肺がんの検査方法 1(レントゲン)

レントゲンによって発見されたX線は物質を透過し(突き抜けることです)、写真のフィルムを感光させる性質をもちます。このとき通り抜ける物質によってX線は吸収され、エネルギーが下がります。
 そこで、写真フィルムの入ったカセットの前に立ち、胸を押し付けて、背中側からX線を照射するとカセットの中のフィルムが感光し、写真ができます。その写真はX線が通り抜けてきた体の部分によって濃淡ができます。
 例えば骨はX線を吸収する度合いが強いので、骨のある部分に相当するフィルムは感光されにくく、現像したときに白くなります。
 逆にほとんどが空気である肺の場合は通り抜けたX線のエネルギーが高いのでフィルムは十分に感光され、現像したときに黒くなります。
 このようにして胸部全体を半透明の影絵にして写したものが胸部正面単純X線写真です。
          胸部正面単純X線写真
          roentgen_photo01.jpg
 横からでも、斜めからでも撮ることはありますが、なじみが深いのは正面写真でしょう。しかし、単純X線写真では見えない部分(見えにくい部分)があります。
 余談ですが、レントゲンという博士はこのX線の発見で第1回のノーベル賞を受賞しています。彼の功績をたたえてX線写真のことをレントゲンと呼ぶわけですが、本来一般名詞ではありません(人の名前です)。この説明ではできるだけ「X線写真」と表記するようにします。
 注意しておかなければならないのは、単純X線写真は、立体を平面の写真に投影していることです。
 つまり、邪魔者があるとそれの影になったものは見えません。邪魔者とは、肺を中心として考えたときには、骨、心臓、血管、横隔膜などです。胸部X線写真ではこれらの臓器に隠されて見えない肺の部分がかなり大きく存在します。
 この欠点を克服しようとして、肺尖撮影や、断層撮影が行われていましたが、CTの導入により特殊な場合に限られるようになりました。
 邪魔者がなくても見えないものがあります。気管支は空気の管ですので、同じ空気の塊である肺の中にあると見分けることが困難です。
 このために気管支の中に造影剤を入れて気管支の状況を確認するという、気管支造影がありますが、これもCTによって得られる情報でほとんどが代用できるので、最近は特殊な目的以外には使われなくなりました。