転移性肺がんとは

転移性肺がんとは
 大腸がんや腎がんの細胞は血液に入り他の場所に移動して、そこで成長を開始します。これが転移(てんい)です。がんの治療が複雑で難しいのは転移を起こすためです。
 がん細胞は血液に入り心臓に戻ります、その後肺に入ってガス交換を行い、今度は全身に流れていきます。がん細胞の多くは肺を通過するので、肺への転移がしばしば経験されます。これが転移性肺がんです。
 ここで重要なのは、大腸がん細胞は肺に転移しても肺がん細胞にはならないことです。大腸の細胞ががん化してがん細胞になるのですが、肺に移動しても肺の細胞に変化するわけではありません。これは日本人の夫婦がアメリカに移住して、子供が生まれると日本人の子供が生まれることを考えると理解しやすいでしょう。
        転移性肺がんのでき方
 大腸がんや腎臓がんのがん細胞は、がんから剥がれてリンパ管に入り流れてリンパ節に達し、リンパ節転移を起こします。また、がん細胞はがんから剥がれて血管に入り血液とともに体内を流れ、体の他の場所に転移を形成します。といっても実際、がん細胞がリンパ管や血流に乗って流れていっても、環境が変わるので生き延びるのは難しいです。しかし、多くのがん細胞が流れていれば、中には生き延びて成長するがん細胞もいるのです。
 体にある血液は心臓に還流し、その後、肺に流れ込んでガス交換を行い心臓に還ります。がん細胞が血液に混じって肺に達して生育すれば、肺に転移性肺がんが出現します。
        手術後の転移性肺がん
 例えば、大腸がんの手術後2年目に転移性肺がんが起きたときのことを考えてみます。大腸がんはすでに手術を終わったので、大腸がんは存在しません。この状態で大腸がんの転移が突然肺に発生するのではありません。大腸がんの手術を受けた時点に、すでに肺に小さな転移性肺がんがあったと考えられます。転移性肺がんがあっても、胸部レントゲン検査や胸部CT検査などで転移性肺がんが発見されなかったのです。このような場合は、“大腸がんが肺に再発した”と表現しますが、実際は“当時は発見されなかった転移性肺がんが、今回は増大して発見された”ということなのです。