食道がん進行度診断のための検査

がんの種類およびがん細胞が食道内にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかを調べるために行われる検査を「病期診断」といいます。
 病期診断のために行われた検査から得られた情報から、疾患の病期が決定されます。治療計画を立てるためには病期を把握することが重要であり、病期診断のために行われる検査や方法には次のようなものがあります。
CT検査食道がんの大きさ・周囲への浸潤・リンパ節への転移の有無・肺や肝臓などへの遠隔転移の有無を評価します。
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PET検査(陽電子放射断層撮影検査)体内にあるがん細胞をみつけるための検査です。悪性のがん細胞は正常の細胞よりも活発で、グルコース(糖)をより多く吸収します。PET検査では、少量の放射性グルコースを静脈内に注射し、その取り込みの分布を撮影して悪性がん細胞を検出します。糖の取り込みが多い部位は強く染まることで全身の転移の有無を検索し、食道がんの病期決定に役立てます。特にCT検査による判断が困難な転移の評価に有用な場合があります。
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超音波内視鏡検査(EUS)外見上は内視鏡(胃カメラ)と変わりないのですが、食道内壁の粘膜を観察する内視鏡検査と異なり、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて粘膜下の状態、食道の壁や食道壁外の構造などを観察することができます。つまり、食道がんがどのくらい深く進展しているか、周りの臓器(気管や血管)へ喰い込んでいないか、食道の外側にあるリンパ節が腫れていないか(リンパ節転移の有無)などについてのより詳細な情報を得ることができます。これは、治療方針の決定に非常に重要な役割を果たします。

生検

生きている人間、すなわち生体から組織の一部を採取し、その組織学的形態像から病気の診断を行う方法で、バイオプシーbiopsyともいう。
 皮膚生検のように体表から生検を行う場合には、その方法は比較的簡単であるが、体内の臓器から生検をする場合には、ファイバースコープを代表とする内視鏡を介して生検する。
 たとえば食道、胃、小腸および大腸のような消化管では、ファイバースコープによる直視下生検が行われている。
 また、肝臓に対しては腹腔(ふくくう)鏡直視下に行う肝生検のほか、内視鏡を使わない盲目的な肝生検も行われている。
 なお、胃癌(がん)とくに早期胃癌の診断には胃生検が不可欠である。また、従来生検が困難であった膵臓(すいぞう)に対しても、膵生検が試みられるようになった。

内視鏡検査

胃の電子スコ-プは、病変を詳しく調べるために、直接テレビ撮影し、ビデオにも記録できる、最新の検査装置です.レントゲン検査よりもはるかに,また以前の胃カメラやファイバ-・スコ-プよりもいっそう詳しく病変が観察できるのが特徴です.
この検査では,食道,胃,十二指腸の形態の変化,潰瘍,腫瘍あるいは各種の炎症性病変の診断ができます.生検といって病変の一部を採取し,病理検査によって手術が必要な病変か,そのままお薬で経過を見てよい病変なのかを鑑別することもできます.
 以前の装置に比べ検査中の苦痛も少なくなりました.特に反射が強く、つらい経験をした方は、軽く眠っている間に終わってしまう方法も選べます.安心して検査をお受け下さい.
 検査前日まで(前の晩)の注意
 抗血栓薬(ワーファリン、パナルジン、プロサイリン、プレタール、バイアスピリン等)を服用中の方は、休薬と再開の時期を主治医と相談して決めてください.休薬しなくても検査はできますが、生検(病理検査)は出来ないことがあります.通常は検査前約1週間の休薬が必要です.
 前日の夕食は,普通に食べて下さい(海苔、昆布、ワカメなど消化の悪いものはさけて下さい).
 その後,就寝まで水分(お茶,水)を充分摂取して下さい.
 検査当日(朝)の注意
 検査の日は朝食を食べずに来院して下さい.
 糖尿病の薬、抗血栓薬以外で、いつも朝に服用している薬は少量の水で服用してかまいません.
 歯も磨いて結構です.少量のお水は飲んでも大丈夫です.
 入れ歯のある方、特殊なお薬を服用している方、アレルギーや体の具合いの悪い方は看護婦に申し出て下さい.
 反射が強いため以前の検査で苦しい思いをされた方は、安定剤で軽く眠っている間に検査を受ける方法も選べますので申し出て下さい.(その方は、車の運転をしないで来院して下さい)
 検査前の処置
 ゼリー状の麻酔薬とスプレーでのどを麻酔し、ベッドに仰向けに寝ます.
 腕に胃の緊張を取る注射をします.反射の強い方には安定剤で軽く眠っている間に検査ができる注射をします.
 
 検査の後は
 検査の後、約2時間は,のどの麻酔がきいていますから,飲んだり食べたりしないでください.その間は,下を向いて軽く口をすすぐ程度にして下さい.
 2時間位経って、のどがいつものような感じになったら、少量の水を飲み、むせずにうまく飲込める事を確かめてから飲食をはじめて下さい.
 安定剤の注射をした方は,少し長めに休んでもらいます.念のため帰宅後もしばらく安静にして下さい(その日は車の運転をしないで下さい).
 結果はビデオにより、その場でごらんになれます.
 色素散布をされた方は、検査後尿や便が青みがかることがありますが、色素が排泄されるためで、すぐに元に戻りますから心配しないで下さい.
 生検(病理検査)の標本を採取された方は、胃粘膜から少量の出血がありますので、検査当日は刺激物(香辛料、柑橘類等)や酒類の摂取は控えて下さい.翌日の便が、少し黒っぽくなることがあります.その後も、黒いタール様の便が続くようでしたら、すぐにご連絡下さい.
 組織の生検をされた方は、病理検査の結果が10日から2週間後には出ますので、必ず結果を聞きに来院して下さい.
検 査後、大量の血を吐いたり、黒いタール様の便が出るときは、すぐに病院に連絡して下さい.

食道・胃・十二指腸造影検査(GIS)

目的
 バリウムと空気による二重造影法によって,食道・胃・十二指腸などの消化管の粘膜の病変をX線写真として,撮影します。
◆検査の方法  検査の始まる2~3分前に,胃や腸の蠕動(動き)をおさえる筋肉注射をします。
少量のバリウムを飲んでから,胃を軽く圧迫しながら,撮影します。
一口バリウムを口の中にほおばっていただき,合図と同時に飲み込んでください。食道の撮影をします。( 数回くりかえします。)
 発泡剤という薬をのんでいただきます。このお薬は胃の中で溶けて,ガスとなり胃を膨らませます。バリウムを約150ml飲んでいただきます。
 胃が膨らんだ状態で,うつ伏せから,仰向けになたりして体を回転させて,胃の粘膜上にバリウムをコーティングして,X線写真を撮影します。(二重造影法といいいます。)
  したがって,できるだけ合図にしたがて,右をむいたり,左を向いたりして,体位変換をしていただきます。このようにして,X線写真を撮影します。
 検査時間は人によって異なりますが,およそ20~30分程度です。
◆前処置(検査のために必要な準備事項)
検査前日の夕食は,8時までにすませ,その後は食べないでください。
検査当日は一切の飲食物・タバコ・ガムなどとらないでください。 (ただし,医師から処方された血圧・心臓・喘息などのお薬は飲んでください。)
 このように,胃の中をからっぽにした状態で,検査をすることが最も重要です。 胃の中に,食べ物が残っていたりすると,胃粘膜上の病変と重なったりしますと, 正確な診断に差し支えますので,前処置を必ず守ってください。
 ◆注意事項
緑内障・前立腺肥大症・心臓疾患などのある方は,また食物・薬物アレルギーのある方は,検査当日にあらかじめ看護師に申し出てください。
 検査当日に,飲食された場合は,あらかじめその旨を看護師に伝えてください。
 妊娠のあそれのある方は,検査できませんので申し出てください。

食堂がん発見のための検査

食道造影検査
 食道と胃のX線像です。バリウム(銀白色の金属化合物)を飲んで、X線撮影を行い、食道病変の有無を確かめます。ただし、がんができてから間もない早期病変の診断は困難です。
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 内視鏡検査(胃カメラ)
 内視鏡(細く、ライトの付いたチューブ)を口または鼻から胃まで挿入して胃・食道内部を観察し、食道病変の有無を確かめます。進行したがんのみならず粘膜面にとどまる早期がんの診断に有用です。
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 生検
 食道がんの疑われる部位の細胞または組織の一部を取って顕微鏡で観察し、がんの有無を調べます。通常、生検は内視鏡検査中に行われます。

飲酒喫煙でリスク上昇

なぜ飲酒と喫煙が食道がんのリスクを高めるか
 食道がんの中でも、日本人に多いのが「食道扁平上皮癌」です。
 お酒にふくまれるエタノールは、体内で分解されてアセトアルデヒド(二日酔い物質)となります。
このアセトアルデヒドには発がん作用があるため、食道が長期間高濃度のアセトアルデヒトにさらされると、食道がんになりやすくなります。
 またアセトアルデヒドがたまりやすい体質の人は、食道癌の危険が高い(食道癌高危険群)ということになります。
 飲酒によって顔が赤くなるのはアセトアルデヒドによる作用ですので、少量の飲酒で顔が赤くなる(または若いことは赤くなった)人は、アセトアルデヒドがたまりやすい体質です。
 このような体質の人で、以前は余り飲めなかったのにだんだん慣れてきて、お酒を飲めるようになり、ほぼ毎日にように大量の飲酒を続けると、食道癌になりやすいということになります。
 飲酒に喫煙が加わると、食道癌の発がんリスクがぐんと上昇します。
飲酒と喫煙を止めれば、食道がんののリスクは5年で4分の1に減るといわれています。
 飲酒喫煙の習慣がある人は、食道がんにかかるリスクが高いのは明確です。
早期発見のために、人間ドックを受けましょう

食道がん・お酒が弱い人も要注意

食道がん発症のリスクを高める原因「飲酒・喫煙・遺伝子タイプ」
 食道がんになるリスクが高くなるのは、「飲酒」「喫煙」「遺伝子タイプ」の3つが重なった人。
こんな研究結果が出されました。
 大阪大学と九州大学の共同研究によるもので、「飲酒」「喫煙」が高リスクなのはすでに知られていますが、問題は3番目の「遺伝子タイプ」。
 遺伝子タイプとは、体内のアルコール処理能力が高いタイプか低いタイプかという意味です。
 お酒を飲んで体内に入ったアルコールは、酵素の働きで「アセトアルデヒド」に分解され、別の酵素の作用で、無毒の「酢酸」に変わります。

食道がんの死亡率

食道がんは悪性度が高いといわれていますが、
 早期発見できれば、内視鏡的粘膜切除術で切除された後の5年生存率は100%です。
 内視鏡的粘膜切除術で切除できない場合でも、手術で切除できれば
5年生存率はほぼ100%です。
 ただ食道がんは転移しやすいという特徴があり、頸のリンパ節などへ転移しやすいといわれています。
 リンパ節への転移があった場合、生存率は大幅に低下し20%程度とも言われています。
 食道がんはリンパ節から、早期に肝臓、肺、骨、脳などに転移します。
 いったんこのような臓器に転移すると、化学療法を行うしか方法がありません。
 よって、食道がんは何より早期発見が重要です。
 特に食道がんは、いったん進行すると急に治癒率が下がります。
 人間ドックでの検査を恐れず、少しでもおかしいな?という自覚症状があったら検査を受け、
早期発見・早期治療を行いましょう。

食道がんの原因を知った上での予防対策

食道ガンというのはなぜ起こるのでしょうか。なぜ起こるのかという原因などを知っておくことで、がん予防やガン対策なども考えていけるようになります。
 そもそも、食道がんというのは重荷食道粘膜の刺激によって引き起こされると言われています。
 具体的にどういうことかというのを解説してみると、まず1つめとしての原因がたばこの摂取に当たります。
 これは、タバコに含まれている有害物質によって、食道の粘膜が刺激されてしまい、食道がんになってしまう可能性が高まるのです。
 またタバコだけでなく、アルコールも適量ではなく過度に摂取してしすぎると、食道粘膜を傷つけてしまう事になりますので、この事から食道がんになってしまう可能性が高まるといえます。
 さらには、食道粘膜を傷つけるという観点から言って見れば、熱い飲み物などに関しても同様の事が言えますので食道がんになってしまうリスクというのは少なからず高まると言えます。
 そして、食道がんになる可能性が高い状態においては、バレット食道と呼ばれるものがあります。
このバレット食道というのは、胃液が逆流する事によって食道の粘膜が障害を受けてしまい、その再生と障害が長期間にわたって繰り返されてしまっていくうちに、食道の粘膜が胃の粘膜に似た構造へとなってしまうことを言います。
 こういった危険因子が食道がんには存在します。
タバコは吸うだけでもそうですし、アルコールなどの摂取も、適量に抑えておくように心がけたいところです。

自覚症状なども含めた食道癌の症状について

食道がんは、先ほども述べたように、発見が遅れやすいガンでもあります。
そのため、どういった症状が食道がんの症状としてあるのかを知っておき、不安や何か思う事があれば、確認をして早期発見に努めなければなりません。
 では、食道ガンの症状としてどういったものが挙げられるかというと、まず1つ目としては、何か物を食べた際に、つかえを感じたり、しみる感じを覚えるという事が挙げられます。
 これは食道がんにおける初期症状に当たるのですが、何か熱いものを食べたというような場合でもしみるような感じを覚えたりする事が挙げられます。
 また、がんが少し進行して大きくなってくると、食道の内腔が、ガン細胞の増殖によって狭まれてしますため、食べ物を飲み込もうと思った際に多少つっかえた感じがするようになってきます。
 また、食道ガンの2つ目の症状としては、嘔吐が挙げられます。
これがなぜ起こるのかというと、そもそも食道癌が大きくなり、食道を塞ぐ程までの大きさになってくると、当然ながら食べ物や飲み物を飲み込もうと思ってもなかなか飲み込めなくなってしまい、そのために吐いてしまうのが原因となります。
 そして3つめの症状としてが、咳や血痰というのがあります。
 これは食道ガンが進行してしまって、その範囲が気管や肺にまで達してしまった場合に、それらを刺激して咳や血痰が出るといった症状が見られる場合があります。
 4つ目としては、胸痛が挙げられます。
これも、食道がんが進行してしまって、その範囲が背骨や肺にまで達してしまった場合に、胸の痛みであったり、背中の痛みという症状が見られる場合があります。
 そして5つ目の症状として挙げられるのに、嗄声があります。これは「させい」と読みますが、もともと食道の横には、声帯の動きを調節してくれる神経が通っているのですが、食道ガンが進行してしまって、それらの神経までも侵してしまうと、嗄声が起こるといった事があります。
 そして、食道がんになると、食事がまともになかなか取れなくなるという事の影響で、体重が減少するという症状も見受けられます。

食道がんの初期症状と進行具合

食道がんの初期症状は「沁みる感じ」
 喉が沁みる感じや詰まる感じは、よくある症状。しかし長引く場合やいつも起きる場合は注意が必要です
 食道がんの代表的な初期症状の1つが沁みる感覚。食道がんも他のがんと同様に粘膜から発生するため、最初の症状は粘膜の荒れに伴う感覚異常から起きます。
 例えばかなり熱い物を食べた時など、いわゆる喉元からお腹にかけてツーッと食べ物が落ちていく感じの経験がある人は多いと思います。普段は意識しないものの、人間の食道の感覚は鋭敏で比較的正確なのです。ここに異物があると「何だか沁みる」という自覚症状として異変に気づくことができます。
 進行した食道がんでは「詰まる感じ」
 また初期症状から少し進行すると、食道の内側に向かって腫瘍が盛り上がったり、食道の壁が固くなったりするので、食べたものが通りづらくなります。具体的には、食べ物が喉元や胸のあたりで詰まるような違和感が出てきます。
 喉が詰まる感じは他のさまざまな疾患でも起こる症状で、心配ないものがほとんど。しかし食道がんの「詰まる感じ」は、再現性があることが特徴です。
 普段は違和感がないが、たまに詰まる感じがする程度なら通常は心配ありません。「液体は通るが、固形物が詰まる」「これぐらいの量のご飯を食べると、毎回必ず詰まる感じになる」など、毎回同じ症状がある場合は、早めに内科を受診することをお勧めします。
 声がれや咳・血痰にも要注意症状がもう少し進むと声を出す神経が影響を受けるため、声がかれたり、かすれたりする場合があります。食道にできた腫瘍が隣接する臓器である肺や気管支へと浸潤することで、咳や血の混じった痰が出てくることも。
 もちろん声がれや咳は風邪でも見られる症状なので、心配しすぎることはありません。しかし、通常の風邪なら数日から10日ぐらいで軽快していくのが普通。声枯れや咳が長引く場合や、風邪症状を伴わなかったり、上記のような沁みる感じや詰まる感じを伴う場合は、やはり内科を受診するようにしましょう。

食道がんの初期症状

もし、自分に食道がんかもしれないという自覚があるのでしたら、迷うことなくまずは診断を受けることをオススメします。
 発症する年齢は50歳から多くなり、60歳でピークを迎えるようですが、初期症状は一体どのようなものなのでしょうか。
 食道がんの初期症状は殆ど無いでしょう。
 食道がんになる人は10対1の割合で男性が多いようです。なかでも食道がんになる人の多くは、お酒やタバコが好きな人、熱い食べ物や塩辛い食べ物が好きな人が多いです。
 食道がんの初期症状は先ほども述べた通り、自覚症状がないのが多いですが、中には胸の奥がわずかにしみるような初期症状を経験する方もいます。食物が通過する感じを自覚する方もいます。
 食道がんの初期症状から中期へと移行すると、物を食べた時の固形物が通過困難になると共に、痛みを感じるようになるでしょう。食道がんにも無症状食道がんが20%であると言われています。
 食道がんの初期症状が発症して1年以内に死亡してしまう人が多い病気で、5年以上の生存率も5%と、とても死亡率の高い病気なのです。
 食道がんの初期症状が殆どないので、がんが転移して初めて食道がんであるとわかる場合が多いのです。食道がんの初期症状を早期発見するためにも、定期検診などを受けるようにしましょう

食道がんの自覚症状

初期のうちには食道がんの自覚症状はほとんどありません。そのため、この時期に発見される場合には、検診によって見つかることが多くなります。この段階で治療を開始することができれば、治癒できる可能性が高く生存率も高くなります。
 進行した食道がんは自覚症状として、食事の時に喉に痛みやイガイガした感じが残ったり、熱い物を食べた時(飲んだ時)に胸がしみる、固形物が飲み込みづらいといった兆候が現われるようになります。さらに進行していくと、食べ物がつかえる度合いがひどくなり、やがては飲み物さえ喉を通らなくなることもあります。
 食事の場面以外では、声が嗄れることによって症状を自覚するケースもあります。また、転移が起きている場合にはそれによって生じた兆候で気付くこともあります。たとえば、肺転移の場合には呼吸困難や咳といったものがあります。転移がある状態になると、一般に予後が悪いことが多くなります。
 喫煙習慣のある方は食道がんになりやすいのですが、自覚症状は喉に関するものが多いため、タバコの影響で喉の調子が悪いだけと錯覚してしまうこともあります。長く続くような場合には、特に要注意だと考えておいてください。
残念ながら、自覚できる時には進行してしまっていることが多くなりますので、早期発見の期待は薄くなります。それでも、病院を受診しておくのは少しでも早いほうが望ましいので、迷ったら念のため病院に足を運びましょう。

食道がんと食事

食道がんは、その名の通り食道で発生するがん。そのため、食事との関係も深いもの。当然です。栄養バランスのとれた食事で健康を維持することは、当然ですが、「がんになりやすい食べ物」というのがあることも分かってきました。発がん性があると言われているのが、肉や魚の焦げです。
 焼きすぎで焦がしてしまうと、「ニトロソアミン」という有害物質が生成されるのです。「焦げた部分がおいしい」という方もいるかもしれませんが、焦げは、できるだけ食べないようにしましょう。また、刺激の強い食べ物も食道がんを誘発してしまう可能性も。カフェインやスパイス、カプサイシンが含まれる唐辛子や、高すぎる塩分は粘膜にダメージを与えてしまうことに。がん化を促してしまうのです。
 また、熱すぎる食べ物も、食道の粘膜には、あまりよくありません。お茶、お味噌汁、かけそばなど、熱々のまま口にすると、非常においしいのですが、温度が高すぎると粘膜を痛めることもあるのです。熱いものを飲み込んだ後、のどの奥が痛いと思うことはありませんか?そんな方は要注意なのです。食道の粘膜を傷めている可能性大。
 食道がんを予防するために、適温に冷ましてから口にするよう心掛けましょう。食道がん予防のためには、濃い味つけのお料理は避け、ビタミン・ミネラルが豊富な食事を適度に冷ましてから頂くように心がけましょう。坑酸化作用の高い食べ物を積極的に摂るように心掛けることも大切です。食事に関しては、食後、食べ物が逆流しやすい体質の方も要注意。
 食べ物が逆流して、食道の内側の粘膜がダメージを受け、がん化することもあるからです。1回の食事量を少なめにして、食事の回数を増やすようにしましょう。そうすれば、吐き気が起きることも少なくなるでしょう。食道がん予防のために、食事にちょっと気をつけてみましょう。その心掛けが、結果的に予防効果を高めてくれるのです。

食道がんになりやすい人

食道がんになりやすい人もあります。言いかえれば、食道がんになりやすい生活を送っている方ということ。もし、あなたも当てはまる項目があれば、改善できるように努力しましょう。食道がんになりやすい方とは、まず、喫煙、飲酒の習慣がある方。
 このどちらか一方でも、がん発症の原因となり得るのです。ましてや、どちらも習慣化している方となると、非常にハイリスクを背負っていることに。お酒を飲んだら、すぐに顔が赤くなるのに、付き合いでアルコールを飲む機会が多いという方。しかもタバコを吸いながら飲むことも多い・・・。こんな方は、高いがんのリスクを背負っていると自覚する必要があります。
 お酒の弱い方が飲み続けるということは、一般の方よりも食道がんの発症率を12倍にもアップさせるということ。要注意です。また、50才以上の方も注意が必要です。50才を過ぎると、体内にはかなりのダメージが蓄積されているものです。加齢による体の老化に伴って、蓄積されたダメージが一気にがん細胞化する可能性も高くなるのです。
 また、「逆流性胃炎」にないやすいという方も注意しましょう。炎症が長引くと、食道がん発症へと繋がる、「バレット粘膜」になってしまうことも。逆流性胃炎は見逃されやすい症状ですが、実は徹底的な検査を受ける必要がありますよ。さらに、性格的に心配性な方、イライラしやすい方も、食道がんになりやすいと言われています。このような性格は、免疫機能へも影響をもたらすことがあります。
 性格的なものもそうですが、日頃の食事も関係が深いと言われています。塩分の高い食事、辛い食事を好む方、野菜や果物の摂取量が少ない方は食生活を見直す必要があるでしょう。のどや食道の粘膜に負担を掛ける食事、ミネラル不足は、食道がんの原因となるのです。
 食道がんは、意識していれば、ある程度予防できるがんです。リスクの高い方や食道がんになりやすい性格の方などは、改善することを心掛けましょう。改善できる点は、しっかり見直す。これが一番簡単な、食道がん予防策と言えるのです。

食道がんとアルコール

食道がんの大きな原因のひとつに、アルコールが挙げられます。アルコールは、のどを痛める元でもあるのです。のどの粘膜がダメージを受け、細胞に過度の刺激を与えてしまいます。その細胞が、がん化するというワケ。昔から「酒は百薬の長」と言われているように、適度な飲酒は健康維持には有効的。
 けれども、大量のアルコール摂取となると、話は別です。アルコールの摂り過ぎは、体に大きな負担を与えてしまうことに。また、アルコールの分解機能と食道がんも大きな関連があることが指摘されています。体の中でアルコールを分解するためには、「アルコール脱水素酵素」から、毒性の高い「アセトアルデヒド」へと一旦変化させます。
 次に、「アルデヒド脱水素酵素」の作用で「酢酸」へと変化し、徐々に体に無害な成分へと分解していくという仕組みなのです。ところが、「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」が先天的に欠落している、または機能が低下している状態においては、上手く分解されずアルコールによって発がんを招いてしまうことになるのです。
 「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」欠損も、食道がんの原因になり得るということなのです。この酵素(ALDH2)が不活性な方は、日本人には意外に多く40%を占めているとも言われています。食道がんは日本人に多いがんであることからも、アルコールとの関係は、特に注意が必要なのです。アルコールに弱く、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなってしまうという方は要注意です。
 顔が赤くなるのは、アルデヒドが分解されず溜まってしまっている結果。分解されず、顔の血管が拡張している状態なのです。ですから、お酒を飲んで顔が赤くなりやすい方は、ALDH2が不活性という方が多く、食道がんへのリスクも高いということが指摘されています。アルコールによるがん発症を予防するためにも、飲酒は適量に抑えるようにしたいもの。
 もし、がんのリスクが高いのならば、禁酒をススメられる場合もあるのです

熱い飲食物が食道がんの原因に

食べ物や飲み物が熱いまま飲み込むと、食道がんのリスクが高まります。飲食物の通り道ですので、ダメージを受けることは想像できると思います。日常的な習慣の問題ですので、食事の時には気をつけておきましょう。
 極端に熱い状態のままでは飲み込めても病気になる危険が高いため、少し冷ましてからにすることが、予防につながります。
 このほかにも、喫煙や飲酒の習慣もリスクを高める原因になります。したがって、禁煙やアルコールを適量に控えることも、予防になるのです。

食道とは

喉と胃の間をつないでいるのが食道で、太さは2cmから3センチほどの管です。食べ物が通るため、粘液を分泌する粘膜で覆われており、食事の際には口から飲み込んだ食べ物を、今で送り込む働きを果たしています。
 重力の力だけでは、横になって食事をしたら食べ物が今で到達しないはずですが、寝ながらでも食事できるのは、こうした食道の働きがあるからです。

食道がんの基礎知識

他の癌と比較しても、食道がんは死亡率が高い部類に入ります。したがって、症状があるなら早期発見し、治療を開始することが必要です。悪化してから見つけるよりも、早めに対処することが生存率を向上させるための鉄則です。
年齢で見ると、40歳代後半以降になると増加し、男性は女性のおよそ5倍の罹患率となっていますので、男性は特に注意が必要です。食道がんの原因としては、飲酒と喫煙が関係していますので、両方に当てはまる方はリスクが高いことを意識してください。また、熱い物をそのまま飲み込むことも、罹患率を高くすると考えられています。
初期症状のうちは目立った兆候がほとんどありません。検診によってこの段階で発見できれば、早期がんであることが多いため、根治できる可能性が高い状態と言えます。進行していくと、食べ物を飲み込む時にしみることや、食べ物がつかえる感覚が出るようになります。他にも、咳や声のかすれといった症状が出る場合があります。
残念ながら、食道がんの症状が出るようになっている状態では、すでに進行してしまっていることが多くなります。したがって、初期症状を見逃さないためには、何も兆候がなくても人間ドックや健康診断を受けておき、体の状態をチェックしておく必要があります。
検査の方法としては、レントゲンや内視鏡、超音波検査、CT、MRI、PET、腫瘍マーカーなどがあり、それぞれに向き不向きがあります。検査によって食道がんであることが分かったら、ステージを判定する必要があります。食道がん取扱い規約によってステージ分類の基準が示されていますが、この他にもTNM分類が使われることがあります。日本と欧米を比較すると、細胞の種類(日本では扁平上皮がんが多いが、欧米では腺がんが多い)などがことなりますので、分類の仕方も多少異なります。
取扱い規約の分類では、0期から4期にステージが分かれ、4期が最も進行したもので、末期のケースもあります。ステージが4期になると他の臓器や原発巣から離れたリンパ節にまで転移している状態になります。
当然ながら、早期のステージは末期に近づいた場合よりも生存率が高い傾向があります。また、生存率は病院によっても差がありますので、食道がんの名医がいる病院を選んでおきたいものです。
治療は内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線治療が中心となります。外科手術による機能障害や、それぞれの治療による副作用といった負の側面についても、事前によく把握しておきましょう。症状の改善は重要ですが、闘病生活においては副作用に悩まされることも多くあります。その時になって戸惑わないようにあらかじめ理解を深めておく必要があります。
食道がんの治療法を始めとした基本的な知識を得るなら、ガイドラインを読んでみるのもお勧めです。ガイドラインによって理解を深めておけば、不要な心配をしなくて済みます。実像が見えないことが恐怖心をあおる要因でもあるのですから、まずは正しい知識を持っておくことが大切です