肺がんの発見

症状による発見
 自覚症状によって肺がんが発見された場合、肺門型肺がんであれば良いのですが、肺野型肺がんの場合には一般には、治癒に結びつく治療は難しいのが現実です。さらに遠隔転移による症状で発見された肺がんの場合、基本的には治癒に結びつく治療はありません。
           検診による発見
 肺がん発見のための検査は喀痰細胞診と胸部レントゲン検査、CT検査(ヘリカルCT)です。
 肺門型肺がんではたんの中にがん細胞がでてくることが多いので、喀痰細胞診を行って発見します。早朝の痰を採取し痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを検査するものです。
 肺門型肺がんは基本的には喫煙者の肺がんですので、タバコを吸わない人にはあまり意味がありません。
 一方、肺野型肺がんでは症状に乏しく、とくに初期にはほとんど症状がありません。胸部レントゲン検査で発見します。検診やほかの病気の検査の時に偶然発見されたりもします。
 これに対して、最近はへリカルCTといって、患者さんが呼吸を停止している間に目標とする部位の周囲を・線管球がグルグル回転し、その間に患者さんを検査台ごとスライドさせてすき間なく対象臓器の全体を検査する方法が開発され、通常のレントゲン写真では写りにくい部位の肺がんの発見や、小さい肺がんなどの発見に威力を発揮しはじめています。

肺がんの分類

細胞の形態による分類
 肺がんと一口でいっても実はいろいろな種類のがんがあります。
それらは顕微鏡でみたがん細胞の形態から大きく分けると、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんなどに分類されます。
           一番多いのは腺がん
 腺がんは肺の末梢に発生するがんの代表的なもので、非喫煙者の女性もかかるがんです。
 肺がんの60%の多くを占め、肺がんでは最も頻度の高いがんです。しかも近年この腺がんの増加が著しいことが問題となっています。腺がんははっきりした原因の判っていないがんと考えられていましたが、近年この腺がんにも喫煙と関係のないがんと、喫煙が関係しているがんがあることが判って来ました。
          次に多いのが扁平上皮がん
 扁平上皮がんは喫煙と関連の深いがんで、非喫煙者はまずかからないがんです。
圧倒的に男性に多く、肺がんの約20%を占めます。後の項で述べる肺門(肺の心臓に近い部分で、比較的太い気管支の部分)型肺がんの代表的なものですが、肺野(肺の末梢の部分)に発生することも多く、扁平上皮がんの60%は末梢発生です。がんが発生したその場所で発育する性格が比較的つよく、転移の足が遅く、完全に切除できると治癒の可能性が高いがんです。また放射線治療も有効ながんです。
             その他の肺がん
 小細胞がんは発育が早く、小さなうちから転移をおこしやすいがんとして有名です。
幸い肺がんの15%程度にしかすぎません。発育が早いために発見されたときにはすでに進行しており、治療として手術が考慮されることは少なくなります。検診での早期発見による2次予防の難しい肺がんです。
 肺門付近にできやすく、喫煙との関連もあり男性に多いがんです。抗がん剤や放射線療法が非常に有効なことが治療上の特徴で、この点で他の肺がんとは治療上の対応が異なり、手術よりも抗がん剤の治療が主体になることの多い肺がんです。
 大細胞がんは肺がんの約5%を占めますが、発育が比較的早いという以外あまりはっきりした特徴はありません。
 この4種類以外にも肺がんはありますが、特殊で稀ながんということになります。

肺がん検診の現状

昭和62年から老人保健法により、各市町村で肺がん検診が導入されています。
 1991年には、肺がん検診受診者数は550万人を超え、このうち2,200人が肺がんと診断されています。
 多くの市町村で、早期発見や禁煙指導などの健康教育、講習会やパンフレット配布を行っています。その他、肺がんをなくす会などの団体による検診も行われています。
 検診で発見された肺がんの比率は、全肺がんの10%未満ですが、咳、痰、血痰などの自覚症状で発見された肺がんに比べ、検診で肺がんが発見された場合の病期は早期のものが多い結果となっています。
 肺がん検診は、一般的には胸のレントゲン写真と喀痰細胞診と呼ばれる痰の検査により行われております。
 最近は、ヘリカルCTと呼ばれる肺のX線断層検査が約15秒間で行われるようになり、より小さな肺がんも発見されるようになっています。
 肺の奥のほうにできる肺がんは(肺野型)、レントゲン写真でよく発見されます。喫煙ともあまり関係がないので、40歳以上の方は、年1回は少なくとも検査する必要があります。
 一方、肺の入口にできる肺門型のがんは喫煙と深く関係しています。レントゲン写真に映りにくいのですが、痰の中にがん細胞がこぼれ落ちてくることが多いので、痰の細胞検査で早期に発見することができます。
 特に50歳以上の重喫煙者の方は、肺の入口の部分のがんにかかる率も高いので、痰の細胞診も定期的に行う必要があります。
 検診で肺癌が発見された患者さんの方が,自覚症状はあってから受診された患者さんより,明らかに長生きできています.
 ちなみに,別の病気で病院に通院中に発見された患者さんも,自覚症状がないうちに発見できているため,長生きしておられます。
 検診で早期発見される場合,70歳以上の高齢者より,60歳代までの方のほうが,早期発見により長生きできる可能性が高い結果がでました。
 これは,70歳以上の高齢者では,早期に肺癌が発見されても,高齢のために手術や抗癌剤治療ができないこと,肺癌を治療しても,別の病気で亡くなっておられる方が多いためです。

抗癌剤による化学療法

化学療法はすべての病期の小細胞癌に対する最も一般的な治療です。
 しかし、非小細胞癌は小細胞癌に比べて抗がん剤が効きにくく、抗がん剤のみでがんが治ってしまうことはまれです。
 非小細胞癌に対する抗がん剤による化学療法の多くは臨床試験の形で実施されています。
 化学療法は、多くの場合静脈注射や点滴静脈注射で行いますが、まれには飲み薬のこともあります。
 外科療法・放射線療法が局所治療と呼ばれているのに対し、化学療法は全身治療と呼ばれています。
 薬が血液の中に入り、血流に乗って全身をめぐり、肺のみならず、肺の外に拡がった癌細胞も殺すことができるからです。
 小細胞癌の場合、使用する抗がん剤は1種類ではなく、通常は2種類以上を使用します。
 治療期間は、通常、16~24週間かかります。非小細胞癌に対しては標準的な化学療法は確立されておらず、臨床試験の計画書に準じて行われます。
 抗癌剤による治療は単独で行われることもありますが、放射線療法や外科療法と併用することもあります。
 一般的にいくつかの抗癌剤を組み合わせる多剤併用療法が用いられていますが、抗癌剤には強い副作用もあり、熟練した病院で治療を受ける必要があります。
 非小細胞癌によく用いられる薬剤は、シスプラチン、マイトマイシン-C、ビンデシン、 イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、カルボプラチンなどです。
 一方、小細胞癌には多種の抗癌剤が有効であり、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、イリノテカン、イフォマイドなどが主に用いられています。
また、非小細胞癌で再発した方に新たに飲み薬でイレッサが用いられています。

肺がんの治療 放射線療法

放射線療法
 X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。非小細胞癌の場合、手術できないI期からIIIa期、胸水を認めないIII期、小細胞がんの場合は限局型が対象となります。
 肺癌の場合、通常は身体の外から患部である肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的に1日1回週5回照射し、5~6週間の治療期間が必要です。
 最近では、1日2回週10回、あるいは1日3回週15~21回照射する多分割照射も試みられています。
 また、放射線治療は脳にがん細胞が転移するのを防ぐために使われます。これを予防的全脳照射と呼びます。予防的全脳照射は正常の脳の機能を損なう恐れがまれにあり、治療終了後数年以降に記憶力低下などの精神神経症状があらわれることがあります。
 放射線療法には、広く一般的に用いられているリニアックと、癌病巣のみを集中的に治療する陽子線治療、重粒子治療もあります。

肺がん治療の副作用と対策

がんに対する治療は、がん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられませんので、副作用・後遺症を伴います。
 肺がんも同様であり、特に、小細胞がんは急速に進行し致命的になりうるので、この病気に対する治療は強力に行う必要があり、そのため副作用も強くあらわれることがあります。
 医師はできるだけ副作用を軽減すべく努力しますが、治療に伴い種々の副作用があらわれることがあります。
1)外科療法
肺を切除した結果、息切れや、手術後半年~1年間の創部痛を伴うことがあります。そのため手術後はライフスタイルを変える必要のある場合がまれにあります(詳しくは「肺手術後の呼吸訓練」、「呼吸困難」を参照して下さい)。
2)放射線療法
主な副作用は、放射線による一種の火傷(やけど)で、放射線治療中および治療の終わりころから症状が強くなる肺炎、食道炎、皮膚炎です。肺炎の初期症状は、咳・痰の増加、微熱、息切れです。通常、ステロイドホルモン剤を服用します。
 しかし、炎症が強く出た場合、長い間咳や息切れが続くことがあります。胸のレントゲン写真では、黒く映っていた肺が白くなり、侵された肺は小さくなります。
 これを放射線肺線維症(はいせんいしょう)と呼びます。食道炎の症状は、特に固形物の通りが悪くなり、強い場合は痛みを伴います。
 食道炎に対しては、一時放射線治療の延期・中止を行い、痛みを伴う場合は食事・飲水制限をして、痛み止め剤の服用や栄養剤の点滴静注をします。かゆみを伴う皮膚炎(発赤や皮がむける)に対しては、軟こう剤を使用します。
3)抗癌剤による化学療法
用いる抗癌剤の種類によって異なり、また個人差もありますが、治療中の主な副作用は、貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。その他、予期せぬ副作用も認められることがあります。
 強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)と呼ばれる遺伝子工学でつくられた白血球を増やす薬を連日皮下注射します。

肺癌の種類と広がり(扁平上皮癌)

皮膚や粘膜など体の大部分をおおっている組織である扁平上皮に よく似た形をしているがんのことです。
扁平上皮癌は、タバコとの関係がきわめて濃厚で、大部分は肺の入り口に 近い肺門部にでき、肺がん全体の25~30%を占め、2番目に多いがんです。
 別名タバコ癌ともいわれることがあります。
 癌が気管支の中で広がって気管支を塞いで呼吸困難が突然起こったり、喘息のような症状が表れることがあります。
 また直接、骨や心臓、大動脈に広がることの多いです。
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肺癌の種類と広がり(腺癌)

肺癌は、癌細胞を顕微鏡で見ることによって、4つの組織型に分類されます。
組織型によって、性質やできる場所が異なります。
 また治療法も大きく分けて、小細胞癌非小細胞癌(腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌)で異なります。 まれにその他の癌も1%ほどあります。
             腺癌
 唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺などの腺組織とよく似た形をしている癌のことです。
 腺癌は、多くの場合、肺の奥のほうのこまかく枝分かれした先にできます。
 女性やタバコを吸わない人にできる肺癌の多くがこの腺癌です。
 またタバコを吸う人にも最近この腺癌が増えてきています。
 肺がん全体の半数程度を占め、肺癌の中で最も多い種類の癌です。血液の流れに乗って他の臓器に転移することの多い肺癌です。
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肺がんの診断

咳、痰などの症状がある場合、最初に胸のレントゲン検査をします。次にがんかどうか、あるいはどのタイプの肺がんかを顕微鏡で調べるため、肺から細胞を集めます。通常は痰の中の細胞検査をします。
また、ある程度進行した肺癌では血液検査でもがんの兆候が現れることがあります。一般的に腫瘍マーカーと呼ばれますが、血液検査はあくまで補助的な検査であることを肝に銘じ、血液検査のみで早合点しないようにしてください。
 腫瘍マーカーが低いからといってがんがないとは決していえません。逆に軽度の高値でがんにおびえるのも良くありません。
 数字で出てくる検査はX線写真やCTに比べてわかりやすいように思ってしまうものですが、決してそうではありません。その結果を解釈してくれる信頼できる主治医の解説が絶対に必要です。
           1)気管支鏡検査
 現在、最も信頼度が高く、比較的安全で、世界中で広く行われている検査です。気管支鏡あるいはファイバースコープと呼ばれる特殊な内視鏡を口から挿入し、喉から気管支の中を観察し、組織や細胞を採取します。この検査は通常外来または短期入院で行われます。
 検査に先だって、検査による喉や気管の痛みを軽減するため、口腔の奥まで局所麻酔を行います。太さ5~6mmの気管支鏡を使って、気管支の壁から細胞をとったり、組織の一部をとり、標本をつくって顕微鏡でがん細胞があるかどうか検査します。
 これを生検と呼びます。検査時間は約20~30分です。検査中は目覚めており、通常、検査後数時間以内に帰宅できます。 ただ、内視鏡を気管支の中に入れるわけですから、楽な検査ではありません。
 不安な患者さん、高齢の患者さんには、短期入院(2泊3日程度)で、十分な麻酔と麻薬注射で苦痛を極力少なくして検査しています。入院の際は、血液検査、レントゲン、CT、呼吸機能など他の検査も併せて短期間に実施しています。
       2)経皮吸引針生検、穿刺吸引細胞診
 もし病巣まで気管支鏡が届かなかったり、採取された検体が診断に十分でない場合、局所麻酔下に肋骨の間から、細い針を肺の病巣に命中させ、腫瘍組織や細胞をとります。この場合、レントゲンで透視をしながら行います。 通常10分~15分で終了します。
 危険性について少し詳しく説明します。肺はやわらかいスポンジが詰まった風船のようなものです。
 それを針で突き刺しますので穴があいて空気が漏れ、肺がしぼむことがあります(気胸といいます)。たまに、漏れた空気が皮膚の下に溜まることもあります(皮下気腫といいます)。
 また、肺にはたくさんの血管が通っているのでその血管に針があたって出血することがあります。胸の中への出血と気管支を通って口から出る喀血の2種類の可能性があります。その他、麻酔薬のアレルギー、胸膜を刺したときに反射で起きるショックなどが考えられます。
 多いのは気胸で、程度の軽いものはたいてい起きていると思います。症状は肩のほうに抜ける感じの痛みと軽い呼吸困難です。
 呼吸困難は気胸の程度によるもので、症状が強い場合は入院が必要なこともあります。普通24時間で症状は落ち着き、1週間で元通りに回復しますが、まれにチューブで漏れた空気を抜く必要があります。皮下気腫は何もしないでも回復することがほとんどです。
 出血は普通大量になることはなく、数時間の安静で落ち着きますが、止血剤の点滴をして入院の必要が出てくる時もまれにあります。ただし、循環器の病気で血液が流れやすくなる薬を飲んでいる方の場合は大きな事故につながる可能性があります。
 経皮肺生検に限らずどのような検査でもそうなのですが、100%確実な検査というものはありません。経皮肺生検法も診断の付く確率は100%ではありません。
 レントゲンのぼんやりと映った影を見ながら針を刺すので、外れることがあります。肋骨などが邪魔になって十分な検査ができない場合もあります。
 このようなときにはいくつかの方法が考えられます。同じ検査をもう一度繰り返す。全身麻酔で小さな手術をする。少しの期間を置いてCTを撮り比較する。などです。レントゲンに写った病変の性質で判断することになります。
          3)CTガイド下肺針生検
 あまりにも腫瘍が小さく、通常のレントゲンでは腫瘍がわかりにくい場合に、コンピューターを使ったX線写真(CT)で目標を定め、針を病巣に命中させ組織をとります。
 採取した細胞を顕微鏡で検査します。 検査中に何度かCT撮影するため、30分~60分の時間がかかります。
 CTガイド下針生検の場合、どうしても針を肺に刺している時間が長くなるため、透視による経皮針生検よりも、気胸、皮下気腫、出血の危険が増してきます。
             4)胸膜生検
 局所麻酔をして肋骨の間から特殊な器具を用いて胸膜を一部採取し、がん細胞がないかどうか検査します。肺の外側に水がたまっている(胸水)場合、同様の手法で注射針を用いて胸水をとって同様に検査します。
           5)リンパ節生検
 首のリンパ節がはれている場合、リンパ節に針を刺して細胞を採取したり、局所に麻酔をして外科的にリンパ節を採取することもあります。採取した細胞・組織を顕微鏡下でがん細胞がないかどうか検査します。
 これらの方法を用いても診断が困難な場合、外科的に組織を採取します。外科的な方法には、胸腔鏡を用いる方法、縦隔鏡検査を用いる方法、胸を開く方法があります。
 いずれも入院し、全身麻酔が必要となります。胸腔鏡を用いる方法は、胸の皮膚を小さく切開し、そこから肋骨の間を通して胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を肺の外側(胸腔)に挿入し、肺や胸膜あるいはリンパ節の一部を採取するものです。
 縦隔鏡検査は首の下端で胸骨の上のくぼみの皮膚を切開し、気管前部の組織をおしのけて空間をつくり、ここに縦隔鏡と呼ばれる筒状の器具を挿入し、直接眼で見ながら気管周囲のリンパ節や近くに位置する腫瘍組織を採取するものです。採取した組織を顕微鏡でがん細胞がないかどうか検査します。

肺がんの症状とは

いつまでも続く咳や胸痛、呼吸時のぜーぜー音(喘鳴:ぜいめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)、顔や首のむくみなどが一般的症状です。
 肺癌患者さんで最も多い症状は、咳と痰でした。
 また最も肺癌である確率の高い症状は血痰でした。
 一言で肺癌といっても、肺癌の種類で症状も異なってきます。
 扁平上皮癌や小細胞癌などにみられる肺門型の肺癌は、早期から咳、痰、血痰などの症状が出現しやすいものです。
 肺野型の肺癌にみられる腺癌は、癌が小さい間は殆ど症状がありませんが、検診や人間ドック、高血圧などの他の病気で医療機関にかかっている時に見つかることが多くなっています。
 また不幸にも、転移による症状、例えば脳転移による頭痛、骨転移による腰痛などの骨の痛みなどが最初の症状である場合もあります。
 また、胸痛があらわれることもありますが、これは肺がんが胸壁を侵したり、胸水がたまったりするためです。
 その他、肩こり、肩痛、背中の上部痛、肩から上腕にかけての痛みもまれにあります。他のがんと同様に肺がんでも、易疲労感、食欲不振、体重減少がおこります。
 数は少ないですが、独特の症状が現れるものに小細胞癌があります。
 小細胞肺がんは種々のホルモンを産生します。そのため、まれに副腎皮質刺激ホルモンによるクッシング症候群と呼ばれる身体の中心部を主体とした肥満、満月のような丸い顔貌、全身の皮膚の色が黒くなる、血圧が高くなる、血糖値が高くなる、血液中のカリウム値が低くなるなどの症候があらわれることもあります。
 その他、まれに抗利尿ホルモンの産生による水利尿不全にともない、血液中のナトリウム値が低くなり、食欲不振などの消化器症状や神経症状・意識障害が出現することがあります。
 この他、大細胞がんでも認められることがありますが、細胞の増殖を増やす因子の産生による白血球増多症や発熱、肝腫大もあらわれることもあります。
 このように肺がんの一般症状は、風邪などの症状と区別がつかないことが多いので、なかなか治りにくい咳、血痰、胸痛、喘鳴、息切れ、嗄声、発熱などを認める場合には医療機関の受診をお勧めします。
 特に喫煙歴のある40歳以上の人は、いつ肺癌になっても不思議ではありませんので注意が必要です

肺がんの生存率

肺がん小細胞がんでは、再発が 3年なければほとんど治っていると考えられています。
 がん病巣が原発巣に限られている限局型(げんきょくがた)の場合の3年生存率が約30%、全身に転移してしまう進展型の場合の 3年生存率が約10%と言われています。
        肺がんの生存率(5年生存率)
 肺がんの生存率(5年生存率)は、他のガンと同様にステージ(ガンの進行程度を示す病期)によって異なり、1999年の肺癌外科切除例の全国集計による病理学的別5年生存率の統計から見てみると、
【1A期】83.3%、【1B期】66.4%、【2A期】60.1%、【2B期】47.2%、【3A期】32.8%、【3B期】30.4%、【4期】23.2%となっている模様です。
 外科的手術の対象患者肺がんの5年生存率として上記に掲載したものは、あくまでも外科切除例の全国平均での確率であり、外科治療後に行われる治療方針(化学療法、放射線療法の取り入れ方)や、医療機関自体によっても差があるものと考えられます。
 ちなみに肺がんの場合、一般的にステージ(病期)で【1A期から3A期】の患者さんが手術の対象となります。

肺がんの治療方法

肺がんの治療は、小細胞がん非小細胞がんかによって大きく異なります。
            ●小細胞がん
 早期から全身に転移しやすく、進行が早い反面、化学療法(抗がん薬)や放射線治療がよく効くので、抗がん薬の全身投与が第一選択になります。高齢者で、病気の発症に伴って日常生活動作(ADL)が低下した患者さんでも、確実に治療効果が望めます。
 治療成績は、診断時に胸腔内にがんがとどまっていた場合(限局型:LD)で20~30%(5年生存率)、胸郭外に転移があった場合(広範型:ED)で10~20%(2年生存率)です。
 必要によって、転移がない時期に脳に放射線の予防的照射を実施する場合もあります。
            ●非小細胞がん
 病巣が肺の片側に限局している場合、まず手術による病巣の切除およびリンパ節の郭清(かくせい)が第一選択です。しかし、病巣と反対側のリンパ節にも転移が認められた場合は、抗がん薬の併用も必要です。
 診断時から転移が認められた場合、もしくは手術不能な場合は、抗がん薬と放射線治療が主体になります。しかし、ADLが低下した人は、治療に伴う身体的負担がむしろ有害になる可能性があるため、積極的な治療を行わないほうがよい場合もあります。
 化学療法、放射線治療いずれの場合でも、肺がんは完治が非常に困難ながんです。患者さんや家族はよく担当医と相談して治療方針を決めることが必要です(インフォームド・コンセント)。判断に悩む場合は、ほかの医療機関の専門医に相談することも必要です(セカンドオピニオン)。その場合は、必ず紹介状と資料を担当医に依頼したほうが円滑にいきます。
 近年、遺伝子工学の発展に伴い、がん細胞の増殖、転移を標的とした薬剤(上皮成長因子受容体阻害薬:イレッサ)が使用可能になっています。イレッサは一部の患者さんでは有効ですが、現時点では強くすすめる根拠は弱く、また重い副作用として間質性肺炎の発症が報告されています。

肺がん 検査と診断

肺がんの検査と診断
 肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
 次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
 確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。
 
 また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
 喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
 なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
 これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。
 一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。
 さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
 また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
 高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。

肺がんの症状と合併症

肺癌の症状は、癌の種類や位置、その広がり方によって異なります。普通、初期症状として最も多くみられるのは、長期間続くせきです。慢性気管支炎で、さらに肺癌を発症した患者は、せきの悪化に気づきます。せきに伴うたんの中に血が混ざる、喀血(肺と気道の病気の症状と診断: 喀血を参照)がみられることがあります。肺癌が血管内にまで達すると、ひどい出血を起こします。
 肺癌が気管支の内部や周囲で増殖して、気管支を狭くすると、喘鳴(ぜんめい)が生じる場合があります。気管支の閉塞によって、その気管支とつながる肺の一部がつぶれることがあり、この状態を無気肺(無気肺を参照)といいます。また、気管支の閉塞によってせき、発熱、胸痛を伴う息切れや肺炎なども起こります。胸壁の内部で腫瘍が増殖すると、持続的な胸痛が生じることがあります。
 肺癌が首の特定の神経の内部で増殖すると、まぶたが垂れ下がったり、瞳孔が縮んだり、目が落ちくぼんだり、顔の半面に汗をかきにくくなるなどの症状が起こることがあり、これらの症状をまとめてホルネル症候群(まぶたが下がるホルネル症候群を参照)と呼びます。肺の上端に生じた癌が腕の動きを支配する神経の内部に増殖すると、腕に痛みや麻痺(まひ)、筋力低下などが生じ、こうした症状をパンコースト症候群といいます。声帯へ続く神経が損傷を受けると、声がしゃがれます。この損傷は主に、左肺を含む部位に癌が発症した人に起こります。
 肺癌が直接、食道の内部や周囲で増殖して食道が圧迫されると、ものが飲みこみにくくなります。ときに、癌の進行によって食道と気管支の間にフィステル(瘻[ろう])という異常な通路ができ、食べものや飲みものが肺に入るために、ものを飲みこむ際にひどいせきが出ます。
 肺癌が心臓の内部で増殖すると、不整脈、心臓を通る血流の閉塞、心臓の周囲にある心膜嚢への液体の貯留が起こります。癌が胸部にある大静脈の1つ、上大静脈の内部で増殖したりこれを圧迫することがあり、この状態を上大静脈症候群といいます。上大静脈が詰まると、上半身にある他の静脈への血液の逆流が起こります。胸壁内部にある静脈が拡張します。顔、首、乳房を含む胸壁の上部はむくんで、薄い紫色になります。さらに息切れ、頭痛、視覚異常、めまい、眠気なども生じます。これらの症状は普通、前かがみになったり横になると悪化します。
 普通、後になって生じる肺癌の症状には、食欲不振、体重減少、疲労感、筋力低下などがあります。肺の周囲に液体がたまる胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)は、癌が胸膜腔の内部にまで広がって起こります。胸水は息切れを起こします。癌が肺の内部にまで広がると、ひどい息切れ、血液中の酸素濃度の低下、肺性心(肺高血圧によって発症する肺性心についてを参照)が生じる場合があります。
 肺癌は血流を通って、肝臓、脳、副腎、脊椎、骨に転移することもあります。体の他の部分への転移はあまりみられません。肺癌の、特に小細胞癌の転移は発症早期に起こる場合があります。肺の異常が確認される前に、頭痛、錯乱、けいれん、骨の痛みなどの症状が起こり、早期診断を困難にします。
 腫瘍随伴症候群(腫瘍随伴症候群とはを参照)は、肺癌によって生じるさまざまな症状で、代謝系、神経系、筋肉など肺から離れた部位に生じます。腫瘍随伴症候群は、肺癌の大きさや位置とは関係がなく、癌が胸部以外に転移したことを示すわけでもありません。むしろ、癌のために分泌されたホルモン、サイトカインなどのさまざまなタンパク質によって腫瘍随伴症候群が生じます。

肺がんの副作用と対策

がんに対する積極的な治療で苦痛や副作用を伴わない治療はありません。肺がんも同様です。
 しかし、それをなるべく少なく、安全にという努力は日夜なされています。治療法ごとの副作用や苦痛、危険性などを列挙します。
            外科療法
 手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
 手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
 手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
 退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
            放射線療法
 主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
 初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
            化学療法
 主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
         内視鏡治療(レーザー治療)
 副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。

肺がんの簡単な説明

肺がんの分類
 肺がん(肺癌)は肺から発生するがんの総称です。肺がんは,その性格,悪性度,今後の見込みを考え,さらに治療法を決定するために,いくつかの分類があります.
 肺がんは,肺がんの顕微鏡検査により以下の二つに分類されています.
小細胞肺がん
非小細胞肺がん
小細胞肺がん
 小細胞肺癌(しょうさいぼうはいがん)は,比較的少ないです。進行が早いので,発見時にはすでに転移(飛び火)をしてリンパ節や全身に広がっていることが多いです.抗がん剤や放射線治療に対して比較的よく効きます.
 非小細胞肺がん
非小細胞肺癌(ひしょうさいぼうはいがん)は,肺がんの多くを占めております. 早い時期に発見して,手術をすれば,治ゆする可能性があります.抗がん剤や放射線治療に対して効きが良くありません.
非小細胞肺がんは,顕微鏡検査によりさらに次のように分類されています.
 腺がん
 扁平上皮がん
 大細胞がん
 その他
1).腺がん
腺(せん)がんは,肺の末梢にできることが多く,咳などの自覚症状がでにくいがんです.レントゲン写真に写りやすく,しばしば健康診断で発見されます.
2).扁平上皮がん
扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんは,喫煙との関係が深く,肺の根元にできることが多いです.
3).大細胞がん
大細胞(だいさいぼう)がんは,肺の末梢にできることが多いです.非小細胞肺がんのうちでも性質の悪い肺がんです.
            原因
 肺がんは遺伝子の病気と考えられています.肺がんに関連した遺伝子がいくつか発見され,研究されています.喫煙の影響は重要で,大気汚染の影響も考えられています。
            症状
 肺がんはあまり症状は出しません.そのために早い時期に発見するのが難しい病気です.症状としては咳(せき)や痰(たん)がありますが、これはあまり気に止めない人が多いと思います.健康診断や病院で偶然にレントゲンで異常を指摘されて驚く場合が多く見られます.その他の症状としては血痰(けったん)や胸の痛みや腕の痛みそれに顔の腫れなどの症状があります.
             検査 
 胸部レントゲン検査
肺の異常をみるのに適しています.但し,肺の根元に病変があるときや,小さな病変では指摘するのが難しいです.
 胸部CT検査
CT(コンピューター断層撮影)検査があります.これは病気の場所や形や広がりを見るのに,役に立ちます.しかし、胸部レントゲン検査やCT検査では肺がんを疑うことはできますが、確実に診断することはできません.
 胸部MRI検査
これは病気の周囲との関係や広がりを見るのに役に立ちます.肺の検査ではCT検査の方が有効な情報量が多いので,MRI検査は必ず行われるものではありません.
 転移の検査
がん転移(飛び火)の有無を調べるために、脳や肝臓や骨の検査をします。方法はCT検査、超音波検査、アイソトープ検査などを使用します。
 痰(たん)
確実に診断するためには病変の細胞を顕微鏡で調べなくてはなりません.細胞をとる検査として、痰(たん)の検査があります.痰の検査は痰を病院に提出すればよいので楽な検査です.しかし、これで診断できるのは一部の肺がんです.
 気管支鏡(きかんしきょう)検査
肺の内視鏡検査です.気管支鏡(きかんしきょう)検査と呼ばれています.気管支鏡は外来でできる検査で、喉(のど)や気管の中に麻酔(痛み止め)のスプレーをして行います.局所麻酔ですから,意識ははっきりしています.外来で行うことができます.肺の内部の観察ができます。また顕微鏡で調べるための病変を取ることもできます。
 経皮的肺針生検
 
CT検査やレントゲン検査や超音波検査を行って,病変を直接見ながら肺に外から針を刺す検査です.顕微鏡で調べるための病変を取ることが目的です。局所麻酔(歯医者さんで受けるような一箇所の麻酔)が必要です.検査で肺から空気が漏れる可能性があるので,通常,入院して検査を行います.
 胸腔鏡(手術)検査
上記の検査で診断がつかない場合に行います。全身麻酔が必要です。胸腔鏡検査は胸に小さな穴をあけて行う内視鏡手術で、通常の手術よりも痛みや傷が小さくてすみます。
 体力検査
手術や治療を行う前に行います。肺活量、心電図、採血(肝機能、腎機能)、検尿などがあります。
              進行度
 肺がんの治療を考えるときには進行度の評価が重要です.進行度によって手術を受けた方が得か、受けないほうが得か決めなくてはなりません.
              外科治療
 肺がんの手術内容は肺のひとふさ(葉:よう)とリンパ節を切除することです.手術は皮膚を大きく切って病変に達して行う従来からの方法と皮膚に小さな傷をつけて行う胸腔鏡(きょうくうきょう)手術という方法があります.切る場所は病変の部位や大きさによって違います.
 胸腔鏡手術とは胸腔鏡を用いた手術です.胸腔鏡は先端に小型のカメラを装着した棒で、これを直径5-12mm程の穴を通じて胸に入れます.このカメラは拡大した視野が得られるので中を観察することができるのです.穴をさらに1-3個開けて、電気メスやハサミを使用して手術を行います.利点は手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少ないことです.しかし、手術が難しい場合などには従来の方法に途中で変更しなくてはならないこともあります