け、炎症を起こしやすいのです。
このように、消化吸収を正常に行い、臓器を健康に保つためには、食物を逆流させない仕組みが必要です。

逆流性食道炎を引き起こす原因は?

逆流性食道炎は、胃に入った食物が食道へ逆流することで起こります。
なぜ、食物が胃から食道へ逆流するのでしょうか。
この原因には、次のようなことが挙げられます。
一番大きな原因は、食道括約筋や横隔膜の働きによって閉じていた、胃と食道の境目が緩んでしまうことです。
実は食道括約筋や横隔膜の圧力は、年齢とともに力が弱くなっていくことが分かっています。
食道はこの二つの力によって締められていますから、これらが緩くなると、食べ物を飲み込む時に開いた食道が、なかなか閉じなくなるのです。
そのため胃から逆流が起こりやすくなります。
また、胃が食道側へはみ出してしまう、食道裂孔ヘルニアという症状がありますが、この症状も横隔膜の圧力が弱くなることで起こります。
胃が食道側にはみ出た状態になりますから、逆流は当然ひどくなります。
二つ目の原因は、食道のぜん動運動が鈍くなることで、食物を胃へ運ぶ機能が低下することです。
こちらも加齢による影響が大きいとされています。
食べた物は、もちろん重力によって下に降りていきますが、食道のぜん動運動が活発に行われることで、食物がスムーズに胃に送り込まれます。
そのため食道のぜん動運動が低下すると、胸の辺りに食べ物が詰まったような感覚になりやすいのです。
また、胃から逆流した食物を戻すこともできなくなるので、逆流した食物がのど元まで上がってくることもあります。
三つ目は、胃からの圧力が上がることです。
炭酸飲料を一気に飲んだり、食べ過ぎたりすると、胃の圧力が一時的に上がり、ゲップがでたり胃酸が戻るような感覚になることがあるでしょう。
胃の圧力は食事の量や内容などによっては、誰でも一時的に上昇することがありますが、繰り返すことで逆流性食道炎を起こしやすくなりますので、注意が必要です。
次の章では、こうした原因に陥りやすい人について、詳しく見ていきましょう。

逆流性食道炎の基礎知識

逆流性食道炎になりやすいのはどんな人?
逆流性食道炎になりやすい人とはこの原因に陥りやすい人と言えます。
まず挙げられるのが、高齢の方です。
高齢になると、その他の身体機能の低下と同様に、食道括約筋や横隔膜の力も衰えます。
更に食道のぜん動運動も活発でなくなりますから、逆流性食道炎になりやすいのです。
その意味では、老化によって胃酸の逆流が増えるのは仕方の無いことと言えるでしょう。
また、胃の手術などを受けたた方も、食道括約筋の機能が低下する場合があります。
こちらも病気によっては必要な手術もありますから、老化と同様に避けることが難しいのです。
一方、胃の圧力が上昇しやすい人は、肥満の方や妊婦の方、前かがみの姿勢の方、肉や脂肪を多く採る方、などです。
肥満や妊娠、前かがみの姿勢では、胃が押し上げられたり、圧迫されることが多くなります。
特に肥満や前かがみの姿勢が慢性的に続くと、胃が長期にわたり押し出されて、食道裂孔ヘルニアになる場合もあります。
また、肉や脂肪の多い食事は胃酸の分泌が活発になるため、胃の圧力が上昇しやすいのです。
こうした食の好みは、肥満の原因にもなりますから、その点でも逆流性食道炎を起こしやすい人と言えるでしょう。
日本では、近年になって逆流性食道炎の症状をうったえる方が増えてきました。
これには、社会の高齢化や欧米志向の食事などが大きく関係しています。
妊娠や加齢は仕方のないことですが、姿勢や食生活など思い当たることがある場合は、これらを改善することで、症状が緩和される場合もありますから、一度生活を振り返ってみることが大切です。
ただし気になる症状がある場合には、必ず医療機関を受診しましょう。
実は、深刻な病気が隠れていることもあるのです。

乳がんの検査ーしこり・分泌物の検査方法

乳房にしこりができたり、乳頭からの分泌物があった場合に検査をすることになります。もちろん年代や乳房の大きさ状態により有効な検査方法は変わります。身体への負担をできる限り少なくしようと考えると、まずは撮影検査がいいでしょう。
乳頭からの分泌物がある場合は乳頭分泌細胞診があります。これは分泌物そのものを顕微鏡で調べる検査なので、身体への負担は掛かりません。
撮影検査として一般的なものには、超音波検査とマンモグラフィー検診があります。この2つの検査方法は長所と短所がそれぞれあります。ですが併用することで、お互いの短所を補うことができるので精度が上がります。
この検査をしてもはっきりとした検査結果が出ない場合に、穿刺(せんし)吸引細胞診でを受けることになるでしょう。これは細胞を少し採り検査をします。
これでも分からない場合は、針生検で組織をとって調べます。組織は細胞の集まりなので、穿刺(せんし)吸引細胞診よりも少し身体への負担が大きくなります。
穿刺(せんし)吸引細胞診を行わずに針生検を行う医師がいるようですが、身体への負担や、がん細胞への刺激を少なくする観点からあまりオススメできません。もちろん針生検を行ったほうが良い場合もあるでしょう。
こういう場合は、医師に検査方法の決定基準を伺いましょう。納得できる回答をもらえなければ、他の施設で検査を受ける選択も必要かもしれません。
このように身体への負担を少なくすることと、がん細胞への刺激を少なくすることを考えて検査方法を選んでください。摘出生検もありますが、あまりオススメできません。
現在は検査技術が向上したので、針生検で摘出生検に匹敵する情報を得ることができるからです。

乳がんの検査ー検査と進行度の確認

検査を受けて「乳がんです」と言われたら、さぞかし動揺するでしょう。でも、冷静になって自分が受けた検査を思い出してください。針生検や摘出生検を受けて診断されたのならば、残念ながら検査結果は正しいと思われます。
穿刺(せんし)吸引細胞診の場合は、【クラスV】と言われたらほぼ正しい診断でしょう。ですが、【?Vb】や【?W】の場合はがんでないこともあるので再検査を希望されたほうがいいと思います。
もう一度、穿刺(せんし)吸引細胞診を受けるか針生検を受けるかは医師と相談して決めてください。
超音波検査やマンモグラフィの画像診断だけの場合は、診断の根拠を聞いてみるといいと思います。いろいろと聞くことは悪いことではありません。自分が納得できるまで聞くべきです。
いずれにしろ自分の納得のいく説明が得られない場合は、他の乳腺専門医のいるところへ相談してみましょう。その時は、検査を受けた病院の資料があるといいのですが、言い出せない場合は話だけでも聞きに行きましょう。ただ、「乳がんでない」と言われるのを期待して、違う病院回りをするのはよくありません。治療も遅れますし、余計にがんに刺激を与えてしまいます。
診断に納得できたら、進行具合を聞いておきましょう。ステージ?Uまでならひと安心というところです。ただ安心しすぎて手術を数ヶ月も先延ばしにするのはどうかと思います。
たしかに乳がんは痛みもない場合が多く、急いで行うべき種類ではないかもしれません。ですが検査結果に納得できたならば、なるべく早いに越したことはありません。

乳がんの検査ー針生検

針生検にはコア針生検とマンモトーム生検があります。これらの検査では細胞より大きい組織というものを採取します。細胞よりも組織のほうが確実な診断ができるからです。
コア針生検は、局部麻酔を行い皮膚を少し切って、穿刺(せんし)吸引細胞診より少し太い針を刺して組織を採取します。針を刺す位置は超音波で見ながら針を刺します。
皮膚の切開については、傷跡は数ミリ程度しかありません。このため検査後の傷跡も身体にかける負担も少なくなり検査がしやすくなりました。しかも、得られる情報がほぼ摘出生検に匹敵します。
この針生検が普及したことにより通常の摘出生検の必要性が下がりました。摘出生検をした場合のリスクを回避できる検査方法と言えると思います。
マンモトーム生検はさらに太い針を使います。吸引機と接続されているので、かなり大きな組織を採取できます。この器械とマンモグラフィが一緒になったのがステレオガイド下マンモトーム生検です。
この機器を使った検査では、コア針生検では採取が難しい小さな石灰化した組織も見逃しません。針が太いので、検査後は一日圧迫が必要になります。
これらの針生検では、針が太くなるほど挿し穴からがんが再発する可能性が上がるとされていますが、頻度は低いとされています。それよりも検査の有用性の方が高い、という考え方が一般的になっています。
ただし、まずは穿刺(せんし)吸引細胞診を受けた方が良いでしょう。身体への負担やがん細胞への刺激は、できるだけ少ないほうが良いからです。

乳がんの検査ー穿刺(せんし)吸引細胞診

穿刺(せんし)吸引細胞診とは、直接乳房のしこりに細い注射針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で細胞を調べる検査方法のことを言います。
触れないぐらい小さいしこりの場合は、超音波で見ながら注射針を刺して細胞を吸引します。注射針を刺すため痛みがありますが、局部麻酔をする場合と無麻酔の場合があります。
痛みはチクッとする程度のようですが、人それぞれ違うでしょうし、乳房の刺す場所によっても違います。医師の判断で麻酔をするかは決まるでしょうが、痛いことがどうしても嫌ならば事前に申告しておきましょう。
この検査の長所は身体をほとんど傷つけないということです。負担が少ないため何度でも行えますし、この検査が原因でがんが全身に回る危険性はほとんどありません。ごくごくまれに注射針を抜いた傷のところにがんが出てくることがあります。
短所としては注射針を刺して細胞を吸引するには、かなりの熟練した技術が必要であること。また、採取した細胞の診断がとても難しいことが挙げられます。
もちろん「細胞診指導医」または「認定病理医」という専門家が診断結果を出します。乳がんであった場合の診断結果は日本中どこでも同じようなものなので構わないのですが、逆の場合が問題です。
がんでない細胞をがんだと診断する誤診の差が、10倍程度の開きがあります。だから医師により、診断結果の正確さに差が出ることがあります。

乳がんの検査ーマンモグラフィ検診

乳房の放射線(X線)検査をマンモグラフィ検診と言います。省略してマンモグラフィと呼ばれることが多いでしょうか。
この検査は超音波検査とならんで、乳房の検査としてはとても重要視されています。理由は、触れることができない非浸潤がん(顕微鏡で見ないと分からない大きさのがん)さえも発見可能な検査方法だからです。
ただし、放射線を使用するので妊娠中の方は避けた方がいいでしょう。また、若くて乳腺が発達している方の乳房は、乳腺もしこりも白く映ることになるので、鑑別がほとんどできないことがあります。このような方には超音波検査の方が有効です。
検査の仕方は、2枚の透明な板で乳房をはさんで圧迫し、軟線という弱い放射線で写真を撮ります。この時に乳房が圧迫されるので、マンモグラフィ検診は痛いと言われる方も少なからずいます。
特に小ぶりの乳房の方が痛がるようですが、個人差がかなりあるようです。圧迫により、放射線の被曝量を少なくする効果もあるので、何とか我慢してください。
マンモグラフィ検診では、しこりの形やしこりになっていない乳がんも発見できるのですが、鑑別には相当な技量が必要とされています。
NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会では試験を行い、医師の技量に評価を与えています。B判定相当の医師が望ましいとされているので、希望されるならこちらで検索してみてください。
NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会
http://www.mammography.jp/

乳がんの検査ー超音波検査

超音波検査は全く痛みがありません。しかもレントゲン検査と違い、放射線被爆の心配がないので、妊娠していても検査することができます。また身体に害がないため何回でも検査ができますし、かかる時間も10分程度と短時間で済みます。
触っても分からない数ミリ程度の小さなしこりの発見だけでなく、形やしこり内部の状況まで見ることができます。これにより、熟練の医師なら超音波検査だけで約9割の乳がんの診断が可能だと言われています。
ですが、短所もあります。超音波検査では、乳房内の石灰化を映すことはできないので、非浸潤がん(顕微鏡で見える大きさ)を発見することはできません。
それと脂肪の多い乳腺(閉経後に多い)の場合は、脂肪と乳がんの違いを読み取ることが困難な場合もあります。本当に小さながんの発見や、脂肪の多い乳腺の場合はマンモグラフィー検診のほう有効でしょう。
でも、この2つの事がら以外では、超音波検査はとても優秀と言えるでしょう。乳腺の発達している若い方や、乳房に傷や痛みがありマンモグラフィー検診をうけることが難しい方にとっては最適な検査方法でしょう。
最後に他の検査と同様、医師や技師の能力により診断結果に差が出ることは否めません。情報を集めて、信頼できる医師の検査を受けることも大切になってくるでしょう。

乳がんの検査ー受診日

受診日は、できれば女性ホルモンの影響が大きい月経日前は避けて、月経後1週間前後がいいでしょう。乳房は月経前には張りやすかったり、しこりのようなものが出来やすかったりします。
この状態でも診察は出来ますが月経前にできるしこりがあると、担当した医師も診察が難しくなるでしょう。正確な診断結果を出して頂くためにも、気を付けたいことですね。
それから乳房が最も柔らかくなるのは、月経後1週間以内だと言われています。乳房が柔らかいほうが、硬いものがあった場合は分かりやすいでしょうから、その観点からも1週間前後が受診日としては一番良いと思います。
服装は上半身は脱ぎやすいものにしましょう。正確な診察をするためには、上半身は裸にならないとダメだからです。診察は、問診に始まり、視診、触診となります。その後は、各医師の判断で機材を使った診察に移ると思います。(マンモグラフィや超音波検査など)
問診は聞かれたことに落ち着いて正確に言いましょう。動揺する必要はまったくないのですから。医師は協力者です。気が付いたことや少し気に掛かるということがあれば遠慮なく言うようにしましょう。
それを聞いて、医師が何かに気付くことがあるかもしれません。視診、触診でも自分が気付いたことや痛みがあればドンドン言うようにしましょう。言って得をすることはあっても、損をすることは何もありません。

検査・検診 乳がんの検査ー乳腺専門医

日本乳癌学会は、2004年10月5日広告できる「乳腺専門医」が認可されたことを受け、乳癌学会乳腺専門医を公開しています。また専門医だけではなく認定施設・関連施設も公開されています。
この専門医の資格を取るためには、一定数の診療経験と数個の論文や学会報告を有することが必要です。さらに、乳腺専門医認定試験に合格することも必要です。
このことから乳腺専門医の資格を持っている医師は、乳がんの治療に関して知識もあり、経験豊富であると言えるでしょう。
最近では乳腺専門のクリニックもあります。でも、中には専門外の医師がクリニックを開いていることもあるようなので、診察を受ける医師は慎重に選ぶ必要があるでしょう。選ぶ基準としては、乳腺専門医の資格を持っていることが条件です。
日本乳癌学会
http://www.jbcs.gr.jp/
それから、マンモグラフィ検診制度管理中央委員会の試験でB判定以上の医師が望ましいとされています。現在、B級以上の読影医は約4600人います。これらの医師を見つけたい方は、
マンモグラフィ検診精度管理中央委員会http://mammography.jp/de
を検索してください。
他にも、優れた投影技師もいたほうが良いでしょう。検査を受る上で大事なことは、優れた投影技師、優れた読影医、精度の高い装置のある病院を選ぶことです。

肝臓がん治療の名医と言われているドクター

肝臓がん治療の名医
北海道・東北ドクター名(敬称略) 病院名            病院所在地
  藤堂省    北海道大学病院       北海道札幌市北区北14条西5丁目
℡011-716-1161 
  佐々木大輔  弘前大学医学部付属病院   青森県弘前市本町53 
℡0172-33-5111 
  海野倫明    東北大学医学部付属病院   宮城県仙台市青葉区星陵町1-1
℡022-717-7000
関東
ドクター名(敬称略)   病院名              病院所在地
 吉見富洋      茨城県立中央病院         茨城県笠間市鯉淵6528
℡0296-77-1121
 宮崎勝       千葉大学医学部付属病院      千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
℡043-222-7171
 幕内雅敏      東京大学医学部付属病院      東京都文京区本郷7-3-1
℡03-3815-5411
 川崎誠治      順天堂大学医学部付属順天堂医院  東京都文京区本郷3-1-3 
℡03-3813-3111 
 高山忠利      日本大学医学部付属板橋病院    東京都板橋区大谷口上町30-1
℡03-3468-1251 
 小菅智男      国立がんセンター中央病院     東京都中央区築地5-1-1 
℡03-3542-2511
 山本雅一      東京女子医科大学病院       東京都新宿区河田町8-1
℡03-3353-8111
 泉並木       武蔵野赤十字病院         東京都武蔵野市境南町1-26-1
℡0422-32-3111
 窪田敬一      獨協医科大学病院         栃木県下都賀郡壬生町北小林880
℡0282-86-1111 
 永井秀雄      自治医科大学付属病院       栃木県河内郡南河内町薬師寺
3311-1 ℡0285-44-2111 
中部・北陸・東海
ドクター名(敬称略)     病院名             病院所在地
 上坂克彦      静岡県立静岡がんセンター    静岡県浜松市三方原町3453 
℡053-436-1251 
 金岡祐次      大垣市民病院          岐阜県大垣市南頬町4-86 
℡0584-81-33411 
 二村雄次      名古屋大学医学部付属病院    愛知県名古屋市昭和区舞鶴町65
℡052-741-2111
 城卓志       名古屋市立大学病院       名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
℡ 052-851-551 
関西
ドクター名(敬称略)   病院名           病院所在地
 中村武史      北野病院            大阪府大阪市北区扇町2-4-20
℡06-6312-1221 
 佐々木洋      大阪府立成人病センター     大阪府大阪市東成区中道1-3-3
℡06-6972-1181 
 藤元治朗      兵庫医科大学病院        兵庫県西宮市武庫川町1-1
℡0798-45-6111
 浮草実       大阪赤十字病院         大阪府大阪市天王寺区筆ヶ崎町
5-30 ℡06-6774-5111 
 門田守人      大阪大学医学部付属病院     大阪府吹田市山田丘2-15
℡06-6879-5111
 齋田宏主      兵庫県立尼崎病院        兵庫県尼崎市東大物町1-1-1
℡06-6482-1521
 福井博       奈良県立医科大学付属病院    奈良県橿原市四条町840
℡0744-22-3051
中国・四国ドクター名(敬称略)   病院名             病院所在地
 東俊宏       岡山市立市民病院        岡山県岡山市天瀬6-10
℡086-225-3171
 三村哲重      岡山済生会総合病院       岡山県岡山市異伊福町1-17-18
℡086-252-2211
九州・沖縄ドクター名(敬称略)   病院名            病院所在地
 佐田通夫      久留米大学病院         福岡県久留米市旭町67
℡0942-35-3311

肝臓がん 名医

大阪大学医学部付属病院〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2番15号
TEL. 06-6879-5111(代表)
中村仁信
(放射線医学講座教授)
肝細胞ガンに対して、
ガン存在区域への塞栓化学療法で壊死させる
 
大阪府立成人病センター〒537-8511
大阪市東成区中道1-3-3
TEL. 06-6972-1181(代表)
佐々木洋
(参事兼第一外科医長)
内科、放射線科とのチーム医療による集学的治療。
症例は関西最多
 
市立芦屋病院〒659-8502
兵庫県芦屋市朝日ヶ丘町39-1
TEL:0797-31-2156 FAX:0797-22-8822
高安幸生
(放射線科部長)
IVR手法で肝臓ガン患部に直接抗ガン剤を投与し、
好成績を実現
国立病院九州医療センター〒810-8563 福岡県福岡市中央区地行浜1丁目8番1号
TEL 092-852-0700 FAX 092-847-8802
才津秀樹
(外科医長)
マイクロ波焼灼治療で
内視鏡肝切除と遜色ない低侵襲を達成した
国立がんセンター中央病院〒104-0045
東京都中央区築地5-1-1
電話03-3542-2511
山崎 晋
(肝臓科医長)
肝腫瘍の手術数国内最多。
難度の高い肝硬変合併症にも実績大
東京大学医学部付属病院〒113-8655
東京都文京区本郷7-3-1
TEL 03-3815-5411(代)
小俣政男
(消化器内科科長)
肝動脈塞栓術など、
原発性肝細胞ガンに対する内科的治療が有名
椎名秀一郎
(消化器内科医局長)高周波でガン細胞を死滅させる
ラジオ波焼灼療法のトップランナー
幕内雅敏
(肝・胆・膵外科科長)
肝切除手術の死亡例ゼロ、
どう手術の名手として世界的に知られる
茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター〒309-1793
茨城県笠間市鯉淵6528
電話 0296-77-1121 FAX 0296-77-2886
岡崎伸生
(副院長兼センター長)
末期ガンにも治癒を断念せず、
QOLを考慮した懇切な治療を実施
大西内科〒620-0887
京都府福知山市東小谷ヶ丘1306-2
大西久仁彦
(病院長)
肝臓の画像診断、切らずに治す
開発した経皮的腫瘍内酢酸注入法は画期的効果
三浦病院〒354-0004
埼玉県富士見市下南畑3166
TEL:0492-54-7111
FAX:0492-54-2707
三浦 健
(病院長)
手術不能の患部動脈に抗ガン剤を注入。
切除手術に匹敵する好成績
愛知県がんセンター052-762-6111
荒井保明
(放射線診断部部長)
局所麻酔で肝動脈にカテーテルを挿入し、
抗ガン剤を投与し高実績
東京大学医学部付属病院幕内雅敏教授
肝胆膵外科教授
彼の元には他で断れた人が全国から訪れる
彼の特徴は腫瘍部位の特定と出血を最小限に防ぐ技術
世界で初めて術中エコーを使い、肝臓手術の成功率を世界標準70%から99%にUP
東大病院小俣政男教授
消火器内科
(ラジオ波焼灼術を日本で初めて取り入れた人物)
患者の体を切らずに治す(体にメスは入れたくない人)
*注意点*
手術器の急激な出力上昇による肝破裂
焼灼が不十分なことによる再発・転移
隣接する組織または血管の損傷
のリスクがあります。

精度が飛躍的に向上した肝臓がん手術

胃がんや大腸がんなど他の消化器がんに比べると、肝臓がんの外科治療の歴史はきわめて浅い。たとえば胃がん手術の場合には150年の歴史があるが、肝臓がんのそれは60年ほどにすぎない。それは肝臓がん手術の難しさを物語っていると高山さんはいう。
 「肝臓がんは発見された時点で、すでにかなり進行していることが多いことに加え、肝臓そのものが血液の塊りのような臓器で、手術には大量出血の危険がともないます。そのために手術は現実の治療法として定着せず、手術が始められてからも、なかなか成績は上がりませんでした。それが1985年に肝臓を8ブロックに分けて、それぞれの部分だけを切除する区域切除術が行われるようになって、治療成績は飛躍的に向上したのです」
 これは当時、国立がんセンターに在籍していた幕内雅敏さんが考案したもので、幕内術式とも呼ばれる。この区域切除術が定着してからは、それまでは5~6000ccにも達していた出血量が平均1000cc程度に減少し、手術による死亡率も80年代で15パーセント、90年代で5パーセント、現在では1パーセント前後にまで減少している。
 高山さんが在籍している日本大学付属板橋病院消化器外科では、手術にともなう平均出血量は、献血量と同程度の400cc前後で、この数年間は手術による死亡は0に抑えられているという。

肝臓がんはウイルスが主な原因

一口に「肝臓がん」と言うが、実際には、肝臓に発生する「原発性肝臓がん」と他臓器のがんが肝臓に転移する「転移性肝臓がん」の2つに大別される。さらに原発性肝臓がんの95パーセントは「肝細胞がん」。残りの5パーセントが、「肝内胆管がん」のほか、成人の「肝細胞・胆管細胞混合がん」、小児の肝臓がんである「肝芽腫」などに分けられる。
 このように日本では、肝臓がんの約95パーセントが肝細胞がんであることから、一般的に「肝臓がん」と言えば、肝細胞がんのことを指す。
 肝臓がんの特徴は、子宮頸がんと並んで、主要な発生要因が明らかになっている点だ。最大の要因となるのは肝炎ウイルスで、日本では、肝臓がんの原因の約90パーセントを占めている。その内訳は、約75パーセントがC型肝炎ウイルス、約15~20パーセントがB型肝炎ウイルス、残りの約5パーセントは、非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)などとなっている。
 ある報告では、C型慢性肝炎(肝組織検査でF1→F3)の進行とともに発がん率も高くなり、慢性肝炎が進んだ場合は年率3パーセント、肝硬変の場合は年率5~7パーセントと発表されている。こうしたことから、B型やC型肝炎ウイルスに感染した人は、「肝臓がんの高危険群」と呼ばれる。
 こうした事実は、逆に言えば、ウイルスを持っている患者(キャリア)は肝臓がんになりやすいと特定できるということでもある。もちろん、ウイルスを持っているからと言って、必ずしも肝臓がんになるわけではないが、それでもキャリアの患者を定期的に検査することで、肝臓がんの早期発見と予防が可能となる。

肝臓の位置と働き

肝臓は右腹部に位置し、横長の三角に近い形をしている臓器です。重さは1キロから1.5キロほどと大きな臓器となっており、およそ3000億の肝細胞を持っています。
 肝実質と肝小葉から作られており、肝実質は肝臓そのものとなっており、肝小葉は肝動脈や門脈、胆管で構成されています。肝動脈は酸素を豊富に含んだ血液を肝臓に送る役割を持つ血管です。門脈は消化管から吸収された栄養分を送り、胆管は肝細胞で作られた胆汁を送り出す働きを持っています。
 肝臓にはいくつかの働きがあります。胆汁を作ることによって食物の分解や消化を助ける作用や、体内に入った有害物質を無害化する解毒作用、アンモニアを尿素に変えて尿として排出できるようにする機能、栄養分を貯蔵しておく働き、血液を溜めて体に流れる循環量を調整する役割があります。
 沈黙の臓器と呼ばれるだけあって、病気になっても症状はすぐに出るものではありません。これは癌の場合にも言えることです。したがって、自覚症状が現れた時には、進行している可能性が高いと言えます。

肝炎ウイルスが原因となる原発性肝臓がん

原発性肝臓がんの原因としては、肝炎ウイルスが大きな要素となっています。肝炎ウイルスには色々なタイプがあるのですが、その中でも癌と関係しているのは主にB型とC型の2種類です。
 この肝炎ウイルスに感染すると、正常な肝細胞に作用して突然変異を起こすことによって癌になるものと推測されています。したがって、ウイルス感染者は高リスク群ということになります。
 ただし、肝炎ウイルスに感染したら、その段階で癌になることが決まっているわけではありません。あくまでリスクが高いということになりますので、健康に過ごしている方も多くいます。感染後は肝炎という病気になることが多く、症状としては食欲不振や黄疸、全身の倦怠感といったものがありますが、自覚症状がなく治癒したり、発症しなかったりすることもあります。
 肝炎ウイルスの感染ルートは母子感染や注射針など、いくつかの経路があるのですが、血液製剤によって感染してしまった例も多くあります。現在では、輸血に使われる血液の検査が行われて危険性は低くなっていますが、それでも見つけられない例もわずかに存在しています。
 肝炎ウイルスの影響で、原発性肝臓がんになることを予防する方法については研究が進行しており、現状としてはC型肝炎にインターフェロンを用いる治療法が注目されています。ただし、完全に予防できるほどの効果は得られていませんので、リスクが高い場合には定期的に検査を受けて早期発見の可能性を高め、症状が進行する前に治療を行っておくことが大切です。

転移性肝臓がんの余命と生存率

原発巣から見ると、他の臓器にまで転移してしまっている状態になりますので、生存率はとても低いことが一般的です。たとえば、大腸がんが原発巣になっている場合には、遠隔転移が見られるステージ4期の5年生存率は10%程度です。
 転移性肝臓がんの場合には、原発巣がどの部位であるかによっても影響を受けますが、もはや余命が長くはないことが多いことも理解しておく必要があります。他の臓器に症状が広がってしまっている場合には、生存率が低いことが一般的なのです。

原発性肝臓がんと転移性肝臓がんの治療の違い

原発性肝臓がんの場合には、他の場所に広がっていない限り、局所療法で寛解する可能性があります。治療法について詳しい説明はページを改めて行いますが、手術や経皮的治療、ラジオ波療法といったものがあります。
 これに対し、転移性肝臓がんの場合には同じようにはいきません。なぜなら、他に原発巣(ガン細胞が発生した場所)があるわけですから、その場所も含めて治療しなくてはならないためです。さらに、他の場所にも散らばっている可能性もあります。
 転移性肝臓がんの場合には、原発巣が大腸であることが多いのですが、この場合には肝臓だけを治しても寛解にはなりません。そこで、治療は体全体をトータルに捉える必要があります。
 原発巣が手術によって治療でき、肝臓についても手術やラジオ波療法が行える場合には寛解の可能性があります。ただし、血流に乗って他の場所にも広がってしまっていることが多く、再発の危険性も高いと言わざるを得ません。

肝臓がんの食事療法

肝臓がんの食事療法ときくと、病気になった後の治療方法の1つとしての食事かなと思いますが、肝臓がんにならないような食事ということもいえます。
 肝臓がんは、肝臓に負担をかけたりして病気になりやすいような環境を作ってしまうことでかかってしまうこともある病気です。
 肝臓がんにかかってしまった後の食事についても、やはり肝臓に負担をかけないようにするなどの注意点はあるような気がします。
 肝臓がんは食事で予防するという方法もあるみたいです。肝臓と聞くとアルコールが思い浮かぶ人もいるかもしれませんが、暴飲は控えること、また、食事面では、繊維質を多く含む食材や緑黄色野菜を食べたり、豆腐などの大豆でできた食品を食べるということもいわれています。
 肝臓がんは、脂肪肝といって、脂肪の多い食事を多く食べることによって、肝細胞に中性脂肪がたまってしまい、肝臓の機能が低下することでかかってしまうこともあるようです。よって、動物性たんぱく質を多く含むような食事は、大量に食べないということもいえるかもしれません。
 肝臓がんを含めて、がんの発生原因といわれることがある活性酸素をおさえるようなものを多く含んだ食品を食べるということもいわれているみたいです。たとえば、ビタミンA、ベータカロチン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB、ポリフェノール、カロチノイド、イソフラボンなどの名前を聞くことがあります。
 肝臓がんは肝硬変や肝炎が元になることもあるようなので、それらの病気に対して、肝臓の機能を強めるために、貝類の牡蠣肉のエキスを含んだ健康食品も売られているみたいです。肝臓がんに対する成分としてフコイダンというものがあります。
 これは、民間療法の1つとしてつかわれるもので、海藻類のヌルヌルした成分に含まれている多糖類のことをいい、ここにアルギン酸やラミニンなどの成分が入っているということで、抗がん作用があるのではないかといわれているものです。
 肝臓がんにかかって化学療法をしている場合、においや吐き気、食欲不振などの副作用によって、しっかりと食事ができないこともあるようです。
 こういった場合、果物や麺類だと食べられることもあるということで出されることがあります。

がん予防に良い食べ物

発ガン予防にごぼう 植物繊維とは人間の体内では消化されない物質のことで、セルロース、ペクチン、リグニンなどがあります。最近ではこらの成分が血中のコレステロール値を下げる働きをするというので注目されています。 リグニンは、お茶に含まれるタンニンと似た構造をしており、制ガン効果があることもわかっています。
 ですから中高年以上で、高血圧、動脈硬化、ガンなどの恐れがある人は、いつもきんぴらごぼうなどの“おふくろの味”を食べることをすすめます。
ガン予防に椎茸(しいたけ) 椎茸(しいたけ)の子実体といわれるかさには、エシチンという抗ガン物質があることが発見されました。子実体だけではなく、菌糸体にも、その成分中の多糖類に抗ガン作用があることもわかっています。
 レニチナンは消化器等から吸収されないので注射で投与しなくてはいけませんが、菌糸体の抽出液は経口投与でも効果はあります。 またレンチナンはガンの発育を阻害させるだけではなく、ガンの発生を抑える作用があることもわかっています。これら多糖類が直接ガンを殺すのではなく、体の免疫機能を高めるからといわれています。
 いずれにしても、椎茸(しいたけ)は副作用もなく、ふだんからきちんと食べていればガンを防ぐ特効薬になるといえます。
ガンを抑える大根(だいこん) 大根(だいこん)は含有量から言えば、根の部分よりも葉の部分の方が多く含んでいますが、葉は熱に弱いので、むしろ生で食べられる根の方が、体にとり入れやすいといえます。
 ビタミンCは、風邪を予防したりストレスを和らげたりします。また、発ガン性物質の生成も妨げると言われています。
がん予防にチーズ チーズはビタミンAが豊富です。ビタミンAは、皮膚や粘膜、目を守る働きをします。不足すると視力が低下し、とりめになったり、肌がカサカサしてきたり、風邪を引きやすくなったりします。
 ビタミンAもがんの予防に効果があることがわかっています。
発がん性を防ぐ緑茶 緑茶に含まれているタンニンの還元作用で六価クロムなどの有害重金属イオンを三価にする働きや、有害変異原物質の抑制力もあることから、発がん性をおさえてくれます。
がん予防に納豆 ヨーグルトの乳酸菌は、発がん物質ができるのを防いでくれます。胃がんや肝臓がんの原因であるらしいニトロソアミンや、膀胱がんの原因とみられるインドール、直腸がん胆汁酸誘導体などの発がん物質は、体に悪い作用をする腸内細菌が働いて作られるのです。こうした働きを防ぐのが、ヨーグルトの乳酸菌です。
ガンを防ぐ大豆 大豆には、タンパク質の消化酵素の働きを阻止する、トリプシンインヒビターという成分があります。これは生では消化不良の原因となりますが、加熱するとほとんど壊れてしまいます。 そのわずかに残ったトリプシンインヒビターに、ガンや糖尿病を防ぐ効果があるのです。
 トリプシンインヒビターは水といっしょに長時間加熱すると効力を失います。いり豆や、きな粉等の加工食品に多く含まれています。
がん予防にゆず(柚子) ゆず(柚子)に含まれているビタミンCにはウイルスへの抵抗を強める働きがあるので、がんの予防にもなります。これはビタミンCによってインターフェロンが、ウイルスを防ぐからです。
 またビタミンC自体が代謝されるときに活酸が発生し、これがウイルスやがんの核をそこなわさせて、がんが大きくなるのを防ぐ働きをするとされています。
がんを抑制するマッシュルーム キノコ類には多糖質を含んだものが多く、レンチナンなどが含まれています。レンチナンには、免疫機能を高め、がんの発育を抑えて退縮させるだけでなく、がんが発生するのを抑える力もあります。
がん予防にピーナッツ ピーナッツにはビタミンEが含まれています。発がん物質や過酸化脂質からフリーラジカルが生成されて、細胞が異常増加を続ければがんになりますが、このフローラジカルを生成されないように予防する効果が、ピーナッツのビタミンEにあります。
がん予防ににんにく にんにくの成分の中に有機ゲルマニウムがあり、生物が生きていくのに欠かせない酵素を運ぶ働きをし、尿と一緒に全部排出されるので副作用などの害がありません。
 ゲルマニウムは、体内で臓器中の有害重金属の除去、肝機能障害や悪性腫瘍の予防に役立つといわれています。がんの治療では、放射線の効果を上げるとともに、体内での酵素の利用を高めることによって、放射線のマイナスを防ぐものと見られています。
 にんにくを食用するとき、取りすぎは危険です。取りすぎると、にんにく精油の溶血作用により、血液中の色素ヘモグロビンをとかし、貧血を起こすこともあります。
がん予防ににんじん(人参) にんじん(人参)は、ビタミンAの宝庫と言われ、これには上皮細胞を形成し、機能を調整して、体内の粘膜を正常に働かす力があります。
 ビタミンAが欠乏して、上皮細胞が扁平上皮化して粘膜を分泌しない細胞に変わることを化生といいますが、これは前がん状態によく見られます。これが目の粘膜に現れると、夜盲症になり、皮膚上部の皮脂腺を冒すと、ニキビや吹き出物になるのです。
 にんじん(人参)は、ビタミンAと同じ効用のあるカロチンを豊富に含み、やはりがん予防に効果があるとされているビタミンCもあります。大腸がんの予防に効果的な食物繊維の多い栄養野菜の一つです。
がん予防になるにら にらに多いビタミンAは、粘膜細胞を正常に働かす作用があることから、粘膜に関するがんに影響があると報告されています。
 ビタミンAを含む物質を、日常的に多量に摂取していれば、皮膚や粘膜細胞の異常増殖を予防し、ひいてはがんを予防するということになります。
がんを防ぐしそ しその強い防菌性を持つペリアアルデヒドが、腸内の細菌の腐敗を防ぎ、血液をきれいにし、造血を促進して貧血を治す効力を発揮します。また、制菌作用があるということは、このペルアアルデヒドがタンパク質を破壊し、その作用によって菌が殺されるということなのです。
 非常に効力が強いこのタンパク質分解作用は、そのまま制がんとしての働きにも応用できます。ただ体内でのこのペリアアルデヒドが増えすぎると、がん細胞だけでなく、普通の体内のタンパク質にまで作用するという危険があります。ですから、1日に2~3枚が適量です。
 この量なら毎日続けてもかまいませんが、2~3枚を毎日摂ってしまったら、体内の細胞にペリアアルデヒドが蓄積するかもしれないので、次の数日はしそを食べないという風にバランスをとっていくことが大切です。

転移性肝臓がんの治療

大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、膵臓がんなどを含む多くの臓器から肝臓には転移します。肝臓に転移したがんを転移性肝臓がんといいます。転移性肝臓がんの治療として最も確率の良いものは外科的手術になります。
 しかし、転移性肝臓がんで手術が適応となるのは全身状態が手術に耐えられること、手術により肝臓にあるがんが取り除くことができること、原発巣(転移してきたがん)と肝臓以外にがんがないことなどが条件となります。
 肝臓に転移した場合の多くは、がんが進行していて手術ができない場合も少なくありません。
 大腸がんの肝転移の場合には比較的手術ができることが多く、良好な結果を得られる場合も少なくありません。胃がんや乳がんでは一部の方で手術が、肺がんや膵臓がんではほとんど適応になることはありません。
 手術ができない場合は抗がん剤を肝動注または点滴で静脈投与することになります。
 転移性肝臓がんは、もともとあった癌の性質を持っているので、使用する抗がん剤の種類は元のがんに応じて選択されます。一時的に抗がん剤が有効な例もありますが、手術以外の方法で根治させることは困難です。
 肝臓がんの有力な治療法である肝動脈塞栓療法(TAE)とエタノール注入療法(PEI)は転移性肝がんでは残念ながらあまり有効ではなく、これらの治療を行うことは稀です。

肝臓がんの治療-局所化学療法

動注抗がん剤はここ数年の間に普及し始めた治療方法で、太ももの付け根の部分からカテーテルと呼ばれる管を肝動脈まで挿入し、肝動脈から抗がん剤を注入する方法です。
 一度の注入だけでは効果があまり効果が望めない場合には、手術で開腹して直接肝動脈にカテーテルを挿入するか、足のつけ根の動脈(大腿動脈の枝)からカテーテルを肝動脈まで進めるか、どちらかの方法でカテーテルを留置して、おなかの皮膚の下に埋め込んだ、薬液注入用の小さい貯留容器(リザーバーまたはポートと呼びます)から抗がん剤を注入します。
 新しい治療方法であるため、現在のところどの程度効果が期待できるのか分かっていないのが現状であり、肝動脈塞栓術やエタノール注入などができない場合に次善の策として行われています。
 肝臓がんの化学療法に使われる抗がん剤はマイトマイシンC、5-FU、シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)、アドリアマイシン、ファルモルビシン、ノバントロンなどが使われます。
 
 放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。 免疫力を賦活させることが大切です。
 また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

肝臓がんの治療-マイクロ波凝固療法

マイクロ波凝固療法は、電子レンジにも使われているマイクロ波を利用してがんを焼いて殺す治療法です。電子レンジはマイクロ波を使って水分子を振動させ食べ物を加熱しますが、この治療法では体表から長い針を刺し、針の先からマイクロ波を出します。
 この療法の問題点は、とても高熱になるということです。そのためがん以外にも正常な組織も焼かれてしまう危険性が高く、肝臓の周りの臓器までも傷ついてしまう危険性があります。
 また、マイクロ波ではなくラジオ波を使ってがんを焼いて殺すラジオ波凝固療法もあります。ラジオ波はマイクロ波と比べて温度が高くならないため正常な肝細胞や周りの臓器を焼いてしまう危険性が少なく、小さながんであれば壊死できる可能性も高く、 入院期間も短縮できるという利点があり、現在積極的に行われつつあります。
 しかし、この治療法はまだ新しい方法で、長期的な効果は不明です。世界的にもいまだまとまった治療成績の報告が少なく、日本では保険適用が認められておらず、 医療側も患者側も「実験的治療」であることを認識した上で施行するべき治療といえます。

肝臓がんの治療-経皮的エタノール注入療法

経皮的エタノール注入療法とは超音波画像でがんの位置を確認しながら体外から100%エタノール、 すなわち純アルコールを肝臓がんの部分へ注射して、アルコールの化学作用によりがん組織を死滅させる治療法です。 エタノールにはタンパク質を凝固させる作用があり、エタノールを注入された癌細胞は瞬時に固まって壊死します。
 問題点としては体内の直接見えない部分にあるがんの位置をいかに正確に把握しエタノールを接触させられるか、 がん以外の部分へのエタノールの接触を最小限にとどめ副作用を抑えられるかが重要になってきます。
 エタノールは正常な肝細胞も破壊してしまうため、多量のエタノールを注入してしまうと広範囲にわたり肝細胞が 壊死してしまい肝臓の機能が失われてしまいます。また、肝がんが超音波画像で見えにくい場合や、 がんが肝臓内部の重要な血管に接している場合にはアルコール注射が安全かつ十分にできないこともあり、すべての場合で可能とは限りません。
 一般にがんの直径が3cm以下で、がんの個数は3個以下がこの治療の対象とされています。しかし、 よい効果が得られるのは2cm以下のもので、2cmを超えるとアルコールとの接触が完全に行うことができない場合もあり、治療成績は落ちます。
 黄疸や腹水が見られるほど肝機能が低下している患者さんに対しても治療ができない場合があります。
 エタノール注入療法は癌の大きさや個数に応じて複数回の治療を行うことになります。副作用は塞栓術に比べて軽微で3-4日毎に治療を行うことができます。

肝臓がん(肝臓癌)の治療-肝動脈塞栓術

肝動脈塞栓術は、がんが進行しているため、完全に切除できないと判断された場合や、 患者さんの肝機能の状態が悪くて手術ができないと判断された場合に行われる肝臓がんの治療方の1つです。
 肝臓には肝動脈と門脈という二つの血管から酸素や栄養分を受けていますが、 一方で肝臓がんはほとんど肝動脈のみからそれらの供給を受けています。この性質を利用して行う治療が肝動脈塞栓術なのです。
 つまり肝動脈塞栓療法は肝臓がんに栄養を送っている肝動脈を塞いで、 肝臓がんが酸素や栄養を供給されないようにし、壊死させることができるのです。
 
 具体的には太ももの付け根の部分からカテーテルと呼ばれる管を肝動脈まで挿入し、 抗がん剤をしみこませた「ゼラチン・スポンジ」という小さなスポンジ状のゼラチンを詰めて肝動脈を詰まらせます。 肝動脈が詰まっているためがんは酸素などの供給を受けることができなくなり壊死します。その後スポンジは自然に溶けて血流は元通りに回復します。
 肝動脈塞栓術は1回の治療で1週間ほどの入院が必要です。1回の治療で癌細胞が完全に壊死できなくても 繰り返し同じ治療を行えばほぼ消滅させることができます。
 この治療法はがんの進み具合についての制限はほとんどなく、適応範囲が広い治療ですが、 癌細胞が門脈を塞いでしまっている場合には行うことができません。また黄疸や腹水が見られるほど 肝機能が低下している患者さんに対しても治療ができない場合があります。
 治療中や後に発熱がみられたり、食欲不振や腹痛、吐き気などの副作用が現れる場合がありますが数日で収まり、 1週間程度で以前と同じ生活ができるようになります。
 このように、肝動脈塞栓術は他の治療法に比べ治療対象の制限が少なく、長所も多く、 最近の肝臓がん治療成績の向上に最も寄与しています。しかし、延命効果は多大ですが、完全に治りきる確率(完全治癒率)は現在のところ10%程度です。

肝臓がん(肝臓癌)の治療-外科手術(肝切除術)

肝切除はがんを含めて肝臓の一部を切り取る手術で、最大の利点はがんが治る可能性がもっとも高いということです。 デメリットは合併症が起こる場合が少なからずあり、1-2%ですが手術に起因する死亡があります。
  また入院期間が1-2ヶ月さらに退院してからの自宅療養が1-2ヶ月必要で長期に及ぶことがあげられます。
 肝臓はひとかたまりの臓器ですが、肝臓内を走る血管の分布によっていくつかの区画に分けて考えられます。
 まず大きく左葉と右葉の二つに分かれます。左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に分かれます。
さらに外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます。
 肝臓の切り取り方は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。 がんが区域をまたいでいる場合には複数の区域を切除します。
 肝機能が低下していて大きく切除できない場合には安全のために、亜区域切除や部分切除などより 小さい取り方を選ぶのが普通です。がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。
 残念ながら肝臓がんは再発の非常に多いがんであり、肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても 3-5年後までに再発する確立は70%にも達してしまいます。しかし再発した場合でも条件によっては再手術することもできます。

肝臓がん(肝臓癌)の診断

肝臓がんの診断には血液検査と画像診断法が行われます。どちらか一方だけでは不十分です。 また、血液検査や画像診断法を駆使しても「肝臓がん」と診断がつけられないこともあり、 その場合は針生検といって、肝臓の腫瘍部分に針を刺して少量の組織片をとり、顕微鏡で調べることも行われます。
<血液検査>(肝臓癌の検査)
肝臓がんの検査に使用される血液検査と基準値を示します。基準値は施設によって基準値が異なりますので詳しくは検査機関にお問合せ下さい。
◆GOT、GPT 基準値 GOT(AST) 13-35U/l,GPT(ALT) 8-48U/l
肝機能に異常がないかを調べるために血液中の「GOT(AST)」と「GPT(ALT)」の値を調べます。 こららは肝細胞に含まれている酵素で、肝細胞が壊されると血液中に大量に流れでてくるため数値が上昇します。 肝細胞がどの程度障害を受けているのかの指標になります。
◆血小板(Plt) 基準値 12-40万/ul
血小板は血液を固めるために必要な血球成分です。肝硬変になると血液の中の血小板が減ってきてしまいます。 肝硬変の進行具合の指標になり10万/ul以下に低下すると肝臓がんの発症率が高くなります。
◆アルブミン(Alb) 基準値 4.1-5.1 g/dl
アルブミンは血液蛋白の一部で肝臓でしか作られないため肝機能が低下してくるとアルブミンの数値も低下してきます。 著しく低下してくると腹水や浮腫みがでます。
◆総ビリルビン(T-Bil) 基準値 0.3-1.2 mg/dl
肝細胞に障害があるときにあがってくる数値で、血液中の総ビリルビンが増えると黄疸であるといわれます。
◆α-フェトプロテイン(AFP) 基準値 20 ng/ml以下
肝細胞がんのおよそ90%で陽性になる腫瘍マーカーです。元来は胎児の肝臓と卵黄嚢で 産生される糖タンパクで出生後には急速に低下しますが、肝癌になるとこのタンパク質の合成が活発になるため陽性になります。
◆PIVKA-II 基準値 0.1 AU/ml以下(肝臓がんの腫瘍マーカー)
肝細胞がんに特有の腫瘍マーカーで他の疾患では上昇することは少ないのですが、 ビタミンK欠乏の時にも上昇するのでワーファリンなどの薬を服用しているときにも上昇することがあります。
<画像検査>
◆超音波検査(肝臓癌の検査)
肝臓がんを早期に発見するうえで有効な検査になります。超音波診断装置を使用する検査で、 直径が1~2cm程度の小さな肝がんでも見つける事ができる確率が高く一般にも普及している検査です。
◆CT検査(肝臓癌の検査)
CT検査(CTスキャン)はいろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って 非常に鮮明な画像を得ることができます。超音波検査で調べきれなかった場合でもがんを見つけることができます。
◆MRI検査(肝臓癌の検査)
MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。 放射線の被曝がなく超音波検査では見分けの付きにくいがんもMRI検査で診断できる場合があります。
◆肝血管造影検査(肝臓癌の検査)
足の付け根かの動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を肝臓まで挿入し、造影剤を注入してエックス線撮影を行う検査です。
<肝生検>
超音波検査の画像で肝臓がんの位置を確認しながら、体表から細い針をさして癌の組織の一部を採取し顕微鏡で詳しく検査する方法です。
ただし、針を刺すとがんが回りに散ってしまう危険性があるため血液検査や画像検査で診断が付かなかった場合のみ行われる検査になります。

早期胃がんの症状と治療

胃の粘膜は5層に分類されており、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜となっているのですが、粘膜や粘膜下層にとどまっているものを早期胃がんと呼び、筋層よりも深く浸潤しているものを進行性胃がんと呼んで区別しています。
当然ながら、浸潤が浅い方が初期症状に近い状態で、治療がしやすく、再発することなく良好な予後を期待することができます。手術によって治癒させる場合もありますが、より体への負担が小さくて済む内視鏡的治療によって病巣を切除することができる場合もあり、通常は入院期間も1週間以内です。回復が早いため、社会復帰をするまでの期間を短縮することができます。
もっとも、早期胃がんであれば必ず内視鏡的治療の適用になるわけではなく、原則として病変が粘膜にとどまっていて直径2cm以内の場合が対象となります。内視鏡的治療が行えない場合には手術を行いますが、この場合、再発は1割から2割の患者さんに見られます。転移が始まってしまうと、再発率が高まりますので、早期に発見・治療を行うことが大切です。
一般に、早期胃がんは無症状であると言われることが多いのですが、顕著な兆候ではなくても、みずおちのあたりに違和感を覚えることや、胃のもたれ、食欲不振を感じることがあり、こうした状態が継続することがあります。
小さな病巣に限局している場合には、内視鏡的治療で取り除くことができますし、手術にしても切除範囲を狭く設定し、術後の後遺症や機能障害を小さく抑えることができます。しかし、リンパ節へ広がっている場合には、手術の際に周囲のリンパ節を一緒に切除するリンパ節郭清を行わなくてはならなくなります。もっとも多く見られるのはリンパ節への転移ですが、範囲が狭ければ、手術で取り除いて治癒させることもできます。しかし、範囲が広がってしまうと、手術では対処できなくなり、治癒が困難になります。
早期胃がんの病巣は、わずかに盛り上がっているか、くぼんでいるだけです。さらに詳しく分類すると、隆起型、表面隆起型、表面平坦型、表面陥凹型、陥凹型に分けられます。進行の仕方が違うため、これらの分類がされています。浸潤が進んで進行性になってしまう前に治療を行うことが大切です。

進行性胃がんの症状と治療

胃の壁に深く浸潤しているものを進行性胃がんと呼びます。すでに早期の段階よりも悪化しているもので、中にはすでに転移を始めているものもあります。早期治療を行うことが治癒に結びつきますので、この段階になっているのであれば、予断を許さない状況であると言うことができます。
ちなみに、悪性度が高いスキルス胃がん進行性胃がんの一種です。スキルス性は通常の場合よりも発見が難しいのが特徴で、半数以上は診断を受けた段階で何らかの転移を始めており、女性の患者さんが多くなっています。
初期の時期には自覚できる徴候はほとんどないため、胃の不快感や食欲不振、吐き気、胸のもたれ、貧血、体重減少、貧血といった自覚症状が出る場合には、すでに症状が悪化している可能性が高くなります。浸潤や転移が進んでしまうと、手術によって治療するだけでは足りなくなることが多く、化学療法を組み合わせることもあります。治癒を目指す上で、最優先であるのは手術ですが、すべての癌細胞を摘出できるとは限らないため、残された癌細胞への処置として、抗がん剤を活用するのです。術後に行うほか、術前に用いる場合もあります。
進行性胃がんといっても、病期(ステージ)は様々で、2期以降のものを指しています。したがって、2期から4期まで幅があり、予後の見込みや生存率、治癒の可能性についてはそれぞれの患者さんごとに大きな個人差があります。早期ではないから絶望するのではなく、実際問題としてどの程度の危険が迫っているのか、正確に判定することが大切です。専門医とよく話し合って、今後のことについて考えていきましょう。

スキルス胃がんは悪性度が高い

他のタイプと比べると、スキルス胃がんの悪性度は特に高く、生存率も低くなりがちです。特徴として早期発見が難しいことが挙げられますが、これは医の粘膜の表面に大きな変化を起こさないことが原因になっています。胃壁の中で広がっていくため、たとえ定期検診を受けていたとしても、見落とされてしまうことが多いのです。そのため、発見された時にはおよそ60%の方が転移しています。
転移はスキルス胃がんの治療法の選択肢を限定してしまうことがありますし、手術を行った場合でも再発の原因になってしまうことが多くなります。一般的には、早期胃がんなら治癒を目指すことができるのですが、すでに転移までしている状態では、話が変わってしまいます。診断としては、胃壁全体が硬くなってから見つかることが多くあります。
厄介なスキルス性ですが、主に30歳代と40歳代の女性に発症しています。この年代の女性は、あまり胃がんにかかることがないため、検診を受けていないことも多くあります。たしかに、検査をすれば確実に発見できるものではなく、見逃されてしまうことも多いのですが、やはりあきらめることはできません。毎年レントゲン撮影を続け、過去の写真と比較することによって、早期発見できる可能性も残されています。
生存率を高めるためには、手術のほかに化学療法を用いることで、残された癌細胞に対応することが一般的に考えられます。もちろん、個別に症状や転移の状態、患者さんの全身状態も考慮しなくてはなりません。現状として納得できるほどの成果が出せていないことが多いのですが、名医に診断してもらうことで、少しでも質の高い医療を望むこともできます。

食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)

食道静脈瘤の主な症状
 食道の静脈への血流が増し、食道静脈(ショクドウジョウミャク)のうっ血や緊張が起こって、静脈が大きく膨らんで、蛇行した状態です。肝硬変(カンコウヘン)などの門脈圧亢進症などが原因です。なんらかのきっかけで静脈瘤に傷がつくと、食道静脈瘤(ショクオヅジョウミャクリュウ)が破裂して、大量の吐血(トケツ)や下血(ゲケツ)を起こし、ショック状態になることもあります。
食道静脈瘤の検査方法
 食道静脈瘤の診断は、上部消化管内視鏡検査で行われます。静脈瘤破裂の危険性を知るためには、静脈瘤の観察を慎重に行うことが必要とされます。破裂の危険性が最も高い兆候として、発赤(ハッセキ)所見が重要とされ、早急な治療が必要です。また、基本色調が青色のものは白色よりも粘膜が薄くなって緊張感が強く、破裂の危険性が高いことを示します。ほかに、出血した場所にみられ再出血の原因となる所見に、静脈瘤にくっついた赤色栓、白色栓などがあります。超音波検査や造影CT、MRIなどは、門脈系や腹腔内の血管の状態を診断するのに有用とされています。
食道静脈瘤の治療方法
 吐血(トケツ)などの緊急例に対しては、内視鏡的治療が第一選択となります。緊急の場合は、どこから出血しているのかを見つけ出すことが最優先となりますが、食道は狭い筒状の臓器で、出血が起こっている最中には内腔に多量の血液がたまっているので視野を確保するのが困難になります。このため、静脈瘤治療に精通した内視鏡医が担当することが重要です。出血している場所がわかれば、内視鏡下に静脈瘤内あるいは周囲に硬化薬を注射する硬化療法を行います。肝機能が悪い場合は、より簡便な、静脈瘤(ジョウミャクリュウ)に輪ゴムをかける結漿(ケッショウ)療法を選択します。緊急でない場合も、静脈瘤からの出血を予防するため、内視鏡で観察しながら硬化療法を行います。
肝機能が低下していたり、出血がひどくですぐに治療が困難な場合には、バルーンで圧迫止血を行ってから内視鏡治療が行われます。
「下血(ゲケツ)」とは?
食道や胃、十二指腸からの出血のことです。上部消化管から出血すると、便が黒色となったり、多量の場合はコールタールのようなタール便がみられます。結腸や直腸などからの出血は鮮紅色であり、血便と呼ばれます。

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食道アカラシア

食道アカラシアの主な症状
 食道アカラシアは、噴門(フンモン)という食道と胃の継ぎ目が痙攣(ケイレン)によって開かなくなって、食べ物を食道から胃に送り込むことができなくなる病気です。食べたものが食道にたまり、食道はしだいに拡張していきます。
横になると、食道にたまった食べ物が口の中まで逆流してきます。ただ、食べ物自体の重みでゆっくりと胃に入っていくため、食事が胃に運べずに体重が減ってしまうのは全体のほぼ半数です。食道壁内の筋層が肥厚(ヒコウ)し、粘膜にも炎症が起こるため、そこから癌(ガン)が発生する頻度も高くなることが報告されています。
 固形物は飲み込めるのに、水分が飲み込みにくくなるのが代表的な自覚症状ですが、逆流、胸やけ、胸痛を伴うことが多いため、胃・食道逆流症と間違って診断されることもあります。
はっきりとした原因はわかっていませんが、各種ウイルスや麻疹ウイルスとの関連性も指摘されています。
食道アカラシアの検査方法
 胃・食道逆流症と間違えられやすいため、鑑別を行うために、胸部X線検査や心電図のほか、食道造影検査で食道の形態を、また内視鏡検査で食道の内腔を食道内圧検査で食道の動きを観察します。
「食道内圧検査」とは?
 圧力計を備えたチューブ(マノメーター)を鼻または口から食道に挿入して食道内の圧力を測定する検査です。食道の収縮によって食べ物が正常に胃の中に送られているかどうかがわかります。

           
食道アカラシアの治療方法
 噴門(フンモン)での通貨障害を改善させるため、専用のバルーンで噴門を拡張する治療が広く行われています。食道アカラシアに対するバルーン拡張術の有効性は32~98%と報告されています。また、1年後の有効率が75%との報告もあります。
しかしながら、若い人では、比較的効果が不十分な場合が多いため、腹腔鏡による食道切除術を行う場合もあります。
また、噴門の緊張を和らげるために薬物療法を行い、一時的に症状を改善させる場合があります。使用される薬剤はカルシウム拮抗薬や亜硝酸薬をはじめ、抗コリン薬、テオフィリン、モルヒネ、リドカインなどがあります。
ただし、薬物療法のみの治療では、効果が不十分なことが多いことから、拡張術を行うまでの補助療法や拡張術を行えない場合の治療法として考えられています。
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バレット食道

バレット食道の主な症状
 バレット食道は、逆流性食道炎が慢性的に続いた結果、正常な食道の粘膜が円柱上皮(胃粘膜の上皮)に置き換わってしまった状態で、放置すると食道癌(ガン)に移行する可能性が高いため、最近注目を集めている病気です。疫学調査によれば、バレット食道は、高齢の男性に多く、とくに食道穿孔ヘルニアのある人に多く発生していることがわかっています。
バレット食道の検査方法
 バレット食道自体に特有の自覚症状はとくにありませんが、逆流性食道炎や食道穿孔ヘルニアと合併している頻度が高いので、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる)などの症状を訴える場合が多く見られます。こうした症状があった場合には、内視鏡検査を受けることが必要です。
バレット食道の治療方法バレット食道は、食道ガンの危険因子なので、定期的な内視鏡検査を欠かさずに受けて、癌を早期発見することが不可欠です。早期発見なら内視鏡で粘膜を切除すれば完治します。
         
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食道狭窄(しょくどうきょうさく)

食道狭窄の主な症状
 食道狭窄(ショクドウキョウサク)とは、食道ガンの手術後や放射線治療後、胃切除後の食道炎から潰瘍(カイヨウ)ができてしまった場合などに、治癒の過程でその部分だけが引きつれて食道の内腔が狭くなってしまった状態です。ただし、最近では潰瘍に対しPPI(プロトンポンプ阻害薬)を使うため、食道狭窄を起こすことはほとんどなくなっています。
 食道静脈瘤(ショクドウジョウミャクリュウ)の治療で、硬化剤を入れた部分に瘢痕狭窄(ハンコンキョウサク)が起こる場合もあります。食道の通りが悪くなってしまうと、食物がつかえてしまい、時に痛みが起こる場合があります。
食道狭窄の検査方法
 自覚症状として、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害(エンゲショウガイ)があれば、バリウム検査、内視鏡検査、食道の外側の診断のためCT検査を行います。

食道狭窄の治療方法

 専用のバルーン(風船)を使って、狭くなった部分を広げますが、場合によっては手術が必要になることもあります。なお、食道が狭くなっていても、腫瘍(シュヨウ)による狭窄(キョウサク)には、」このような治療は行いません。悪性化した組織は硬いので、バルーンを使っても広がらないからです。
 ガンによる狭窄の場合は、手術で狭窄部を切除して胃とつなぎますが、胃と食道のつなぎ目の噴門(フンモン)がなくなってしまうので、逆流による誤嚥性肺炎(ゴエンセイハイエン)を起こしやすくなります。
 合併症などがあり、手術ができない場合には、内視鏡を使って、狭くなっているところに網目状のステントを入れて、少しずつ広げていく治療を行います。効果は一時的ですが、食べ物や水分が通るようになるので、口から食べることができ、患者さんの生活の質が期待できます。
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食道良性腫瘍

食道良性腫瘍の主な症状
 食道にできる良性の腫瘍(シュヨウ)に、食道平滑筋腫(ショクドウヘイカツキンシュ)という病気があります。粘膜下腫瘍(ネンマクカシュヨウ)と言って、粘膜の下に、ちょうど絨毯(ジュウタン)の下に野球ボールが隠れたような状態で出てきます。ですから、腫瘍の表面は周囲と同じ外観です。食道の下部に発生することが多く、大きくなるとつかえの症状が出てきます。
食道良性腫瘍の検査方法 内視鏡検査を受けたときに、偶然発見されます。粘膜の下にできているので、ただ表面が盛り上がった状態しかわかりません。大きくなると悪性腫瘍との鑑別が不可欠なので、超音波内視鏡で粘膜の下をきちんと検査します。
食道良性腫瘍の治療方法
 食道良性腫瘍のうち、小さなものは経過観察のみですが、大きなもので症状があったり、悪性との鑑別が難しい場合は、切除することがあります。
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食道神経症

食道神経症の主な症状
 実際には、喉(ノド)に異物などはないにもかかわらず、喉や食道の上部に球状のかたまりが引っかかっているように感じる病気で、よく「のどに卵が詰まっている感じがする」などと表現されます。食道神経症も、神経症の一種で、別名、ヒステリー球、食道球(ショクドウキュウ)、咽喉頭違和感症(インコウトウイワカンショウ)などと呼ばれます。胃・食道逆流症(GERD)の症状のひとつとしてあらわれる場合もあります。
食道神経症の検査方法
 他の病気を否定し、納得して治療を受けていただくための内視鏡検査を行います。
食道神経症の治療方法
 自律神経のバランスの崩れから、食道の動きが悪くなっていることもあるため、食道の動きをよくする薬を使います。また、仮面うつ病の症状として出ている場合などには、抗うつ薬が効く場合もあります。
 検査で異常がみつからないと、「気のせい」などと言われてしまうこともありますが、自覚症状が改善されないと本人は不安になり、ドクターショッピングを繰り返すきっかけになってしまいます。納得がいかない場合には、遠慮せずに消化器の専門医にかかりましょう。専門医は心の問題が身体の変調としてあらわれるケースを多く見ているため、かえって適切な治療ができる場合が多いのです。
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食道炎・食道潰瘍

食道炎・食道潰瘍の主な症状:胸やけ、つかえた感じ
 食道(ショクドウ)の粘膜(ネンマク)に炎症が起こり、胸やけやしみる感じ、さらにはつかえた感じなどがあらわれる病気です。
炎症の原因はさまざまで、単純ヘルペスなどのウイルス感染、カンジダなどのカビ感染や、薬物、誤って漂白剤などの化学物質を飲み込んで起こる腐食、食道の悪性腫瘍の治療のために行った放射線照射などがあります。
大きめの内服液を水を使わずに飲んだり、薬剤が入っていたシートごと飲んでしまったりすると、食道にひっかかって炎症を起こします。
 食道の粘膜にできた炎症がさらに深くなって潰瘍(カイヨウ)ができると、ひどい胸やけや、痛み、つかえた感じなどが起こります。出血すると吐血(トケツ)を起こしたり、食道に穴が開いて(穿孔)、食道の外側にまで炎症(縦隔炎)が及ぶ場合もあります。
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再発は手術後2~3年以内に起こる

乳がんの局所再発や遠隔転移の多くは、手術後2~3年ほどで起こります。
乳がんは進行が遅いので、手術から5年、10年、まれに20年くらい後に現れる場合もあります。
最初に乳がんと診断された時点で、微細ながん細胞が、タンポポの種のように体内に散っている(微小転移)可能性があると考えられています。
芽が出て花が咲くまでは、そこにたんぽぽの種があることはわかりません。
加齢などにともなうホルモン環境の変化で、微細ながん細胞が芽を出して、画像検査などでわかる大
きさに成長したところで、再発や転移として発見されると考えられます。
手術後、何年たっても、再発や転移の危険性はゼロにはなりません。
日が経つごとにリスクは低くなるといえます。
ただ、何らかの症状で医療機関を受診する際は、たとえ10年以上経っていても、乳がんの治療を受けたことを伝えます。

乳がんの再発・転移

乳がんは治療後に再発することがあります。
再発部位によって局所再発と遠隔再発(転移)に分けられます。
手術後10年以内に、患者さん全体の30~40%に再発が見られます。
そのうちの30%程度が局所再発です。
乳房温存手術後の乳房や乳房切除術後の胸壁、乳房近くのリンパ節に起こるものです。
遠隔再発とは、治療後に骨や肺、肝臓、脳など乳房から離れた臓器に起こることです。
再発ではなく、乳がんと診断された時点ですでに遠隔臓器にがんが認められる場合もあります。
遠隔転移を伴う乳がんを転移性乳がんといいます。
遠隔臓器に転移したがんは、乳房のがん細胞が、血液やリンパ液に流れに乗ってほかの臓器に飛び火したものです。
性質は乳がんと同じです。
そのため、たとえば肺に転移した場合でも、肺がんではなく乳がんです。

ホルモン剤の副作用

ホルモン剤は抗がん剤に比べて副作用が少ない薬です。
しかし、顔のほてり、発汗などよく見られます。
そのほかにのぼせ、イライラ、肩こりなど、更年期障害に似た症状が現れます。
特に、若い人がLH-RHアゴニスト製剤を使用すると症状が強く出る傾向があります。
アロマターゼ阻害剤は、骨粗鬆症の治療薬を使うと骨折を予防することは、可能と考えられています。
また、抗エストロゲン剤は、子宮内膜が増殖するため、子宮体がんの可能性が高まることも指摘されています。
発症は多くありませんが、定期的な検診を受けることが大切です。

主なホルモン剤と使用方法

抗エストロゲン剤とアロマターゼ阻害剤は錠剤です。
その多くは1日1錠の服用です。
ホルモン剤は長期間服用することになります。
もし飲み忘れても、翌日に2回分まとめて飲んだりしてはいけません。
LH-RHアゴニスト製剤は腹部に皮下注射します。
これは毎月1回、外来で注射を行います。
<主なホルモン剤>
LH-RHアゴニスト製剤・・・主な商品名は酢酸ゴセレリン(ゾラデックス)、酢酸リュープロレリン(リュープリン)です。
抗エストロゲン剤・・・主な商品名はクエン酸タモキシフェン(ノルバデックス)、クエン酸トレミフェン(フェアストン)です。
アロマターゼ阻害剤・・・主な商品名はエキセメスタン(アロマシン)、アナストロゾール(アリミデックス)です。

ホルモン療法とは

ホルモン療法とは、女性ホルモンの作用を妨げるホルモン剤を用いることで、がんの増殖を抑えようという治療法です。
乳がんのタイプは、女性ホルモンを取り込む鍵穴のような役目を持つ受容体の量を調べることでわかります。
具体的には病理検査でエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の量を調べます。
受容体が多い場合は、ホルモン感受性陽性と診断され、ホルモン療法の効果が期待できます。
逆にホルモン感受性陰性だった場合は、ホルモン療法は行いません。
現在使用されているホルモン剤にはLH-RHアゴニスト製剤、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤の3種類があります。
閉経前と閉経後では、女性ホルモンの分泌に仕方が違うので、閉経状況によって薬を使い分けます。

抗がん剤の組合せと使用方法

抗がん剤と主な組み合わせと使用方法は次の通りです。
医療機関によって抗がん剤の組み合わせやサイクルは異なります。
1サイクル・・・1日目に抗がん剤を点滴して、その後3週目まで休養します。
リンパ節転移ありの場合・・・記号A(塩酸ドキソルビシン)と記号C(シクロホスファミド)を3週間4サイクル。
さらに記号T(パクリタキセル・ドセタキセル水和物)を3週間4サイクル。
リンパ節転移なしの場合・・・記号A(塩酸ドキソルビシン)と記号C(シクロホスファミド)を3週間4サイクル。
記号C(シクロホスファミド)と記号M(メトトレキサート)と記号F(フルオロウラシル)を4週間6サイクル。
記号E(塩酸エピルビシン)と記号C(シクロホスファミド)を3週間4サイクル。
記号C(シクロホスファミド)と記号A(塩酸ドキソルビシン)と記号F(フルオロウラシル)を3週間6サイクル。
記号C(シクロホスファミド)と記号E(塩酸エピルビシン)と記号F(フルオロウラシル)を3週間6サイクル。

主な抗がん剤と副作用

<主な抗がん剤と副作用>
記号A(塩酸ドキソルビシン)・・・主な商品名アドリアシンなどです。 
副作用の吐き気、脱毛、白血球減少は特に注意が必要で、その他口内炎などの副作用があります。
記号C(シクロホスファミド)・・・主な商品名エンドキサンなどです。
副作用の脱毛、白血球減少は特に注意が必要で、吐き気にも注意し、その他卵巣機能障害などの副作用があります。
記号E(塩酸エピルビシン)・・・主な商品名ファルモルビシンなどです。
副作用の吐き気、脱毛、白血球減少は特に注意が必要で、その他口内炎などの副作用があります。
記号F(フルオロウラシル)・・・主な商品名5-FUなどです。
副作用の白血球減少に注意して、吐き気や脱毛は軽く、その他口内炎などの副作用があります。
記号M(メトトレキサート)・・・主な商品名メソトレキセートなどです。
副作用の白血球減少に注意して、吐き気や脱毛は軽く、その他口内炎などの副作用があります。
記号T(パクリタキセル・ドセタキセル水和物)・・・主な商品名タキソール・タキソテールなどです。
副作用の脱毛、白血球減少は特に注意が必要で、吐き気は軽く、その他手や足のしびれ、むくみなどの副作用があります。

化学療法とは

化学療法は、抗がん剤を使って、がん細胞を攻撃する治療です。
がん細胞の増殖を抑えて、死滅させることが期待できます。
その効果を得るには、ある一定以上の量の抗がん剤を使わなければなりません。
しかし、抗がん剤は正常な細胞にもダメージを与えるため、使用量が予定よりほんの少し多いだけでも、体に悪影響が出てきます。
量を減らし過ぎると、十分な治療効果が得られません。
化学療法を行う場合は、効果と副作用を検討しながら、慎重に抗がん剤を使っていきます。
いくつかの抗がん剤を組み合わせて使う多剤併用が基本です。
作用の異なる抗がん剤を組み合わせることによって、攻撃のバリエーションを増やし、治療効果が高くなるようにします。
また、多剤併用によって、特定の副作用が強く出ないようにすることもできます。
組み合わせは、病状などによって検討します。
抗がん剤の一部には内服薬もあります。
しかし、大半は点滴を使用します。
通常、3~4週間おきに外来で点滴を行います。
休薬をおくことで、正常な細胞をダメージから回復させます。
1回の点滴と休薬期間を合わせて1サイクルとし、4~6サイクル繰り返すのが一般的です。
治療期間は3~6ヵ月程度です。

薬物療法の傾向

薬物療法には、術前化学療法と術後化学療法があります。
術前化学療法のメリットは、乳房内のがんを縮小して、切除範囲を小さくできることです。
そのため、乳房温存手術を行える例も多くなります。
まれに、抗がん剤だけでがんが完全になくなってしまうこともあります。
目に見えるがんを先に取ってその後に行う術後化学療法とは異なり、がんが縮小したかどうか確実にわかります。
目に見えない微小転移に対する抗がん剤の効果も予測できます。
さらに理論的には、早く薬物療法を始めることで、再発や転移を抑える効果も期待されています。
術前化学療法が行われるのは主に、進行したがんを手術可能な大きさにするためや、直径3cm以上のがんを縮小して乳房温存手術を可能にするためです。
ただし、術前化学療法に反応せず、がん大きくなる患者さんも、全体の3~5%程度います。
術前化学療法中は、定期的にがんの状態を調べて、手術のタイミングを逸しないことが大切です。
術前ホルモン療法や、手術行わずに薬物療法と放射線療法で治療するなど、薬物療法の新たな研究も行われています。

薬物療法とは

以前、乳がんの治療といえば、がんとともに乳房を乳房の下の筋肉を切除する手術が主流でした。
しかし、転移や再発は起こっていました。
乳房にがんが発見された段階で、すでに目に見えない小さながんが全身に広がっている微小転移があるのではというものです。
微小転移を根絶しなければ、目に見えるがんを取っただけでは転移や再発は抑えられないとの考えられるようになり、薬による全身治療があわせて行われるようになったのです。
乳がんの薬物療法には、抗がん剤による化学療法とホルモン剤によるホルモン療法があります。
また、分子標的治療薬も用いられます。
がんの性質や閉経状況、わきの下のリンパ節転移の有無などを考慮して、薬を効果的に使い分けます。
乳がん治療における薬物療法の重要性や複雑さが増えてきているので、がんの薬物療法を専門に行う腫瘍内科医の役割が注目されています。

乳がん治療の費用

乳がん治療費例は次のとおりです。
<公的医療保険適用分>
手術療法(10日間入院)総額約65万円、うち自己負担分(3割負担)約20万円
放射線療法(25回)総額約30万円、うち自己負担分(3割負担)約9万円
化学療法・CMF(6ヵ月間)総額約10万円、うち自己負担分(3割負担)約3万円
化学療法・AC+T(6ヵ月間)総額約70万円、うち自己負担分(3割負担)約25万円
ホルモン療法・抗エストロゲン剤(5年間)総額約85万円、うち自己負担(3割負担)約26万円
LH-RHアゴニスト製剤(2年間)総額約135万円、うち自己負担(3割負担)約40万円
公的医療保険適用外>
差額ベッド代・・・個室や少人数部屋などに入院したときにかかる費用です。
医療機関によって違いますが、1日1000円程度から、1万円以上のこともあります。
特殊な医療費・・・人工乳房による乳房再建術や高度先進医療など、公的医療保険が適用されない治療費です。
その他の雑費・・・医療機関への交通費、テレビのレンタル代、衣類代やクリーニング代などです。

乳がん治療の傾向

乳がんの手術は、乳房全体を切除する乳房切除術が主流でした。
しかし、現在は切除範囲をできるだけ小さくして乳房を残す乳房温存手術が標準になってきています。
乳がんに関する多くの臨床データの検討がなされ、乳がんで手術が可能な人の場合、乳房全体を切除しても、乳房を温存しても、生存率にほとんど差がないことが明らかになったためです。
精度の高い画像検査が普及したことや、外科医、病理医、腫瘍内科医、放射線科医などによるチーム医療の態勢が整ってきたことも理由の1つです。
以前は乳房切除術が主流で、可能な人だけが乳房温存手術を行うという考え方でしたが、現在は乳房温存手術が主流で、
できなければ乳房切除術を行うという考え方に変わってきています。
一般にがんの大きさが直径3cm以上ある場合や、乳房内にがんが大きく広がっている場合は、がんを含めて乳房全体を切除する乳房切除術の適応になります。
しかし近年では、手術前に抗がん剤を用いた化学療法を行うことで、がんを縮小させて、乳房温存手術を目指す治療法があります。
これを術前化学療法といいます。
乳房を切除した場合は、患者さんが希望すれば、乳房再建術という選択肢もあります。

乳がんの病期分類

乳がんの進行度と示す指標に病期分類があります。
これは、しこりの大きさ、リンパ節への転移、ほかの臓器への転移の3つの条件から、進行度を判断しているものです。
0期~Ⅳ期に分類されます。
病期分類は臨床データを読み解くときに必要となりますが、治療方針に直接結びつくものではありません。
手術の方法や、ホルモン療法か化学療法のどちらを行うかといったことを、病期分類で決めることはできません。
治療方針を決めるときは、がんの乳房内での広がりやがんの性質などが、重視されます。
<乳がん病期分類>
0期・・・非浸潤がん
Ⅰ期・・・リンパ節・他臓器への転移なしで、しこりの大きさが2cm以下。
Ⅱ期・・・他臓器への転移なく、しこりの大きさ2.1~5cm、しこりの大きさが2cm以下でもわきの下のリンパ節転移が疑われるもの。
Ⅲa期・・・他臓器への転移なく、しこりの大きさ5.1cm以上、しこりの大きさが5cm以下でもわきの下のリンパ節転移が強いと思われる。
Ⅲb期・・・しこりの大きさは関係なく、他臓器への転移もなく、しこりが胸壁固定か、皮膚に顔をだし、むくんだり、崩れたりしている
Ⅲc期・・・しこりの大きさは関係なく、他臓器への転移もなく、わきの下と胸骨そばのリンパ節、または同側鎖骨下、または同側鎖骨上のリンパ節転移
Ⅳ期・・・骨・肺・肝臓・脳などの臓器に転移している段階

乳がん検診の精度

乳がんの発見率を高めるために厚生労働省は乳がん検診にマンモグラフィを導入すると提言して自治体ではマンモグラフィの導入を進めています。
しかし、導入すればいいというわけではありません。
マンモグラフィの精度、マンモグラフィを行う放射線技師の技術が問題になります。
マンモグラフィは、放射線技師がきちんとした写真を撮ってはじめて、精度の高い乳がん検診となるのです。
また、マンモグラフィの写真の読み取りがきちんとできる医師(読影医)の技術や経験も必要となります。
医師や放射線技師は、講習会を終えて試験を受けます。
その結果でA~Dの4段階で評価され、認定証が交付されます。
認定された医師や放射線技師、検診施設はマンモグラフィ検診精度管理中央委員会のホームページで公表されています。

乳がんに似た症状・乳管内乳頭腫

乳管内にできる良性腫瘍を、乳管内乳頭腫といいます。
30歳代後半~50歳代の女性に多く発症します。
乳頭に近いところに比較的よくできます。
腫瘍から出血が起こって乳頭からの異常な分泌物という症状が多く見られます。
腫瘍が大きくなるとしこりとして外から触れてわかることもあります。
がん化することはありません。
乳頭腫のある乳管を切除する手術を行えば、症状はなくなります。

乳がんに似た症状・乳腺炎

乳腺炎は、細菌感染によって乳腺に炎症が起こる病気です。
授乳期に、赤ちゃんがうまく乳汁と吸えないと、乳管内に乳汁がたまって炎症を起こし、乳房の赤み、腫れ、痛みや高熱などが現れます。
治療には、抗菌薬が用いられます。
授乳期以外に、乳腺炎と同じような症状があらわれた場合には注意が必要です。
その場合は、特殊なタイプの乳がんで、非常に治りにくい炎症性乳がんの可能性があります。
また、慢性の乳腺炎の可能性もあります。
これは閉経期の女性に見られます。
いずれにしても細胞診などを行って、鑑別することが重要です。

乳がんに似た症状・葉状腫瘍

線維腺腫と非常によく似たしこりに葉状腫瘍があります。
乳管を支える間質の細胞が増えるために生じるもので、基本的には良性の腫瘍です。
しこりが小さいときは、画像検査や細胞診でも、線維腺腫と鑑別がつかないほどです。
しかし、葉状腫瘍に特徴的なのは、しこりが大きくなる点です。
メロンやスイカほどの大きさの巨大なしこりになることもあります。
葉状腫瘍と診断された場合は、しこりを摘出する手術が必要です。
ただ、摘出しても再発することもあります。
また、しこりが大きくなってくると、しこりの細胞が悪性化して肉腫になったり、転移することもあります。
そのため、摘出手術を行うタイミングが重要になります。

乳がんに似た症状・線維腺腫

線維腺腫は、境界がはっきりしてクリクリとよく動くので、手に触れやすいしこりが乳房にできます。
20~30歳代の比較的若い女性に多く見られます。
原因はわかっていませんが、乳管の細胞と、乳管を支えている間質という組織の細胞が、それぞれ増殖してしこりがつくられます。
線維腺腫も良性腫瘍で、がん化することはありません。
しかし、画像検査や細胞診で、乳がんとの鑑別を行う必要があります。
しこりが大きくなってくる場合は、葉状腫瘍との鑑別も必要です。
線維腺腫だと確認できれば、とくに治療の必要はありません。
しこりの直径2~3cmを超えるときは、葉状腫瘍の可能性や美容的な面を考慮して、しこりの摘出手術を行うこともあります。

乳がんに似た症状・乳腺症

乳がん以外の乳房の病気の中で最もよくみられるのは、乳腺症です。
厳密には乳腺症は病気ではありません。
検査で診断がきちんとつけば、一般的には治療の必要はありません。
女性の乳腺組織がその役割と発揮するのは、授乳期で、それ以降、乳腺組織はだんだんと退縮していきます。
授乳を経験していない20~30歳代や、閉経を迎える40~50歳代では、女性ホルモンのバランスが乱れるなどして、乳腺組織の細胞の一部に変化が生じることがあります。
これが乳腺症です。
乳腺組織の細胞が増殖した部分がしこりとして触れたり、痛みを引き起こしたりします。
また、しこりからの出血によって乳頭からの異常な分泌物が現れることもあります。
乳腺症によるしこりは、基本的にがん化することはありません。
ただし。乳がんとの鑑別が難しいので、定期的に乳がん検診を受けるとともに、自己検診を行って、
自分の乳房の状態をよく知っておくことが大切です。
乳房の状態を知っておくことで、乳腺症のしこりとは違うしこりができたときに気づきやすいので、乳がんの発見につながります。

炎症性乳がんとは

乳房の皮膚にうち真皮という層には、リンパ管が網の目のようにたくさん張り巡らされています。
このリンパ管の中にがん細胞が充満すると、リンパ液の流れが止まってしまいます。
その結果、乳房が全体的に赤く腫れ上がってきます。
これが炎症性乳がんです。
しこりを伴うこともあります。
乳がんの中ではまれですが、進行の早いタイプです。
炎症性乳がんは、乳房の皮膚のリンパ管網に、がん細胞がびっしりと入り込んでしまっているので、手術ですべてを取り除くことはできません。
抗がん剤を用いた化学療法が、治療の第一選択となります。

乳がんの進行と症状2

がんが乳管を突き破り浸潤を起こすと、塊をつくり、ある程度進行すると、しこりとして外から触れられるようになります。
しこりの大きさや形、硬さはさまざまです。
がんの進み具合やできた場所、脂肪の厚さなどによって違います。
がんは塊をつくっていくときに、周囲の組織をどんどん引き込みながら、縮んで硬くなる性質を持っています。
そのため、皮膚や乳頭に近いところにがんがあると、しこりの成長に伴い、乳房の皮膚が引っ張られてくぼみになったり、乳頭の陥没が起こってきます。
頻度は多くありませんが、乳房に痛みを感じることもあります。
塊によって周りの組織が圧迫されたり、乳管が詰まったりして、痛みが起こってくると考えられます。
しかし、月経前でも乳房痛を感じることもあるので、痛みだけに敏感になる必要はありません。
さらに、乳管の外に広がった細胞が血管やリンパ管に入って、全身に転移を起こす可能性があります。
わきの下のリンパ節に転移を起こすと、しこりのある乳房側にわきの下のしこりがあらわれます。

乳がんの進行と症状1

乳がんの進行には、乳管の中を伝わって広がる乳管内進展と、乳管の壁を破って乳管の外へ広がる浸潤の2つのタイプがあります。
乳管内進展のみのがんは、非浸潤がん、一部でも浸潤があれば浸潤がんとなります。
がんの進行にともなって現れる症状は、このタイプによって違います。
乳管内進展の場合、がんが成長して現れる症状は、乳頭からの異常な分泌物です。
増殖したがん細胞からの出血によるもので、色は赤や茶、黒に変色していることもあり、また黄色で透明な液体のこともあります。
乳がんは通常、片側の乳房の1つの乳管に発生するため、片側の乳頭のいつも同じ孔から異常な分泌物が出るときは要注意です。
また、乳管内でがん細胞が増えてくると、乳腺組織が腫れて、なんとなくしこりが区別できるようになります。
さらに、乳頭のただれが見られることもあります。
これは、乳管内に広がったがん細胞が乳頭まで達したために起こる湿疹のような症状です。
軟膏などを塗っても治りません。
乳頭のただれは、パジェット病という特殊な乳がんの症状としても現れます。
パジェット病・・・乳頭近くの乳管内に発生して、乳頭に向かって進行する特殊な乳がんです。
症状として、乳頭のただれ、乳頭が赤くなどです。

乳がんの初期症状

乳がんの初期症状は、乳房のしこりと思っている人もいますが、そうではありません。
乳がんは、乳管や小葉の中にとどまっている状態(非浸潤がん)と乳管と小葉の外にも広がっている状態(浸潤がん)に分類されます。
非浸潤がんは、がん細胞が血管やリンパ管に入ることはないので、転移を起こさない早期がんといえます。
非浸潤がんでも浸潤がんでも、ある程度進行すると、乳房のしこりとして外から触れることができます。
これを、触知乳がんといいます。
しかし、乳がんの進行は非常にゆっくりなので、しこりとして認識できるまでに成長したときには、がんの発生から何年も経過しているのです。
乳がんは、初期の段階では、無症状といえます。
触れてもわからないがん(非触知乳がん)を発見するにはマンモグラフィや超音波検査などの画像検査が不可欠です。

末期肝臓がんの症状

末期肝臓病の症状は大きく5つに分けられます。
1. 黄疸
  黄疸の指標となるのはビリルビン値があります。ビリルビンは肝臓から腸へ排泄さ れる胆汁の色素のことで、肝臓が働かなくなると胆汁は腸へ排泄できなくなるため血 液中に入っていき、皮膚や目が黄色くなったり痒みが出る原因となります。
2. 腹水
  肝臓が悪くなって硬くなると、血液が肝臓の中を通りにくくなり、肝臓の近くにあ る細い血管を通って心臓に戻ろうとします。しかし、肝臓に直接入る血管に無理がか かり、そこから血液中の水分やアルブミンなどの成分が血管の外に滲み出してきます。 その量が増えるとお腹に水が貯まり、お腹も大きく張ってきます。また血液中のアル ブミンが減少します。
3.食道静脈瘤
  食道の細い血管を通って心臓に血が帰ろうとするために無理がかかり、細い血管が 風船のように―部ふくれるため、破けやすい状態になります。これが破けると大出血 して命を落とすこともあります。静脈瘤は食道の他に胃にもできることがあります。 直腸にできると、いわゆる痔となります。
4. 肝性脳症
  腸で作られたアンモニアという有害な物質は、本来肝臓で分解され無害となります が、肝臓が分解する力がないために、肝臓を通らないルートの血管を通って脳へいっ てしまいます。それで頭がもうろうとしたり、訳が分からないことを口走ったり、意 識を失ったりということが起こります。
5. 出血傾向
  肝臓は血の成分の―つである血を止める役割をする物質を作ったり、また、血を止 める働きを助けたりしています。肝臓が働かなくなると血を止めるための物質が少な くなってしまいます。そこで、血が止まりにくくなったり、血が出やすくなります。 少しぶつけただけでも青あざができたり、鼻血が出やすくなり、―度血が出ると止ま りにくくなったりします。また、肝臓を通過出来ない血液が肝臓のそばにある脾臓に 流れ込むため、脾臓が大きくなり、血液成分を壊すという本来の脾臓の働きが亢進す (脾機能亢進症)し、出血傾向の原因となります。

肝移植にかかる費用

現在、生体肝移植にかかる費用はレシピエントが約1,000~1,500万円前後、ドナーの費用は約200~250万円程度です。レシピエントは手術日から退院日までの費用、ドナーは手術前の検査から手術後退院するまでの費用に関して、病気によって保険が利くものと利かないものがあります。
【保険が利く病気は】
・先天性胆道閉鎖症
・進行性肝内胆汁うっ滞症
・アラジール症候
・パッドキァリー症候群
・先天性代謝性肝疾患
・肝硬変(15歳以下の患者のみ)
・劇症肝炎(15歳以下の患者のみ)
・肝細胞癌(ミラノクライテリア;3cm3個以内もしくは5cm単発で遠隔転移がない)
となっています。
 残念ながら上記以外の病気の患者さんは、全て自費となります。肝移植の費用は全て治療費であるため、患者さんが助からなかった場合でも支払っていただかなくてはなりません。
 肝移植の費用は病気によっても違ってきますが、個人によってもかかる費用が異なります。これは手術時間・ICUでの治療や期間・退院までの期間など、患者さんによって個人差が出てくるからです。
 したがって、移植前においてはどの程度費用がかかるかは、おおよそのことしかわかりません。手術後の経過によっては2000万円以上かかることもあり得ます。医療費の支払いに関して、原則は月末締めの翌月10日請求で一括払いとなっております。支払い方法、その他保険取扱い等に関しましては、医事課担当者並びにソーシャルワーカーによる説明があります。
 全てのレシピエントもドナーも一旦退院すれば、退院後の医療費は保険が利くようになります。レシピエントは免疫抑制剤を飲み続けなければならず、それらの費用も移植後かかりますが、退院後は高額医療の申請が行えます。
 移植が成立した際のドナーの費用は、本来レシピエントに請求されますが、退院後、外来での医療費はドナー本人の保険を使用するため、ドナーの方に請求されることとなります。
 ドナーの検査を行ってドナ―にならなかった人についても、その方の保険で医療費が請求されます。そのような場合は誰が医療費の支払いをするかについては、移植前に家族内で十分話し合っておいて下さい。

肝移植直後

患者さんは手術後ICUに移っていただきます。状態が落ちつけば、御家族に限って面会することができます。手術直後の患者さんの体は人工呼吸器や点滴、ドレーンと呼ばれる管など多くのチューブ類につながれています。人工呼吸器は普通3日間位ではずされます(状態によって変わります)。
 その他のチューブ類も状態が安定し必要なくなれば抜去されます。また、超音波検査が毎日行われ、肝生検という肝臓の組織を―部取り出して顕微鏡で調べる検査も頻回に行われるでしょう。
 ICU では医師や看護婦等のスタッフが24時間体制でケアーを行います。手術後早い時期は患者さんの状態が不安定なため、採血や検査が毎日のように行われることになります。ICUのスタッフからその都度説明されるでしょう。
 患者さんの手術後の回復状態は、移植前の全身状態によって大きく違ってきます。肝移植を受けられた患者さんが全て同じような経過をたどるわけではありません。移植手術が終わったからといって、すぐに元気は取り戻せないでしょう。
 状態が安定し体が回復するまでの期間は、手術前の状態によって差があります。よってICUで過こす期間も人によってまちまちで、1週間以内に病棟に移れる人もいれば、それ以上かかる人もいます。
 ICU にいる間は状態が落ちつかず、様々な問題が出てくることも予想されます。例えば、血管や胆管をつなげたところが狭くなったり、詰まったりすることがあります。肝臓を切った部分からの出血も起こることがあります。
 また、細菌やウイルス、真菌(カビ)による感染症にかかり、症状が重くなり、命に関わる可能性もあります。拒絶反応が起こることもあるでしょう。
 もちろん患者さんによっては重大な問題が起きずに回復される方もいます。移植手術後は、状態が安定するまでジェットコースターのように変化が大きく、移植後1~3ヶ月位までは大変な時期といえます。
 患者さんにとっても家族にとっても、ICUで過ごしている期間は大きなストレスになると考えられます。私達はそのストレスが少しでも解消されるよう、あなた方の助けとなるよう援肋します。
 もし分からないことがあれば何でも質問して下さい。ICUのスタッフ、医師、コーディネーターはいつでも相談にのります。

肝移植の手術

肝移植の手術は全身麻酔下で行われ、手術時間は10~16時間またそれ以上かかることもあります。手術室に入ってから、手術が行われる前に麻酔の準備などで1~2時間を要すため、実際に手術室に入ってから手術が終わり手術室を出るまでの時間は12~18時間ぐらいかかり、状況によってはそれ以上の時間を要する場合もあるでしょう。
 肝移植の手術としては、肝臓につながっている4本の主要な管をつなぎ合わせることが主となります。肝静脈、門脈、肝動脈とつないだ後、胆管をつなぎます。
 肝移植を受ける時の患者さんは、肝臓を通らずに心臓へ戻る細い血管が多くあるために、とても出血しやすく、手術中かなりの出血が子想されます。そのため、多量の輸血が必要となります。
 生体肝移植のドナーの手術は、移植する部分の肝臓を切除し、血管と胆管を切り離します。残った肝臓がちゃんと働くよう慎重におこなっていきます。
 肝臓をどの程度取るかは、前もってCTの画像写真で予測できますが、手術中に実際に肝臓を見てから最終的に判断します。
 ドナーの手術は6~7時間程度ですが、麻酔にかかる時間と麻酔から覚める時間を合わせるともう少しかかるでしょう。またレシピエントの手術の進み貝合で肝臓を取るタイミングを少し遅らせることもあり、そうなると手術時間も長くなります。
 手術中の輸血は手術前にドナー本人から採取した血液を用いる、自己血輸血という方法をとります。しかし出血量や状態によって、自己血による輸血量が足りない場合は―般の輸血を行うことがあります。また、場合によっては自己血を採取する時間がなく、行えないこともあります。
 手術を終えた患者さんはICU(集中治療室)へと移されます。ドナーの方は一般病棟に移されます。

生体肝移植のドナーの条件

1.成人であること(原則として20歳以上65歳末満)。
2.原則として患者さんと血縁(3親等内)、または夫婦であること。
3.血液型が一致、もしくは適合していることが望ましいが、不適合でも行う
4.肝臓のサイズが合っていること。
5.自分の意思で肝臓を提供したいと思っていること。
6.心身共に健康であること。
7.感染症や悪性腫瘍などに最近かかったことがないこと。
生体肝移植でドナーになるということは簡単に決められることではありません。肝臓を提供して患者さんの命を助けたいという強い意思はもちろん大切ですが、明らかにドナーが危険にさらされるような手術は出来ません。
どんな手術も100%安全だという保証はありませんが、出来る限りドナーにとって危険が及ばないよう、ドナーの健康状態を十分に検査させていただき慎重に検討していきます。
ドナーの方にも手術前から禁酒・禁煙していただきます。もちろん手術後も約3ケ月間、医師の指示が出るまでは禁酒を続けなければなりません。手術後ドナーが健康な体になるまでは、ドナー自身にも責任を持って生活するよう心がけてもらう必要があります。
生体肝移植で大切なことは、ドナーの家族(親子・兄弟・姉妹間での移植ならドナーの家族、夫婦間での移植ならドナーの肉親)もドナーとなることに同意しているということです。時には反対されることもあるでしょう。反対を押し切ってドナーになることで、移植後、家族の間でしこりが残る場合があるかもしれません。
実際、家族の中から2人同時に手術を受けるということはとても大変なことで、周囲の協力がとても重要となります。そこで、ご家族の皆様にこのパンフレットをお読みいただき、肝移植を正しく御理解していただいた上で肝移植について御検討いただければと思います。

生体肝移植のドナーの条件

1.成人であること(原則として20歳以上65歳末満)。
2.原則として患者さんと血縁(3親等内)、または夫婦であること。
3.血液型が一致、もしくは適合していることが望ましいが、不適合でも行う
4.肝臓のサイズが合っていること。
5.自分の意思で肝臓を提供したいと思っていること。
6.心身共に健康であること。
7.感染症や悪性腫瘍などに最近かかったことがないこと。
生体肝移植でドナーになるということは簡単に決められることではありません。肝臓を提供して患者さんの命を助けたいという強い意思はもちろん大切ですが、明らかにドナーが危険にさらされるような手術は出来ません。
どんな手術も100%安全だという保証はありませんが、出来る限りドナーにとって危険が及ばないよう、ドナーの健康状態を十分に検査させていただき慎重に検討していきます。
ドナーの方にも手術前から禁酒・禁煙していただきます。もちろん手術後も約3ケ月間、医師の指示が出るまでは禁酒を続けなければなりません。手術後ドナーが健康な体になるまでは、ドナー自身にも責任を持って生活するよう心がけてもらう必要があります。
生体肝移植で大切なことは、ドナーの家族(親子・兄弟・姉妹間での移植ならドナーの家族、夫婦間での移植ならドナーの肉親)もドナーとなることに同意しているということです。時には反対されることもあるでしょう。反対を押し切ってドナーになることで、移植後、家族の間でしこりが残る場合があるかもしれません。
実際、家族の中から2人同時に手術を受けるということはとても大変なことで、周囲の協力がとても重要となります。そこで、ご家族の皆様にこのパンフレットをお読みいただき、肝移植を正しく御理解していただいた上で肝移植について御検討いただければと思います。

生体肝移植のドナーについて

生体肝移植のドナーは元来健康な人であるため、健康な人に手術をするということが問題となります。世界中で約3,000例以上の生体肝移植が行われています。そのうち5例の方が手術後の合併症で亡くなられていますが、国内で行われた約2000例においてはドナーが亡くなられた報告は1例です。ただしこの原因は明らかになっております。ドナーに対する手術においても私達は最善を尽くします。しかし、手術後の合併症が絶対に起こらないとは言えません。
ドナーの手術後の合併症で致命的となりうるものとして肺塞栓症があります。肺塞栓症とは、手術後長時間歩かず寝ていることで足の静脈血管の中によどみができ、その部分の血が固まって栓(血栓)を作り、それがはがれ血管を通って肺へ行き、肺の血管をつまらせ、その結果呼吸ができなくなることを言います。前述した2例はこれが原因で亡くなっています。
肺塞栓症は欧米人に多く起こります。肝臓を切った部分からの出血や胆汁の管からの漏れなどが考えられ、もう一度手術が必要になることがあります。創もレシピエントとほとんど同じでかなり大きくなります。また、ドナーは特に問題がなければ手術後約2週間位で退院可能となりますが、レシピエントに提供する肝臓の大きさによってはもう少し長く入院する必要があります。
退院後の職場復帰は事務職では手術後約2ケ月、肉体労働は3ケ月程度かかります。手術前はもちろん、手術後約3ケ月はアルコールの摂取は禁止されます。なぜなら、肝臓がまだ十分大きくならない状態でアルコールを摂取すると、肝臓の機能が悪くなるからです。このようにドナーにもいくつかのリスクや制約を受けることがあります。

肝臓がん治療(生体肝移植)

肝移植には生体肝移値と脳死肝移植があります。
 生体肝移植では健康な人の肝臓を部分的に切除し、肝移植が必要な患者さん(レシビエントといいます)に移植されます。
 生体肝移植の場合、家族に肝臓の提供者(ドナーといいます)がいないと成り立ちません。自発的な意思でドナーになるという人で、血液型と肝臓のサイズが合うことが最低条件となります。
 生体肝移植ではドナー側に残した肝臓も十分に働くように血管を処理する高度な技術を要します。しかしほぼ同時に手術が行われるため、肝臓が体から取り出されている時間が短くなり、肝臓自体のダメージが少ないために、手術の成功率が脳死肝移植に比べ若干良くなります。
 他人からの肝臓よりも身内の肝臓の方が拒絶しないのではないかと思われがちですが、それはあまり関係ありません。脳死肝移植よりも生体肝移植の成績が若干良いのは、同時に手術を行うため、肝臓を取りだしている時間が短 「ことが大きな要因となります。
 成人の生体肝移植で問題となるのは、1つには肝臓の大きさです。大人の場合、子供と違い体が大きいために、必要となる肝臓のサイズも大きくなります。ドナーから必要な分の肝臓をもらうとドナー自身の必要な肝臓の大きさが確保できなくなる危険性があります。
 そうなると肝臓をもらうわけにはいきません。一般的にはサイズの小さい左葉を移植されることになりますが、左葉ではレシピエントにとって小さい場合、右葉を移植することもあります。しかし、成人の場合はほとんどが移植される肝臓が、患者さんの必要な肝臓の大きさの半分以下となります。肝臓が大きくなるまで時間がかかるため、脳死移植や子供の生体肝移植に比べ、回復に時間がかかります。
 生体肝移植では健康な人を傷つけることになるため、脳死肝移植よりも適切な方法とは言えません。やはり、一番いいのは脳死の方からの臓器提供です。また、移植したからといって、その肝臓がダメになった場合、再移植ということもあり得ます。
 その場合、生体肝移植では限界があり、脳死肝移植に頼らざるをえなくなるため、生体肝移植を受けられる方も、脳死の臓器提供への理解を深め、ご自身でも臓器提供意思表示カードが普及するよう、努めていただきたいと思います。

肝がん(肝細胞がん)に気づいたら

肝がんの症状は、基礎にある慢性肝炎や肝硬変の症状と非常に似ているため、肝がんであるという特有な症状、サインはほとんどありません。すなわち、腹水、むくみ、黄疸などの症状があっても、これが肝がんの症状であるかどうかの区別は困難です。
 急速に悪化する腹部膨満感(ぼうまんかん)(張り感)では、急激に増大しつつある肝細胞がんの可能性があります。また、強い腹痛は肝がんの腹腔内破裂(ふくくうないはれつ)(出血)の可能性があり、緊急にその状態を調べる必要があります。
 ALT(GPT)値の異常などの肝障害があったり、B型肝炎・C型肝炎ウイルスが陽性であれば、医師に対して腹部超音波検査を受けることを希望し、早い時期に肝臓内部のチェックをしてください。
 そして、基礎に肝臓病があって、腹部超音波やCTで肝臓内部に腫瘤(しゅりゅう)(しこり、影)がみられたら、ただちに肝臓の専門医の診察を受けてください。良性腫瘍のこともありますが、自覚症状の出てこない早期に肝細胞がんを診断することが、十分な治療を行うためにはどうしても必要です。
 受診する科目は、消化器科または内科です。病気の性格からは、肝がんと診断される前の段階(慢性肝炎・肝硬変)から、定期的に肝臓病の専門医に受診していることが大切です。こうすれば早期発見・早期治療の可能性が高くなります。
 生活面での注意は、背景の肝臓病の程度により禁酒、安静、食事制限などが要求される場合がありますが、一般にはこれ以上に特別なものはありません。

肝臓がんの末期症状

肝臓がんの末期症状と闘われている方の闘病記を読むことがあります。肝臓がんの末期症状に自分が見舞われたら、どうなるんだろうと思うこともあります。
 肝臓がんは、進行してくると、突然の腹痛や貧血症状になることがあるようです。これらの症状がみられたばあいには、肝臓がんがかなり進んでいると思ったほうがいいということのようです。
 肝臓がんが破裂すると腹痛に襲われるみたいです。肝臓そのものが、病状がかなり進行してからでないと症状が出てこない「沈黙の臓器」というぐらいなので、いきなり腹痛などが出たりします。
 肝臓がんの末期症状に近くなってくると、腹水がたまったり、黄疸がひどくなったり、また、全身が衰弱してくることもあるようです。腹水がたまってくる度合いが多くなってくることから、週に1回は病院で腹水を抜いてもらう場合もあります。
 肝臓がんは、再発の可能性が高いがんとして知られています。
 切除術できれいに取り除いたとしても、3年後や5年後に再発する可能性は6割から7割近くになります。
 肝臓がんの末期症状では、骨に転移して痛みが言葉では言い表せないほど激しいということで、モルヒネで痛みをやわらげたり、神経ブロックで痛みを感じなくさせたりという対処療法もあります。
 ホスピス的な考え方も一方にはあって、常にそばにいて、触れたりさすったりしてあげるということでも、十分に痛みを緩和することもできます。
 いわゆる緩和ケアという方法も、一般的になっているようです。
 モルヒネは一種の麻薬ですので、神経混乱などの副作用も強く、肝臓がんの末期症状で使うか使わないかの考えも、今ではいろいろとありますす。
 また、漢方などを使う場合もあったり、民間療法を試すという場合もあるようですが高価です。

肝臓がんの名医

肝臓がんの名医
1 山崎 晋
(肝臓科医長) 国立がんセンター中央病院(東京都)
                   ℡03-3542-2511 肝腫瘍の手術数国内最多。
難度の高い肝硬変合併症にも実績大
2 小俣政男
(消化器内科科長)) 東京大学医学部付属病院(東京都)
                   ℡03-3815-5411 肝動脈塞栓術など、
原発性肝細胞ガンに対する内科的治療が有名
3 椎名秀一郎
(消化器内科医局長) 東京大学医学部付属病院(東京都)
                   ℡03-3815-5411 高周波でガン細胞を死滅させる
ラジオ波焼灼療法のトップランナー
4 幕内雅敏
(肝・胆・膵外科科長) 東京大学医学部付属病院(東京都)
                   ℡03-3815-5411 肝切除手術の死亡例ゼロ、
どう手術の名手として世界的に知られる
5 岡崎伸生
(副院長兼センター長) 茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター(茨城県)
                   ℡0296-77-1121 末期ガンにも治癒を断念せず、
QOLを考慮した懇切な治療を実施
6 大西久仁彦
(病院長) 大西内科(埼玉県)
                   ℡0492-71-6250 肝臓の画像診断、
開発した経皮的腫瘍内酢酸注入法は画期的効果
7 橋本大定
(外科教授) 埼玉医科大学総合病院医療センター(埼玉県)
                   ℡0492-28-3400 自ら開発した数々の器具を駆使した
安全確実な内視鏡手術に定評
8 三浦 健
(病院長) 三浦病院(埼玉県)
                   ℡0492-54-7111 手術不能の患部動脈に抗ガン剤を注入。
切除手術に匹敵する好成績
9 荒井保明
(放射線診断部部長) 愛知県がんセンター(愛知県)
                   ℡052-762-6111 局所麻酔で肝動脈にカテーテルを挿入し、
抗ガン剤を投与し高実績
10 中村仁信
(放射線医学講座教授) 大阪大学医学部付属病院(大阪府)
                   ℡06-6879-5111 肝細胞ガンに対して、
ガン存在区域への塞栓化学療法で壊死させる
11 佐々木洋
(参事兼第一外科医長) 大阪府立成人病センター(大阪府)
                   ℡06-6972-1181 内科、放射線科とのチーム医療による集学的治療。
症例は関西最多
12 高安幸生
(放射線科部長) 市立芦屋病院(兵庫県)
                   ℡0797-31-2156 IVR手法で肝臓ガン患部に直接抗ガン剤を投与し、
好成績を実現
13 才津秀樹
(外科医長) 国立病院九州医療センター(福岡県)
                   ℡092-852-0700 マイクロ波焼灼治療で
内視鏡肝切除と遜色ない低侵襲を達成した

肝臓がんは再発しやすい

肝臓がんは再発が高頻度で起こることが特徴となっており、予後を悪化させる大きな原因となっています。せっかく治ったように見えても、再び治療する必要が生じてしまうのです。
 残された肝臓に再発する場合と、他の部位に転移した状態で発見される場合があるのですが、9割以上は前者となっています。他のがんと比較すると、転移の頻度が少ない傾向にあります。
 手術を行った場合を例に取ると、術後5年以内に肝臓がんが再発する確率はおよそ75%とされています。4人に3人の割合ですので、決して低い数字ではないことがお分かりいただけるでしょう。
 このような事情があるため、再発していないかをチェックするために、定期的に検査を行う必要があります。具体的には、腫瘍マーカーを含めた血液検査や超音波検査・レントゲンといった画像診断を用いることになります。
 再発が多い原因
 肝臓がんの再発が多い原因としては、早い段階から血管内にがん細胞が入って周囲に広がってしまうことや、B型やC型可燃ウイルスに感染している患者さんが大部分であるため、リスクが高くなっていることが挙げられます。
 再発の治療
 再発したからといって、打つ手がないわけではありません。手術を始めとした治療を行うことができますし、その方法は進歩しています。手術の適応がない場合には、肝動脈塞栓療法やエタノール注入療法が中心になっています。

逆流性食道炎 控えた方が良い運動

逆流性食道炎の人が控えた方が良い運動があります。
運動の内容によっては、胃液が食道に逆流して症状が悪化する場合があるからです。
避けた方が良い運動は、重い負荷をかけた筋力トレーニングと背中を丸めて行うスポーツです。
いずれも腹圧が急激に上昇する恐れがあるので、その結果胃酸が逆流して不快症状が現れる恐れがあるからです。
ベルトや帯でお腹を締めつけて行うスポーツも逆流性食道炎を悪化させる原因となります。
体全体を締めつけるようなボディスーツやウェットスーツを着て行うスポーツも避けた方が良いでしょう。
しかし、適度なスポーツは流性食道炎の症状の改善に役立ちます。
スポーツをするとストレスを発散させることができますが、ストレスこそが最近逆流性食道炎が激増している主な原因の一つと言われているからです。
さらに、スポーツをすると腸の蠕動運動が活発になるので胃液が逆流せずに十二指腸から小腸へと正しく移動していきます。
スポーツの種類によっては姿勢が良くなるので、胃から食道への胃酸の逆流を防ぐ上で効果があります。
特に、食べ過ぎによる肥満でお腹が出っ張っている人や、日頃から猫背のくせがあるような人にとって適度なスポーツは症状改善に効果が期待できます。
激しいスポーツは、疲労を蓄積させて逆にストレスになりやすいのでかえって症状を悪化させることがあるのでウォーキングなどの軽い有酸素運動が良いとされています。自分の体力に応じた適度な運動を心掛けましょう。

逆流性食道炎とストレス

ストレスはが健康全般に悪影響を及ぼすことは有名で、逆流性食道炎の原因の一つにも挙げられています。
強いストレスが胃けいれんが起きたり胃潰瘍になることがあるというのは皆さんも聞いたことがあるでしょう。
ストレスを受けると血管が収縮して体中の血流が悪くなります。
その結果、胃の内壁も縮こまって動きが悪くなります。
一方、ストレスを受けたことによって自律神経のコントロールに乱れが生じるため、胃酸の分泌は増えてしまいます。
胃の運動は衰える一方で胃酸の量は増加するので食道の方へ逆流しやすくなります。
胃酸が胃の中に留まったままでいると胃けいれんや胃潰瘍を発症します。
逆流性食道炎の治療は、日本では服薬が中心となります。
しかし、症状が収まったからといって薬の服用をやめると再び症状が現れることが多く、薬だけに頼らずに生活習慣の見直しをするのが最善の治療です。
ストレスが原因と考えられる逆流性食道炎を発症した場合は、日常生活を見直してできるだけストレスを取り除く工夫をすることが必要です。
しかし、ストレス解消といって大量に飲酒したり深夜に暴食するような生活態度はかえって逆流性食道炎の症状を悪化させます。
ストレスが溜まって疲れたからといって家で食事をしたあとすぐに横になるのも逆流性食道炎の症状が起こりやすくなります。
ウォーキングや軽いジョギングなどの軽い有酸素運動はストレス解消に最適です。できれば休日には何かスポーツをすることを習慣にするといいです。

逆流性食道炎 早食いと大食い

早食い早食い癖がある人は逆流性食道炎になりやすいので注意が必要です。
食事の時には誰でも食べ物と一緒に空気を飲み込みます。早食いの人は、良く噛まないで飲み込むのでとりわけ大量の空気を食べ物と一緒に呑み込んでいるのです。
飲みこんだ空気はそのまま食道から胃に向かって咀嚼(そしゃく)した食べ物と一緒に降りていきます。すると風船が空気で膨れるように、胃が空気によって胃の内圧が上がります。空気を抜くために、空気の一部はゲップになって体外に出ていきます。
ゲップをする時は、普段閉じられている食道の下にある「下部食道括約筋」が緩みます。しかし、しょっちゅうゲップをする癖がつくとこの筋肉に締まりがなくなって開きっぱなしになってしまいます。すると、胃酸が食道に逆流しやすくなって逆流性食道炎を発症します。
大食い大食いも逆流性食道炎の大敵です。
大食いの人は摂取カロリーが活動に必要なエネルギーを上回っていることが多いので肥満体形になりがちです。腹が出ていると胃の蠕動運動が弱まって、食べ物や胃液が胃の中に滞留しがちになるので胃酸が食道に逆流しやすい環境になります。
もちろん大量の食べ物を食べるということは、それだけたくさんの空気を飲みこんでいるのでゲップも増えて早食いの人と同じ理由で逆流性食道炎を発症しやすくなります。
早食いの食べる癖がある人は、食べ物を良く噛む習慣を身につけることが大切です。大食漢の人は、毎日の食事内容を記録するなどしてカロリーコントロールに努めましょう。

逆流性食道炎 控えたほうがよい食べ物

逆流性食道炎は、胃酸が胃から食道に逆流して食道の粘膜が炎症を起こす病気です。逆流性食道炎を治す上で食べ物の見直しが欠かせません。
逆流性食道炎の人が控えた方が良い食べ物は、脂肪分の多い食材や油をたくさん使った料理です。油分の多い食事は、胃で消化するのに時間がかかるので胃にかける負担が多くなるからです。
過度の飲酒も禁物です。
アルコールには、道下部括約筋の機能を低下させる働きがあります。そのため、食道の入り口が緩くなって胃酸が逆流しやすい環境を作ってしまいます。
炭酸飲料は、健康な人でもゲップが出やすい飲み物です。
胃酸の逆流を起こしやすいので控えた方が良いでしょう。
刺激の強い香辛料を使った料理は、胸やけを起こしやすいので控えた方が良いでしょう。
甘いお菓子やカフェインも悪い影響を与えます。コーヒーや紅茶、緑茶などの飲みすぎや甘味料の摂り過ぎは禁物です。
逆流性食道炎の人が進んで摂った方が良い食材は、消化しやすく胃に優しい食べ物です。糖分や脂肪分、香辛料による刺激などが少ない食べ物が好ましいと言われ、豆腐や鳥のササミ、白身魚、バナナ、りんごなどがお勧めです。主食の米は、おかゆ・雑炊で摂る方が消化しやすくなります。
逆流性食道炎は、肥満体質の人に多く見られる病気です。
胃に優しいとされる食事をしても、暴飲暴食を繰り返していては症状の改善は見込めません。
逆流性食道炎に良いとされる食べ物を適量摂ることが症状改善につながります。

逆流性食道炎と肥満

逆流性食道炎は、肥満体形の人に多いのが特徴の病気です。
肥満体形の人は、もともと大食で高カロリーや油っこい食べ物を好み過食状態に陥りがちです。過食になると胃酸過多となって、胃酸が食道に向かって逆流しやすくなってしまいます。
肥満の人はお腹回りに脂肪が付いているので、脂肪が胃を圧迫する状態が日中続きます。そのため、一日中胃酸の逆流が起きやすい環境が起きているのです。
お腹がぽっこり出ているメタボ体型の人は、ウェストのくびれがないのでベルトを締めないとズボンがずり下がってしまいます。
そのため、ベルトをきつく締めて胃酸が胃から腸へ流れにくくなり食道に逆流する環境を作り出していることがあります。肥満体形の人がベルトを締める習慣をやめることで症状が緩和することがあります。
日本人に多い2型糖尿病の原因は、運動不足による肥満や内臓脂肪の増加だと言われています。糖尿病の人は、神経障害によって食道の蠕動運動が低下するため逆流性食道炎の症状が悪化することがあるので気を付けなければいけません。
それと同時に、神経障害の症状の一つとして逆流性食道炎の自覚症状が現れにくくなります。
逆流性食道炎の治療は、まず適切な薬を服用して胃酸の分泌を抑えることで症状の緩和を試みます。
しかし肥満の人は、もともと逆流性食道炎になりやすいリスクを抱えているわけですから、薬だけに頼らずに、食事や生活の管理を行って病気の完治を目指しましょう。

逆流性食道炎と年齢の関係

逆流性食道炎は、胃の中にある胃酸が食道に逆流してそこに留まるために食道粘膜が炎症を起こす病気です。
健康な人は、胃と食道の境目にある筋肉の働きのおかげで胃の中にある消化途中の食べ物が逆流することがありません。ところが、この筋肉が弱くなると胃酸が逆流してしまいます。げっぷや胃もたれが起きやすいので年寄りに多い病気のイメージを持たれがちです。実際に、年齢的に筋肉が弱って来た高齢者の方が若い人より発生しやすい病気です。しかし、最近では若い人でも逆流性食道炎にかかる人が増えており、年齢と病気の相関性が崩れています。
原因の一つに挙げられるのが栄養バランスを考えない食生活です。脂肪分の多いおかずや甘いものが好きな人、暴飲暴食や過度のアルコール摂取などの習慣がある人は、年齢に関係なく逆流性食道炎を発症しやすくなります。
生活習慣が逆流性食道炎を招いている場合もあります。食べてすぐ横になる癖がある人や、日頃から腹部を圧迫する姿勢を長く取る生活を続けている人は逆流性食道炎にかかりやすくなります。
ストレスも逆流性食道炎の原因の一つです。強いストレスを受け続けると自律神経が乱れます。その結果、胃酸の分泌や胃の働きが衰えて逆流性食道炎を発症します。
このように、胃液が逆流するのは年寄りの病気と思われていたのは過去の話。逆流性食道炎は、現代人にとって若年齢から発症するリスクのある病気なのです。男性に多いイメージのある病気ですが、肥満や妊娠などが原因となって女性で発症する人も少なくありません。
胃の調子が悪いのを見過ごしているうちに症状が進み、いざ治療を受けようとするとすでに症状が悪化している場合が多いのもこの病気の特徴です。逆流性食道炎かもしれないと思ったら早めに適切な治療を受けることが大切です。

逆流性食道炎が悪化すると

逆流性食道炎は、胃酸が逆流して食道内に長時間とどまることにより、炎症を引き起こしてしまう病気です。
胸焼けやつかえ、げっぷなどの症状が表れますが、少しでもおかしいと感じたら、なるべく早く医者の診察を受けるように心がけてください。
逆流性食道炎では症状の進行度合いによって、5段階に分けられています。
レベル1:逆流性食道炎のなかでも最も症状が軽く、油を多用した食事をとると胃に不快感を感じつ程度です。
レベル2:油の多い食事をとった後に、強い俯瞰間を感じます。
レベル3:油多い少ないに関わらず、胃に強い不快感が表れます。
レベル4:胃の強い不快感に加え、体を横にするとせきがでます。
レベル5:座ったままでもせきが続きます。
そのまま放っておくと、逆流性食道炎は確実に悪化します。
食道に胃酸が滞留し続けたままだと、食道の粘膜は胃酸に耐えるために、胃の粘膜と同じ形状に変化します。これは食道がんの一種であるバレット腺がんと呼ばれ、命に関わる病気として知られています。そうなる前に早急に医者の診察を受けたほうが良いでしょう。
また、一度逆流性食道炎にかかってしまうと、再発の可能性が非常に高くなるといわれています。
逆流性食道炎の原因には、生活習慣や食事が大きく関係していますので、予防のためにも生活習慣と食事を見直すことをおすすめします。肥満の方は、ダイエットをして体重を減らす努力をしておくと良いでしょう。

増加する日本人の逆流性食道炎

逆流性食道炎にかかる日本人は、年々増加傾向にあります。
主な原因としてあげられるのが、食生活の欧米化です。
戦前戦後の日本の主食は、魚や野菜などの比較的脂肪分の少ない食べ物がほとんどでした。しかし年が経過するにつれ、日本人の食生活は欧米化しています。
欧米の食事には脂肪分が多く含まれていることはご存知の通りです。脂肪分を多く摂取すると、胃酸が過剰に分泌されます。そのため、胃酸が逆流しやすい状態になってしまうのです。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に長く滞留することにより引き起こされます。もともと日本人には少ない病気でしたが、食生活の欧米化により一気に増加しているのが現状です。
また、食生活の欧米化にともない、日本人の体型にも変化が表れています。脂肪分を多く含む欧米食を食べることで、肥満症状の方が増えているのです。
肥満になると、腹部に溜まった脂肪が胃を圧迫し、胃酸を押し出そうとしてしまいます。押し出された胃酸は、食道に行き場を求め、結果として逆流性食道炎を引き起こしてしまうのです。
日本人の逆流性食道炎の原因には、姿勢の悪さにもあるといわれています。
具体的にいうと、猫背です。
背中が曲がった状態では、腹部が圧迫され続けることになります。肥満の場合と同じように、胃が圧迫されて胃酸を押し出してしまうために逆流性食道炎にかかりやすいのです。
げっぷや胸焼けの症状が続いたら、まずは医者に診断してもらうようにしましょう。

逆流性食道炎の対処法

逆流性食道炎と言われたら、胸焼けなどの自覚症状の強弱に関係なく、普段の生活習慣(飲みすぎ、食べすぎ、早食い、食後すぐに横になる、辛い物好き)が、カッコ内で当てはまる習慣があったら止めましょう。
まずは、生活態度を改めることが基本です。
特に、冷えた飲み物を止め、のどが渇いたらお湯やお茶にする、これで、かなり症状は軽減します。長生きだったきんさん、ぎんさんは、水を飲まずにお湯をのんでいたそうです。
胸焼けを起こしやすい食品を出来るだけ減らす。
揚げ物
脂肪の多い物
熱い物
塩分の多い物
甘味料を多く含む物
酸性の強い物(肉類など)
刺激性の強い物 (コーヒー、唐辛子、カレー、オレンジジュース、ペパー ミント濃い緑茶、炭酸飲料等)
ビールに枝豆は、胃酸の分泌が多くなるので控えた方が良いです。
その他
1、寝るときの姿勢で軽減する。
頭部が10-20cm程度高くなるようにする。 横向きに寝る場合は、左右逆流
しにくい方を調べ、自分に合った方を下 にして寝る。
3、肥満解消に努める。
4、腹圧を上げないようにする。(重いものを持たない、前屈みを避ける、 
ベルトを強く締めない、排便の時、力まない)
5、運動や食物繊維の多い食事を心がける。
6、食べた後、最低30分は横にならない。出来れば2時間は起きておく。
7、薬を飲む時は、水を一緒にたくさん飲む。
8、牛乳(温めて)、卵、大根、山芋、キャベツ、豆腐は逆流性食道炎に
  良いので積極  的に摂る。
9、食後にガムを噛むのは有効。(唾液が弱アルカリ性なので胃酸を中和
  して症状を緩和する)
10、一時的には、牛乳やお湯を飲めば症状が和らぐ。
11、逆流性食道炎は、猫背の人に多いので姿勢に気をつける。

逆流性食道炎原因

胃液の逆流は、食道から胃への入り口部分が老化などによって緩むことが原因と言われていますが、その誘引は。
◇ 姿勢が前かがみの状態でいる事が多い
◇ ストレス
◇ 過飲過食、飲酒による胃酸過多
◇ 食後すぐに横になる、前屈するなど
◇ 加齢による機能低下
◇ 食道裂孔ヘルニア
◇ 食道の機能低下
◇ 妊娠、肥満、便秘による腹圧の上昇
◇ 腹圧を高める運動や衣服の着用
◇ 本数の多い喫煙
◇ 刺激の強い食品の多食(コーヒ、カラシ、栄養剤のビタミンC)
原因がはっきりしている場合を除いては、ストレスによって発症する例が大部分を占めるため、精神科的治療を平行して行う長期間の治療になることもあります

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎の症状◇ 口の中に酸っぱい物が上がってくる
◇ 胸焼けがする
◇ 寝ているときや前かがみになったときに喉や口に胃酸が逆流する
◇ 喉の痛みや違和感、又は不快感がある
◇ 肋間神経痛のような胸痛がする
◇ 耳痛、耳の違和感がある
◇ 甘いものが食べられなくなった
多くは過度のおくび(げっぷ)を伴い、食道が狭くなって食物が通りにくくなるなど、重度の場合は、出血を伴い貧血を引き起こすこともあります。
かがんだ時や食べすぎた後、あるいは就寝後や起床時に不快感が強い人が多く、また、胃液は起きている時よりも、就寝時の14時頃に分泌が多く出る事と、横になっている姿勢のほうが逆流しやすいために、就寝中に食道に炎症が起き、朝起きた時から胸焼けを感じることが多くなります。
逆流性食道炎とは逆流性食道炎は、胃液(1日2リットル分泌)が逆流しないように閉まっているはずの噴門(胃と食道の境目)が、何らかの原因で開いたために、胃液が食道に逆流するために起こる食道の炎症です。
良く似た症状で、普段から胃酸過多の人で、便秘が続いた時などに胃液が逆流することがありますが、この様に炎症や潰瘍が無くても胃液が逆流する症状もあります。
胃液中の胃酸は酸性度が非常に高いので、胃壁は粘液を分泌して胃酸を防御していますが、食道にはそうした働きがないことから、胃液が逆流すると粘膜が傷ついてしまい、食後に起きる胸焼けや、のどまで上がった胃液で、食道につかえ感や、焼ける感じ、チリチリした胸の痛み、げっぷが多くなるなどが一般的な症状です。
逆流性食道炎でも軽度の場合、又は、高齢者で自覚症状がほとんどないこともあります。
炎症が強いと潰瘍(かいよう)が生じて、出血や狭窄(せまくなること)の原因になり、欧米では以前から多い病気で日本では少ないと言われていましたが、高齢者の増加・食事の欧米化・診断の進歩により、日本でも大変多くの人が、時々逆流性食道炎を起こしていると言われていることが分かってきました。
最近は、症状はあるのに炎症が見られない、非びらん性の逆流性食道炎が多く見られるようになり、、胃も加え胃食道逆流症という考えが多くなっています。
こうした逆流性食道炎は、高齢者に多く見られ、また、男性よりも女性に多いという特徴があります。

飲酒と食道がんの関連 世界的には確実

アルコール飲料が食道がんのリスクであることは、世界中から報告されています。国際がん研究機構(IARC)における評価では、アルコール飲料はヒトに対し発がん性があると結論づけられており、部位別には口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、乳がんのリスク要因とされています。また、世界がん研究基金と米国がん研究協会(WCRF/AICR)が共同で発表している「がん予防のための食物・栄養などに関する勧告」の第二版(2007)でも、アルコールは食道がんの確実なリスク要因であると判定されています。
日本では、よく飲まれる酒の種類が欧米と異なること、日本人に多い食道がんのタイプ(扁平上皮がん)が欧米に多いタイプ(腺がん)と異なること、アルコールを飲んですぐ顔が赤くなるタイプの人が約半数いるという体質の違いがあることから、必ずしも欧米の結果が参考になるとは限りません。
今回、改めて、2010年1月までに報告された飲酒と食道がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。このテーマについて報告された疫学研究には、4つのコホート研究と9つの症例対照研究がありました。それらを検討した結果、日本では、飲酒と食道がんリスクの関連を示す科学的根拠は確実であるという結論になりました。

がんとアセトアルデヒド

アセトアルデヒドは、飲酒後に体内でエタノールの中間代謝物として生成されます。悪酔いや二日酔いの原因となります。また、アセトアルデヒドには発がん性があり膵臓がん、口腔がん、食道がん、咽頭がん、大腸がんなどの発症が高くなるそうです。
アセトアルデヒドは添加物としてタバコ製造会社によってタバコにも添加されているようです。添加する理由は、アンモニアと同様にニコチンの吸収・効果の増幅作用があり、より少量のニコチンで依存性を発揮させたり、燃焼を促進させたりするようです。
口の中をきれいにすると、アセトアルデヒドは低くなります。歯磨きやうがいはもちろんのこと、デンタルフロス、歯肉ブラシなども使って口腔内を清潔に保ちましょう。

食道がんの初期症状

食道がんは、女性の5倍の確立で男性が発症するがんで、全てのがんの中で3.4%を占める発症率の高いがんです。
胃がんや肺がんに比べて情報量は少ないですが、初期症状が現れてから1年以内に死亡してしまうことが多く、5年生存率は5%と大変低いことで知られています。
原因としては、やはりお酒やタバコ。
さらに、刺激物を好む人が発症することが多いといわれています。
また、熱い食べ物や飲み物を冷まさずに飲み込むと、食道がダメージを受け、食道がんのリスクが高まります。
死亡率がとても高い「食道がん」ですが、初期症状はほとんどなく、無症状食道がんは実に20%。
そのため、早期発見がとても困難です。
なんとなく胸がつかえたり、胸がしみる感じや大きめの固形物が飲み込みにくくなるという症状が現れますが、
50代~60代で発症することが多いため、年齢のせいで喉がつかえているのだと捉えて放置してしまう人がほとんど。
さらに、がんが進行するにつれてこれらの喉の違和感は消えてしまうことが多く、がんがそのままどんどんと進行してしまう原因となっています。
また、胃に不快感を覚える人が、内視鏡検査を受けて偶然「食道がん」が発見されるということも少なくないようです。
食道がんのかすかな初期症状として覚えておきたいのが、食べ物が落ちていく感覚。
熱いものを食べたときなどに、喉からお腹にかけてつーっと落ちていく感じを経験したことがある人は、多いのではないでしょうか。
食道の感覚は敏感で比較的正確なため、異物があると、物が通っていくときに異変が感じられます。
熱いものを食べたわけでもないのに、食べ物が通っていく感じを覚えたときは、「食道がん」の初期症状を疑いましょう。
がんが進行すると、食道の内側に向かって腫瘍が盛り上がるので、食べ物が喉や胸で詰まる感覚が強くなります。
また、食事に影響を及ぼしてくるため、体重の減少も症例の一つに挙げられます。
ただし、こういった症状を自覚する頃には、がんは相当進行してしまっているものと考えてください。
「食道がん」はとても進行の早く、さらには転移するのも早いがんなので、違和感を覚えた時点で早々に医療機関を受診するべきです。
40代後半から増加するという統計があるので、何も兆候がなくても、40代を過ぎたら人間ドッグや定期健診を受けるようにするのが、早期発見さらには、完治へと繋がる方法です。

胃潰瘍 市販薬・治療薬の違い

胃潰瘍の人は市販薬と治療薬の違いをきちんと理解して服用する事が潰瘍を早く治し再発させない事につながります。
薬の選び方や飲み方には、じゅうぶん注意しましょう。
市販薬と治療薬の違いは症状の緩和を目的としたものが市販薬で根本的な治療を目的としたものが医療薬になります。
十二指腸潰瘍は、まだ症状が浅いものに関しては本来人間が持っている自然治癒力の働きで胃の炎症や軽い潰瘍ぐらいであれば修復可能です。
しかし胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの潰瘍は深くなるにつれ市販薬では治らなくなります。
深い潰瘍はそのまま放置しておく危険です。
自然治癒が不可能になった潰瘍は医師のもとで適切な治療をしない事には完治しません。
お医者様が出してくれる処方箋をもとに作られた薬は市販薬とは成分に大きな違いがあるからです。
薬局等で売っている薬は、ただ胃を健康したり、消化を助けるものであったり胃酸を押さえたり胃の痛みを一時的に鎮めたり粘膜保護成分などが組み合わさった総合的なものになります。
しかし医療薬の場合は症状別にピンポイントに、それぞれの症状に合った薬だけを処方してくれます。
市販薬は胃のすべての症状全般を抑える成分が入っているので結果的に必要のないものまで、まとめて飲用する事になります。
例えば本当は胸焼けやゲップを抑えたいだけなのに胃の痛みを鎮める成分まで入っている感じです。
市販薬は誰でも安心して飲めて安全である事を常に重要視していますので医療薬に比べると控えめな成分設定になっていると言うわけです

胃潰瘍治療薬

胃酸など消化液は、口から摂取した食物を強力に消化します。仮に胃粘膜に防御因子が無ければ、胃粘膜といえじ無事ではすみません。防御因子が不十分な体制のときに胃酸で粘膜が攻撃されると粘膜は傷つけられます。
 胃潰瘍は、ストレスによって自律神経が正常に動かなくなり、消化液と胃粘膜の防御因子とのバランスが崩れる事が原因と考えられてきました。
通常、胃酸は食物が胃に入ったときに分泌されるのですが、空腹時などに分泌される事もあります。しばしば、空腹時での胃痛、胃酸分泌などがあり、食物を摂れば楽になるという症状も現れます。
 抗コリン剤は、胃の分泌を抑制し、胃の収縮を抑えます。市販の胃潰瘍の薬には、制酸剤と、痛みを抑えるために、ロートエキスなどがよく使用されています。
 胃潰瘍治療薬としての考え方には、胃酸を抑えるということと、胃粘膜の防御因子を増やすことの二つのアプローチとともに、精神的ストレスが原因と考えて精神安定剤の成分の物も開発され、自律神経安定剤も併用されます。
制酸剤 胃酸を抑えるものには、胃酸を中和するものと、胃酸の分泌を抑制するものがあります。一般的に制酸効果のある薬品については上述しました。ここでは、胃潰瘍治療薬(胃炎にも使用するものもあります)を紹介します。
H2ブロッカー従来、胃潰瘍治療薬は、胃酸をコントロールする薬をメインに開発されてきました。胃粘膜を攻撃するものが、主に胃酸であると考えられてきたからです。
 胃からの胃酸分泌をコントロールするものは、自律神経以外に、ヒスタミン、ガストリンなどのオータコイド(体内で少量で、大きな生理作用のある物質で、ビタミン、ホルモンでないもの)があります。
 ヒスタミンは、アレルギーなどときに遊離される伝達物質ですがアレルギーや免疫機能に関与するばあい、ヒスタミンの受容体はH1レセプターというのですが、胃にもヒスタミンの受容体があり、これをH2レセプターといいます。
 胃のH2レセプターにヒスタミンが反応すると、胃酸が分泌されます。そこで胃のH2レセプターにヒスタミンが結合するのを妨害する物質が考えられました。
 これがH2ブロッカーという胃酸分泌抑制剤です、H2ブロッカーは、現在胃潰瘍治療薬としてメインに使用されています。
 シメチジン(タガメットカイロックなど多数)、ファモチジン(ガスター)、塩酸ロキサチジン(アルタット)、ニザチジン(アシノン)、ザンタック(三共)などがあります。
 副作用としては、ショックなどのアレルギー反応、血小板減少、肝障害、便秘、下痢などがあります。
 副作用は、薬剤によって少し違います、頻脈、除脈など心臓に関するもの、女性化乳房、血液障害、幻覚、めまいなどの中枢症状、胃腸障害を起こすものもあります。しかし、抗ヒスタミン剤(H2ブロッカー)は8周以上の長期服用の場合が多く、外来患者の30%近くは胃炎、胃潰瘍であり、そのほとんどの患者に処方されていることを考えると副作用の確率は少ないといえます。
プロトンポンプ阻害剤 胃壁での胃酸分泌は、胃壁の壁細胞からプロトンチャンネルというところから、水素イオンが排出されます。また、プロトンチャンネルと同時に塩素チャンネルからも塩素が排出され塩酸となります。水素イオンの排出の代わりにカリウムイオンが壁細胞に取り込まれて電気的には平衡を保ちます。
 これをプロトンポンプといいますが、このプロトンポンプでは、水素イオンを壁細胞から外に出す酵素を阻害して、水素イオンが排出するのを妨害します。
 プロトンポンプ阻害薬は、最強の胃酸分泌阻害薬ですが、使用できるのは胃潰瘍で8週、十二指腸潰瘍6週までしか使用できません。それ以上の期間の使用は危険とされています。
 副作用は、ショックなどのアレルギー反応、血液障害や肝機能障害などの副作用があります。
抗コリン剤 コランチルなどにも抗コリン剤は配合(塩酸ジサイクロミン)されていますが、胃潰瘍ではあまり使用されなくなりました。胃炎では今でも使用されます。
 コリン作動性神経も、受容体は、アセチルコリン以外の薬物にも反応し、ニコチンに反応してムスカリンに反応しない受容体と、その逆の受容体があり、ムスカリンに反応する受容体をムスカリンレセプターといいます。ムスカリンレセプターを選択的に阻害すると胃酸を分泌抑制します。
 臭化チキジウム(チアトン)や、塩酸ピレンゼピン(ガストロゼピン)などがそれで、これらは、胃酸分泌を刺激するガストリンを抑制する事も知られています。
 副作用は、口渇、排尿困難、動悸などです。
防御因子増強剤 胃壁の防御因子を増強するもので、キャベジン、イサロン、ノイエル、セルベックス、など多数あります。口渇、便秘などの副作用があります。
ヘリコバクター・パイロリ(ピロリ)に対する治療。 従来は、上述のように、胃潰瘍はストレスが原因とするストレス学説が通説でしたが、胃潰瘍の再発率は高く、長時間かけても治療効果があがりませんでした。もちろんストレス学説にいわれるとおりの原因の胃潰瘍もありますが、ピロリ菌を除去することにより、再発率は1年で60%程度なのが10%未満にまで低下した事で、胃潰瘍はピロリ菌の感染症である場合が多いという事が分かりました。
 ピロリ菌は、アンモニアを作る酵素を出し、粘膜の防御機構を破り、胃酸も中和して、ピロリ菌自体が胃酸のある胃粘膜の上で生活できるようにし、またピロリ菌は粘膜溶解酵素も出し粘膜自体も溶かしてしまうといわれています。しかし、今のところ詳しい事は分かっていません。
 具体的に、ピロリ菌を除菌するには、抗生物質を使用します。また、胃内のpHを上げると、抗生物質の効果が上がり、ピロリ菌の活動を抑制するので、最も強力な胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプを併用し、抗生物質は大容量を2~3種類使用します。
 抗生物質は、アモキシシリン、クラリスロマイシンが使用されます。

十二指腸潰瘍と胃潰瘍

体の消化器官として胃から十二指腸へとつながっています。
胃潰瘍という病気の同じ原因で場所が違うものが十二指腸潰瘍です。
ですからその発生メカニズムや症状などはほとんど同じと考えてよいでしょう。
胃の粘膜と十二指腸の腸壁はほとんど同じ構造をしています。
胃液によって胃に穴があくと胃潰瘍になりますし、十二指腸に穴があくと十二指腸潰瘍と呼ぶのです。
胃や十二指腸は非常にデリケートな臓器と言われています。
精神的あるいは肉体的なストレスが加わりますと、すぐに影響を受けてしまいます。
また、ある種の薬を飲むことによって粘膜の働きが阻害されることもわかっています。
そのような状況が続くと胃潰瘍や十二指腸潰瘍になるのです。
その他にもピロリ菌などが原因の場合もありますが、胃潰瘍と十二指腸潰瘍は同じ病気と考えてもいいのです。
潰瘍にならないようにするためには、規則正しい生活をするとか、暴飲暴食をしないとか、野菜をこまめに食べるなどがよいと言われています。
自覚症状があるのであれば、何らかの異常があると考えるべきです。
我慢しながらアルコールを飲むと言ったことは体にとって非常に悪いことです。
アルコールやたばこを控えて、規則正しく生活するようにしましょう。
また、何か異常を感じたならば早めに病院で検査をしてもらうことです。
胃潰瘍も十二指腸潰瘍も早期発見が一番です。
軽いうちであれば投薬のみでよくなってしまいます。
吐血などの症状が出る人はかなり悪化した時と考えてよいでしょう。

食事療法で胃潰瘍を治す

胃潰瘍の治療として食事療法があります。
元々胃潰瘍の原因として暴飲暴食など食生活の乱れがありますから、それを治すことによって胃潰瘍
を治そうという考え方です。
基本的には胃にやさしい食べ物を取ることを心掛ければよいのです。
それほど難しいことではありません。
胃潰瘍の症状は様々ですが、その進行度合いによって治療方法も変わってきます。
初期の段階ならば食事療法で済むこともありますが、それ以降では薬を飲むことやひどい場合は入院しなければならないこともあります。
また、治療が終わった後はまた通常の生活を始めてしまうと、再発する可能性が高いですから、病後の食事にも気を配らなければなりません。
具体的な食事療法について紹介しましょう。
胃にやさしい食物を考える前に胃に悪いものを挙げてみましょう。
まず、脂身の多い物、揚げ物などは胃に負担がかかります。
鶏肉でも皮の部分を食べないとか言った気配りが必要になります。
魚介類は白身魚がお勧めです。
赤身は脂分ですからよくありません。
その他に野菜類をこまめに摂ることもよいでしょう。
胃潰瘍のためのレシピなどがインターネットなどに掲載されていますからそれを参考にしましょう。
糖尿病などのように強い制限をかける必要はありません。
日常生活の中で飲み過ぎ食べ過ぎにならないようにすればよいのです。
食事の欧米化によって肉類や油ものを取る機会が多くなっています。
それによって胃潰瘍になる人も増えてきたのではないでしょうか。

胃潰瘍になったら摂る食事

胃潰瘍になると食べ物に注意しなければなりません。
胃が弱っていても食事は取らなければならないからです。
胃潰瘍のための治療方法として薬を飲むことが一般的です。
この薬は胃液の働きを抑えるものですから、消化力が弱まった状態となります。
ですから、基本的な考えとしては消化し易く胃に負担をかけない食事をすることになります。
もちろんアルコールやたばこ、香辛料などは禁物です。
ダメなものの代表を挙げてみましょう。
肉などの油もの、それから甘いデザートなどがあります。
胃の働きを助けるためによく噛んで食べることもいいですね。
それは健康な人にもぜひやってもらいたいことです。
材料としてオススメのものを紹介しましょう。
まず里芋です。
胃潰瘍の改善の他に肥満予防にも効果があります。
それからキャベツです。
キャベツは胃の粘膜を再生する働きがあると言われています。
また、カリウムやビタミンCが含まれていますから抗酸化作用があるのです。
大根や長いも、バナナなどもオススメです。
インターネットなどで調べてみるといろいろなものがあるようです。
食事は胃潰瘍の患部に直接影響しますから、気を付けておくことが大事です。
胃にやさしい味噌汁を紹介しましょう。
味噌汁自体は直接胃にやさしいわけではないのですが、大根やイモ類を入れることによって消化をよくしてくれるのです。
大根や人参、里芋と言ったものを入れてみましょう。
サイコロ状の豆腐もいいです。

急性胃潰瘍について

胃潰瘍には2種類の形態があります。
急性と慢性です。
急性胃潰瘍はストレスや暴飲暴食などが原因の場合が多いようです。
また風邪薬の服用によって胃潰瘍になることもあります。
胃潰瘍はストレスが原因と言われていたのですが、最近ではそれは全体の中では少ないという統計データがあります。
胃潰瘍の大半は慢性胃潰瘍と言われるものになるのです。
慢性胃潰瘍の場合はピロリ菌が原因であることがわかっています。
ピロリ菌に感染することによって胃の内部にさまざまな物質が生成されます。
それで胃の内膜が炎症を起こしてしまうのです。
その炎症部分に胃酸がかかって潰瘍になっていくのです。
怪我で例えれば傷の上から酢をかけるようなものです。
ピロリ菌は日本人の約半数が保菌者と言われています。
しかし、ピロリ菌がいるからと言って必ず胃潰瘍になるということではありません。
ピロリ菌の感染は子どもの時が一般的です。
そして胃潰瘍の発祥は50代ぐらいの年代なのです。
ピロリ菌による胃潰瘍が慢性と呼ばれる理由はここにあります。
つまり、数十年かかって少しずつ胃潰瘍の原因が作られているということなのです。
ピロリ菌感染から慢性胃炎になります。
そしてそれから委縮性胃炎と呼ばれる状態になります。
そして、その中のある人が胃潰瘍になるということなのです。
急性胃潰瘍の場合はその原因を取り除き、症状を治すことで完治します。
アルコールやたばこを止めることが一番ですね。
規則正しい食生活を送ることが退治なのです。

胃潰瘍とピロリ菌の関係

胃潰瘍の原因としてよく言われることはストレスやアルコールの飲み過ぎがあります。
しかし、それは全体の1割程度と言われています。
それ以外はピロリ菌と呼ばれる菌によって引き起こされる胃潰瘍なのです。
ピロリ菌による胃潰瘍の場合は慢性胃潰瘍と呼ばれます。
胃や背中などの傷みが慢性的にあるという症状です。
特に空腹時にその症状が表れやすいと言われています。
夜中などに痛み出すのです。
ピロリ菌に感染したからと言って必ず胃潰瘍になるということではありません。
胃潰瘍になる前の段階が長い人も多いのです。
最初は慢性胃炎になります。
それが進行すると委縮性胃炎と呼ばれる状態になります。
そしてそれが胃潰瘍や胃がんになるということです。
慢性胃潰瘍の場合はその経過をたどりますが、個人差がありますからどこまで進行するかはわかりません。
慢性胃潰瘍が発病するのは中高年になってからです。
中高年までにピロリ菌に感染する人は8割ぐらいと言われています。
慢性胃潰瘍はその中の2,3%程度です。
また、発病までの期間が長いですから自覚症状も長年の痛みとなります。
治療は胃潰瘍の対処療法を行うこともありますが、ピロリ菌の除去によって抜本的に直すこともできます。
しかし、ピロリ菌の除去のための薬は副作用が強いことや100%の除去ができないという欠点があります。
まずは病院に行って見てもらうことが先決です。
その上でどのような治療をすればよいのかを相談しましょう。
自覚症状だけでは胃潰瘍の診断はできませんから胃カメラを飲むことになるでしょう。

お酒と胃潰瘍の関係

胃潰瘍になる原因としてストレスやピロリ菌がよく言われています。
しかし、アルコールや喫煙も原因としては無視できません。
胃の粘膜を傷めるようなものは何でも悪い影響を与えるということなのです。
香辛料などの刺激の強い食事も胃にはよくありません。
胃潰瘍になってしまったらアルコールはまずあきらめなければなりません。
もちろん適度なアルコールであれば胃潰瘍になることはありません。
過度の摂取が問題なのです。
また、毎日晩酌をしている人も要注意かもしれません。
胃潰瘍は急激になるものではなく、徐々に進行していくものなのです。
アルコールを毎日摂取することで胃の粘膜を継続的に傷め続けることになります。
アルコールを飲んだ時には食生活のバランスが悪くなることも原因です。
アルコールを飲む場合でも野菜を多めにとるとか肉類を控えると言った工夫が必要です。
そうすればアルコールの量が多少増えても胃へのダメージは少ないのです。
アルコールを飲まなくても暴飲暴食をしていると胃潰瘍になってしまうのです。
もちろん胃潰瘍だけがアルコールによる病気ではありません。
その他の病気になる可能性もありますから、くれぐれも過度のアルコールは止めるようにしましょう。
胃潰瘍は一度治っても再発しやすい病気でもあります。
治ったからと言ってアルコールを飲み始めると再発することもあり得るのです。
消化器系の病気は大抵が食事のバランスを保つことによって防ぐことができます。

胃潰瘍を胃酸の調節で治す

胃潰瘍になった時の治療法について紹介しましょう。
だいたいの病院では薬による治療が一般的です。
薬としてはプロトンポンプ阻害剤、H2受容体拮抗剤というもので胃酸の発生を抑えます。
これによって潰瘍はほとんど治るようです。
しかし、根本原因を取り除いていませんから薬を止めると再発してしまいます。
胃潰瘍の再発の原因はピロリ菌だと考えられています。
ピロリ菌を除去しない限り胃潰瘍の完治はないということです。
ですから、胃酸を抑える薬には効果はありますがあくまでも対症療法ということです。
その他の薬として胃の粘膜における血の巡りをよくするために粘膜保護剤が併用されることもあります。
昔は外科の手術によって潰瘍を取り除くと言う治療が行われていました。
それはH2受容体拮抗剤がなかったためです。
それでも胃潰瘍の状態がひどく、大量出血していて内視鏡を使った止血ができないような時には手術が行われているようです。
胃潰瘍の根本原因とされているピロリ菌の除去について説明しましょう。
基本的には薬を使用して菌を死滅させます。
この薬は1週間続けて服用しなければなりません。
その副作用として下痢の症状、湿疹ができることなどがあります。
場合によっては副作用が強すぎで、除菌の治療を中止せざるを得ない場合もあると言われています。
また、この除菌によって実際に除菌できる率は約8割程度です。
ですから、必ずしも確実ではないということですから、必要に迫られない限りはピロリ菌の除菌はしないでよいと考えられます。
もちろん、胃潰瘍になっているのであれば除菌を勧められると考えてください。

胃潰瘍と胃炎の違い

胃炎と胃潰瘍について説明しましょう。
胃の粘膜が損傷を受けた状態を胃炎と言います。
原因としては胃液で胃の粘膜が消化されることによるものです。
軽度の胃炎の場合は胃薬などを飲むことで治ることがほとんどです。
しかし、それを放置しておくと損傷の状態がひどくなっていきます。
そしてそれが海洋状態になった場合に胃潰瘍と言われるのです。
胃炎でも出血を伴うケースもあります。
軽度だからといって安心してはいけないのです。
一般的な原因としてはストレスやアルコール、タバコと言ったものが上げられます。
胃炎の自覚症状としては腹痛や胸やけ満腹感と言ったものです。
痛みが持続するのではなく、食事から2,3時間たったころに痛み出す場合が多いと言われています。
これは食物が胃から腸へと移動する時間帯と考えられます。
したがって胃の中が空っぽになると痛み出すということです。
胃潰瘍は胃炎から症状が進んだものですが、胃に穴があいてしまうこともあります。
その場合には多量の出血を伴ったりしますから、入院しなければならなくなります。
胃の内壁は粘膜層から粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層と何層にもなっています。
それがすべて消化されて穴があくという状態なのです。
何となく想像しただけでも痛そうな気がします。
病院に行って内視鏡などで見てもらうことによって、一目瞭然です。
状況だけでは胃がんの疑いもありますから、内視鏡検査の時に組織を採取してがんの検査を行うことが一般的です。
いずれにしても胃炎の軽い症状の内に治療することが大事です。

胃潰瘍を薬で治療する

胃潰瘍になった時に服用する薬について考えてみましょう。
食べたものは最初に唾液で溶かされて、食道から胃へと送られます。
胃では胃酸などの消化液で分解されていきます。
それから十二指腸で膵液、胆汁などによる分解がなされます。
そして小腸、大腸で栄養分として体内に吸収されるということになります。
口から飲む薬も同じような経路を辿ります。
胃薬と言うものは近代医学の中で大きく進歩したと言われています。
市販されている薬も多いですし、病院でもらうものもあります。
胃潰瘍の原因としてはストレスなどが考えられますが、自律神経が正常に働かないことにより消化液と胃の粘膜のバランスが取れなくなっていると考えられています。
抗コリン剤という薬は胃液の分泌を抑制して胃の粘膜が傷つかないようにするものです。
胃の働きを抑えてその代わりに消化液を補充するというものです。
本来の胃の働きが悪くなっているのですが、食べ物を消化するという活動を止めるわけにはいきません。
そのための胃薬なのです。
そう考えますと胃薬は胃潰瘍を治療しているわけではありません。
それ以上に悪化しないようにしているだけなのです。
胃潰瘍の程度によっては痛みを伴うこともありますから、痛みを抑えるためのロートエキスと言う成分を含む薬もあります。
消化器は自律神経でコントロールされていますが、それはストレスなど精神的な要因によって影響を受けやすいということを意味しています。
日ごろからの規則正しい生活や食生活が胃潰瘍を予防するために有効な手段であるということが言えるのです。