肝臓がんの特徴

肝臓のはたらき
人間の内臓臓器の中で、最も大きく、成人では重さが1~1.5kgもあります。
栄養素の代謝や有害物質の解毒をはじめ、たくさんの複雑で重要な働きをしており、
私たちは肝臓の働きなくしては、生きていくことはできません。
特徴
C型肝炎から発病するパターンが圧倒的に多い。
肝臓がんは年々増加傾向にあり、現在、がんによる日本人男性の死亡者数は、
1位の肺がん、2位の胃がんに次いで、肝臓がんが3位を占めています。
男女で比較すると、3対1と男性に多く見られますが、
女性の場合でも、死亡者数は肝臓がんが4位を占めています。
男女合わせて年間約3万4千人が肝臓がんで亡くなっています。
年代としては40~60歳代によく見られます。
肝臓がんの種類
肝臓に発生するがんには、主として「肝細胞がん」と「肝内胆管がん」がありますが、
成人がかかる肝臓がんの約9割は、肝細胞から発生する肝細胞がんです。
肝がんは、肝臓から発生した「原発性肝がん」と、
胃や大腸など、他の臓器にできたがんが転移した「転移性肝がん」とに
大別されます。
一般に、転移性肝がんは、原発性肝がんに比べて治療が難しく、
命に関わることがあります。ただ、大腸がんの肝臓転移については、
手術によって対応できるケースもあり、比較的治療しやすいものといえます。
肝炎ウイルスとの密接な関係
日本人の肝がんの多くが「ウイルス性肝炎」をもとにして発生しています。
肝炎ウイルスにはA~G型までありますが、肝がんの原因となるのは、
主にB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスです。特にC型肝炎ウイルスは、
肝がんの原因の約8割を占めています。
 C型肝炎ウイルスに感染すると、多くの場合、40~100日間の
潜伏期間を経て、肝臓に急性の炎症が起こります。
これを急性肝炎といい、自然に治る人もいますが、
ほとんどは無症状に経過し、慢性肝炎から肝硬変へと進行します。
肝硬変になると、10~20年後肝がんを発病する危険性が高くなります。
 現在のところ、肝炎ウイルスと肝がんがどのような関係にあるのかは、まだ明らかではありません。
 肝炎ウイルスが正常な肝細胞に作用し、細胞の核に有る遺伝子を傷つけることによって、
 肝細胞ががん化するのではないかと推測されています。
 しかし、肝炎ウイルスが体内に侵入したとしても、必ずしも肝炎を起こすわけではありませんし、
 ウイルス性肝炎になっても、必ずがんになるわけではありません。
 いずれにしても、慢性肝炎や肝硬変の段階で適切な治療を受けて、
肝がんへの進行を食い止めることが大切になります。
 肝炎ウイルス以外に、肝がんを発症させる発がん物質として
「アフラトキシン」という黄色いカビの一種や、
着色剤のアゾ色素などが知られています。
症状
 肝がんに特有の症状は無く、肝がんを発病しても、肝硬変の症状が現れます。
 肝硬変とは、肝炎ウイルスによる肝細胞の破壊が進み、肝臓全体が萎縮して
 肝機能が低下した状態を言います。
 肝硬変によって、代謝や解毒などの肝機能が低下してくると、
「食欲不振、全身の倦怠感」などの症状が出てきます。
 肝機能の低下が更に進むと、血管やリンパ管から漏れ出した液体成分がおなかにたまったり(腹水)、顔や手、眼球の白目部分が黄色くなってしまう黄疸という症状が現れます。
 さらに、肝臓の血流が悪くなると、肝臓に送られるはずの血液が、
食道や胃の静脈に大量に送られるため、静脈がコブ状に膨らみます。
これを「静脈瘤」といいます。
 静脈瘤が破裂すると「吐血」や「下血」を起こし、命を落とすこともあります。
 また、肝臓でせき止められた血液は、脾臓にも流れ込みます。
その時に赤血球が壊される為、めまいや冷や汗、脱力感といった
「貧血」の症状が出ることもあります。
がんによる症状が現れることも
 肝臓には、肝動脈と門脈の2つの血管を通って、血液が運び込まれます。
 このうち、門脈ががんで詰まると、小腸や大腸などの消化管に血液がうっ滞してしまいます。
 その結果、消化管がむくんで、「下痢」が続くことがあります。
 また、がんが突然破裂して出血し、「腹痛」を起こすこともあります。
 がんがかなり進行すると、みぞおちの上から、しこりにふれることもあります。
 ただ、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝硬変にしても肝がんにしても、かなり進行してから出ないと症状が現れません。
 したがって、肝がんが発生する危険度の高いハイリスク・グループの人(ウイルス性肝炎の方)は定期的に検査を受けて肝臓の状態を調べることが重要です。