前立腺がんは転移しやすい

前立腺がんは比較的進行が遅く、おとなしいガンとされていますが、進行すると周囲の骨盤や脊椎に転移しやすくなります。
前立腺がんは早期に発見できれば90%は治療可能なのですが、早期発見が難しいことが死亡者数増加の原因になっています。
 前立腺がんが発見しづらい原因として、初期にほとんど自覚症状がない事があげられます。
たとえ自覚症状があったとしても、トイレが近くなったり、おしっこが出にくいなど、前立腺肥大症と症状が非常に似ており、歳のせいだからと診察を受けない人が多くいます。
これが早期発見の機会を逃す原因になっています。
 そのため、前立腺がんが進行して骨盤に転移し、腰や下肢に痛みを感じて整形外科を受診した際にがんが発見されるというケースが多々あります。
前立腺がんになる人の90%以上が60歳以上であることから、本人だけでなく、周囲の人も些細な体の変化を気にするようにし、定期的に検査を受けるようにする事が大切です。

前立腺がんが増えた原因

日本で急激に前立腺がんの患者数が増加している原因として、食生活の欧米化が考えられます。食生活が欧米化したことで高タンパク、高脂肪の食事が増え、それが前立腺がんや前立腺肥大症増加の大きな原因になっているのです。この事は、欧米で前立腺がんの患者数が多いことからも伺えます。
 また、平均寿命が延びたことで高齢者が増加した事も大きな理由の1つです。前立腺がん患者の90%以上は60歳以上であり、ガンの発見も50歳を超えてからがほとんどです。前立腺は男性ホルモンによって支配されており、高齢化に伴う男性ホルモンの影響が前立腺の病気発症に関わっていると考えられています。
 このほか、検査技術の向上によって前立腺がんの患者数が増加した事も考えられます。前立腺がんの初期には自覚症状がほとんどないために、前立腺がんが発症している事に気付かないケースも多々ありました。
しかし、検査技術が向上したことで、前立腺がんが人間ドックなどで早期に発見できるようになってきています。前立腺がんは他のガンと同様に、早く発見できればそれだけ完治の可能性も高くなるのです。

自覚症状のない前立腺がん

日本の前立腺がんの死亡率は14.4%(平成16年厚生省調べ)で、最も死亡率の高い肺がんの71.3%と比べて低いものですが、前立腺がんの患者さんは年々増加傾向にあります。
 前立腺がんは進行が遅く、初期の自覚症状があまり見られません。
そのため、発見時はかなり進行しているということが多いみたいです。
前立腺がんの原因の一つに欧米の食生活が広まりが言われています。
実際、肉をたくさん食べるアメリカでは前立腺がんの患者さんが非常に多いです。

前立腺の解剖と働き

前立腺は男性にしかない臓器で、精液の一部を作っています。
解剖学的には恥骨の裏側の骨盤腔の奥で、さらに膀胱に連続しその下に位置し、尿道を取り囲み、通常は3×4cm程度の大きさです。
また前立腺の背側は、直腸に隣接しているため、肛門から指を入れることにより(直腸診)、直腸壁越しに容易に触れることが出来ます(図1)。
この前立腺に発生するがんを前立腺がんといいます。
 正常前立腺は栗の実のような形で、移行領域と中心領域からなる内腺部と辺縁領域からなる外腺部からなります。
一般的に良性の前立腺肥大症は移行領域から発生し、前立腺がんの約70%は辺縁領域から発生します
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前立線がんの現状

前立腺がん患者の総数と死亡者数も急激に増えています。
患者数は、1975年に年間で約2000人でしたが、2000年には約2万3000人、2020年には約8万人近くに膨れ上がると予測されています。
死亡者数は、1950年ごろは、男性で、前立腺がんで死ぬ人は、がん死全体の0.1%でしたが、今では0.4%以上です。
この先には、10%に増えると予想されています。
また、2000年には約6800人だった年間死亡者数は、2015年には3倍の約2万人になるとも言われています。
前立腺がんが増えているのは、平均寿命が延びてがんになる人が増えていることと、食生活が欧米型になり、動物性たんぱく質を多くとるようになったことなどが理由です。
また、前立腺がんは人種によって、発症率が違うこともわかっています。
発症率がもっとも高いのは、アメリカ在住の黒人、次にヨーロッパとアメリカ在住の白人、在米アジア人、アジア圏のアジア人の順番になっています。
同じ日本人でも日本に住む人より、アメリカに住んでいる人のほうが発症する確率が高くなっています。
日系人を基準にすると、がんにかかる確率は、黒人で4~5倍、白人で2~3倍、フィリピン系で1~2倍となっています。
このことから、ライフスタイルや食生活が前立腺がんの発症にかかわっていることがわかります。

前立腺とは

前立腺は、男性だけが持っている生殖器官の一部です。
大きさ・形はちょうど栗の実くらいで膀胱のほぼ真下にあり、尿道を取り囲んでいます。
前立腺は何をしている臓器かと言いますと、精液の15~20%を占める「前立腺液」
を分泌していて、青年男性では盛んに活動しています。
その前立腺液には精子を守る働きがあります。
さらに前立腺は、生殖機能だけでなく膀胱の出口を開け閉めしたりする、排尿のコントロールにも関係しています。
詳しいはたらきについては、まだ未解明の部分も多いのですが、膀胱のすぐ下にあり、真ん中を尿道が通っている位置関係からも、排尿に影響を与えていることがわかります。
前立腺に異常が起きると、トイレが近くなったり尿がでにくくなったりします。
高齢になると役割を終えて次第に退化するのですが、異常をきたす場合があり、その代表的なものが前立腺肥大症と前立腺がんです。
前立腺は解剖学的に大きく分けて内側(内腺:ないせん)と外側(外腺:がいせん)
に分けられます。
(前立腺の超音波検査や特にMRIではこの2者を分けて見ることができます。)
最近は移行ゾーン・中心ゾーン・辺縁ゾーンの3つに分けることもあり、移行・中心ゾーンは内腺、辺縁ゾーンは外腺にあたると考えられます。
前立腺肥大症は内腺が肥大してきたもの(外腺は圧迫され薄くなる。)で、
前立腺がんは、おもに外腺から発生します。