肺がんの症状と検査

肺がんの症状
 肺がんは、症状が出る前に健康診断などで発見されることもありますが、多くは4週間以上続く咳(せき)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器の症状をきっかけに発見されます。
 まれに、胸膜への転移(胸水貯留)や脳転移の症状(頭痛、吐き気、嘔吐)、骨転移(腰痛や胸痛)などで見つかることもあります。
 気管・気管支に発生するタイプの肺がんは、血痰や咳、呼吸困難などの症状が出やすく、早期に発見されることも多いのですが、肺の末梢に発生するタイプの肺がんは、がんが大きくなるまで無症状のことが多く、要注意です。
            検査と診断
 まず肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
 次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
 確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
 喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
 なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
 これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
 また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
 高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。

肺がんの予防

肺がんの予防
 疾病を起こす見込みを増加させるものはすべて危険要因と呼ばれます。;疾病をおこす見込みを減少させるものはすべて保護要因と呼ばれます。
 癌(がん)の危険要因のいくつかは回避することができますが、多くは回避できません。
 例えば、たばこを吸うことをやめることはできますが、親からどの遺伝子を受け継ぐか決めることはできません。
 喫煙と特定の遺伝子を継承することをある種類の癌(がん)の危険要因と考えることができますが、喫煙だけが回避することができます。予防は危険要因を回避し、癌(がん)になる見込みが減少するように制御することができる保護要因を増加させることを意味します。
 多くの危険要因を回避することができますが、危険要因を回避することがあなたを癌(がん)にしないと保証するわけではないことを心に留めておくことは重要です。
 さらに、癌(がん)の特別な危険要因を持ったほとんどの人々は現実に癌(がん)になりません。
 癌(がん)の原因となる要因へ他の人より敏感な人がいます。あなたにとって有効かもしれない癌(がん)を防ぐ方法に関してあなたの医師に尋ねてください。
 肺は呼吸器の一部です。肺の機能は血液から二酸化炭素を排除する一方、酸素を供給することです。
 肺がんは、リンパ節あるいは胸の他の組織(別の肺を含む)に広がるかもしれません。多くの場合、肺癌(はいがん)がさらに骨、脳、肝臓のような身体の他の器官に広がるかもしれません。
 肺がんは米国の男性および女性の癌(がん)死の主要な原因です。
 肺がんは、しばしば疾病のための既知の危険要因に関係しています。危険要因のすべてを回避することができませんが、多くは限定可能です。
          タバコ
研究は、いかなる形式でもタバコ製品を吸うことが肺がんの主な原因であることを示します。環境か受動的なタバコ煙も肺がんを引き起こすことに関連します。ニコチンガム、ニコチンスプレー、ニコチン吸入器のような多くの製品が喫煙を中止するための試みに有用かもしれません。さらに、地域、州、全国的な多くの努力は、喫煙割合を縮小することを支援しました。
        ベータ・カロチン
研究はベータ・カロチン使用は比較的高い強度の喫煙者における肺がんの危険を減少させます。
          化学予防
化学予防は癌(がん)成長を逆転するか、抑えるか、防ぐ特定の自然か人造の薬の使用です。化学予防は活発な臨床の研究の領域です。これはまだ標準治療になっていません。
 肺がんの他の危険要因には石綿およびラドン曝露があります。

肺がんの遺伝子治療とは

肺がんの遺伝子治療とは
 最近のめざましい遺伝子工学の進歩によって,多くの病気が遺伝子レベルの異常によって引き起こされていることがわかってきました.病気の原因となっている『異常な遺伝子』を同定し,代わりに人工的に作った『正常な遺伝子』を外部から細胞内に補充して細胞本来の機能を回復させることによって病気の治療を行うというのが遺伝子治療の考え方です.
 世界で初めてヒトに対する遺伝子治療が行われたのは1990年のことです.対象となったのは,ADA欠損症という病気の4歳の女児でした.これは生まれながらにADAとういう大切な酵素を産生する遺伝子に異常があるために正常なADAが作られず,結果として重症の免疫不全を生じる病気です.米国国立衛生研究所の医師団はこの患者に正常なADA産生遺伝子を投与して効果をあげたのです。
 ADA欠損症のように,体に必要な酵素を産生する遺伝子に生まれつき異常があるような病気(先天性代謝異常症)は正常な遺伝子を投与して酵素を補充するだけで治療効果が得られやすいため,遺伝子治療の良い適応と考えられています.
        がん遺伝子とがん抑制遺伝子
 がんの発生や進行にはさまざまな遺伝子が関わっています。これらの遺伝子はその働きから大きくがん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に分けられます。これらの遺伝子に異常が起こるとがんが発生したり増殖したりします。がんを自動車に例えると、がん遺伝子は自動車のアクセル、がん抑制遺伝子は自動車のブレーキに相当します。すなわちがん遺伝子の異常はアクセルが踏み込まれ自動車が加速した状態、がん抑制遺伝子の異常はブレーキが壊れて自動車が止まらなくなった状態と考えられます。このようにして自動車が暴走するようにがん細胞は増殖していきます。
        
          がんの遺伝子治療
 がんに対する遺伝子治療では,これら遺伝子の異常を同定し,『がん原遺伝子』に異常があればこれを不活化する遺伝子を投与するか,『がん抑制遺伝子』が不活化していれば『正常ながん抑制遺伝子』を投与する,といった方法が基本となっています.また,がん細胞に対する免疫能を強化する目的でがん患者さん自身のリンパ球にある種の遺伝子を組み入れて強力なリンパ球に変化させてから再び体内に戻してがんを攻撃させる方法などもあります。
         小細胞肺がんと非小細胞肺がん
 肺がんには主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があります。治療方法は小細胞がんとそれ以外の肺がんでは大きく異なるため、小細胞がん以外の肺がんを非小細胞肺がんと総称します。非小細胞肺がんは、早期のものでは手術が最善の治療法ですが、不幸にもがんが進行してしまった場合には手術で病巣を切除することは困難です。また抗がん剤などの治療も効きにくい種類のがんです。このがんに対して新しい治療法として遺伝子治療が試みられるようになりました。

肺がんの遺伝と家族性腫瘍

一部のがんでは遺伝的な素因をもとに発症することが明らかになっており、このような腫瘍を「家族性腫瘍」と総称しています。
 この中には(1)1つの遺伝子の変異が原因で発症する単一遺伝子性疾患としての家族性腫瘍症候群と、(2)遺伝子が作るタンパク質の機能に微妙な違いをもたらす遺伝子の変化や複数の遺伝子の変化の相互作用に、環境の要因が影響する多因子性がん素因の2つがあります。
 上記(1)の家族性腫瘍症候群については、診断や治療の面で多くの知見が集積され、臨床の現場に応用されつつあります。一般的に家族性腫瘍症候群の特徴として「若くしてがんに罹患した方がいる」「家系内に何回もがんに罹患した方がいる」「家系内に特定のがんが多く発生している」などがあり、このような家系の方はがんに罹患しやすい体質を持っている可能性があります。
 しかし、血縁者にがんに罹患した方が複数いることだけではご自身ががんに罹患しやすいか否かを判断することはできません。一般に家族性腫瘍の確定診断は遺伝子の検査により行います。
 上記(1)では遺伝性大腸がん(FAPやHNPCC)や家族性乳がん・卵巣がんなど多くの疾患で遺伝子診断を行うことが可能です。一方、(2)の多因子性がん素因については未だ臨床応用されている対象疾患はほとんどありませんが、将来は予防医学の観点から活用される可能性があります。
 例えば同じように喫煙していても肺がんに罹患する人と罹患しない人がいます。これは1つの説明として、喫煙の際に生じる有害物質を代謝する酵素に関する遺伝子の個人差が指摘されています。
 がんは誰もが罹患する可能性のある疾患です。あるがんの発症が遺伝的な要因によるものかどうかを診断することは現在ではまだ難しく、がんの遺伝として一般に取り扱われているのは主に上記(1)の家族性腫瘍症候群です。
 がんの遺伝カウンセリングの現場では、個々の症例に応じて、がんの遺伝に関する情報の提供、遺伝子診断や対策のプランニングなどを扱っています。
 現時点では、臨床に有用な遺伝子に関する情報や遺伝子診断の適応となる疾患はごく限られていますが、治療やがん検診の方法がほぼ確立した疾患もあります。がんに罹患しやすい体質を受け継いでいたとしても、適切な健康管理により治療成績の向上が期待できる可能性があります。

肺がんのいくつかの原因

タバコ。
タバコを吸うことは肺がん(肺癌)の原因となります。たばこにある発がん(癌)物質と呼ばれる有害な物質が肺の細胞に障害を与えます。時間を経て、障害を与えられた細胞はがん(癌)になることがあります。喫煙者が肺がん(肺癌)になる可能性は喫煙開始年齢、喫煙期間、1日に吸うタバコの本数、喫煙者がどれほど深く吸入したかで影響されます。禁煙により、肺がん(肺癌)になる確立は大きく減少します。
葉巻きとパイプ。
葉巻きとパイプ喫煙者は非喫煙者より肺がん(肺癌)になる確立は高いでます。喫煙した年数、パイプまたは葉巻きを1日に吸った本数、どれほど深く吸入したかがすべて肺がん(肺癌)の確立に影響します。吸入しない葉巻きやパイプの喫煙者でさえ、肺、口、および他のがん(癌)の危険が増大します。
環境のたばこ煙。
環境のたばこ煙(environmental tobacco smoke:ETS:他の誰かが喫煙する時の空気の煙)によって肺癌になる確立は増大します。環境のたばこ煙、つまり他人の煙を吸うことは、受動または間接喫煙と呼ばれます。
ラドン。
ラドンは、土と岩石に自然に存在する、見えない、無臭で、無味な放射性の気体です。これは肺がん(肺癌)になる障害を起こす可能性があります。鉱山に働く人々はラドンに被爆するかもしれません、そして米国のいくつかの地域においてはラドンは家に発見されます。ラドン被爆により、すでに肺がん(肺癌)になる危険のある人は、喫煙することにより危険を増大させています。自分の家でラドンを測定できる道具一式が多くの金物屋で入手可能です。家庭のラドンテストは比較的使いやすく、安価です。ひとたびラドン問題が改善されたら、肺がん(肺癌)の危険はなくなります。
石綿(いしわた)。
石綿は、繊維として自然に存在するある群の鉱物の名前で、一定の産業で使われます。石綿繊維は、容易に粒子に分解する傾向があり、空中に浮かび、衣服に付きます。粒子が吸入されると、それらは肺に留まる可能性があり、細胞に障害を与え、肺がん(肺癌)の危険を増大させます。研究により、大量の石綿にさらされた労働者は、石綿にさらされなかった労働者に比べて3倍から4倍肺がん(肺癌)の危険を持っていることが示されました。造船、石綿採掘と製造、絶縁体の仕事、およびブレーキ修理のような産業の労働者は石綿にさらされます。肺がん(肺癌)の危険は、また喫煙する石綿労働者の間でいっそう高くなっています。石綿労働者は、雇用者から提供された保護する機器を用い、薦められる勤務方式と安全方法に従うべきです。
汚染。
肺がん(肺癌)と、ディーゼルおよび他の化石燃料の燃焼の副産物などの一定の空気汚染物質への接触の関係を、研究者は見つけました。しかし、この関係ははっきりと定義されず、さらに研究されています。
肺の病気。 一定の結核(TB)などの肺の病気は、肺がん(肺癌)になる可能性を増大させます。肺がん(肺癌)は、結核で傷跡をつけられた肺の部分にできる傾向があります。
個人歴。
肺がん(肺癌)に1度なったことがある人は、肺がん(肺癌)に1度もなったことがない人に比べて、より次の肺がん(肺癌)になり易くなります。肺がん(肺癌)が診断された後の禁煙により次の肺がん(肺癌)になることが防止されるかも知れません。

アスベスト(石綿)と肺がん

「石綿」は、細い糸へ分離することができ織れうる、多くの強く柔軟な繊維として自然に生じる1群の鉱物に与えられた名前です。これらのファイバーは熱または化学薬品によって影響されず、電気を通じません。これらの理由のために、石綿は、多くの産業の中で広く使用されました。4つの型の石綿が営利上使用されました:
 温石綿Chrysotile 、すなわち白い石綿はアメリカの中で現在使用される石綿の約99パーセントを占める。
クロシドライトCrocidolite、または青石綿;アモサイトAmosite 、これは褐色のファイバーを持っている 。
直閃石Anthophyllite、これは灰色のファイバーを持っている。
 温石綿Chrysotile石綿はその巻き毛状の繊維で、鉱物の蛇紋石族serpentine familyにあります。他のタイプの石綿は、そのすべては棒状のファイバーを持っている、角閃石amphibolesとして知られています。
 石綿繊維の塊は、衣服への大気および杖に浮かぶことができる、小さな粒子から構成されたほこりへ容易に壊れる傾向があります。繊維は容易に吸入され呑み込まれ、重大な健康問題を引き起こすことがあります。
 石綿は、1800年代の終わり以来北アメリカで営利上採掘され使用されました。その使用は第二次世界大戦中に大幅に増加しました。その時以来、それは多くの産業の中で使用されました。例えば、建物および建設業は、断熱、耐火材料、防音と同様にセメントとプラスチックを強くするためにそれを使用します。造船業は、蒸気缶、蒸気管、湯管を断熱するために石綿を使用しました。自動車産業はブレーキ片およびクラッチ当て物で石綿を使用します。5,000を越える製品が石綿を含んでいるか、石綿を含有したものを持っています。
 1部を以下にリストします。
 水道設備および下水配管、屋根ふき材および羽目板、電線、防火材料、電気的な配電盤と部品、居住・産業建築資材のために使用された石渡セメントシート、およびパイプ製品。
 クラッチ表面、自動車のためのブレーキライニング、ガスケット、産業摩擦用品のような摩擦製品。
 製品は、テーブル当て物および熱保護マット、熱および電線絶縁、飲料用の産業フィルタおよびシート床張り材料のような石綿紙の材料を含んでいます。
 パック部品、床および屋根葺き用資材および熱と耐火性織物(毛布とカーテンを含んで)のような石綿織物製品。
天井および床タイル、ガスケットとパッキング、絵の具、コーティングおよび接着剤、コーキングおよびパッチング・テープ、ガス燃料の暖炉で使用される人工灰と残り火、プラスチックを含む他の製品。
 1970年代の終わりに、製品が環境へ過量の石綿繊維を放出したので、米国消費者製品安全委員会は、壁板パッチング合成物およびガス暖炉中の石綿の使用を禁止しました。さらに、石綿は、電気ドライヤーのメーカーによって自発的に中止されました。1989年には、米国環境保護局(EPA:Environmental Protection Agency)が、石綿の新用途をすべて禁止しました、1989に先立って確立された用途はまだ認められます。EPAは、損傷した石綿を調べて、かつ石綿の除去あるいはそれをすっかり覆うことにより接触を除去するか、縮小する学校制度を要求する規則を確立しました。
 石綿の危険に関する広範囲の公衆の関心と結び付けられた規制措置は、米国の石綿使用は重要なことに毎年下落しました。石綿の国内の消費は総計1973年に約719,000トンまでになりました。1999年までに約15,000トンまで落ちました。石綿は現在ガスケットの中で最も頻繁に屋根ふき材と摩擦の製品の中で使用されます。
     石綿への接触の健康上有害なものは
 石綿への接触は、いくつかの重大な病気の危険を増加させるかもしれません。
アスベスト症Asbestosis:息切れ、咳、永久の肺障害を起こす慢性肺疾患
肺癌
胸膜中皮腫ー胸と腹の表面を覆う薄膜の比較的まれな癌
喉頭、中咽頭、胃腸管、腎臓のような他の癌。
 
 ほとんど誰でもいつか生活の間に石綿にさらされます。しかしながら、ほとんどの人々はそれにより病気になるわけではありません。石綿から病気になる人は、多くの場合材料と直接接触あるいは実質的な環境上の接触を通じた仕事で、通常定期的にさらされる人々です。
 1940年代の初め以来、何百万ものアメリカの労働者が石綿にさらされました。石綿のほこりからの健康上有害なものは、造船貿易、石綿採鉱および製粉業、石綿織物および他の石綿製品の生産、建築業での耐熱仕事、ブレーキ修理および様々な他の貿易にさらされた労働者に認識されました。倒壊労働者、石壁除去剤、消防士も、石綿ほこりにさらされるかもしれません。政令や仕事慣習の改善の結果、今日の労働者(以前にさらされていない)は、過去にさらされたより危険に直面することが少なそうです。
 より強い露出およびより長い露出によって労働者への危険が増加することは知られていますが、調査者は短期の露出でも個人に石綿に関連した疾病があるのを見つけました。一般に、石綿に関連する疾病になる労働者は、彼らの最初の露出の後に長い間病気の兆候を示しません。石綿に関連する徴候が起こるために10~40年かかることがあります。
 石綿に極度にさらされた労働者の家族が中皮腫を起こす、危険が増加するというある証拠があります。この危険は、労働者の靴、衣類、皮膚および髪の毛により家へもたらされた石綿ほこりへの接触に起因すると思われます。この種の発露出は傍職業露出?(paraoccupational exposure)と呼ばれます。これらの露出を減少させるために、石綿労働者は、仕事場を去る前にシャワーを浴び、衣類を交換することを通常要求されます。
 石綿にさらされたすべての労働者がそれらの露出と関係する疾病を起こすとは限らないでしょう。実際、多くの人が悪影響を受けないでしょう。
 それが、大気へ線維を放出するような方法で破損されないし妨害されない(例えば、のこぎりやドリルを使うかことによって)限り、壁、タイルおよび管のような完成品へ接合される石綿は、健康に危険をもたらしません。石綿粒子が自由で吸入される場合、さらされた個人は石綿に関連する疾病を起こす危険にひんしています。一旦これらの繊維が身体組織へ入れば、それらはそこに無期限にとどまるかもしれません。
 石綿に関連する疾病になる危険は、発見が生じた産業のタイプおよび発見の程度に応じて変わります。さらに、異なるタイプの石綿繊維は異なる健康の危険に関係しているかもしれません。例えば、いくつかの研究の結果は、石綿の角閃石が、温石綿より、肺癌、石綿肺症、とくに中皮腫を引き起こしやすいと示唆しています。それでも、どの繊維も無害であると考えることができません。そして、適切な安全対策は石綿を用いて仕事をする人々によって常に行われるべきです。
 多くの研究が、喫煙および石綿発見の組み合わせが特に危険なことを示しました。石綿にさらされる喫煙者は、非常に肺癌の危険が増加します。しかしながら、石綿露出と喫煙を組み合わせても、中皮腫の危険を増加させません。
 禁煙が石綿に露出する労働者の肺癌の危険を縮小するだろうという証拠があります。人生の間のいつでも、仕事で石綿にさらされたか、さらされたかもしれないのではないかと思った人は喫煙してはなりません。喫煙しているなら、禁煙するべきです。
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 誰が診察を受ける必要がありますか。
 家族接触によって仕事中に、あるいは家で石綿ほこりにさらされた(あるいはそれらが露出されたのではないかと疑問に思う)個人は、経験およびどんな徴候も医師に知らせるべきです。石綿繊維は、尿、糞便、粘液あるいは肺から洗い出された資料の中で測定することができます。胸部レントゲン写真を撮ることや肺機能検査を含む徹底的な身体検査が勧められるかもしれません。胸部レントゲン写真を撮ることは、肺の石綿繊維を発見することができない、しかし、石綿露出に起因するどんな肺の変化も識別することができることに注目することは重要です、胸部レントゲン写真の解釈には、石綿に関連する疾病のレントゲン写真の診断に経験を積んだ専門家支援が要求されるでしょう。他の検査もさらに必要かもしれません。
 前に注意したように、石綿に関連する疾病の徴候は露出後何十年後も明白にならないかもしれません。次の徴候のうちのどれかが出現した場合、身体検査はすぐに予定されるべきです:
息切れ
咳あるいは咳パターンの変化
肺から咳をして出た血痰
胸か腹の痛み
呑み込むのが困難、あるいは長引くしわがれ声際
著しい体重減少

肺がん 腫瘍マーカー

肺がんの腫瘍マーカーはある型のがんを持った患者さんの血液、尿、身体組織中に、正常より高い量にしばしば検知することができる物質です。
 腫瘍マーカーは、腫物自体によって、あるいは肺がんの存在やある良性の状態で身体によって生産されます。
 この事実表は、血液で見つかったいくつかの腫瘍マーカーについて記述します。
 レントゲン写真を撮る、あるいは他の検査を施行した時に、いくつかの型のがん(癌)の発見や診断するための、腫瘍マーカー値の測定は有用でありえます。
 しかしながら、腫瘍マーカー値の測定だけでは次の理由のためにがんを診断するのには十分ではありません:
 腫瘍マーカー値は良性の状態で上昇することがあります。
 腫瘍マーカー値は肺がんを持ったすべての人、特に病気の初期段階で上昇するとは限りません。
 多くの腫瘍マーカーは特別の型のがんに特有ではありません。腫瘍マーカーの値は、複数の型のがんで上昇することがあります。
 肺がん診断における役割に加えて、腫瘍マーカー値は医者の適切な治療計画を補助するために治療前に測定されることがあります。
 いくつかの型のがんでは、腫瘍マーカー値が、病期を反映し、病気が治療にどれくらいよく効くかを予測することに役立ちます。
 患者の治療に対する効果を監視するためにも、腫瘍マーカー値は治療中に測定されるかもしれません。
 腫瘍マーカー値が下降するか正常に戻る場合、それはがんが治療にうまく効いていることを示すかもしれません。
 腫瘍マーカー値が上昇する場合、それはがんが成長していることを示すかもしれません。最後に、治療が終わった後、、再発を調べる経過観察の一部として腫瘍マーカー値の測定は使用されるかもしれません。
 現在、腫瘍マーカーの使用は主に、がんの治療に対する効果を評価し、再発を発見することです。科学者は、がんの早期発見と診断における潜在的な役割ばかりでなく、腫瘍マーカーの前述の用途も研究を続けています。

肺がんの放射線治療とは

放射線療法は放射性物質から出るγ線や大型の加速器により人工的に作り出したX線などをがん細胞に照射することによって、がん細胞に損傷を与え、がん細胞を死滅させる治療法です。基本的に放射線が照射された範囲にだけ治療効果が及びます。
 放射線療法は局所療法であるため肺がんの大きさが小さく、腫瘍が一部分に限られている場合には有効ですが、転移が拡がっている場合などには適応となりません。
 放射線療法は手術と異なり患部を切除することがありませんので臓器の機能を温存することができたり、比較的短時間で外来でも治療ができたり、副作用も比較的少ないなどメリットがあります。
 放射線治療の副作用のうち治療後数ヶ月以上経過してから現れるものの方がより注意が必要で、同じところに二度照射すると副作用の頻度が増し、放射線治療の効果よりも副作用の方が強く現れるため、一部の例外を除いて一度放射線照射を行ったところには再照射しないのが原則です。
    肺がんの放射線治療の目的は2通りある
 肺がんの治療において放射線療法の目標とするものは大きく分けて2通りあります。
 一つは、肺がんを積極的に治療するために行うもので、手術が難しい患者さんに放射線単独で治療を行ったり、抗がん剤との併用による放射線化学療法を行ったり、あるいは手術前・手術後に放射線治療を行うなどの方法があります。
 放射線治療は一般に細胞分裂が盛んなほど効きやすい傾向があります。
 特に小細胞肺がん(小細胞肺癌)では放射線化学療法により腫瘍縮小効果が期待できます。
 一方、非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)は放射線治療に対する反応はあまり良いとは言えません。
 肺がん治療における放射線治療の二つ目の目的は痛みや神経症状を和らげるために行う緩和的放射線治療です。
   肺がんの放射線治療(積極的な治療)
 肺がんを積極的に治療するために行う放射線治療法には、からだの外から放射線を照射する「外部照射治療」や、からだの中から放射線をかける「密封小線源治療」、陽子線などを利用した「粒子線治療」などがあります。
 骨転移・脳転移への放射線療法-肺がんの緩和的放射線治療
肺がんの骨転移や脳転移に伴う痛みなどの症状を和らげるために放射線による症状緩和治療が行われることがあります。
 肺がんが骨転移(転移性骨腫瘍)や脳転移(転移性脳腫瘍)などをきたした際、転移巣に対する放射線治療の主な目的は痛みや神経症状のコントロールになります。
 肺がんの骨転移(転移性骨腫瘍)に対する放射線治療
肺がんが骨に転移すると激しい痛みを感じますが、放射線をかけることで痛みを和らげることが期待できます。
 またもろくなった骨を安定させ骨折対策や脊髄の圧迫による麻痺などの神経症状をコントロールすることも目的となります。
 肺がんの骨転移は頚椎や胸椎、腰椎、骨盤骨、肋骨、胸骨、手足の骨(四肢骨)、頭蓋骨などに多く発生します。とくに頚椎や胸椎、腰椎に転移した場合は脊髄ががんによって圧迫されるため強い痛みを感じたり、神経が麻痺することがあります。
 また、普通ならば骨折することのないような弱い衝撃でも骨折してしまうことがあります。
 骨転移(転移性骨腫瘍)に対して放射線をかけることで痛みが緩和されたり、もろくなった骨を安定化させ骨折が予防できたり、神経症状が改善されたりします。
  肺がんの脳転移(転移性脳腫瘍)に対する放射線治療
肺がんの脳転移に対する放射線治療では、頭痛や吐き気、嘔吐、ふらつき、歩行困難、視力の異常などの症状緩和が目的となります。
 転移は脳の中のどこにでも起こる可能性があり、大きさや数も様々ですから、治療法の選択肢もいくつかあります。
 全脳照射は脳全体に放射線をかける治療法で脳のいろいろな所に転移がある場合などに行います。手術で腫瘍を摘出した後に放射線を照射する方法もあります。また、リニアック装置やガンマナイフによって多方向から放射線を集中してかける治療法も行われています。
       放射線療法の副作用について
 正常な細胞に放射線が照射されると正常な細胞がダメージを受け副作用が出ることがあります。副作用には治療中又は治療直後にでるものと、半年~数年後にでてくるものとがあります。
 放射線治療による副作用が現れるのは照射した部分に限られますので、肺がんの場合には、頭髪が抜けたり、吐き気やめまいが起こることはほとんどありません。
 数ヶ月以内に現れる副作用としては、皮膚が日焼けしたときのように赤くなることがあります。皮膚が弱くなっているため刺激に弱くなります。他に皮膚がカサカサしたり、黒ずんだりすることもあります。また倦怠感を感じることもあります。

肺がんの検査

肺がんの検査は目的によって以下の3つに分類されます。
 肺がんの疑いがあるかを調べる検査
 肺がんを確定する検査
 肺がんの進行具合を調べる検査
 

 肺がんの疑いがあるかどうかを調べる検査
 胸部単純X線検査(レントゲン検査)、胸部CT検査(CTスキャン検査)、胸部MRI検査など<肺がん(肺癌)の画像検査>と、血液を採取して調べる<肺がん(肺癌)の腫瘍マーカー(血液検査)>があります。
 肺がんを確定する検査
肺がん(肺癌)の判定を行う方法には、細胞診と組織診の2種類があります。細胞や組織の一部を採取して調べるこれらの検査を生検(バイオプシー)といいます。
細胞診には喀痰細胞診や擦過細胞診、気管支鏡検査、経皮的肺穿刺検査などがあり、細胞の一つ一つを顕微鏡で観察してがん細胞があるかを判断します。
組織診は検査や手術で採取した組織を顕微鏡を使って調べる方法で細胞の大きさや形、並び具合などを総合的に調べる方法です。
 肺がんの進行具合を調べる検査-病期診断
 肺がんが確定した後は、どの程度進行した肺がんであるのか、リンパ節転移の有無や肺内転移、肝臓転移、副腎転移、骨転移、脳転移など転移があるのか・ないのかを調べることが重要になってきます。
 肺がんの治療方法を決定する過程で、肺がんが肺内にとどまっていて手術適応となるのか、肺の外に進行していて手術が適応とならず抗がん剤の治療や放射線の治療を行う必要があるのかを判断することはとても重要です。
 肺がんの病期(進行の程度)を調べる検査として、胸部CT検査や腹部CT検査、超音波検査(エコー検査)、骨シンチグラフィー、PET検査、脳のCT検査やMRI検査などがあります。

肺がんの特徴と発生原因

肺がんの統計
 肺がん患者数は著しく増加しています。
 日本人男性のがんによる死因の第一位は長らく胃がんでしたが、1993年に肺がんの死亡数が胃がんの死亡数を抜き第一位となりました。女性の場合は胃がん、大腸がんに続いて第3位になっています肺がん (肺癌)死亡数は増加の一途を辿っており、年間死亡者数は5万人を超えています。
 欧米先進国と比べて禁煙対策が遅れている日本では、今後も肺がんの死亡者数がますます高くなっていくことが予想されます。
       肺がんの治療成績が芳しくない理由
 死亡者数が多いのは、患者数が増えていることも一因ですが、それ以上に治療が難しい(難治がん)であることが大きな理由になっています。
     治療成績が良くない理由としては
 肺がんは自覚症状に乏しいため、早期発見が難しい
 肺がんは進行が早い
 肺がんは有効な治療法が限られている
などが挙げられます。
 肺がんになる人は年々増え続けていますが主な原因としては、喫煙になります。本人がタバコを吸わなくても周りの方が吸っているためにおこる受動喫煙も大きなリスク要因となります。
 肺がんの種類(組織分類)肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大きく分類される
 肺がんは、がん組織で分類すると非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2種類に大きく分けられ、組織型の違いにより治療方法も異なってきます。発生頻度が高いのは非小細胞肺がんで、肺がん全体の80%以上を占めます。
 非小細胞がんは「肺腺がん」「肺の扁平上皮がん」「大細胞肺がん」などの組織型に分類されます。
 非小細胞肺がんはごく早期に発見して手術すれば治癒する可能性はありますが、手術後再発・転移した場合や、手術が出来なかった場合には、抗がん剤や放射線治療は効きにくい性質を持っているため一般には治すことは難しくなります。
 これに対して、「小細胞肺がん」は、小さな細胞が密集して燕麦のように見えるため燕麦細胞がんとも呼ばれています。
 非常に進行が早く脳やリンパ節、肝臓、副腎、骨などに早い段階で転移し手術ができないことがほとんどです。また、手術をしても再発率は高くなります。小細胞肺がんは肺がん全体の15%~20%程度を占め、患者さんのほとんどは喫煙者です。
 抗がん剤や放射線治療は非小細胞肺がんに比べて効きやすいのですが、一時的に進行を抑えるのがやっとで、再発・転移しやすく予後は悪いです。

肺がんの再発と肺がんの転移

肺がんは初回治療後に再発することがあります。また、肺がん(肺癌)の診断時点で既に肺内転移や肝臓転移、副腎転移、骨転移、脳転移など遠隔転移していることも珍しくありません。
 小細胞肺がん(小細胞肺癌)は極めて進行の早いタイプのがんであり、がんが見つかった時点で既に全身に転移していることが多いという特徴を持っています。
 非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)も進行が早く、自覚症状にも乏しいため肺がん(肺癌)が見つかったときにはリンパ節転移や他の臓器に転移していることも少なくありません。
 反対側の肺や肝臓、副腎、そして骨や脳など原発巣の肺がんから離れた臓器に転移した場合を遠隔転移といいます。
 
      遠隔転移した肺がん(肺癌)の治療
 肺がんの転移先としては、リンパ節、肺の別の場所、肝臓、副腎、骨、脳などが主になります。
 肺から離れた肝臓、副腎、骨や脳にがんが転移するのは、血液やリンパ液の流れにがん細胞が乗ってそれらの臓器に運ばれ、増殖したものになります。
 肺内転移や肝臓転移、骨転移、脳転移などの症例では手術によってがんを切除しても、全身を血液やリンパ液の流れに沿ってがん細胞が回っているため、他の部位にがんが出来てしまいます。手術は体に大きな負担を掛けますから、一部の例外を除いて遠隔転移した肺がん(肺癌)は手術をしません。
 肺転移(転移性肺腫瘍)や肝転移(転移性肝腫瘍)、副腎転移(転移性副腎腫瘍)骨転移(転移性骨腫瘍)、脳転移(転移性脳腫瘍)など遠隔転移を有するケースでは主に全身治療である化学療法(抗がん剤)が治療の中心となります。他に症状緩和を目的として放射線治療が行われることもあります。
 遠隔転移した場合でも、最初にできた肺がんと同じ性質を持っているため、肺がん治療に使用する抗がん剤を用いて治療を行うことになります。
 肺がんの予後を改善する方法遠隔転移した肺がん治療には限界があります
 肺や肝臓、副腎、骨や脳などに転移した進行肺がん(肺癌)は治癒不可能な疾患であり、治療の目的は症状の緩和にあるとがんセンターや大学病院では考えています。
 しかし、実際には遠隔転移した人でも生活の質を保ちながら、人生を楽しみながら5年、10年と生活を続けているケースも珍しくはありません。