新しい肺がんの治療

分子標的治療
 1980年ころから急速に進歩した分子生物学によって明らかにされてきたがん細胞の増殖・浸潤・転移などの生物学的特徴を裏付ける遺伝子とその蛋白質を,標的とした治療戦略のことです。
 肺がんではイレッサ(ZD1839)が,最も注目されています。
  EGFRは,細胞膜表面に存在する上皮増殖因子(EGF)のレセプターのことで,イレッサはEGFRの特異的チロシンキナーゼ阻害剤です。
 2002年の夏から市販されるようになりましたが、従来の抗ガン剤が無効な例に対して、20%程度の腫瘍縮小、50%程度の症状緩和がもたらされます。
 また、特に日本人の女性の腺がんに限ると、50%程度で縮小がおこると報告されています。
  その他,イレッサと同様にEGFRを標的としたタルセバやモノクローナル抗体のC225やEGFRと相同性を有するHER2/neuに対する抗体で乳がんの治療に用いられているハーセプチンや数種類の血管新生阻害剤など有望な治療薬の卵があります。
           免疫治療
 肺がんに対して標準的治療として確立したものはありません。現在,研究が進んできています。
          遺伝子治療
 まだ,一般臨床の前段階のものです。p53という腫瘍抑制遺伝子をウイルスベクターに組み込ん
でがん細胞に導入します。
         光線力学的治療
 太い気管支に存在する小さな早期がんに対して,腫瘍親和性光感受性物質(Photofrin)を投与し,出力の弱いレーザーでがんを選択的に壊滅させます。
       重粒子線治療,陽子線治療
 元来,物理学研究用の大型加速器から得られる陽子線や重粒子線をがんに照射する治療法です。陽子線や重粒子線は,がん病巣にその効果を集中でき、周囲の組織に強い副作用をひきおこすことなく、十分な線量を照射することができます。