肺がん 薬物療法

プラチナ(白金)製剤といわれるシスプラチン、カルボプラチンのどちらかに、90年代に登場した新しい抗がん剤(新規抗がん剤)のうちいずれか1種類を選んで併用し、3-4週ごとに4回治療すること(プラチナ二剤療法)が標準的です。大規模な検討の結果、どの組み合わせで治療を行っても得られる効果は大体同じくらいと考えられており、中間生存期間は約1年、1年生存率は50%から60%です。高齢者や、PS不良患者には、新規抗がん剤の中から1種類だけ選んで単独で投与する治療法もよく行われます。
 最近承認されたペメトレキセドには組織型による効果の差があります。すなわち、腺がんを中心とする非扁平上皮がんにおいて、シスプラチン+ゲムシタビン群に比べてシスプラチン+ペメトレキセド群は有意に生存期間を延長することが認められました。従来の抗がん剤では、非小細胞肺がんの中で組織型によって薬剤を選択することはなかったのですが、ペメトレキセドの登場によって、組織型に応じてより適切な治療法を考慮していくことが可能となりました。
 抗がん剤の副作用は薬の種類によって異なりますが、アレルギー反応、消化器症状(嘔気・嘔吐)、血液毒性(白血球減少・貧血・血小板減少)、肝障害、肺障害、腎障害・心毒性、末梢神経障害(しびれ)、脱毛、便秘・下痢などがあります。
 プラチナ二剤治療を行った後、二回目に行う治療をセカンドライン治療といいますが、その治療はドセタキセルやペメトレキセドの単剤使用が標準的です。

肺がん 放射線治療

がんの放射線治療にはライナックなどの大型治療装置で体の外から放射線を照射する方法(外部照射法)と、線源を入れた容器を臓器の中に入れ照射する方法(小線源治療)とがあります。肺がんの放射線治療は高エネルギーX線を外部照射することが多いが、最近は定位放射線治療や粒子線治療(陽性線や重粒子線)への期待も高まっています。
 IIIA/IIIB期の局所進行非小細胞肺がんに対して80年代までは放射線単独療法が行われていました。しかし多くの臨床試験の効果、放射線単独より化学療法の併用が優れ、さらに逐次併用より同時併用が優れていることが明らかにされ現在ではこれが標準治療となっています。放射線治療の多くは一日一回、週5回、一回2グレイを照射して、合計で非小細胞肺がんで60-70グレイ、小細胞肺がんでは一日二回の多分割照射で45グレイ照射することが一般的です。副作用には食道炎、肺臓炎、皮膚炎などがあります。しかし、有害事象も強いので患者さんの状態も考慮すべきです。
 肺門部早期例に対する気管支腔内照射は肺門部早期がんにおいて肺機能を保ちつつ手術例の治療成績と遜色のない結果が得られつつあります。また、このような肺がんにはPDT(Photo Dynamic Therapy;腫瘍に選択性のある薬剤を投与し、レーザーにより化学反応を起こし、腫瘍のみを選択的に障害を傷害する治療)等も行われています。
 また、肺がん脳転移に対しては通常は全脳照射を行われますが、大きさが3cm以下、数が3個以下であれば、ガンマナイフ治療や様々な方向から放射線を集中させる治療(SMART)が行われます。
 
 肺がんの治癒と言うより症状(疼痛や神経障害)の緩和目的・予防目的で骨や脳へ照射が行われることもあります。

スキルス胃がんは悪性度が高い

他のタイプと比べると、スキルス胃がんの悪性度は特に高く、生存率も低くなりがちです。特徴として早期発見が難しいことが挙げられますが、これは医の粘膜の表面に大きな変化を起こさないことが原因になっています。胃壁の中で広がっていくため、たとえ定期検診を受けていたとしても、見落とされてしまうことが多いのです。そのため、発見された時にはおよそ60%の方が転移しています。
 転移はスキルス胃がんの治療法の選択肢を限定してしまうことがありますし、手術を行った場合でも再発の原因になってしまうことが多くなります。一般的には、早期胃がんなら治癒を目指すことができるのですが、すでに転移までしている状態では、話が変わってしまいます。診断としては、胃壁全体が硬くなってから見つかることが多くあります。
 厄介なスキルス性ですが、主に30歳代と40歳代の女性に発症しています。この年代の女性は、あまり胃がんにかかることがないため、検診を受けていないことも多くあります。たしかに、検査をすれば確実に発見できるものではなく、見逃されてしまうことも多いのですが、やはりあきらめることはできません。毎年レントゲン撮影を続け、過去の写真と比較することによって、早期発見できる可能性も残されています。
 生存率を高めるためには、手術のほかに化学療法を用いることで、残された癌細胞に対応することが一般的に考えられます。もちろん、個別に症状や転移の状態、患者さんの全身状態も考慮しなくてはなりません。現状として納得できるほどの成果が出せていないことが多いのですが、名医に診断してもらうことで、少しでも質の高い医療を望むこともできます。
 最新治療の研究では、抗がん剤を小さなカプセルに包んで投与する方法が研究されています。この研究が実用化されることによって、症状の改善は今よりも容易に望めるようになるかもしれません。

胃がんに効果的な食事療法

病院で専門医から治療を受ける場合には、手術や抗がん剤による化学療法、放射線治療が一般的に行われています。しかし、手術には後遺症がありますし、抗がん剤や放射線治療には副作用があり、深刻な事態を招くこともあります。そうした方法のほかに、胃がん治療に食事療法を用いる方法もありますので、参考にしてください。
 予防のために 名医による効果的な治療も、予防にはかないません。なにしろ、最初から食事で胃がんを予防することができれば、闘病生活を送る必要がなくなるのです。消化器官である以上、食べたものの影響を受けることは否めません。
 そこで気をつけたいことは、食事の時間を決めて、毎日規則正しい時間に食べることや、野菜や果物を豊富に摂取すること、過剰な脂肪や香辛料、アルコールの度数が高いお酒を控えること、保存状態の悪い物やカビの生えたものは食べないことが挙げられます。
 これらの注意点を守ったとしても、絶対に胃がんにならないわけではありません。しかし、食生活の乱れが罹患リスクを高めることは間違いのないことですので、リスクを減少させることにはつながります。日々の行動を少しづつでも変えてみましょう。
 術後の場合 胃がんの手術を行うと、胃の一部、または全部を摘出することになりますので、術前と同じ感覚でいるわけにはいきません。食べるものには原則として制限がありませんが、食べ方には変化があります。
 まず、回数を増やして一度に食べる量を減らすことです。無理に多めに食べようとするより、何回かに分けてみましょう。体調がよいと以前と同じ量を口にしてしまいそうになると思いますが、調子に乗ってしまうと後で苦しくなりますので、自重してください。新しい量に慣れるまでは、意識的にコントロールしましょう。
 また、噛むことによって、消化機能の低下を補いましょう。焦らずゆっくり食べるようにしてください。また、回数が増えても、毎日の時間は一定に保ちましょう。お腹が空いた時に好きなだけ口に運ぶのではなく、規則正しい生活を送ることが大切です。アルコールや消化の悪いものは、専門医と相談しながら摂取するようにしてください。くれぐれも体に負担をかけすぎるようなことはしないでください。
 ダンピング症候群 術後の後遺症として一般的なものに、ダンピング症候群があります。ダンピング症候群には早期と後期があり、早期ダンピング症候群は食後30分以内に発生する動機やめまい、脱力感、発汗、顔色の変化、下痢などの症状を示します。早期ダンピング症候群を防ぐためには、食事の時の水分を控えることや、甘くてとろとろしたお汁粉のようなものに気をつけることが必要です。
 後期ダンピング症候群の症状としては、食後2時間から3時間ほど経過してから、冷や汗や倦怠感、めまい、指のふるえ、脱力感が現われます。血糖値の低下が原因となっていますので、食後2時間ほど経った頃に間食をすることで予防することができます。

胃がんの生存率

胃がんは初期症状であれば治癒を目指すことができるほど予後が良いのですが、末期に近づくほど予後の経過は悪化します。
 病期(ステージ)ごとに一般的な5年生存率を見ていくと、ステージ0ではほぼ100%、ステージ1で90%、ステージ2で80%、ステージ3で50%、ステージ4で10%となっています。すべての病期を通算するとおよそ70%となっていますが、末期に近づくと決して良好とは言えない数字であることに注意が必要です。もっとも、難治がんの代表格であるすい臓がんと比べると明らかに予後が良好であり、癌であっても早期発見によって助かる見込みは十分にあると言えます。
 胃壁への変化が小さいスキルス性の場合を除けば、定期的に検診を受けておくことによって初期症状の段階で発見することは可能です。末期になる前に治療を行うことによって、治癒を目指しましょう。悪化するほどに再発の危険も高くなります。
 胃がん検診を行った場合、実際に胃がんと診断されるのは1000人に1人から2人の割合とされていますが、それでも大きな危険を避けるためには受診の意味があります。日本人にとって縁の深い癌ですので、油断しないで下さい。生存率が高いうちに治療しておきましょう。
 他の病院と生存率を比較するときには、通算の数字ではなく、それぞれの病期ごとに比べておきましょう。条件を揃えなくては適正な結果が得られないからです。
 また、特定の病期のみの数字が悪い場合には、十分な症例数が確保できていないケースや、その進行度における治療を効果的に行うための専門医がいないことや、設備が整っていない可能性がありますので、原因を明らかにしておいた方が良いでしょう。