肺がん検診の現状

昭和62年から老人保健法により、各市町村で肺がん検診が導入されています。
 1991年には、肺がん検診受診者数は550万人を超え、このうち2,200人が肺がんと診断されています。
 多くの市町村で、早期発見や禁煙指導などの健康教育、講習会やパンフレット配布を行っています。その他、肺がんをなくす会などの団体による検診も行われています。
 検診で発見された肺がんの比率は、全肺がんの10%未満ですが、咳、痰、血痰などの自覚症状で発見された肺がんに比べ、検診で肺がんが発見された場合の病期は早期のものが多い結果となっています。
 肺がん検診は、一般的には胸のレントゲン写真と喀痰細胞診と呼ばれる痰の検査により行われております。
 最近は、ヘリカルCTと呼ばれる肺のX線断層検査が約15秒間で行われるようになり、より小さな肺がんも発見されるようになっています。
 肺の奥のほうにできる肺がんは(肺野型)、レントゲン写真でよく発見されます。喫煙ともあまり関係がないので、40歳以上の方は、年1回は少なくとも検査する必要があります。
 一方、肺の入口にできる肺門型のがんは喫煙と深く関係しています。レントゲン写真に映りにくいのですが、痰の中にがん細胞がこぼれ落ちてくることが多いので、痰の細胞検査で早期に発見することができます。
 特に50歳以上の重喫煙者の方は、肺の入口の部分のがんにかかる率も高いので、痰の細胞診も定期的に行う必要があります。
 検診で肺癌が発見された患者さんの方が,自覚症状はあってから受診された患者さんより,明らかに長生きできています.
 ちなみに,別の病気で病院に通院中に発見された患者さんも,自覚症状がないうちに発見できているため,長生きしておられます。
 検診で早期発見される場合,70歳以上の高齢者より,60歳代までの方のほうが,早期発見により長生きできる可能性が高い結果がでました。
 これは,70歳以上の高齢者では,早期に肺癌が発見されても,高齢のために手術や抗癌剤治療ができないこと,肺癌を治療しても,別の病気で亡くなっておられる方が多いためです。