上部消化管X線造影検査とは?

一般にいうバリウム検査のことで、X線を透過しない硫酸バリウムの乳化剤を飲んで、食道から胃・十二指腸までの上部消化管を造影し、テレビモニターで観察するとともに、X線撮影して、それらの臓器の病変を診断します。また、手術後の経過観察にも使われます。
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 上部消化管X線造影検査で何がわかるのか?
 食道、胃、十二指腸の病気の発見と診断のために行なわれます。特に食道がん、胃がん、胃・十二指腸潰瘍の診断に欠かせない検査です。通常のX線検査と違うのは、バリウムを飲んで、さらに発泡剤で胃を膨らませて撮影するという点です。胃を膨らませて、その内面にバリウムを塗りつけた状態になるので、胃壁などに生じた病変を早い段階から発見することができます(二重造影法)。
 上部消化管X線造影検査はどのように行なうのか? 当日の朝食を抜き、一切の飲食をしない状態で検査に臨みます。検査前には、胃の蠕動運動を抑えて鮮明な画像を得るため、上腕部に鎮痙剤の筋肉注射をします。バリウムと発泡剤を飲むと、胃の中では発泡剤から発生した炭酸ガスで胃が膨らみ、バリウムが内壁のほうへ押しやられて付着します。二重造影法で消化管の内壁をはっきりと写し出すためには、内壁に薄くまんべんなくバリウムを付着させる必要があります。そのため、機械で透視台を動かしたり、患者さん自身に体の向きを変えてもらったりして、バリウムを胃の中で動かし、内壁全体に行き渡るようにしているのです。
 検査にかかる時間はおよそ10~15分です。バリウムが少し飲みにくい(フルーツ味などがありますがやはり不味い)のと、ゲップを出したくなるくらいで、検査中の苦痛はありません。
 検査結果の判定 消化管X線造影写真は、粘膜に付着したバリウムが白く映り、空気(発泡剤で発生したガスなど)は黒く映り、消化管粘膜の微細部までわかるコントラストのはっきりした二重造影となります。
異常の有無は、消化管の形状に狭窄や周囲の臓器のよる圧迫、偏位、変形がないか、がんや潰瘍、炎症はないかなど、X線撮影された消化管像の形状で診断します。
 胃潰瘍の場合は胃粘膜がえぐれるため、側面像ではニッシェ(欠損部へのバリウムの溜まり)が見えたり、二重造影ではバリウムのたまりや、雛壁の集中像がみられます。胃がんの場合は、不整なニッシェや大きな隆起像がみられます。胃ポリープはいぼ状の突起物のため、小さな円形の抜けた像としてみられます。十二指腸潰瘍は十二指腸球部の変形やニッシェがみられます。
 異常があったらどうするか? 
 異常が見つかった場合は、再度、X線検査を受けたり、上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)などでさらに詳しく検査します。がんが疑われる場合は、内視鏡検査で組織を採取する生検を行なったり、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)検査などを行ないます。
 異常な場合に疑われる病気
 食道がん、食道炎、食道静脈瘤、胃潰瘍、胃がん、胃炎、胃ポリープ、十二指腸潰瘍など

胃透視(バリウム検査)

受診の際の留意事項
検査前日まで
◆ 検診日の2日位前からは、アルコール類を控えて下さい。
◆ 検診前日の夕食は、消化の悪い物は避けて下さい。また、午後10時までに食事を済ませ、それ以降は飲食をしないで下さい。当日、撮影の際、胃に食物が残っていると検診を中止することになりますので注意して下さい。
検査当日
◆ 検診当日は絶食でお願いします。たばこ・ガムも厳禁です。胃の壁を刺激して、胃液がたくさんでてしまい、胃の壁にバリウムがつきにくくなり、精密検査が必要という結果になることもありますので検査が終了するまでは、食べたり飲んだり吸ったりしないで下さい。
◆ 胸の周り・おなかの周りにボタン・カギホック・ファスナー等が付いていれば検診衣(ガウン)にあらかじめ着替えて準備をお願いします。
検査の手順
① 問診を行います。
② 発泡剤(顆粒)を口の奥の方に入れ少量の水と一緒に飲み込みます。おなかが張りゲップがでそうになりますが、唾を飲み込む要領で検査が終わるまでゲップを出さないで下さい。
③ バリウムをひとくち口に含み、指示により空気と一緒に飲みます。(食道二重造影像を撮影する場合のみ)
④ バリウムを全て飲みます。こぼさない様に飲んで下さい。こぼして服に付くと検診衣(ガウン)を着替えていただきます。
⑤ 撮影を行います。台が倒れ、体を仰向けやうつぶせ、左右に回転させるなどの指示が出され様々な角度から撮影を行います。胃の動きを止めるため「息を止めてください。」という指示があります。胃が動いているとボケた写真になってしまいますので、しっかりと息を止め、おなかを動かさないようにお願いします。
◇人間ドック 撮影時間 …… 約 7 分
◇住民検診 撮影時間 …… 約 3 分
バリウム(造影剤)・発泡剤(炭酸)はなぜ必要か?
◆ 胃は、透明なしぼんだ風船のような物ですから胃の内壁にバリウムを塗り付ける必要があります。また、発泡剤は、胃を膨らます薬です。胃を膨らますことによって1mm単位の病変を発見することが可能になります。膨らんでない胃袋では胃の中を観察することができません。バリウムはX線を多く吸収し、発泡剤はX線の吸収が少なく、胃内壁の濃淡画像を作り撮影する方法のため必要です。
検診終了後の注意◆ 検診終了後多めに水(コップ2杯位)を飲み、30分ぐらい時間をおいてから緩下剤を服用して下さい。
◆ 検診終了後24時間経過しても、バリウム便(白い便)が全く出なく腹痛を伴うようであればすみやかに医療機関にご相談下さい。また、検診の次の日から2日を過ぎても排便をみない場合は、腹痛を伴わなくても医療機関を受診して下さい。
◆ バリウムは体内に吸収されることなく、胃から小腸、大腸へ進み最終的に肛門から身体の外に排泄されます。そのため、水分をたくさんとって早く白い便を出すようにして下さい。そうしないと、腸の中で固まって、出にくくなり最悪の場合、セメントのように固まる場合もありますので注意して下さい。

食道がん病期:ステージ

0期(上皮内がん)
がんが粘膜にとどまっており、リンパ節や他の臓器にがんの転移・浸潤が認められないものです。いわゆる早期がん、初期がんと呼ばれているがんです。
Ⅰ期
がんが粘膜にとどまっていますがすぐ近くのリンパ節のみに転移があると判断された時、あるいはがんが粘膜下層まで拡がっていますがリンパ節や他の臓器にがんが認められなければⅠ期と分類します。
Ⅱ期
がんが筋層を越えて食道の壁の外にわずかに出ていると判断された時、あるいは食道がんが筋層にまで拡がり、すぐ近くのリンパ節のみにがんがあると判断された時、そして他の臓器にがんが認められなければⅡ期と分類します。
Ⅲ期
がんが筋層を越えて食道の壁の外に明らかに出ていると判断された時、あるいは食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがあると判断された時、そして他の臓器にがんが認められなければⅢ期と分類します。
Ⅳ期
がんが食道周囲の臓器に喰い込んでいる(浸潤している)か、がんから遠く離れたリンパ節にがんがあると判断された時、あるいは他の臓器にがんが認められたらⅣ期と分類します。

食道がんの進行度

食道がんの治療法を決めたり、また治療によりどの程度治る見込みがあるかを予想したりする時に、どれくらい病気が進行しているかをあらわす進行度分類(病期:ステージ)を使用します。
日本では日本食道学会の「食道がん取扱い規約」に基づいて進行度分類を行っています。
最近では欧米を中心に国際的な分類であるUICCのTNM病期分類も使われる場合もあります。
各検査で得られた所見、あるいは手術時の所見により、深達度(がんの深さ)、リンパ節転移、他の臓器の転移の有無にしたがって病期を決定します。
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