手術の合併症の予防

今日では医療技術が発達したおかげで、胃がんの手術に伴う危険性もかなり低くなっています。 しかし、手術のあとには、まれに身体に好ましくない状態が生じることがあります。手術がもとで起きる病気を「術後合併症」と呼びます。薬でいうところの副作用に相当します。
 胃がんの手術後、約1~2週間のあいだに発症し、多くの障害が発熱を伴っています。合併症の頻度は、病院や医師の技量、経験によって異なります。また、患者さんの年齢や持病も影響してきます。
さまざまな合併症
 肺炎
 肺の中に痰が溜まりやすくなると、細菌に感染しやすくなり、肺炎を患ってしまいます。とくに高齢の患者さんにみられます。ずっと寝たままの状態はよくないので、できれば少し体を動かして予防するようにしましょう。
 膵液ろう(すいえきろう)
 膵臓の分泌液である膵液が漏れている状態で、感染症を引き起こして発熱します。胃の切除の際に、膵臓の一部を取り除いた場合などに発生します。
 縫合不全(リーク) 
 胃や腸を縫い合わせた縫い目がほころびて、切除した後の消化管をつないだところから、消化液や飲食物が漏れ出すことです。治すためには、飲食物を一時的に摂らないようにしなければなりません。ただし、重症の場合には再手術をして、消化液を体外に排出し、腹腔内の洗浄をする必要があります。
 創感染
 おなかの手術創が化膿して、腫れて痛みが出たり、熱を持ったりします。皮膚を縫い合わせている糸をはずして傷口を開くと、たまった膿を出すことができます。
 腸閉塞
 開腹して腸が外気に触れると、腸の働きが悪くなります。ガスや便がたまって、おなかの張り、吐き気・嘔吐などの症状があらわれます。通常は時間の経過とともに回復しますが、症状が長く続くような場合は、たまっている腸液やガスを抜く治療が必要になります。
 術後の回復は早期離床がポイント
 手術後の合併症は、ほとんどが早期離床をこころがけることによって予防することが可能です。痛みでつい寝てしまいがちになりますが、少し寝返りを打ってみたり、少しずつ歩いてみることが大切です。
立ち上がると、横になっているときよりも深い呼吸ができるようになり、肺に痰もたまりにくくなります。これは肺炎の防止だけでなく、腸の機能回復にも役立ちます。
禁煙を続けることは言うまでもありません。喫煙者は粘り気のある痰が出やすいために、術後の回復の早さにも大きな影響を与えています。

入院の前に確認すべきこと

胃がんの手術の前には、きちんと十分な説明を受けて納得してからのぞむことが大切です。患者さんの問いかけには、医師は必ず丁寧に説明してくれるはずです。
手術には体にも多くの負担がかかり、可能性はごくわずかですが命を落とすことも考えられます。がんをそのまま放置しておく危険性よりかははるかにましですが、自分が受ける手術のことをよく知っておくのは無駄にはなりません。
手術にもメリット・デメリットがありますが、三者の間で十分な話し合いをもつことが重要です。三者とは、医師、患者、患者の家族を指します。
医師は、胃がんの状態、患者の状態などから判断して、最も適した治療方針を提案します。患者は、胃がんの診断は告知されているはずなので、積極的に知ることで治療に前向きに取り組めるようにします。家族は、患者の病状や治療方針を理解することで、精神的な支えになります。
医師に確認しておきたい事項
入院日数、入院費用
具体的な治療の内容
行う治療の目的について
他に受けることのできる治療法はないか
がんの病態についての説明
再発の危険性はどれくらいあるのか
術後の合併症、副作用とその頻度
術後の生活にはどのような影響が出てくるのか

 万が一、医師がすすめる治療法に納得ができないという場合には、まずは十分な説明を受けるようにしましょう。納得ができない理由は細かく述べて、医師に正確に伝えましょう。
どんな治療法を受けるのかを決める最終的な決定権は、医師ではなく患者側になります。

進行がんには拡大手術の方法も

胃がんは進行するにつれて、近辺のリンパ節だけでなく遠くのリンパ節へも転移していきます。胃の周囲にある臓器へも浸潤していくこともあります。そこで、胃の切除だけではがんを治療できない場合には、周辺臓器の一部や、第3群リンパ節まで取り除くことが検討されます。これを拡大手術と呼びます。
ただし、切除範囲が広くなるということは、その分身体にかかる負担も尋常ではなくなります。かえって体の状態を悪くする可能性もあるために、拡大手術はよく検討しておこなわれます。
 胃と共に切除される可能性のある部位
 脾臓(ひぞう)
 脾臓は、古くなった赤血球や白血球を処理する機能をもつ臓器です。成人の場合には、切除してもとくに体に問題はないという報告がありますが、取らないほうがよいという見方もあります。しかし、がんが浸潤している場合には切除はやむを得ません。
 膵臓(すいぞう)
 膵臓の切除は、膵尾部(すいびぶ)という箇所を切除する方法が取られてきました。ただし、最近では合併症のことを考慮してなるべく切除は避けられています。
 第3群リンパ節
第2群リンパ節に転移が確認される場合には、腹部の大動脈の近くにある第3群リンパ節を切除することがあります。ただし、リンパ節の切除は、術後の回復が困難になる可能性があることや、技術的に難しい面もあり、その効果もはっきりとは解明されていません。
他に切除される部位には、十二指腸、胆管、大腸の一部、肝臓の一部などがあります。いずれも高度の進行胃がんの場合に検討されます。

転移の可能性が低ければ縮小手術

縮小手術とは、定型手術よりも胃の切除範囲を狭くしたものです。施行するにはいくつかの条件がありますが、術後の負担や後遺症が軽くなります。消化機能に及ぼす影響が少なくなるので、食生活も守ることができます。
定型手術→縮小手術へ移行するには?
 縮小手術でがんの根治が期待できるのは、早期胃がんであり、病巣が2cm以下の場合に限られます。
リンパ節郭清の範囲を小さくする
リンパ節を切除するリンパ節郭清は、第2群リンパ節の一部を切除することなく残すことができます。これはリンパ節転移の可能性が低い場合におこないます。
胃の局所切除
 ごく早期の胃がんで、リンパ節に転移している可能性がほとんどないと考えられる場合には、胃のごく一部のみを切り取る「局所切除」も可能になります。また、内視鏡では切除しにくい場合もおこなわれることがあります。腹腔鏡などが使われます。
ごく一部の切除なので、胃の機能はほぼ100%保たれますが、リンパ節郭清がおこなえないという欠点もあります。このため、がんが再発する危険性も考えられます。
 幽門保存胃切除
 胃の入り口側と胃の出口である幽門を残す方法です。幽門神経(幽門の開閉をコントロールしている神経)を残すので、胃の排出機能は保たれます。施行条件は、胃の中心部に発生した早期胃がんで、幽門にリンパ節転移がみとめられない場合に限られます。
このように縮小手術は、再発のおそれのない早期胃がんに限られます。再発の危険性を排除するために、手術が適応できるかは慎重に決定されます。

胃とリンパ節を切除する定型手術

胃がんの手術で、これまでにもっとも多くおこなわれてきたものが定型手術です。がんは目に見える病変だけでなく、周囲の細胞にも潜り込んでいることがあります。がんの病巣を取り除いただけでは、がんを見落としてしまい、再発する可能性もあります。
そこで、定型手術では、まず胃を2/3以上切除していきますが、これに加えて、胃の周りのリンパ節も取り除くという方法がとられています。リンパ節には2種類あり、胃に接している第1群リンパ節と、胃に流れ込む血管に沿っている第2リンパ節があります。切除は両方おこなわれます。がんの再発を防ぐためには、このような切除が必要になるのです。
 胃の切除部位のタイプ
 胃を切除する範囲は、がんの部位、転移の有無、浸潤の深さから決定されます。
 噴門側胃切除術
胃の入り口(噴門)の近くに発生した、早期の小さな胃がんの場合におこなわれます。胃の機能はある程度は残すことができます。
 幽門側胃切除術
胃の出口(幽門)から半分程度を切除します。胃の噴門と中心部は残すことができますが、幽門は切除されます。
 胃全摘術
がんが進行した状態で、胃の全体に広がっていた場合や、膵臓の周囲のリンパ節に転移が認められる場合には、胃を全部摘出することになります。

胃がんの内視鏡的切除

胃がんの内視鏡的切除
 早期発見できた胃がんのなかには、内視鏡で切除をするだけで治療が期待できることもあります。術後の副作用や障害もほとんどないため、まっさきに検討される治療法です。
 内視鏡的切除が可能な条件
がんの大きさは2cm以下
・潰瘍が発生していない
・粘膜層内に限局している
・胃がんの組織は分化型
(分化型・・・周囲の組織に構造が近いもの)
以上のような条件を満たしていれば、内視鏡的切除で根治が可能になります。ただし、早期胃がんのなかでもリンパ節転移が起こっている場合には、切除のみでは再発する危険性があります。
 病巣の組織を調べて、がんが予想以上に深かったり、広がっていた場合も内視鏡は使われません。このようなときは通常の開腹手術をして、胃を取り除くことになります。
 内視鏡的切除の手順
まずは、胃の粘膜下層に注射針をつけた内視鏡を使って生理的食塩水を注入していきます。これは病巣をふくらませるためです。
次に、病巣にスネアをかけていきます。
続いて、高周波電流を流して、粘膜と粘膜下層を焼ききります。
最後に、切除した病巣を取り出して完了です。
取り除いた病巣は組織検査にかけられます。粘膜内にしかがんがなかった場合は、経過を観察していきます。その後に開腹手術をするかどうかは、医師と相談して決めていくことになります。一方、がんが粘膜下層まで達していた場合や、リンパ管・血管内にがん細胞が見つかった場合は、手術を受けることになります。手術は本人の体力をみてから慎重に決定されます。

胃がんは手術で治すのがメイン

胃がんは手術で治すのがメイン
 がんというものは、放置しておくとどんどん増殖してしまう一方であり、それを防ぐためには、がん細胞を体内から取り除くことが一番の方法です。胃がんの場合、手術によりがんの病巣を取り除いてしまうのがもっとも確実になります。
進行型のがんには転移もありますが、手術により周囲の組織を含めて取り除くことが有効な手段になります。病巣のまわりには、目に見えないほどの小さながん細胞が散らばっている可能性があるためです。
手術の際には、取り除く範囲と後遺症の軽さのバランスも大切になってきます。胃を切除しても決定的なダメージは受けませんが、切除する範囲が大きくなればなるほど、それだけ手術後の負担も重くなります。
がんを残さずに取り除くには広い範囲を切除することが確実ですが、手術後の生活や後遺症のことも考えなければならないのです。
それでは、手術以外の治療はおこなわれていないのかといえば、そうではありません。手術によりがんを取り除くことが難しいと判断された場合には、抗がん剤による化学療法、放射線療法などを試すこともあります。ただ、胃がんの場合、手術以外の方法で根治させることは楽ではありません。
早期の胃がんの場合でも、見つかれば早めに手術する方針となっています。がんの進行するスピードは予測できないためです。同じ早期胃がんでも、進行が10年単位のものときわめて遅いものも確認されているようです。

胃がんのステージ

治療方針を決めるためには、胃がんのステージを把握することが必要になります。ステージとは、「病期」や「進行度」ともいい、がんの進み具合を表したものです。
当然ながら、がんがあまり進行していない早期の段階のステージであれば、それだけ治る確率も高くなります。
 胃がんのステージは、がんが胃壁のどこまで進行しているか 転移がどこまですすんでいるかの2つの観点から決められます。
 がんの深さ(深達度)
 がんの深さは、T1~T4に分けられています。Tとは、tumor(腫瘍)からきています。
T1:粘膜層、粘膜下層までにとどまっているがん
T2:筋層、漿膜下層まで浸潤しているが、胃の表面には出ていないがん
T3:胃の表面まで出ているがん
T4:周囲の臓器(結腸や膵臓)に浸潤しているがん
 なお、胃がんが、肝臓や肺などの離れた臓器に転移(遠隔転移)してしまっている場合には、進行度にかかわりなく、ステージはもっとも重いⅣと判断されています。
 リンパ節転移の状況
 胃の周囲には、胃に近いほうから、第1群、第2群、第3群という具合にリンパ節が取り巻いています。リンパ節転移の状況は、N0~N3に分けられます。Nとは、lymph node(リンパ節)からきています。
 N0:リンパ節転移が認められない
 N1:胃に接しているリンパ節に転移がある
 N2:胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移がある
 N3:遠くのリンパ節に転移がある
 ステージ分類
以上の2つの観点の組み合わせによって、胃がんのステージはⅠ~Ⅳに分けられています。
(リンパ節への転移の有無によって、A、Bとも分けられています)
ⅠA期 リンパ節転移がなく、粘膜下層までにとどまっている。
ⅠB期 以下のいずれか。
・リンパ節に転移がないが、筋層または漿膜下層まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤である。
Ⅱ期 以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、筋層または漿膜下層までの浸潤である。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤である。
ⅢA期 以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があるが、胃の表面に出ずに、筋層または漿膜下層までの浸潤である。
ⅢB期 以下のいずれか。
・胃に接したリンパ節に転移があり、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
Ⅳ期 さらに遠くのリンパ節に転移があるか、肝臓、肺、腹膜などに遠隔転移が認められる。
早期の胃がんでは、ほとんどステージⅠAまたはⅠBになります。逆に、離れた臓器やリンパ節に転移している場合は、ステージⅣと判断されます。ステージがおおよそ判断できれば、治療方針を決定していくことになります。

肺がんの病期(ステージ)

非小細胞肺がん
がんの病巣の広がり具合で病気の進行を、潜伏がん、0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期に分類します。
【潜伏がん】がん細胞が痰の中に見つかっていますが、病巣部が肺のどこなのかが分からない非常に早期の段階です。
【0期】がんは局所的に見つかっていますが、気管支をおおう細胞の一部のみにある早期の段階です。
【ⅠA期】がんが原発巣にとどまっていて、大きさは3cmを以下で、リンパ節や他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅠB期】がんが原発巣にとどまっていて、大きさは3cmを超え、リンパ節や他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅡA期】原発巣のがんの大きさは3cm以下で、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移が認められますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【ⅡB期】原発巣のがんの大きさは3cmを超え、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移が認められますが、他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅢA期】原発巣のがんが直接胸膜、胸壁に広がっていますが、転移は原発巣と同じ側の肺門のリンパ節まで、または、縦隔と言われる心臓や食道のある部分のリンパ節には認められますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【ⅢB期】原発巣のがんが直接縦隔に広がっていたり、胸膜へ転移をしていたり、胸水がたまっていたり、原発巣と反対側の縦隔、首の付け根のリンパ節に転移していますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【Ⅳ期】原発巣の他に、肺の他の場所、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合です。

胃がんの診断

胃内視鏡検査
いわゆる「胃カメラ」と呼ばれる検査です。
直径10ミリほどの長い管(スコープと呼んでいます)を口から胃の中に挿入して、胃の粘膜面を直接細かく観察し、必要に応じて組織の一部を採取します。このように組織を採取して顕微鏡検査を行うことを生検(せいけん)といい、がんの確定診断をするうえで極めて重要な検査です。
胃カメラというと挿入時に嘔吐反射を伴いやすく、個人差もありますが、もうしたくない辛い検査と言われる人がいます。最近は器械が細径化して比較的楽な検査になりつつあります。それでも反射がつらい場合には鎮静剤を使用することや経鼻内視鏡検査をお勧めしています。
経鼻内視鏡は急速に普及した内視鏡検査です。経口的な内視鏡に比べて径が細い分、画像はやや劣りますが、熟練した内視鏡医が行えばがんの見落としが少ないといわれています。また毎年必ず内視鏡検査を受けるという受容性の高さにより胃がんの早期発見に貢献しています。現在胃癌診断で信頼されているものは胃内視鏡検査ですので安心して受けてください。
機種によって拡大機構や画像強調が可能になり、範囲診断や癌か否かの診断に用いられます。また、内視鏡の先端に小型の超音波装置を取り付けた超音波内視鏡検査によってがんの深さや周囲リンパ節の診断が行われ、がんの広がりを判定します。
胃レントゲン検査
バリウムを飲んで行うレントゲン検査のことです。
粘膜の細かい観察能力では内視鏡に劣りますが、胃の全体像や凹凸の変化をみることに適しています。現在では無症状な人からがんを見つけだす目的で検診や人間ドックで主に用いられています。食道や十二指腸との距離や病変の拡がりを診断する目的で胃癌を手術する前には必ずレントゲン検査を行います。内視鏡検査とX線レントゲン検査は、胃がん診断の「車の両輪」のようなものです。
腹部CT、超音波検査
がんの転移の有無を知るために行います。肝臓、リンパ節、腹水の有無、腹膜への転移を調べます。この二つは性格が異なりますので、どちらか片方だけ検査するときもありますが、正確を期するために両方行うときもあります。
腫瘍マーカー
すべてのがんで見られる現象ではありませんが、胃がんでも一部のがんでは血中に特定の物質を分泌しています。これを腫瘍マーカーと呼んでおり、がんの進行や再発の判定に役立ちます。
腫瘍マーカーが正常範囲内である進行胃癌の患者さんもしばしば見受けられますので過信も軽視もできません。
最近では胃がんの要因にピロリ菌の関与が報告され、血中抗体を測定する場合があります。萎縮性胃炎に分化型胃癌が発生することが多いことを利用してペプシノーゲンを血液で測定して胃がんの発生しやすいか否かを診断します。
最終的には胃がんの有無は内視鏡検査で判定することになりますが、自分自身のピロリ菌や胃粘膜の萎縮の有無を知ることは重要です。

胃がんの症状

胃がんそのものによる症状と、胃がんに付随して起きる胃炎などによる症状とがありますが、その区別はなかなか困難です。 一般的には早期胃癌には症状は無く、がんの進行によって症状が出現します。早期胃癌の症状は、合併する胃潰瘍や慢性胃炎の症状のことが多いと言われています。
 食思不振、悪心・嘔吐食欲がなくなったり、ムカムカして吐いたりすることです。胃がんによって消化管の内腔が狭くなり、食べたものの通過が悪くなって胃が重い感じがし、そのため食欲がなくなったり、吐いたりすることがあります。また合併している胃炎や潰瘍のために悪心・嘔吐が起こることもあります。
 るいそう、全身倦怠いわゆる「痩せる」ことと体がダルイことです。食思不振や悪心・嘔吐によって痩せたり倦怠感が出ることもありますが、たくさん食ベていてもがんに栄養を取られたり、がんからの出血のために痩せたり脱力感に陥ることがあります。
 吐血・下血血を吐いたり便が「のり」のように黒くなったりすることです。
がんの表面が崩れて出血するために起こる症状ですが、合併あるいは併存する胃潰瘍などでも起きることがあります。少量でも持続的に出血していると貧血になります。
 腹痛・腹部不快感みぞおちや臍の上などが痛む場合や食事の前後に腹部に鈍痛やすっきりしない感じがあらわれたりします。がんに特有な症状ではありませんが、多くの患者さんに認められる症状の一つです。
 胸焼け普通、逆流性食道炎で起こる症状ですが、食道と胃の境界にがんができると食物の流れが悪くなり、食後にものがつかえることや食べ物がこみあがってくることがあります。

胃がんとは

胃は、「胃袋」とも言うように、食道に続く嚢状の器官で、食べたものを一時蓄えたり消化したりする働きをしています。食道に続く部分(噴門と言います)と十二指腸に続く部分(幽門と言います)は周囲の臓器に固定されていますが、それ以外の部分は割と自由に動きますので、体の位置(横になっているか、立っているか)や食べたものの重さによって胃の位置が変わります。
胃の入口から出口に向かって、各部位は噴門部、胃体部、胃角部、前庭部、幽門部と言われています。
 胃の内側は粘膜で覆われ、外側は腹膜(漿膜とも言います)で覆われています。その間に胃を動かす筋肉の層(これを固有筋層と言います)があります。
また、この3つの層の間には細胞が少なく線維が多い組織があります。粘膜と固有筋層との間の層を粘膜下層、漿膜と固有筋層との間の層を漿膜下層と呼んでいます。このため、胃の壁は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層から成り立っています。
imag1-2.gif
胃がんは胃の粘膜から発生してきます。胃にはそのほか肉腫や悪性リンパ腫なども出来てきますが、胃の悪性腫瘍の大多数(95パーセント以上)は「がん」によって占められています。したがって、胃の悪性腫瘍といえば「がん」のことを指しています。
 この胃がんはどれぐらい発生しているのかというと、愛知県の衛生部で毎年発行しています「愛知県のがん登録」によりますと、平成17年に全体で27,748名(男性16,371名、女性11,377名)の人が新たに悪性腫瘍に罹られていました。
 男性で最も多い癌は肺がんであり、胃、前立腺、結腸、肝および肝内胆管および直腸とつづき、女性で最も多い癌は乳がんであり、胃、結腸、肺と続いています。全体に対する胃がんの占める割合は、男性18.2%、女性12.7%でした。
 このように、胃がんは食生活の変化や検診の普及で減ってきていますが、それでも日本人にとってもっとも身近な悪性腫瘍の1つといえます。特に注意が必要なのは加齢とともに胃がんの罹患率が上昇することです。