前立腺がんの主な症状

前立腺がんの主な症状は、尿障害です。
初めのうちはそれほど目立った症状は出ないのですが、前立腺がんが、ある程度大きくなって、尿道を圧迫したり、尿道に出てきたりすると、様々な症状が出てきます。
具体的には、眠りについた後に何回も尿意が沸き起こり、何回も小便をする夜間頻尿や、小便がちょろちょろとしか出ない排尿遅延、小便を出した後にまだ尿が残っている感じがする残尿感などがあります。
ちなみに、前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」でもまったく同じような症状が出ます。
これらの症状のほかにも、尿に血が混じる、精液に血が混じる、尿をする時に痛むといった障害も出てきます。
前立腺がんが、さらに進行すると、がん細胞が尿道を圧迫して、小便を出したいのに、尿がまったく出ない尿閉という状態におちいります。
膀胱の中に大量の尿がたまっていきますので、こうなると、尿道にやわらかいチューブを入れて、無理やりに尿を外に出す治療を行います。
周辺の骨に転移すると、骨が痛みますし、足や下腹部がむくみます。
さらに転移が進むと、腎臓から膀胱に尿を送る尿管にも障害が出て、その流れがさえぎられてしまいます。
こうなると、今度は腎臓の機能まで障害が出てきて、機能が低下します。
前立腺がんは初期の段階では症状がわかりにくいので、偶然のきっかけで発見されることが多く、はっきりと症状が出てきた段階では、すでにがんが進行している場合が多いのです。

前立腺がんの生存率

前立腺がんの生存率は他のがんに比べると比較的高めだと言えます。
しかも、前立腺は肺や大腸と違って、直接生命の維持にかかわる組織ではありません。
子供を作るための組織なので、切り取っても生命に支障は出ません。
ただ、がんが残っている場合に見つけにくく、死亡後に前立腺がんだったと判明するケースもしばしばあるほどです。
一般的にがんの生存率には5年生存率が使われます。
これは、治療後5年以内に生存している患者の割合です。
他のがんでは5年経って再発しなければ、その後の再発の可能性はほとんどないことから「完治した」と確定されますが、前立腺がんは5年経った後でも20%近くの人が再発するので、進行が遅い
一方で、完治もしにくいがんだと言えます。
前立腺がんの5年生存率は、一般的には、前立腺内に限局している場合で70~90%、前立腺周囲に拡がっている場で50~70%、
リンパ節転移がある場合で30~50%、骨や肺などに遠隔転移がある場合で20~30%です。
また、がん以外の原因による死亡率は、局所にとどまるがんの10年非がん死率で100%、局所浸潤・リンパ節転移が認められる症例の10年非がん死率で37.4%、初診時骨転移が認められる症例の
10年非がん死率は11.2%です。
前立腺がんは年齢が高くなるにつれて、かかりやすくなります。しかし、高齢化すると他の病気も出てきますので、先に他の病気が悪化したり、寿命で死ぬことが多いのです。

前立腺がんと遺伝の関係

家族に前立腺がん患者がいる場合、家族が前立腺がんにかかる確率は高いということがわかっています。
前立腺がん患者の約15%は、父親や兄弟にも前立腺がんが発生しているという調査もあります。
また、とくに55歳より若い年齢で、前立腺がんと診断された人のうち、約45%は遺伝と関係があるとも言われています。
家族に前立腺がん患者がいる場合は、定期的に検査を受けることで、早期に発見できることがあるようです。
そもそも、がんという病気自体が細胞の遺伝子異常が原因ですから、遺伝が関わっていることは当然の話と言えるでしょう。
がん遺伝子は、本来、細胞の増殖を助ける働きを持っています。
これが壊れると、細胞が異常なスピードで増殖することになり、発がんをうながします。
逆に、がん抑制遺伝子というものが壊れると細胞の増殖が速くなり、発がんをうながします。
家族に前立腺がん患者がいる場合、もともとこれらの遺伝子に異常があるか、異常が起こりやすい体質であることが多く、それが遺伝と関係する原因となっているようです。
現在では、遺伝子に関する様々な研究がおこなわれており、将来的にはより効果的な遺伝子治療の登場が期待されています。