肺がんの遺伝子療法

遺伝子の中でがん抑制遺伝子p53に異常がある患者に限られ行うことのできる、肺がんの治療法があります。
 これは遺伝子療法といい、p53がん抑制遺伝子を肺がんに注入して、がん細胞を抑制し縮小させる新しい治療法で、近年、注目を集めています。
 注目のp53遺伝子はがん抑制遺伝子の一種で、この遺伝子の働きは、無制限に細胞が増殖することを抑え、がん細胞のような異常な細胞は、細胞の自殺といわれるアポトーシスを行うように働きます。
 遺伝子療法はこの働きを利用して、p53がん抑制遺伝子を組み込んだベクターというウィルスを、肺がんに注射して行う治療法です。
 投与して副作用など患者に異常がなければ、その後2回から3回の投与を行い経過を診ます。
 この遺伝子療法は臨床治療の段階で、今だ確立された治療法ではありません。
しかし、肺がん治療が行えるすべての治療法が効果的に経過が診られず、また、肺がんの再発で治療法が見つからない患者に効果的と考えられています。
 遺伝子療法は有望な治療法であることは、過去に行われた治療において、患者15人に対して遺伝子療法を行い、そのうち11人に肺がんの増大を止める効果が現れ、最も高い効果が現れた例では、肺がんの腫瘍が半分になった例があります。
 遺伝子療法は現在まだ臨床の段階にあって、条件に合った患者であることや、患者本人の意志で希望者のみに行われ、この治療が行われるには厳しい規則と管理体制が必要で、まだまだ確立した治療法になるには時間が必要です。
 この遺伝子療法は今後の研究が進み、肺がんの治療法として確立することが期待されます。