脳腫瘍に強い病院ベスト10

脳腫瘍は脳組織の中に異常細胞が増殖する病気だ。
発生率はざっと10万人に12人。細胞の形や性質によって
細かく分類されるが、全体として悪性のものが多いというから
怖いのだ。脳腫瘍で評価の高い病院を紹介しよう。
東京女子医科大学病院(東京都)
 東京女子医大病院の脳神経外科は、年間の脳腫瘍手術数が約320例で全国トップ。
脳腫瘍の手術で重要なのは、画像診断で確認された腫瘍を残らずきれいに摘出すること。
そして、それを言語や運動などの神経を傷つけずに行うことだ。
 同科では手術中に患者と会話をして言語機能を確認しながら行う「覚醒下手術」や、
手術中のMRI画像と摘出部位画像を重ね合わせて正確な摘出を行う「術中MRI」などの
新技術を用いて、5年生存率を飛躍的に向上させている。
「脳腫瘍の覚醒下手術は、てんかんの手術を応用したものです。特殊な麻酔薬を使います。
日本では95年に私が最初に始めました。術中MRIは98年から取り組んでいます。
2000年からは、世界で初めて2つの新技術をドッキングした治療を始めました」と
堀智勝教授。
 これは脳腫瘍の中でも難治の神経膠腫(グリオーマ)で治療効果を上げている。
「最近の50例のグリオーマを検討したところ、画像診断で確認された腫瘍の摘出率は
平均95%に向上しています。一般的には70~80%です。とくにグレード3で著しい
治療効果を上げて、5年生存率は従来の20%台から70%近くへと飛躍的な向上が
期待できます」(堀教授)
日本医科大学病院(東京都)
 日本医科大病院の脳神経外科は、脳下垂体腫瘍の手術数が年間約150例で全国
トップクラス。寺本明教授の通算手術数は1800例を超え世界8位だ。
 脳下垂体腫瘍の手術は上唇の裏を切開し、鼻の奥の骨(蝶形骨)を開いて腫瘍を
取り除く「顕微鏡手術」と、鼻の穴から内視鏡を入れて腫瘍を摘出する「内視鏡手術」がある。
「脳下垂体は全身のホルモンの働きを支配する機能を持っています。いずれの手術でも、
腫瘍を取り除く際には、下垂体の機能を損なわないように行うことが大切です。脳
卒中などの手術とは違った技術が必要です」と寺本教授。
 同科での顕微鏡手術の手術時間は1時間半ほど。一般的には4~5時間だから、
かなり短く、かつ安全に行われている。
「これまで手術による重篤な合併症はほとんどなく、手術死亡例もゼロです。
脳下垂体手術を専門とする医師や看護師などのチーム医療によって、短時間で安全な
手術を実現しています」(寺本教授)
北野病院(大阪府)
 北野病院の脳神経外科脳腫瘍センターは、年間約130例の脳腫瘍手術を行い
全国有数だ。日本で最初の民間の脳腫瘍センターを05年に設立し、各科の専門家による
チーム医療で脳腫瘍の治療に取り組む。手術だけでなく、化学放射線療法に力を入れる。
 海外では神経膠腫のグレード3、4の再発に対して、新しい抗がん剤テモロゾマイドと
放射線療法の併用療法が行われている。放射線単独療法よりも、この併用療法の方が、
生存期間が延びることがわかったのだ。
「当院では厳密な決まりのもとに、国内で初めてテモロゾマイドを用いた臨床治験を
行いました。今年中に、この抗がん剤は保険適用が見込まれています」(石川正恒部長)
 現在、この化学放射線療法の治験に参加できるのは、18歳から70歳までで身の回りの
世話ができることなど、いくつかの条件が必要だ。
「今後は、抗がん剤と放射線療法を併用した化学放射線療法も有力な治療法になると
思います」と石川部長。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
広南病院 脳神経外科
 小川欣一医師(電話)022・248・2131(宮城県)
東北大学脳神経外科と補完的関係にある。下垂体腫瘍など良性脳腫瘍を中心にMRI、
病理、内分泌学的診断に基づいて治療を行う
東京女子医科大学病院(東京都) 脳神経外科
 堀智勝教授(電話)03・3353・8111(東京都)
脳腫瘍の年間手術数約320例(05年)で全国一。覚醒下手術や術中MRIなどの新技術を駆使し、摘出率と5年生存率を大幅に向上
虎の門病院 脳神経外科
 臼井雅昭部長(電話)03・3588・1111(東京都)
下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫など年間手術数約220例。下垂体腫瘍は治癒率90%以上、聴神経腫瘍では顔面神経温存100%
慶応義塾大学病院 脳神経外科
 河瀬斌教授(電話)03・3353・1211(東京都)
脳腫瘍の年間手術数約280例。その多くが他病院からの紹介。あらゆる頭蓋底手術を実施。耳鼻科、形成外科と連携して手術を行う
日本医科大学病院 脳神経外科
 寺本明教授(電話)03・3822・2131(東京都)
下垂体腫瘍の年間手術数約150例で全国トップクラス。寺本教授の通算1800例は目下世界8位。重篤な合併症、手術死亡例なし
名古屋大学病院 脳神経外科
 吉田純教授(電話)052・741・2111(愛知県)
術中MRI画像誘導手術、内視鏡手術を含め年間130例の脳腫瘍外科手術を実施。悪性脳腫瘍には遺伝子治療、先端免疫治療等を行う
北野病院 脳神経外科脳腫瘍センター
 石川正恒部長(電話)06・6312・1221(大阪府)
日本で最初に民間の脳腫瘍センターを設立。新しい抗がん剤テモロゾマイドの国内初の治療実績。手術と化学放射線療法を適切に選択
大阪大学病院 脳神経外科
 吉峰俊樹教授(電話)06・6879・5111(大阪府)
昨年の治療数168例(うち手術123例、サイバーナイフ45例)。最先端の画像誘導手術、骨髄移植化学療法、新しい免疫療法の臨床試験中
九州大学病院 脳神経外科
 佐々木富男教授(電話)096・642・5533外来(福岡県)
脳腫瘍の年間手術数130例で全国有数。難易度の高い脳深部の腫瘍が多い。特に聴神経腫瘍は症例数、治療成績とも全国トップクラス
熊本大学病院 脳神経外科
 倉津純一教授 (電話)096・344・2111(熊本県)
05年の脳腫瘍患者数は163例。悪性脳腫瘍93例には集学的治療体制で対応。良性脳腫瘍も厳格な手術適応により良好な治療成績

咽頭がんに強い病院ベスト10

咽頭は鼻の奥から食道に至るまでの食物や空気の通り道で、上・中・下の3部位に分けられる。下咽頭がんは、酒好き・たばこ好きの男性に多く、頭頚部のがんの中でも最も治りにくいがんの一つだ。このがんの治療で定評のある病院は?
癌研有明病院(東京都)
 癌研有明病院の頭頚科は、世界トップクラスのマイクロサージャリーによる再建手術を生かした下咽頭がん手術で実績を持つ。マイクロサージャリーとは肉眼ではなく、顕微鏡をのぞきながら行う微小外科手術のことだ。
「下咽頭の進行がんでは、咽頭と喉頭、食道を切除します。この場合、主に空腸を使って食道を再建し、同時に声を出すための音声再建手術もします。また、がんが小さい場合には喉頭の一部を残す喉頭温存手術を行います。この場合も同様の音声再建手術などを行います。再建手術は血管を上手につなぐなどの高度な技術が求められます。
この再建手術にマイクロサージャリーの実績が役立っています」と川端一嘉部長。
 下咽頭がんの年間手術数は40~60例で、そのうち約10%に喉頭温存手術を行っている。
 同科での術後5年生存率は喉頭全摘手術が43~44%、喉頭温存手術は68~80%ほどでいずれも好成績だ。
「温存手術で切除範囲を小さくしても、5年生存率は下がらないことがわかってきました。切除範囲が少なければ、術後に起こりやすい誤嚥(食べた物が食道ではなく気道に入る)などを軽減することもできます」(川端部長)
大阪府立成人病センター(大阪府)
 大阪府立成人病センターの耳鼻咽喉科は、下咽頭がんの年間患者数45~50例で全国トップクラスだ。特に「食べる」「声を出す」などさまざまな機能を温存することに積極的に取り組んでいる。
「早期がんには放射線治療か喉頭温存手術のいずれかを選択して、喉頭の機能の温存を図っています。放射線治療による機能温存率はT1(がんが下咽頭のある部分に限られ、最大径2センチ以下)なら約68%、T2(最大径2センチを超え4センチ以下)では約61%です」と吉野邦俊部長。
 放射線治療による機能温存率では全国有数の好成績だ。また、喉頭の一部を温存する
 喉頭温存手術(T1、T2対象)でも機能温存率は約70%と高い治療成績を誇る。
 下咽頭がんは進行した状態で見つかることが多く、声帯を含む喉頭も手術で取らなければならない場合がほとんどだ。しかし、同病院では喉頭温存手術の適応の拡大も検討中である。
「下咽頭がんで再発した場合などにも、可能なら喉頭温存手術を行っています。治療後のリハビリにも力を入れています」(吉野部長)
北海道大学病院(北海道)
 北海道大学病院耳鼻咽喉科では、「超選択的動注化学療法」と呼ばれる最新治療法で、進行した下咽頭がんの治療に取り組んでいる。
「この治療法は90年代初めに米国で開発されたものです。当科では99年からこれまでに24例の下咽頭がん(頭頚部がん全体では120例以上)に実施し、奏効率は100%と好成績です」と福田諭教授。
 細い管(カテーテル)を太ももの付け根の動脈から挿入し、下咽頭がんに栄養を送る細い動脈まで運び、抗がん剤を大量に注入してがんのみに集中的に作用させる。
 同時に抗がん剤を中和する薬を鎖骨下の静脈に注射する。がんをたたいてから
 静脈に流れてきた抗がん剤の作用を減らして、全身への副作用を抑えるという治療法である。
 治療期間は約7週間。抗がん剤は週1回、合計3、4回実施。同時に放射線治療も行う。
「効果を得るのに十分な量の抗がん剤を投与しているにもかかわらず、副作用が少ないのがこの治療法の大きなメリット。かなり高い効果が期待できます。手術のできない進行した下咽頭がんや、手術を希望されない方には、有効な治療法の一つです」(福田教授)
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
  ●北海道大学病院 耳鼻咽喉科
 福田諭教授 (電話)011・716・1161(北海道)
根治手術、放射線化学同時併用療法、超選択的動注の各治療法を病期と患者の状態に合わせて適切に選択し、優れた成績を得ている
東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頚部外科
 志賀清人講師 (電話)022・717・7000(宮城県)
喉頭温存を目的に下咽頭部分切除術や化学放射線療法で好成績。進行例も化学放射線療法とサルベージ手術で生存率の向上を目指す
栃木県立がんセンター 頭頚科
 横山純吉副主幹兼医長 (電話)028・658・5151(栃木県)
手術不能進行例に抗がん剤を用いた超選択的動注を実施。全身への副作用を軽減し、音声や嚥下機能温存と治療成績の向上を得る
国立がんセンター東病院 消化器内科
 田原信医師 (電話)04・7133・1111(千葉県)
下咽頭がんを含む頭頚部がんの治療には頭頚科医と放射線科医、腫瘍内科医が協力し、チーム医療として行っている
癌研有明病院 頭頚科
 川端一嘉部長 (電話)03・3520・0111(東京都)
世界トップクラスのマイクロサージャリーを駆使した再建手術で実績。
年間手術数40~60例。温存手術にも積極的に取り組む
国立がんセンター中央病院 頭頚
 大山和一郎医長 (電話)03・3542・2511(東京都)
初発例、再発例を問わず、適応のある症例には喉頭を温存した下咽頭がん手術を行う。治療成績と術後のQOLの向上に取り組む
横浜市立大学付属病院 耳鼻咽喉科
 佃守部長 (電話)045・787・2800(神奈川県)
強い抗腫瘍性を持ち、かつ高い放射線増感作用を示す化学療法と放射線治療を併用し、喉頭の機能温存と予後の向上に努めている
金沢大学病院 耳鼻咽喉科
 吉崎智一講師 (電話)076・265・2000(石川県)
超選択的動注と放射線療法による臓器温存治療を実施し、従来の咽頭・頭頚部・食道摘出術に匹敵する生存率を得ている
大阪府立成人病センター 耳鼻咽喉科
 吉野邦俊部長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
下咽頭がんの年間患者数45~50例で全国有数。特に喉頭機能温存手術に積極的に取り組む。放射線治療科等の他科との連携も緊密だ
久留米大学病院 耳鼻咽喉科
 中島格教授 (電話)0942・31・7622外来(福岡県)
形成・消化器・放射線とのチーム医療により、国内最高レベルの生存率。初期がんに対する音声保存治療に向けて新たな取り組み中

乳がんに強い病院ベスト10

乳がんにかかる女性は、1年で3~4万人で、毎年1000人ずつ増えています。
 かかる年代としては30~65歳までの年齢層に多く、以前からすると若い年代の層にも無関係ではなくなってきています。
 胸は女性にとってとても大切なものです。
 発見や病院の設備などで、結果が大きく変わってくる、乳がんの治療に強い病院をご紹介します。
聖路加国際病院 (東京)
 ブレストセンター乳腺外科 中村清吾(なかむらせいご)センター長、津川浩一郎(つがわこういちろう)副医長、矢形寛(やがたひろし)医幹 (電話)03-3541-5151
2005年5月に乳がんの診断と治療を専門に行うブレストセンターができ、診療を始めました。名医・中村清吾センター長らの乳腺外科チームと放射線科、腫瘍内科、形成外科など、専門医たちが連携して、早期がんに対する日帰り手術を含む外来療法、先進的なチーム医療にも積極的に取り組んでいます。
乳がんとわかったときは、まず慌てないことです。がんは急にできたものではありません。その出発点は、実は、何年も前からじわじわと進んできたものです。だから、そう慌てることはないし、時間に余裕はあります。周囲の力を借り、じっくり対策を考えましょう」(中村清吾センター長)
亀田総合病院 (千葉県)
 乳腺センター 福間英祐(ふくまえいすけ)センター長、阿部聡子(あべさとこ)部長代理
 (電話)04-7092-2211
福間英祐センター長は最新治療に精通するとともに、乳腺内視鏡手術のパイオニアで累計手術数750例は圧倒的に世界一です。2004年の年間手術数156例中、乳腺内視鏡手術が127例(乳房温存99例を含む)を占めています。患者本位の姿勢を貫き、都内3ヶ所のクリニックでは精力的に「乳がんの出張外来」をこなしています。
「乳腺センターとして診断、治療、ケア、検診など、乳房の健康と病気にかかわるすべてについて、最新かつ多くの選択肢を提供します。とくに、乳腺内視鏡手術と、乳がんに対する凍結療法は、病気の根治と低い負担を両立させる治療だと考えています」(福間英祐センター長)
国立がんセンター中央病院 (東京都)
 乳腺外科 福富隆志(ふくとみたかし)医長、乳腺外科 木下貴之(きのしたたかゆき)医長、明石定子(あかしさだこ)医師 (電話)03-3542-2511
術前化学療法による乳房温存療法(過去1年間に約200例)の定期王の拡大と、CTやMRIによる至適切除範囲の設定などに力を入れる。患者全体の生存率は82.2%。
乳がん治療では多くの選択肢があります。まず医師の話をよく聞きましょう。そのあとは『先生におまかせします』ではいけません。自分の考えをもち、『私はこうしたいと思います』という考えが重要です」(福富隆志医長)
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
星総合病院 (福島県)
 外科・乳腺センター 野水整(のみずただし)副院長、片方直人(かたがたなおと)外科部長、 山田睦夫(やまだむつお)外科部長 (電話)024-923-3711
県内唯一の高性能マンモトーム政権施設であり、乳がん治療の実績では東北トップクラス。野水整お福院長(福島医大臨床教授)らの日本乳癌学会認定医3人が、「すべては患者さんのために」を基本姿勢に治療を行っています。
栃木県立がんセンター (栃木県)
 乳腺グループ医長 安藤二郎  (電話)028-658-5151
聖マリアンナ医科大学病院 (神奈川県)
 乳腺・内分泌外科教授 福田護 、緒方晴樹 講師 (電話)044-977-8111
静岡県立総合病院 (静岡県)
 乳腺外科 遠山和成(とおやまかずしげ)副院長、中上和彦(なかがみかずひこ)医長、
 常泉道子(つねいずみみちこ)医長 (電話)054-247-6111
「5年生存率は、あくまでひとつの目安でしかありません。患者さんの生死や予後を完全に把握することは今の社会では困難です。したがって予後調査がまじめにできている施設ほど生存率は悪くなる可能性がある、ということを知っておいていただきたいと思います」(中上一彦医長)
藤田保健衛生大学病院 (愛知県)
 内分泌科 岩瀬克己(いわせかつみ)教授、放射線科 小林英敏(こばやしひでとし)教授、
 血液内科・化学療法科 丸山文夫(まるやまふみお)助教授
 (電話)0562-93-2111
日本乳癌学会認定の乳腺専門施設。乳がんを中心とした乳腺の病気に対し、最先端の検査と治療を行っています。関連するほかの診療部門との連携を重んじたチーム医療を目指しています。
国立病院機構 四国がんセンター (愛媛県)
 乳腺外科 高嶋成光(たかしましげみつ)院長、大住省三(おおすみしょうぞう)医長、青儀健二郎(あおぎけんじろう)医師 (電話)089-932-1111
年間245例の乳癌手術は、愛媛県のすべての乳がん患者の60%以上にあたる。全体の10年生存率もステージⅡで93.5%と好成績です。乳房温存療法(2004年度は147例)を主として行い、形成外科の協力のもと、『きれいな乳房』を残すべく努めています。
鳥取大学医学部付属病院 (鳥取県)
 乳腺内分泌外科(第二外科)講師 石黒清介 (電話)0859-33-1111
北九州市立医療センター (福岡県)
 総括副院長 光山昌珠、外科部長(乳腺)阿南敬生 (電話)093-541-1831

食道がんに強い病院ベスト10

食道がんは近年になって生存率が高くなった。
 
 食道がん全体の5年生存率は約15~35%で、20年前の10%以下に比べてかなり改善されている。
 手術と並んで、化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法も
注目されてきた。優れた治療実績のある病院?
東海大学病院(神奈川県) 
 内視鏡治療の5年生存率が97%越す 。東海大学病院の消化器外科は、食道がんの
治療数が年間約200例、累計2400例を超え全国トップクラスの症例数を誇る。
 がんが粘膜内にとどまる早期がん(粘膜がん)では内視鏡的粘膜切除術(EMR)を
年間70~80例、がんが粘膜上皮を越えて粘膜下層に入った1~3期では手術を年間
80~90例、さらに進行して周囲の臓器に転移した場合では化学放射線療法を含む
治療を年間約40例行う。
 特に早期がんの内視鏡治療では88年にチューブを用いたEEMRチューブ法を開発
したことで知られる。
「がんを含んだ粘膜をチューブ内に吸引して切除しやすく工夫したのが、EEMRチューブ法
です。簡単にできる治療法なのでかなり普及しています。89年に本格的に開始し、
これまで820~830例に治療しています。EEMRチューブ法を含む内視鏡治療の
5年生存率は97.2%で全国トップです」と幕内博康教授。
 治療時間は15~30分。入院期間は3日間。退院後、半年ごとに検査を行い、
早期なら何度でも治療できる。現在、がんが粘膜下層の表層にあって、リンパ節転移の
ない場合(1b期)にもEEMRチューブ法を行う。
大阪市立大学病院(大阪府) 
 胸腔鏡手術数は全国トップクラス。大阪市立大学病院の第2外科では、他臓器への
浸潤や遠隔転移のない胸部の食道がんに対して胸腔鏡手術を行っている。
96年からこれまでに約170例の治療を行い、胸腔鏡手術数では全国トップクラスだ。
 胸腔鏡手術とは胸部に小さな穴を数カ所開け、そこから小型ビデオカメラや手術器具を
挿入して、モニターに映し出された映像を見ながら、食道を切除したり、リンパ節を
取り除く手術法である。同病院では日本内視鏡外科学会の技術認定を受けた医師が
胸腔鏡手術を行う。
「さまざまな手術器具を開発して手技を改良した結果、通常の食道がんの開胸手術と
同じ時間で完了し、合併症も少なく、安全です。また開胸手術との治癒率にも差は
ありません」と大杉治司助教授。
 通常の開胸手術では胸部を開いて食道を切除し、同時に腹部と頚部(けいぶ)も開いて、
リンパ節を取り除く大手術となる。
「胸腔鏡手術では胸の傷が小さいだけでなく、カメラで術野が拡大されて見えるため、
より精度の高い手術が可能です。出血量も少なく、完全無輸血で行っています」
(大杉助教授)
術後にマラソンを楽しむ患者もいるという。
国立がんセンター東病院(千葉県)
 科学放射線療法で日本の中心的役割を果たす。国立がんセンター東病院内科は、
92年頃から食道がんに対する化学放射線療法を本格的にスタートさせ、日本の中心的
役割を果たす。現在、年間約200例に行っている。食道がんの化学放射線療法は、
放射線を1回1.8グレイずつ合計28回行う。同時に、5―FUとランダかブリプラチンの
2種類の抗がん剤を併用する。
「がんが粘膜下層まで入った1期に対する放射線化学療法の2年生存率は93%で、
手術に匹敵する治療成績が得られています」と大津敦部長。
 また、食道がんの2~3期にも化学放射線療法を積極的に行っている。
「国内の臨床試験では、がんが完全に消失した比率は68%です」(大津部長)
 ただし、化学放射線療法でがんが完全消失した人の40%近くは再発する。その場合、
内視鏡的粘膜切除術、レーザーを用いた光線力学的治療、手術のうちから適切な治療法を
選択するという。こうした再発治療を加えることで、手術にほぼ匹敵する治療成績が
得られているのだ。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
恵佑会札幌病院 消化器外科
 細川正夫院長 (電話)011・863・2101(北海道)
年間の食道がん患者数は230例。内科、外科、耳鼻咽喉科、放射線科、形成外科、
病理が一団となって医療を行っている
国立がんセンター東病院 内科
 大津敦部長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
化学放射線療法を積極的に推進。1期、2~3期の臨床試験で手術に匹敵する成績。
手術不能の4期にも多数の臨床試験を実施・計画
国立がんセンター中央病院 食道外科
 加藤抱一部長 (電話)03・3542・2511(東京都)
04年の治療数333例(うち手術135例)。外科、内科、放射線科、診断部門で合同協議。
患者の意思を尊重、科学的根拠をもとに治療決定
順天堂大学順天堂医院 消化器外科
 鶴丸昌彦教授 (電話)03・3813・3111(東京都)
食道がん切除手術は年間100~120例。進行がんには精緻なリンパ節郭清を行う。
早期のものには内視鏡治療を積極的に行っている
東海大学病院 消化器外科
 幕内博康教授(院長) (電話)0463・93・1121(神奈川県)
合計症例数は2400例を超えて全国有数。術後の5年生存率は内視鏡治療は97.2%、
手術では62.5%で、いずれも全国トップ
愛知県がんセンター中央病院 胸部外科
 篠田雅幸副院長 (電話)052・762・6111(愛知県)
進行度に応じた的確な標準治療を提供。手術は術式、術中・術後の管理の工夫で
負担の軽減を図り、好成績。最先端の臨床試験も実施
大阪市立大学病院 第2外科
 大杉治司助教授 (電話)06・6879・5111(大阪府)
胸腔鏡手術数で全国トップクラス。通常の開胸手術と同等の治癒力があり、
良好な成績。胸部の傷が小さく、術後のQOLが高い
大阪府立成人病センター 消化器外科
 矢野雅彦医長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
早期には内視鏡治療、進行には集学的治療を行い好成績。年間手術数70例。
術後の嚥下機能などのQOL保持を重視した手術を行う
大阪市立総合医療センター 消化器外科
 東野正幸副院長 (電話)06・6929・1221(大阪府)
低侵襲手術として胸腔鏡手術300例。胸部操作、腹部操作とも内視鏡下で行う。
内視鏡下の術野拡大効果でより精緻な手術が可能
久留米大学病院 外科
 藤田博正教授 (電話)0942・35・3311(福岡県)
診断から内視鏡的粘膜切除、光線力学療法、手術(内視鏡下手術を含む)、
化学放射線治療、緩和医療まで、あらゆる病態に対応

大腸がんに強い病院ベスト10

大腸がんは、全長約1.5mの腸に発生するがんで、腸から肛門に続く長さ約15cmの「直腸」にできるがんが、大腸がんの全体のうちの約半分を占めています。また、上行・横行・下行・S状の4つに区分される結腸部分にもがんができます。
急増する大腸がんの新規患者数は年間約9万人、2005年に国立がんセンターがまとめた最新の統計では、男性で4位、女性で3位が大腸がんが原因で亡くなっています。
 以前の直腸がんの手術は、命の代わりに男性は性機能を失ったり、女性は尿が漏れやすくなったり、と、病気と戦いながら日常生活を送るにあたって、大変な苦しみがありました。
 今日では、できるだけ、自然の肛門と神経機能を温存する手術テクニックが普及して、この10年間でその苦しみを味わうことなく、がん治療に大きな貢献をもたらしています。
 それに加えて、大腸がんの「腹腔鏡下手術」、おなかに5mm~10mm程度の小さな穴を数箇所開け、腹腔鏡を入れて大腸を切除するがん手術が登場して、患者さんの体にかかる負担が大幅に減りました。
 増加をたどる大腸がん、新しい治療をはじめている日本全国の病院をご紹介します。
北里大学病院 外科 (神奈川県)
  外科 渡邊昌彦(わたなべまさひこ) 教授・國場幸均(こくばゆきひと)講師 
  (電話)042-778-8111
 腹腔鏡下手術の第一人者・渡邊昌彦教授は、累積手術数1000例以上。2003年12月に教授になってからは、2004年に268例、2005年に298例と大腸がんの手術が急増しました。(年間に同じ部位のがんの手術が200例を越えることはまれ)そのうち、渡邊教授、國場幸均講師らが得意とする腹腔鏡下手術が半数を占めています。その腕を求めて、東北や、関西、九州からも患者さんが来院するほどです。
新潟県立がんセンター 新潟病院 (新潟県)
  消化器外科 瀧井康公(たきいやすまさ)外科部長、
  消化器内科船越和博(ふなこしかずひろ)内科部長  (電話)025-266-5111
 内視鏡的切除が可能な早期がんは消化器内科の船越和博部長で担当し、切除が必要な早期がんや進行がんに対する手術を瀧井康公部長らの大腸外科が引き受ける、といった分担が出来ている。2004年の年間手術数218例のうち、直腸は74例、その他の結腸は144例でした。専門外来は毎週水曜日、新患は月~金曜日の毎日受け付ける体制を整えています。
国立がんセンター東病院 (千葉県)
  下腹部外科 齊藤典男(さいとうのりお) 手術部長、杉藤正典(すぎとうまさのり) 病棟医長、
  消化管内科 大津敦(おおつあつし) 内視鏡部長 (電話)04-7133-1111
 大腸がん手術287例中、直腸126例、結腸161例をこなす。消化器内科が手がける内視鏡的粘膜切除は150例あり、そのうちの95%は日帰りの手術、平均入院日数は2日ほどです。開腹手術は160例、平均入院日数は15日ほどです。また、腹腔鏡下手術117例でも、平均入院日数は10日ほどです。年間の外来数も、大腸がんだけで、1万3500人にもなります。
「大腸がんに対するもっとも効果的な治療は、いまだに手術による切除(または内視鏡下切除)です。しかし、がんの進行状況に合わせて機能温存手術や、低侵襲手術といった手術が可能になってきました。各治療法のメリットとデメリットをよく理解し、ご本人に合った治療法を選びましょう。」(杉藤正典医長)
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
●札幌厚生病院 (北海道)
 外科 近藤征文(こんどうゆきふみ)副院長、益子博幸(ますこひろゆき)部長、消化器科 今村哲理(いまむらあきみち)副院長 (電話)011-261-5331(北海道)
 がんの完全切除と確実なリンパ摘出に取り組みます。消化器科の今村副院長と、黒川聖医長らは、大腸がんの内視鏡治療を得意としています。
●山形県立中央病院 (山形県) 
 外科 佐藤敏彦(さとうとしひこ)副部長、消化器内科 間部克裕(まべかつひろ)医師
 早期大腸がんの場合、内視鏡を使った粘膜切除術や、腹腔鏡を使った手術で術後平均10日の退院を可能にしています。進行再発がんに対しては、拡大手術を施行します。
●自治医科大学付属 さいたま医療センター (埼玉県)
 一般・消化器外科 小西文雄 教授、河村裕 講師  (電話)048-647-2111
●愛知県がんセンター中央病院 (愛知県)
 消化器外科 加藤知行(かとうともゆき)院長、平井孝(ひらいたかし)外来部長、金光幸秀(かねみつゆきひで)医長 (電話)052-762-6111(愛知県)
 加藤知行院長は日本を代表する大腸外科医の一人。結腸の早期がんには腹腔鏡下手術を慎重に行い、早期結腸がんに対しては、東海地方で唯一「経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)が行える装置を導入しています。」
●大阪府立成人病センター (大阪府)
 消化器外科 大植雅之(おおうえまさゆき) 医長、能浦真吾(のうらしんご)診療主任、消化器内科 飯石浩康(いいいしひろやす)部長 (電話)06-6972-1181(大阪府)
 進行直腸がんにもっとも力を入れており、可能な限り肛門温存手術に挑んでいます。早期の直腸がんでは経肛門的切除などの、「おなかを切らない手術」も行っています。
●広島大学病院 (広島県)
 消化器外科(内視鏡外科)岡島正純(おかじままさずみ)教授、小島康知(おじまやすとも)講師、池田聡(いけださとし)講師 (電話)082-257-5555(広島県)
大腸外科全般にわたり「患者さんにやさしい治療」を合言葉に、よりレベルの高い医療を目指しています。中国・四国地方ではトップクラスの病院で、岡島正純教授は大腸がん手術の名手として知られています。
●久留米大学病院 (福岡県)
 外科 白水和雄(しろうずかずお) 主任教授、緒方裕(おがたひろし)助教授、赤木由人(あかぎよしと)講師 (電話)0942-35-3311
 大腸がん年間手術数118例(直腸62例、結腸56例)とくに直腸肛門がんに対しては、内視鏡手術を取り入れ、「究極の肛門温存手術」として注目されています。
●高野病院 (熊本県)
 大腸肛門科 山田一隆院長 (電話)096-384-1011(熊本県)

乳がんに強い病院ベスト10

肝臓がんは年々増加傾向にあり、平成16年には約3万5000人が死亡している。肝臓がんの多くは肝硬変を伴っているので治療が難しいが、いろいろな治療法が開発され、治療の選択肢は広がりつつある。定評のある病院はどこなのか。
東大病院(東京都)
 東京大学医学部付属病院の消化器内科では、ラジオ波焼灼療法をこれまでに
約2300例、昨年は約500例行っている。合計数、年間数ともに世界トップを誇る。
 ラジオ波焼灼療法とは超音波装置などでがんの位置を確かめながら、長さ20センチ、
太さ1.5ミリの針状の電極をがんに刺して、その電極に電磁波の一種であるラジオ波を
流して、100度前後の熱でがんを焼き切る治療法である。
 肝臓がんが「3センチ以下で3個以内」が治療にはよい条件だが、これを超えても
肝機能が良ければ治療対象になる。
「がんが多発していたり、肝硬変を合併していたりするため、肝臓がんを切除できるのは
20~30%です。しかも、手術ができても1年で20%、5年で80%が再発します。
このため、体への負担が少なく、根治性が高く再治療が容易なラジオ波療法が広く
行われるようになったのです」(椎名秀一朗講師)
 また、「ラジオ波療法は転移性の肝臓がんにも有効です」と椎名講師は言う。
 大腸がんの肝転移36例にラジオ波焼灼療法を行い、5年生存率が76%という
驚くべきいい成績を挙げている。今後、ラジオ波療法と全身化学療法を組み合わせた
治療も行っていく予定だ。
国立がんセンター中央病院(東京都)
 国立がんセンター中央病院の肝胆膵グループが行う肝臓がんの切除手術は、
年間約180例に上り全国トップクラスだ。がんを含めて肝臓の一部を切除する治療で、
がんを確実に取り除くことができるのが長所だ。肝機能が十分に保たれていて、
がんが1~3個の場合などがいい対象になる。
「切除手術では出血量を極力少なくし、スピーディーに行い、在院日数を短くするように
取り組んでいます」と島田和明医師。
 切除手術の80%は輸血なしで行うことができる。入院日数も10日から2週間ほどと短い。
「手術時間を短くすることで、患者さんの体への負担を軽減することができます」(島田医師)
 難易度の高い症例も含めて、すべてのステージ(進行度)を合わせた5年生存率は
約50%だ。
京都大学病院(京都府)
 京都大学病院の移植外科は、肝臓がんに対する肝移植手術で先駆的な役割と
実績を誇る。これまでに肝臓がんに対する生体肝移植を123例(05年10月1日現在)
実施している。
 特に04年1月からは一定の条件内での生体肝移植手術が保険適用となり、
手術数が増えている。
「生体肝移植が保険適用となるのは、“がんの直径が3センチ以下のものが3個以内”、
あるいは“がんが1個なら直径5センチ以下”です。ただし遠隔転移やリンパ節転移がなく、
門脈や肝静脈にも浸潤がないことが条件となります」(江川裕人助教授)
 生体肝移植ではドナー(臓器提供者)が必要となる。一般的にはドナーは3親等以内の
親族で健康な肝臓を持つ65歳以下の人で、肝移植を受ける患者と血液型が同じか
適合すること(輸血が可能な組み合わせ)が原則だ。
 患者の手術時間(切除と移植)は10~12時間。入院期間は約1カ月。ドナーの
手術時間は6、7時間。入院期間は約2週間。
「肝臓がんの生体肝移植の5年生存率は60~70%です。進行がんなどの患者さんに
とって有力な治療の選択肢の一つになりつつあります」(江川助教授)
病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
  ●北海道大学病院 第1外科
 藤堂省教授(電話)011・716・1161(北海道)
これまでの方法では治療困難だった症例に対しても積極的に肝切除を行う。
肝移植も肝臓がんの治療法として組み込んでいる
武蔵野赤十字病院 消化器科
 泉並木部長(電話)0422・32・3111(東京都)
 ラジオ波穿刺針は確実性と安全性を考慮した特殊な針を使用。
ラジオ波療法延べ1150例で5年生存率67%。腹腔鏡も使う
国立がんセンター中央病院 肝胆膵グループ
 島田和明医師(電話)03・3542・2511(東京都)
 切除手術の年間数で全国トップクラス。「治療ガイドライン」に基づいて
切除手術を実施。難易度の高い症例にも対応している
東京女子医科大学病院 消化器病センター外科
 高崎健教授(電話)03・3353・8111(東京都)
 肝臓がんの年間手術数200例。手術のみならず、免疫療法、
化学療法も組み合わせる。ラジオ波療法120例、肝動脈塞栓療法350例
東京大学医学部付属病院 消化器内科
 椎名秀一朗講師(電話)03・3815・5411(東京都)
 ラジオ波療法の合計数、年間数で世界トップの実績。原発性肝がんだけでなく、
大腸がんの肝転移などにも積極的に取り組んでいる
名古屋大学付属病院 消化器外科I
 二村雄次教授(電話)052・741・2111(愛知県)
 手術不能例が多い胆管細胞がん(肝臓がんの一つ)の患者が全国から来る。
切除症例数160、切除率約80%は世界でもトップクラス
京都大学病院 移植外科
 江川裕人助教授 高田泰次助教授(電話)075・751・3111(京都府)
 肝臓がんの生体肝移植手術数で全国一。95年に移植外科、99年に
臓器移植医療部を発足。生体肝移植手術で先駆的役割を果たす
大阪府立成人病センター 消化器外科
 佐々木洋部長(電話)06・6972・1181(大阪府)
 肝臓がんの年間手術数90例。個々の状態に応じて肝切除と開発工夫した
補助療法の複合治療を行う。ラジオ波を含む最適治療を実施
近畿大学病院 消化器内科
 工藤正俊教授(電話)072・366・0221(大阪府)
 99年以後のラジオ波療法延べ2000例。3センチ以下3個以内の5年生存率76%。
ラジオ波後のインターフェロン併用では5年生存率100%
久留米大学病院 肝がんセンター・第2外科
 佐田通夫教授(電話)0942・35・3311(福岡県)
 外来診察、治療は肝がんセンターで内科、外科、放射線科が共同で実施。
月約500人受診。ラジオ波、肝動注化学療法を積極的に行う

胃がんに強い病院ベスト10

胃がんの死亡率は肺がんに次いで第2位、死亡者数は年間5万人に上る。
 がんの進行度によって治療の選択肢も異なるが、胃がんの治療で専門家の評価が高い病院はどこなのか。
国立がんセンター中央病院(東京都)
 国立がんセンター中央病院の内視鏡部は、早期胃がんに対する内視鏡治療数が年間約450例で全国トップを誇る。
 内視鏡治療とは胃カメラを介して行う治療。がんの根元にワイヤをかけ高周波電流を流して焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、ITナイフ(高周波針状ナイフの先端にセラミック製のチップを付けたもの)などを用いてがんをまくり上げるように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)がある。
 同病院では96年に胃壁を傷つけないように工夫したITナイフを開発し、2000年からESDを本格的に始めた。
「現在、内視鏡治療の99%はESDです。EMRは最大径2センチまでのがんが対象で、がんを焼き切るため、大変大事な病理判定を不正確にすることがあります。しかし、ESDの対象は最大径2センチ以上のがんと広く、しかもがんの組織を傷つけないように切除する方法なので、病理判定が正確にできるという利点があります」(斉藤大三部長)
 ESDは通常、全身麻酔で行われるが、患者が検査室のベッドに寝いいる時間は30分~3時間、平均60~70分だ。開腹手術より体への負担ははるかに少なく、入院も4~7日間ですむ。
大阪市立総合医療センター(大阪府)
 胃がんの進行度にはステージⅠ期からⅣ期まである。大阪市立総合医療センターの消化器外科は手術後の5年生存率がすべての病期で全国平均を上回る。I期が96・2%(全国平均91.4%)、II期が75.7%(68.6%)、III期が56.8%(39.7%)、
IV期が25.8%(6.7%)で、全体でも全国トップだ。
 同科での胃がんの年間手術数は約200例で、そのうち60~70%は腹腔鏡手術。 「おなかに0.5~1.2センチの穴を数カ所開け、その穴から手術用具を入れて、従来の開腹手術と同じ操作をするものです。原則としてII期以下の患者さんを対象にしています」(谷村愼哉副部長)
 この腹腔鏡手術のメリットは(1)手術後の痛みが少ない(2)傷がほとんど目立たない
3)手術の翌日に歩ける(4)術後の内臓の癒着や腸閉塞などの合併症が少ない
5)入院期間が短く、短期間で仕事に復帰できる――などである。
「腹腔鏡手術の術後の治療成績は、通常の開腹手術と比べてまったく遜色ありません」(谷村副部長)
 III期以上では病状と進行度に応じて、開腹手術や化学療法が行われる。
都立駒込病院(東京都)
 都立駒込病院化学療法科では、手術ができないほど進行した胃がんや、手術後に再発した胃がんに、抗がん剤治療を実施し、治療効果を上げている。症状の改善や生存期間の延長が目的だ。
「現在、経口抗がん剤のTS―1(一般名テガフール・ウラシル)を基本にし、ほかの抗がん剤も併用して治療効果を高めています。がんが半分以下に縮小し、その状態が1カ月以上続いた患者さんの割合(奏効率)は50%程度です。ここ2、3年で、抗がん剤治療の奏効率は飛躍的に向上しています」(佐々木常雄副院長)
 抗がん剤治療でがんを縮小させてから手術を行うケースもあるという。 抗がん剤治療のために短期入院中の進行・再発胃がんの患者は常時20人ほど。外来通院で治療を受けている患者は50人ほどだ。
「患者さんが元気なら、最初に用いた抗がん剤が効かなくなったら次の抗がん剤、さらに別の抗がん剤といくつものメニューが選べるようになりました。その結果、かなりの延命効果が得られるようになっています」と佐々木副院長。
埼玉県立がんセンター 消化器外科
 田中洋一部長 (電話)048・722・1111(埼玉県)
年間症例数は350例を超え、うち手術は180~200例で良好な5年生存率を得ている。
術式や術前化学療法の臨床試験も行う
国立がんセンター東病院 上腹部外科
 木下平外来部長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
治療方針はすべて腫瘍内科医とのカンファランスで決定。ガイドラインに基づき、
進行度に応じた治療を選択。臨床試験も多数実施中
国立がんセンター中央病院 内視鏡部
 斉藤大三部長 (電話)03・3542・2511(東京都)
早期胃がんのESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は年間約450例で全国一。
斉藤部長はESD研究会の代表世話人で技術向上に尽力
癌研究会有明病院 消化器センター外科
 山口俊晴部長 (電話)03・3520・0111(東京都)
延べ症例数は1万5000例に達し日本一。内科、外科などが合同で診療にあたる
チーム医療を推進。患者負担の少ない腹腔鏡手術にも熱心
都立駒込病院 化学療法科
 佐々木常雄副院長 (電話)03・3823・2101(東京都)
1975年、全国で初めて発足した化学療法科。抗がん剤の専門医7人が治療。
抗がん剤の臨床試験、新薬開発の治験にも力を入れる
新潟県立がんセンター新潟病院
 外科 梨本篤部長 (電話)025・266・5111(新潟県)
術後合併症が低率で治療成績はトップレベル。機能温存縮小手術、根治を目指す
拡大手術、高度進行がんへの化学療法を中心に治療
静岡県立静岡がんセンター 胃外科
 米村豊副院長 (電話)055・989・5222(静岡県)
QOLを保証するため、進み具合に応じて、内視鏡的粘膜切除・腹腔鏡的胃切除・
最も適切なリンパ節郭清による胃切除術を行う
大阪府立成人病センター 消化器外科
 矢野雅彦医長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
内科とも連携して早期から進行まで進行度に応じたあらゆる治療を提供。
年間症例数300例以上。研究的な治療も積極的に取り組む
大阪市立総合医療センター
 消化 器外科 東野正幸副院長 谷村愼 哉副部長(電話)06・6929・1221(大阪府)
手術数は年間約200例、そのうち60~70%は腹腔鏡手術で行う。
III期以上には病状と進行度に応じた治療でQOLを向上
九州大学病院 消化器・総合外科(第二外科)
 前原喜彦教授 (電話)092・642・5466(福岡県)
進行度に応じた手術と抗がん剤感受性試験に基づく化学療法を実践。
新規の抗がん剤による最適個別化療法を実施している

肺がんの検査方法 2(喀痰細胞診)

剥がれ落ちて痰に混じったがん細胞を検出しようとする方法です。機械で痰を分析しようという喀痰細胞診の自動化は残念ながら実用化されておらず、人間の目でチェックします。専門のスクリーナーという技師がおり、熟練したスクリーナーの判断は相当正確です。
 検査の手順は、できるだけ早朝の喀痰を容器に入れて乾かないようにして提出するだけです。苦痛のない簡単な検査なのですが、肺がんがあれば必ず痰にがん細胞が混じっているとは限りません。
 気管支鏡で見える範囲に肺がんがあった人(おそらく確実に痰にがん細胞が出てくるであろうと予測される人)でも1回だけの検査では55%の人の痰にしかがん細胞は検出されませんでした。
 この数字は2回繰り返すことにより70%、3回で84%となり、喀痰細胞診は3回必要ということが言われています。
 医療施設から遠方の人、忙しい人などに自宅で3日間痰をためてもらう方法もありますが、どうしても細胞が変性してしまうため、少し見にくい標本になってしまうようです。
 繰り返しになるかもしれませんが、喀痰細胞診が正常であったからといって肺がんがないという証拠にはなりません。
 検体(この場合痰のことです)をスライドグラスに伸ばしてアルコールで固定し、染色して顕微鏡で見る。怪しければもう一度医師が確認するという手順を踏みますので結果が出るまで数日かかります。

肺がんの検査方法 1(レントゲン)

レントゲンによって発見されたX線は物質を透過し(突き抜けることです)、写真のフィルムを感光させる性質をもちます。このとき通り抜ける物質によってX線は吸収され、エネルギーが下がります。
 そこで、写真フィルムの入ったカセットの前に立ち、胸を押し付けて、背中側からX線を照射するとカセットの中のフィルムが感光し、写真ができます。その写真はX線が通り抜けてきた体の部分によって濃淡ができます。
 例えば骨はX線を吸収する度合いが強いので、骨のある部分に相当するフィルムは感光されにくく、現像したときに白くなります。
 逆にほとんどが空気である肺の場合は通り抜けたX線のエネルギーが高いのでフィルムは十分に感光され、現像したときに黒くなります。
 このようにして胸部全体を半透明の影絵にして写したものが胸部正面単純X線写真です。
          胸部正面単純X線写真
          roentgen_photo01.jpg
 横からでも、斜めからでも撮ることはありますが、なじみが深いのは正面写真でしょう。しかし、単純X線写真では見えない部分(見えにくい部分)があります。
 余談ですが、レントゲンという博士はこのX線の発見で第1回のノーベル賞を受賞しています。彼の功績をたたえてX線写真のことをレントゲンと呼ぶわけですが、本来一般名詞ではありません(人の名前です)。この説明ではできるだけ「X線写真」と表記するようにします。
 注意しておかなければならないのは、単純X線写真は、立体を平面の写真に投影していることです。
 つまり、邪魔者があるとそれの影になったものは見えません。邪魔者とは、肺を中心として考えたときには、骨、心臓、血管、横隔膜などです。胸部X線写真ではこれらの臓器に隠されて見えない肺の部分がかなり大きく存在します。
 この欠点を克服しようとして、肺尖撮影や、断層撮影が行われていましたが、CTの導入により特殊な場合に限られるようになりました。
 邪魔者がなくても見えないものがあります。気管支は空気の管ですので、同じ空気の塊である肺の中にあると見分けることが困難です。
 このために気管支の中に造影剤を入れて気管支の状況を確認するという、気管支造影がありますが、これもCTによって得られる情報でほとんどが代用できるので、最近は特殊な目的以外には使われなくなりました。

肺がんの予防

一次予防と二次予防
 がんの予防には一次予防と二次予防があります。
一次予防とはがんにならないように工夫することをいい、二次予防とは検診によって早期発見、早期治療をして、がんで命を落さないようにすることをいいます。
            一次予防
 なんといっても禁煙です。
 タバコが存在しなければ、理論的には男で70%、女で26%(男女合計で58%)の肺がんがが減少すると考えられています。
 一方、喫煙者が禁煙した後の肺がん発生のリスクは、喫煙を継続している人のリスクを1とすると、禁煙後5年以内では0.9倍、5年以上経過して半分に、20年を経過して約3分の1になります。
 このように、禁煙の効果はすぐにでるものではありません。一方、喫煙の年数が長いほど肺がん発生のリスクは高いので、一次予防の面からはなるべく早く禁煙をして下さい。
 肺がんの他にもタバコによって罹りやすくなるがんは多く、非喫煙者に比し、毎日喫煙する人では30倍以上も喉頭がんになりやすくなります。食道がんで2倍です。しかし、5年の禁煙で食道がんは50%減らすことができ、膀胱がんでは2年の禁煙で50%減少の効果が出ます。今からでも遅くありません。禁煙に心がけましょう。
             二次予防
 二次予防としての検診を受けていただきたいものです。
 一般外来で発見された肺がんと、検診で発見された肺がんを比較するすと、検診で見つかった人は手術を受けられる率が高く、またその病期も治癒率の高い1期の割合が高くなっています。
 肺がん検診は、胸部レントゲン撮影と喀痰細胞診により行います。
肺門型肺がんは喫煙との関係が強く、早期にはレントゲン写真無所見が多いのですが、喀痰細胞診で発見することができます。特に50歳以上のヘビースモーカーは、肺門部肺がんに罹る率が高いので定期的に喀痰細胞診を行う必要があります。
 肺野型肺がんは早期には無症状でレントゲン写真でしか発見されません。40歳以上では少なくとも年1回は検査が望ましいのです。この利点はX線の被曝線量がごく少なく、時間も短時間で、費用も安いことです。欠点として、がんが1cm以下ではなかなか見つからないこと、肺の全体が写るわけではなく死角があることです。
 最近では死角のないヘリカルCTが検診にも応用されれるようになり、普通のレントゲン写真では見つけにくい部位のものや、治る確立のより高い、より小さな肺がんも発見されるようになっています。欠点は被曝線量が多くなること、人手がかかり費用も高いことです。

肺がんの副作用と対策

外科療法
 手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
 しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
 手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
 手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
 退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
             放射線療法
 主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
 初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
             化学療法
 主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
 用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
         内視鏡治療(レーザー治療)
 副作用として重篤なものはありません。
 しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。

肺がんの治療

治療法は原則的には病期により決定されます。
 それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療の方法を選択します。肺がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法、免疫療法、痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした治療(緩和治療)などがあります。
             外科療法
 手術方法の原則は、肺野末梢部肺がんには腫瘍を含めた肺葉切除(右は上、中、下の3葉に、左は上、下の2葉に分かれており、その葉の単位で切除すること) とリンパ節郭清(リンパ節を一つ一つつまみとるのではなく、まわりの脂肪と一緒にまとめて切除すること)、肺門部肺がんには、気管支形成術(切り取った気管支の残りをつなぎ合わせる手術)を伴った肺葉切除とリンパ節郭清です。病巣の進行が軽ければ肺の部分切除で済むこともあり、進行していると1側肺の全摘にることもあり、隣接臓器を合併切除する場合もあります。
 非小細胞がんの場合、通常、I期から3A期が手術の対象となります。肺は切り取っても生えてくる臓器ではありませんので、残る予定の肺機能が悪いと手術ができないこともあります。術後の5年生存率は、術後病期で見てI期:80%、2期:60%、3期:40%、IV期:10%未満です。
小細胞がんでは抗がん剤の効果が大きいので、手術を行う場合でも、手術前あるいは手術後に抗がん剤による治療を行うのが原則です。
             放射線療法
 X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。
非小細胞がんの場合手術できないI期、2期、胸水を認めない3期が対象です。小細胞がんの場合には限局型が対象となります。
 肺がんの場合、通常、体外から肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的には1日1回週5回照射し、5週間から6週間の治療期間が必要です。最近では、1 日2回週10回照射する多分割照射も試みられています。症例によっては、副作用を軽減できて、十分な量の放射線照射の出来る3次元照射が出来る場合もあります。
             化学療法
 外科療法・放射線療法が局所治療であるのに対し、抗がん剤による化学療法は全身治療です。
 小細胞がんには抗がん剤の効果が著しいことから、化学療法は小細胞がんに対するもっとも一般的な治療です。非小細胞がんに対する化学療法の対象は、原則的には手術適応がない3期とIV期の症例です。
 抗がん剤は通常、2種類以上を使用します。治療期間は、通常3~4週を1コースとして複数回繰り返します。毎週抗がん剤を投与する治療も行われています。
 一方、非小細胞がんでは小細胞がんに比べ抗がん剤の効果が低く、抗がん剤のみでがんが治癒することは稀です。
 抗がん剤による治療は化学単独で行うこともありますが、最近は、手術や放射線治療に化学療法を組み合わせる治療も積極的に行なわれるようになって来ました。このようにいろいろな治療法を組み合わせて行う治療を集学的治療と呼びますが、進行した肺がんの多くには集学的治療が必要です。
         内視鏡治療(レーザー治療)
 気管支鏡の可視範囲内の早期がんにはレーザー光線を照射して治療できるものがあります。
 肺門型肺がんはヘビースモーカーのがんですので、高齢者や肺機能の悪い人が多く、また多発することも多く、手術ができない場合があり、レーザーを用いた「光線力学的療法」が開発されました。
 「光線力学的療法」とは、がん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与後、レーザー光線を照射し、肺門部の早期肺がんを選択的に治療する方法です。
 腫瘍に集まりやすい光感受性物質(ヘマトポルフィリン誘導体)を静脈注射してから腫瘍にレーザー光を照射することにより、腫瘍細胞が選択的に破壊するという治療です。レーザー照射後は、壊死組織の器質化による気道の閉塞を防止するため、翌日より2~3日は連日、その後1カ月間は1週間に1回、気管支鏡による壊死物質の除去が必要です。
             免疫療法
 免疫は外敵(細菌やウイルス等)の排除に活躍していますが、体の中にできるがんに対しても作用します。
 この体に備わった免疫力を強化してがんを克服しようとするのが免疫療法です。体の免疫機能を高めるとか、がん細胞を特異的に殺す免疫担当細胞を点滴するなどの種々の免疫療法が試みられています。しかし、いずれも実験段階であり、現状では肺がんに有効な免疫療法はありません。

肺がん病期(ステージ)

がんの拡がりぐあいで治療方法が変わります。
 肺がんが診断されると、がんが肺から他の臓器に拡がっているかどうか、病期診断の検査が必要になります。通常行われる検査は、脳MRI、胸部CT、腹部のCTあるいは超音波検査、骨シンチグラフィーなどです。
             病期分類
 がん細胞の拡がり具合で病気の進行を1~4期の病期に分類します。
1~3期は、さらにその病期の中で軽いものをA、重いものをBともう一段階細分化します。
1 期 がんが肺の中にとどまっており、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階。
2 期 原発巣のがんは肺内にとどまっており、同側の肺門リンパ節には転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。
3 期 原発巣のがんが肺を越えて隣接臓器に浸潤しているか、縦隔リンパ節に転移を認めるが、他の臓器には転移を認めない段階。両方あっても・期です。
4 期 原発巣の他に、肺、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合。
         小細胞肺がんでの進行度分類
 小細胞がんでは手術の適応の時期を逸した進行がんで発見される症例が多いことから、限局型、進展型に大別する進行度分類も使われています。
1.限局型:
がんが1側の肺と近くのリンパ節に存在する場合。
2.進展型:
がんが肺の外に拡がり、遠隔転移のある場合。
手術を考慮している時には、1)の病期分類を使います。

肺がんの検査

確定診断
がんであることの確定診断はがん細胞を確認することです。
喀痰の中のがん細胞を確認する場合(喀痰細胞診)、気管支経由で細胞を採取する器具を病変に挿入する場合(気管支鏡検査)と、体外から針を刺して病変から細胞を採取する方法(経皮的肺穿刺法)の3種類があります。これで診断がつかない時には、手術により診断をつける場合(開胸生検)があります。
 1.喀痰細胞診:
喀痰細胞診は血痰、継続する咳、痰などの呼吸器症状を訴える患者に対して、必須の検査です。
特に、太い気管支に発生した肺門部早期肺がんでは、胸部・線写真に異常がないことが多く、喀痰細胞診が発見手段となります。喀痰細胞診の陽性率は、回数を重ねるとともに向上するので最低3日間の検査が必要です。
 2.気管支鏡検査:
気管支鏡で病巣を観察しながらブラシなどで目的の部位を擦過する病巣擦過法、あるいは病巣を針で穿刺する経気管支的穿刺吸引細胞診を行います。気管支鏡の可視範囲外の末梢病巣に対しては、X線透視下にブラシや針を誘導オ病巣から細胞を採取します。
よく気管支鏡検査は非常に苦しいといわれますが、決してそんなことはありません。喉に局所麻酔剤をよく効かせて検査を行いますので、胃カメラ検査よりも楽に検査ができます。
 3.経皮的肺穿刺法:
経気管支的に検索が困難な末梢病巣には、穿刺針を用いて細胞を採取します。
・線透視下に病巣を確認しながら、皮膚を通して目的の部位まで穿刺針を挿入し、腫瘤に到達したら注射器で吸引します。
・線透視で確認できない微小病変では、CTガイド下に穿刺をします。経皮針生検の場合は肺を覆っている胸膜に外から穴をあけることになりますので、そこから空気が漏れて、気胸という合併症をおこす可能性が10%ほどあります。
これに対応できるように、基本的には短期の入院が必要な検査です。
 4.開胸生検:
手術により直接腫瘍から組織をとり診断する方法です。近年は胸腔鏡という技術ができて、負担の少ない手術で診断がつくようになりました。
          病期(ステージ)診断
 がんは発生した部位で大きくなるのみではなく、リンパ節やいろいろな臓器に転移をおこす可能性があります。その程度によって適切な治療方法が異なります。すなわち肺がんの進行の程度を示す病期を決める検査です。これらを調べるために胸部のみならず、いろいろな臓器のCT、MR、超音波、アイソトープの検査などが目的に応じて行われます。詳しくは「Chapter.9 病期(ステージ)」を参照して下さい。
 耐術能検査
肺は生命の維持に必須の臓器であり、切除の限界は、肺機能の正常な人で左右の肺のどちらか一方を全部切除するところまでです。肺や胸膜の病気により肺活量が減少したり、肺気腫などの肺の疾患で肺から血液に酸素を取り入れる効率の低下したりしている時には、片方の肺全部を切除すると残りの肺では生きてゆくことが困難な場合もあります。
そこで、がんを治すために必要十分な切除の範囲を決定し、予定手術の術後にどれだけの肺機能になるかを正確に予測すること、また予定以上に進行していた場合には、どこまで手術を拡大できるかを把握しておくことは非常に重要なのです。
このために、通常の肺機能検査のほかに、肺血流シンチや肺換気シンチなどが行なわれます。
手術適応から外れる人にはここまで詳しく調べる必要はありません。

肺がんの発見

症状による発見
 自覚症状によって肺がんが発見された場合、肺門型肺がんであれば良いのですが、肺野型肺がんの場合には一般には、治癒に結びつく治療は難しいのが現実です。さらに遠隔転移による症状で発見された肺がんの場合、基本的には治癒に結びつく治療はありません。
           検診による発見
 肺がん発見のための検査は喀痰細胞診と胸部レントゲン検査、CT検査(ヘリカルCT)です。
 肺門型肺がんではたんの中にがん細胞がでてくることが多いので、喀痰細胞診を行って発見します。早朝の痰を採取し痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを検査するものです。
 肺門型肺がんは基本的には喫煙者の肺がんですので、タバコを吸わない人にはあまり意味がありません。
 一方、肺野型肺がんでは症状に乏しく、とくに初期にはほとんど症状がありません。胸部レントゲン検査で発見します。検診やほかの病気の検査の時に偶然発見されたりもします。
 これに対して、最近はへリカルCTといって、患者さんが呼吸を停止している間に目標とする部位の周囲を・線管球がグルグル回転し、その間に患者さんを検査台ごとスライドさせてすき間なく対象臓器の全体を検査する方法が開発され、通常のレントゲン写真では写りにくい部位の肺がんの発見や、小さい肺がんなどの発見に威力を発揮しはじめています。

肺がんの分類

細胞の形態による分類
 肺がんと一口でいっても実はいろいろな種類のがんがあります。
それらは顕微鏡でみたがん細胞の形態から大きく分けると、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんなどに分類されます。
           一番多いのは腺がん
 腺がんは肺の末梢に発生するがんの代表的なもので、非喫煙者の女性もかかるがんです。
 肺がんの60%の多くを占め、肺がんでは最も頻度の高いがんです。しかも近年この腺がんの増加が著しいことが問題となっています。腺がんははっきりした原因の判っていないがんと考えられていましたが、近年この腺がんにも喫煙と関係のないがんと、喫煙が関係しているがんがあることが判って来ました。
          次に多いのが扁平上皮がん
 扁平上皮がんは喫煙と関連の深いがんで、非喫煙者はまずかからないがんです。
圧倒的に男性に多く、肺がんの約20%を占めます。後の項で述べる肺門(肺の心臓に近い部分で、比較的太い気管支の部分)型肺がんの代表的なものですが、肺野(肺の末梢の部分)に発生することも多く、扁平上皮がんの60%は末梢発生です。がんが発生したその場所で発育する性格が比較的つよく、転移の足が遅く、完全に切除できると治癒の可能性が高いがんです。また放射線治療も有効ながんです。
             その他の肺がん
 小細胞がんは発育が早く、小さなうちから転移をおこしやすいがんとして有名です。
幸い肺がんの15%程度にしかすぎません。発育が早いために発見されたときにはすでに進行しており、治療として手術が考慮されることは少なくなります。検診での早期発見による2次予防の難しい肺がんです。
 肺門付近にできやすく、喫煙との関連もあり男性に多いがんです。抗がん剤や放射線療法が非常に有効なことが治療上の特徴で、この点で他の肺がんとは治療上の対応が異なり、手術よりも抗がん剤の治療が主体になることの多い肺がんです。
 大細胞がんは肺がんの約5%を占めますが、発育が比較的早いという以外あまりはっきりした特徴はありません。
 この4種類以外にも肺がんはありますが、特殊で稀ながんということになります。

肺がん検診の現状

昭和62年から老人保健法により、各市町村で肺がん検診が導入されています。
 1991年には、肺がん検診受診者数は550万人を超え、このうち2,200人が肺がんと診断されています。
 多くの市町村で、早期発見や禁煙指導などの健康教育、講習会やパンフレット配布を行っています。その他、肺がんをなくす会などの団体による検診も行われています。
 検診で発見された肺がんの比率は、全肺がんの10%未満ですが、咳、痰、血痰などの自覚症状で発見された肺がんに比べ、検診で肺がんが発見された場合の病期は早期のものが多い結果となっています。
 肺がん検診は、一般的には胸のレントゲン写真と喀痰細胞診と呼ばれる痰の検査により行われております。
 最近は、ヘリカルCTと呼ばれる肺のX線断層検査が約15秒間で行われるようになり、より小さな肺がんも発見されるようになっています。
 肺の奥のほうにできる肺がんは(肺野型)、レントゲン写真でよく発見されます。喫煙ともあまり関係がないので、40歳以上の方は、年1回は少なくとも検査する必要があります。
 一方、肺の入口にできる肺門型のがんは喫煙と深く関係しています。レントゲン写真に映りにくいのですが、痰の中にがん細胞がこぼれ落ちてくることが多いので、痰の細胞検査で早期に発見することができます。
 特に50歳以上の重喫煙者の方は、肺の入口の部分のがんにかかる率も高いので、痰の細胞診も定期的に行う必要があります。
 検診で肺癌が発見された患者さんの方が,自覚症状はあってから受診された患者さんより,明らかに長生きできています.
 ちなみに,別の病気で病院に通院中に発見された患者さんも,自覚症状がないうちに発見できているため,長生きしておられます。
 検診で早期発見される場合,70歳以上の高齢者より,60歳代までの方のほうが,早期発見により長生きできる可能性が高い結果がでました。
 これは,70歳以上の高齢者では,早期に肺癌が発見されても,高齢のために手術や抗癌剤治療ができないこと,肺癌を治療しても,別の病気で亡くなっておられる方が多いためです。

抗癌剤による化学療法

化学療法はすべての病期の小細胞癌に対する最も一般的な治療です。
 しかし、非小細胞癌は小細胞癌に比べて抗がん剤が効きにくく、抗がん剤のみでがんが治ってしまうことはまれです。
 非小細胞癌に対する抗がん剤による化学療法の多くは臨床試験の形で実施されています。
 化学療法は、多くの場合静脈注射や点滴静脈注射で行いますが、まれには飲み薬のこともあります。
 外科療法・放射線療法が局所治療と呼ばれているのに対し、化学療法は全身治療と呼ばれています。
 薬が血液の中に入り、血流に乗って全身をめぐり、肺のみならず、肺の外に拡がった癌細胞も殺すことができるからです。
 小細胞癌の場合、使用する抗がん剤は1種類ではなく、通常は2種類以上を使用します。
 治療期間は、通常、16~24週間かかります。非小細胞癌に対しては標準的な化学療法は確立されておらず、臨床試験の計画書に準じて行われます。
 抗癌剤による治療は単独で行われることもありますが、放射線療法や外科療法と併用することもあります。
 一般的にいくつかの抗癌剤を組み合わせる多剤併用療法が用いられていますが、抗癌剤には強い副作用もあり、熟練した病院で治療を受ける必要があります。
 非小細胞癌によく用いられる薬剤は、シスプラチン、マイトマイシン-C、ビンデシン、 イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、カルボプラチンなどです。
 一方、小細胞癌には多種の抗癌剤が有効であり、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、イリノテカン、イフォマイドなどが主に用いられています。
また、非小細胞癌で再発した方に新たに飲み薬でイレッサが用いられています。

肺がんの治療 放射線療法

放射線療法
 X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。非小細胞癌の場合、手術できないI期からIIIa期、胸水を認めないIII期、小細胞がんの場合は限局型が対象となります。
 肺癌の場合、通常は身体の外から患部である肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的に1日1回週5回照射し、5~6週間の治療期間が必要です。
 最近では、1日2回週10回、あるいは1日3回週15~21回照射する多分割照射も試みられています。
 また、放射線治療は脳にがん細胞が転移するのを防ぐために使われます。これを予防的全脳照射と呼びます。予防的全脳照射は正常の脳の機能を損なう恐れがまれにあり、治療終了後数年以降に記憶力低下などの精神神経症状があらわれることがあります。
 放射線療法には、広く一般的に用いられているリニアックと、癌病巣のみを集中的に治療する陽子線治療、重粒子治療もあります。

肺がん治療の副作用と対策

がんに対する治療は、がん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられませんので、副作用・後遺症を伴います。
 肺がんも同様であり、特に、小細胞がんは急速に進行し致命的になりうるので、この病気に対する治療は強力に行う必要があり、そのため副作用も強くあらわれることがあります。
 医師はできるだけ副作用を軽減すべく努力しますが、治療に伴い種々の副作用があらわれることがあります。
1)外科療法
肺を切除した結果、息切れや、手術後半年~1年間の創部痛を伴うことがあります。そのため手術後はライフスタイルを変える必要のある場合がまれにあります(詳しくは「肺手術後の呼吸訓練」、「呼吸困難」を参照して下さい)。
2)放射線療法
主な副作用は、放射線による一種の火傷(やけど)で、放射線治療中および治療の終わりころから症状が強くなる肺炎、食道炎、皮膚炎です。肺炎の初期症状は、咳・痰の増加、微熱、息切れです。通常、ステロイドホルモン剤を服用します。
 しかし、炎症が強く出た場合、長い間咳や息切れが続くことがあります。胸のレントゲン写真では、黒く映っていた肺が白くなり、侵された肺は小さくなります。
 これを放射線肺線維症(はいせんいしょう)と呼びます。食道炎の症状は、特に固形物の通りが悪くなり、強い場合は痛みを伴います。
 食道炎に対しては、一時放射線治療の延期・中止を行い、痛みを伴う場合は食事・飲水制限をして、痛み止め剤の服用や栄養剤の点滴静注をします。かゆみを伴う皮膚炎(発赤や皮がむける)に対しては、軟こう剤を使用します。
3)抗癌剤による化学療法
用いる抗癌剤の種類によって異なり、また個人差もありますが、治療中の主な副作用は、貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。その他、予期せぬ副作用も認められることがあります。
 強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)と呼ばれる遺伝子工学でつくられた白血球を増やす薬を連日皮下注射します。

肺癌の種類と広がり(扁平上皮癌)

皮膚や粘膜など体の大部分をおおっている組織である扁平上皮に よく似た形をしているがんのことです。
扁平上皮癌は、タバコとの関係がきわめて濃厚で、大部分は肺の入り口に 近い肺門部にでき、肺がん全体の25~30%を占め、2番目に多いがんです。
 別名タバコ癌ともいわれることがあります。
 癌が気管支の中で広がって気管支を塞いで呼吸困難が突然起こったり、喘息のような症状が表れることがあります。
 また直接、骨や心臓、大動脈に広がることの多いです。
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肺癌の種類と広がり(腺癌)

肺癌は、癌細胞を顕微鏡で見ることによって、4つの組織型に分類されます。
組織型によって、性質やできる場所が異なります。
 また治療法も大きく分けて、小細胞癌非小細胞癌(腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌)で異なります。 まれにその他の癌も1%ほどあります。
             腺癌
 唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺などの腺組織とよく似た形をしている癌のことです。
 腺癌は、多くの場合、肺の奥のほうのこまかく枝分かれした先にできます。
 女性やタバコを吸わない人にできる肺癌の多くがこの腺癌です。
 またタバコを吸う人にも最近この腺癌が増えてきています。
 肺がん全体の半数程度を占め、肺癌の中で最も多い種類の癌です。血液の流れに乗って他の臓器に転移することの多い肺癌です。
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肺がんの診断

咳、痰などの症状がある場合、最初に胸のレントゲン検査をします。次にがんかどうか、あるいはどのタイプの肺がんかを顕微鏡で調べるため、肺から細胞を集めます。通常は痰の中の細胞検査をします。
また、ある程度進行した肺癌では血液検査でもがんの兆候が現れることがあります。一般的に腫瘍マーカーと呼ばれますが、血液検査はあくまで補助的な検査であることを肝に銘じ、血液検査のみで早合点しないようにしてください。
 腫瘍マーカーが低いからといってがんがないとは決していえません。逆に軽度の高値でがんにおびえるのも良くありません。
 数字で出てくる検査はX線写真やCTに比べてわかりやすいように思ってしまうものですが、決してそうではありません。その結果を解釈してくれる信頼できる主治医の解説が絶対に必要です。
           1)気管支鏡検査
 現在、最も信頼度が高く、比較的安全で、世界中で広く行われている検査です。気管支鏡あるいはファイバースコープと呼ばれる特殊な内視鏡を口から挿入し、喉から気管支の中を観察し、組織や細胞を採取します。この検査は通常外来または短期入院で行われます。
 検査に先だって、検査による喉や気管の痛みを軽減するため、口腔の奥まで局所麻酔を行います。太さ5~6mmの気管支鏡を使って、気管支の壁から細胞をとったり、組織の一部をとり、標本をつくって顕微鏡でがん細胞があるかどうか検査します。
 これを生検と呼びます。検査時間は約20~30分です。検査中は目覚めており、通常、検査後数時間以内に帰宅できます。 ただ、内視鏡を気管支の中に入れるわけですから、楽な検査ではありません。
 不安な患者さん、高齢の患者さんには、短期入院(2泊3日程度)で、十分な麻酔と麻薬注射で苦痛を極力少なくして検査しています。入院の際は、血液検査、レントゲン、CT、呼吸機能など他の検査も併せて短期間に実施しています。
       2)経皮吸引針生検、穿刺吸引細胞診
 もし病巣まで気管支鏡が届かなかったり、採取された検体が診断に十分でない場合、局所麻酔下に肋骨の間から、細い針を肺の病巣に命中させ、腫瘍組織や細胞をとります。この場合、レントゲンで透視をしながら行います。 通常10分~15分で終了します。
 危険性について少し詳しく説明します。肺はやわらかいスポンジが詰まった風船のようなものです。
 それを針で突き刺しますので穴があいて空気が漏れ、肺がしぼむことがあります(気胸といいます)。たまに、漏れた空気が皮膚の下に溜まることもあります(皮下気腫といいます)。
 また、肺にはたくさんの血管が通っているのでその血管に針があたって出血することがあります。胸の中への出血と気管支を通って口から出る喀血の2種類の可能性があります。その他、麻酔薬のアレルギー、胸膜を刺したときに反射で起きるショックなどが考えられます。
 多いのは気胸で、程度の軽いものはたいてい起きていると思います。症状は肩のほうに抜ける感じの痛みと軽い呼吸困難です。
 呼吸困難は気胸の程度によるもので、症状が強い場合は入院が必要なこともあります。普通24時間で症状は落ち着き、1週間で元通りに回復しますが、まれにチューブで漏れた空気を抜く必要があります。皮下気腫は何もしないでも回復することがほとんどです。
 出血は普通大量になることはなく、数時間の安静で落ち着きますが、止血剤の点滴をして入院の必要が出てくる時もまれにあります。ただし、循環器の病気で血液が流れやすくなる薬を飲んでいる方の場合は大きな事故につながる可能性があります。
 経皮肺生検に限らずどのような検査でもそうなのですが、100%確実な検査というものはありません。経皮肺生検法も診断の付く確率は100%ではありません。
 レントゲンのぼんやりと映った影を見ながら針を刺すので、外れることがあります。肋骨などが邪魔になって十分な検査ができない場合もあります。
 このようなときにはいくつかの方法が考えられます。同じ検査をもう一度繰り返す。全身麻酔で小さな手術をする。少しの期間を置いてCTを撮り比較する。などです。レントゲンに写った病変の性質で判断することになります。
          3)CTガイド下肺針生検
 あまりにも腫瘍が小さく、通常のレントゲンでは腫瘍がわかりにくい場合に、コンピューターを使ったX線写真(CT)で目標を定め、針を病巣に命中させ組織をとります。
 採取した細胞を顕微鏡で検査します。 検査中に何度かCT撮影するため、30分~60分の時間がかかります。
 CTガイド下針生検の場合、どうしても針を肺に刺している時間が長くなるため、透視による経皮針生検よりも、気胸、皮下気腫、出血の危険が増してきます。
             4)胸膜生検
 局所麻酔をして肋骨の間から特殊な器具を用いて胸膜を一部採取し、がん細胞がないかどうか検査します。肺の外側に水がたまっている(胸水)場合、同様の手法で注射針を用いて胸水をとって同様に検査します。
           5)リンパ節生検
 首のリンパ節がはれている場合、リンパ節に針を刺して細胞を採取したり、局所に麻酔をして外科的にリンパ節を採取することもあります。採取した細胞・組織を顕微鏡下でがん細胞がないかどうか検査します。
 これらの方法を用いても診断が困難な場合、外科的に組織を採取します。外科的な方法には、胸腔鏡を用いる方法、縦隔鏡検査を用いる方法、胸を開く方法があります。
 いずれも入院し、全身麻酔が必要となります。胸腔鏡を用いる方法は、胸の皮膚を小さく切開し、そこから肋骨の間を通して胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を肺の外側(胸腔)に挿入し、肺や胸膜あるいはリンパ節の一部を採取するものです。
 縦隔鏡検査は首の下端で胸骨の上のくぼみの皮膚を切開し、気管前部の組織をおしのけて空間をつくり、ここに縦隔鏡と呼ばれる筒状の器具を挿入し、直接眼で見ながら気管周囲のリンパ節や近くに位置する腫瘍組織を採取するものです。採取した組織を顕微鏡でがん細胞がないかどうか検査します。

肺がんの症状とは

いつまでも続く咳や胸痛、呼吸時のぜーぜー音(喘鳴:ぜいめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)、顔や首のむくみなどが一般的症状です。
 肺癌患者さんで最も多い症状は、咳と痰でした。
 また最も肺癌である確率の高い症状は血痰でした。
 一言で肺癌といっても、肺癌の種類で症状も異なってきます。
 扁平上皮癌や小細胞癌などにみられる肺門型の肺癌は、早期から咳、痰、血痰などの症状が出現しやすいものです。
 肺野型の肺癌にみられる腺癌は、癌が小さい間は殆ど症状がありませんが、検診や人間ドック、高血圧などの他の病気で医療機関にかかっている時に見つかることが多くなっています。
 また不幸にも、転移による症状、例えば脳転移による頭痛、骨転移による腰痛などの骨の痛みなどが最初の症状である場合もあります。
 また、胸痛があらわれることもありますが、これは肺がんが胸壁を侵したり、胸水がたまったりするためです。
 その他、肩こり、肩痛、背中の上部痛、肩から上腕にかけての痛みもまれにあります。他のがんと同様に肺がんでも、易疲労感、食欲不振、体重減少がおこります。
 数は少ないですが、独特の症状が現れるものに小細胞癌があります。
 小細胞肺がんは種々のホルモンを産生します。そのため、まれに副腎皮質刺激ホルモンによるクッシング症候群と呼ばれる身体の中心部を主体とした肥満、満月のような丸い顔貌、全身の皮膚の色が黒くなる、血圧が高くなる、血糖値が高くなる、血液中のカリウム値が低くなるなどの症候があらわれることもあります。
 その他、まれに抗利尿ホルモンの産生による水利尿不全にともない、血液中のナトリウム値が低くなり、食欲不振などの消化器症状や神経症状・意識障害が出現することがあります。
 この他、大細胞がんでも認められることがありますが、細胞の増殖を増やす因子の産生による白血球増多症や発熱、肝腫大もあらわれることもあります。
 このように肺がんの一般症状は、風邪などの症状と区別がつかないことが多いので、なかなか治りにくい咳、血痰、胸痛、喘鳴、息切れ、嗄声、発熱などを認める場合には医療機関の受診をお勧めします。
 特に喫煙歴のある40歳以上の人は、いつ肺癌になっても不思議ではありませんので注意が必要です

肺がんの生存率

肺がん小細胞がんでは、再発が 3年なければほとんど治っていると考えられています。
 がん病巣が原発巣に限られている限局型(げんきょくがた)の場合の3年生存率が約30%、全身に転移してしまう進展型の場合の 3年生存率が約10%と言われています。
        肺がんの生存率(5年生存率)
 肺がんの生存率(5年生存率)は、他のガンと同様にステージ(ガンの進行程度を示す病期)によって異なり、1999年の肺癌外科切除例の全国集計による病理学的別5年生存率の統計から見てみると、
【1A期】83.3%、【1B期】66.4%、【2A期】60.1%、【2B期】47.2%、【3A期】32.8%、【3B期】30.4%、【4期】23.2%となっている模様です。
 外科的手術の対象患者肺がんの5年生存率として上記に掲載したものは、あくまでも外科切除例の全国平均での確率であり、外科治療後に行われる治療方針(化学療法、放射線療法の取り入れ方)や、医療機関自体によっても差があるものと考えられます。
 ちなみに肺がんの場合、一般的にステージ(病期)で【1A期から3A期】の患者さんが手術の対象となります。

肺がんの治療方法

肺がんの治療は、小細胞がん非小細胞がんかによって大きく異なります。
            ●小細胞がん
 早期から全身に転移しやすく、進行が早い反面、化学療法(抗がん薬)や放射線治療がよく効くので、抗がん薬の全身投与が第一選択になります。高齢者で、病気の発症に伴って日常生活動作(ADL)が低下した患者さんでも、確実に治療効果が望めます。
 治療成績は、診断時に胸腔内にがんがとどまっていた場合(限局型:LD)で20~30%(5年生存率)、胸郭外に転移があった場合(広範型:ED)で10~20%(2年生存率)です。
 必要によって、転移がない時期に脳に放射線の予防的照射を実施する場合もあります。
            ●非小細胞がん
 病巣が肺の片側に限局している場合、まず手術による病巣の切除およびリンパ節の郭清(かくせい)が第一選択です。しかし、病巣と反対側のリンパ節にも転移が認められた場合は、抗がん薬の併用も必要です。
 診断時から転移が認められた場合、もしくは手術不能な場合は、抗がん薬と放射線治療が主体になります。しかし、ADLが低下した人は、治療に伴う身体的負担がむしろ有害になる可能性があるため、積極的な治療を行わないほうがよい場合もあります。
 化学療法、放射線治療いずれの場合でも、肺がんは完治が非常に困難ながんです。患者さんや家族はよく担当医と相談して治療方針を決めることが必要です(インフォームド・コンセント)。判断に悩む場合は、ほかの医療機関の専門医に相談することも必要です(セカンドオピニオン)。その場合は、必ず紹介状と資料を担当医に依頼したほうが円滑にいきます。
 近年、遺伝子工学の発展に伴い、がん細胞の増殖、転移を標的とした薬剤(上皮成長因子受容体阻害薬:イレッサ)が使用可能になっています。イレッサは一部の患者さんでは有効ですが、現時点では強くすすめる根拠は弱く、また重い副作用として間質性肺炎の発症が報告されています。

肺がん 検査と診断

肺がんの検査と診断
 肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
 次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
 確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。
 
 また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
 喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
 なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
 これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。
 一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。
 さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
 また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
 高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。

肺がんの症状と合併症

肺癌の症状は、癌の種類や位置、その広がり方によって異なります。普通、初期症状として最も多くみられるのは、長期間続くせきです。慢性気管支炎で、さらに肺癌を発症した患者は、せきの悪化に気づきます。せきに伴うたんの中に血が混ざる、喀血(肺と気道の病気の症状と診断: 喀血を参照)がみられることがあります。肺癌が血管内にまで達すると、ひどい出血を起こします。
 肺癌が気管支の内部や周囲で増殖して、気管支を狭くすると、喘鳴(ぜんめい)が生じる場合があります。気管支の閉塞によって、その気管支とつながる肺の一部がつぶれることがあり、この状態を無気肺(無気肺を参照)といいます。また、気管支の閉塞によってせき、発熱、胸痛を伴う息切れや肺炎なども起こります。胸壁の内部で腫瘍が増殖すると、持続的な胸痛が生じることがあります。
 肺癌が首の特定の神経の内部で増殖すると、まぶたが垂れ下がったり、瞳孔が縮んだり、目が落ちくぼんだり、顔の半面に汗をかきにくくなるなどの症状が起こることがあり、これらの症状をまとめてホルネル症候群(まぶたが下がるホルネル症候群を参照)と呼びます。肺の上端に生じた癌が腕の動きを支配する神経の内部に増殖すると、腕に痛みや麻痺(まひ)、筋力低下などが生じ、こうした症状をパンコースト症候群といいます。声帯へ続く神経が損傷を受けると、声がしゃがれます。この損傷は主に、左肺を含む部位に癌が発症した人に起こります。
 肺癌が直接、食道の内部や周囲で増殖して食道が圧迫されると、ものが飲みこみにくくなります。ときに、癌の進行によって食道と気管支の間にフィステル(瘻[ろう])という異常な通路ができ、食べものや飲みものが肺に入るために、ものを飲みこむ際にひどいせきが出ます。
 肺癌が心臓の内部で増殖すると、不整脈、心臓を通る血流の閉塞、心臓の周囲にある心膜嚢への液体の貯留が起こります。癌が胸部にある大静脈の1つ、上大静脈の内部で増殖したりこれを圧迫することがあり、この状態を上大静脈症候群といいます。上大静脈が詰まると、上半身にある他の静脈への血液の逆流が起こります。胸壁内部にある静脈が拡張します。顔、首、乳房を含む胸壁の上部はむくんで、薄い紫色になります。さらに息切れ、頭痛、視覚異常、めまい、眠気なども生じます。これらの症状は普通、前かがみになったり横になると悪化します。
 普通、後になって生じる肺癌の症状には、食欲不振、体重減少、疲労感、筋力低下などがあります。肺の周囲に液体がたまる胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)は、癌が胸膜腔の内部にまで広がって起こります。胸水は息切れを起こします。癌が肺の内部にまで広がると、ひどい息切れ、血液中の酸素濃度の低下、肺性心(肺高血圧によって発症する肺性心についてを参照)が生じる場合があります。
 肺癌は血流を通って、肝臓、脳、副腎、脊椎、骨に転移することもあります。体の他の部分への転移はあまりみられません。肺癌の、特に小細胞癌の転移は発症早期に起こる場合があります。肺の異常が確認される前に、頭痛、錯乱、けいれん、骨の痛みなどの症状が起こり、早期診断を困難にします。
 腫瘍随伴症候群(腫瘍随伴症候群とはを参照)は、肺癌によって生じるさまざまな症状で、代謝系、神経系、筋肉など肺から離れた部位に生じます。腫瘍随伴症候群は、肺癌の大きさや位置とは関係がなく、癌が胸部以外に転移したことを示すわけでもありません。むしろ、癌のために分泌されたホルモン、サイトカインなどのさまざまなタンパク質によって腫瘍随伴症候群が生じます。

肺がんの副作用と対策

がんに対する積極的な治療で苦痛や副作用を伴わない治療はありません。肺がんも同様です。
 しかし、それをなるべく少なく、安全にという努力は日夜なされています。治療法ごとの副作用や苦痛、危険性などを列挙します。
            外科療法
 手術に際しての一番の苦痛は、術後の痛みです。
しかし今は疼痛対策が非常に進歩していますので、かつてのような激しい痛みはほとんど感じることはなくなりました。硬膜外麻酔という仕掛けを手術直前に麻酔医が背中から行います。その他の鎮痛剤も非常に良いものが出来ています。
 手術にはリスクがつきもので、100%安全な手術はありません。しかし、この手術も非常に安全になってきました。現在の一般的な手術関連死亡率は1~2%です。
 手術中の事故はまずないのですが、怖いのは術後の合併症(余病)が生命の危険を伴うことがあることです。この中で最も怖いのは肺炎で、喫煙者は明らかに多くなります。手術を受けるなら、禁煙は絶対にしなければ命にかかわると思って下さい。
 退院後は、息ぎれや、術後6ヶ月程度は傷の痛みを伴うことがあります。息ぎれがひどくライフスタイルの変更が必要になる場合がありますが、術前に予測不能でこのようになることはほとんどありません。
            放射線療法
 主な副作用は、放射線による食道炎、皮膚炎、肺臓炎です。
食道炎、皮膚炎は放射線治療の中ごろから終わりごろに出てきます。食道炎は食事をするとしみたり、痛みを感じたりします。皮膚炎は皮膚に痒みや軽い痛みが出ます。肺臓炎は放射線終了後に二カ月位の間に出ることがあります。
 初期症状は咳、微熱、息ぎれです。強い反応が出た場合は、ステロイドホルモンを投与して治療する必要があります。強い肺臓炎にはならなくても、放射線のかかった範囲の肺は放射線肺線維症という状態になり、肺としての機能はなくなります。
            化学療法
 主な副作用は、骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板減少による出血傾向など)、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、末梢神経障害(手足のしびれ)、肝機能障害、腎障害、脱毛、疲労感などです。
用いる抗がん剤の種類や個人差もあります。その他予期せぬ副作用も認められることがあります。強い白血球減少に対しては感染を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)を用います。吐き気に対しても良い薬剤が開発されずいぶん楽になりました。
         内視鏡治療(レーザー治療)
 副作用として重篤なものはありません。
しかし、ヘマトポルフィリンは正常組織にも1~2カ月はわずかに残りますので、直射日光との反応で光過敏性皮膚炎を起こします。その防止のため、約4週間直射光より遮断する必要があります。

肺がんの簡単な説明

肺がんの分類
 肺がん(肺癌)は肺から発生するがんの総称です。肺がんは,その性格,悪性度,今後の見込みを考え,さらに治療法を決定するために,いくつかの分類があります.
 肺がんは,肺がんの顕微鏡検査により以下の二つに分類されています.
小細胞肺がん
非小細胞肺がん
小細胞肺がん
 小細胞肺癌(しょうさいぼうはいがん)は,比較的少ないです。進行が早いので,発見時にはすでに転移(飛び火)をしてリンパ節や全身に広がっていることが多いです.抗がん剤や放射線治療に対して比較的よく効きます.
 非小細胞肺がん
非小細胞肺癌(ひしょうさいぼうはいがん)は,肺がんの多くを占めております. 早い時期に発見して,手術をすれば,治ゆする可能性があります.抗がん剤や放射線治療に対して効きが良くありません.
非小細胞肺がんは,顕微鏡検査によりさらに次のように分類されています.
 腺がん
 扁平上皮がん
 大細胞がん
 その他
1).腺がん
腺(せん)がんは,肺の末梢にできることが多く,咳などの自覚症状がでにくいがんです.レントゲン写真に写りやすく,しばしば健康診断で発見されます.
2).扁平上皮がん
扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんは,喫煙との関係が深く,肺の根元にできることが多いです.
3).大細胞がん
大細胞(だいさいぼう)がんは,肺の末梢にできることが多いです.非小細胞肺がんのうちでも性質の悪い肺がんです.
            原因
 肺がんは遺伝子の病気と考えられています.肺がんに関連した遺伝子がいくつか発見され,研究されています.喫煙の影響は重要で,大気汚染の影響も考えられています。
            症状
 肺がんはあまり症状は出しません.そのために早い時期に発見するのが難しい病気です.症状としては咳(せき)や痰(たん)がありますが、これはあまり気に止めない人が多いと思います.健康診断や病院で偶然にレントゲンで異常を指摘されて驚く場合が多く見られます.その他の症状としては血痰(けったん)や胸の痛みや腕の痛みそれに顔の腫れなどの症状があります.
             検査 
 胸部レントゲン検査
肺の異常をみるのに適しています.但し,肺の根元に病変があるときや,小さな病変では指摘するのが難しいです.
 胸部CT検査
CT(コンピューター断層撮影)検査があります.これは病気の場所や形や広がりを見るのに,役に立ちます.しかし、胸部レントゲン検査やCT検査では肺がんを疑うことはできますが、確実に診断することはできません.
 胸部MRI検査
これは病気の周囲との関係や広がりを見るのに役に立ちます.肺の検査ではCT検査の方が有効な情報量が多いので,MRI検査は必ず行われるものではありません.
 転移の検査
がん転移(飛び火)の有無を調べるために、脳や肝臓や骨の検査をします。方法はCT検査、超音波検査、アイソトープ検査などを使用します。
 痰(たん)
確実に診断するためには病変の細胞を顕微鏡で調べなくてはなりません.細胞をとる検査として、痰(たん)の検査があります.痰の検査は痰を病院に提出すればよいので楽な検査です.しかし、これで診断できるのは一部の肺がんです.
 気管支鏡(きかんしきょう)検査
肺の内視鏡検査です.気管支鏡(きかんしきょう)検査と呼ばれています.気管支鏡は外来でできる検査で、喉(のど)や気管の中に麻酔(痛み止め)のスプレーをして行います.局所麻酔ですから,意識ははっきりしています.外来で行うことができます.肺の内部の観察ができます。また顕微鏡で調べるための病変を取ることもできます。
 経皮的肺針生検
 
CT検査やレントゲン検査や超音波検査を行って,病変を直接見ながら肺に外から針を刺す検査です.顕微鏡で調べるための病変を取ることが目的です。局所麻酔(歯医者さんで受けるような一箇所の麻酔)が必要です.検査で肺から空気が漏れる可能性があるので,通常,入院して検査を行います.
 胸腔鏡(手術)検査
上記の検査で診断がつかない場合に行います。全身麻酔が必要です。胸腔鏡検査は胸に小さな穴をあけて行う内視鏡手術で、通常の手術よりも痛みや傷が小さくてすみます。
 体力検査
手術や治療を行う前に行います。肺活量、心電図、採血(肝機能、腎機能)、検尿などがあります。
              進行度
 肺がんの治療を考えるときには進行度の評価が重要です.進行度によって手術を受けた方が得か、受けないほうが得か決めなくてはなりません.
              外科治療
 肺がんの手術内容は肺のひとふさ(葉:よう)とリンパ節を切除することです.手術は皮膚を大きく切って病変に達して行う従来からの方法と皮膚に小さな傷をつけて行う胸腔鏡(きょうくうきょう)手術という方法があります.切る場所は病変の部位や大きさによって違います.
 胸腔鏡手術とは胸腔鏡を用いた手術です.胸腔鏡は先端に小型のカメラを装着した棒で、これを直径5-12mm程の穴を通じて胸に入れます.このカメラは拡大した視野が得られるので中を観察することができるのです.穴をさらに1-3個開けて、電気メスやハサミを使用して手術を行います.利点は手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少ないことです.しかし、手術が難しい場合などには従来の方法に途中で変更しなくてはならないこともあります

肺がんの症状と検査

肺がんの症状
 肺がんは、症状が出る前に健康診断などで発見されることもありますが、多くは4週間以上続く咳(せき)、喀痰(かくたん)、血痰(けったん)、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器の症状をきっかけに発見されます。
 まれに、胸膜への転移(胸水貯留)や脳転移の症状(頭痛、吐き気、嘔吐)、骨転移(腰痛や胸痛)などで見つかることもあります。
 気管・気管支に発生するタイプの肺がんは、血痰や咳、呼吸困難などの症状が出やすく、早期に発見されることも多いのですが、肺の末梢に発生するタイプの肺がんは、がんが大きくなるまで無症状のことが多く、要注意です。
            検査と診断
 まず肺がんは、胸部単純X線写真による異常の発見が診断のきっかけになります。
 次に、胸部CTを撮影して、肺における異常な影の厳密な位置とほかの臓器への広がりの程度、リンパ節転移の有無を調べます。
 確定診断のためには、がん細胞の証明が必要です。まず、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診を行いますが、これは陽性になる確率が低いため、たとえ陰性でも気管支鏡検査による生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。また、CTで観察しながら経皮的針生検でがん細胞を採取する方法もあります。
 喀痰細胞診、気管支鏡検査などでがん細胞が証明されなかった場合は、CT画像の病変の大きさや特徴から強く肺がんが疑われるならば、全身麻酔で胸腔鏡下肺生検を実施して確定診断を行います。
 なお、気管支鏡検査の合併症として術後の気胸(ききょう)および肺炎、出血があるので、85歳以上の人、日常生活動作(ADL)が低下している人、心臓疾患の既往のある人は、術前に医師から検査のリスクについて説明を聞き、納得したのち受けるようにしてください。
 これらの検査で肺がんと診断された場合、転移の有無を調べる検査をします。一般的には脳MRI(CT)、腹部造影CT、骨シンチグラフィを行います。さらに、手術適応などの面からFDG―PETという検査を実施する場合もあります。
 また、血液中の腫瘍マーカーは、組織型の推定や治療効果の判定、再発の診断に役立ちます。
 高齢者において肺がんの診断を進めていくうえで重要なことは、少々時間がかかっても、身体への負担を考慮して負荷の少ない検査(以前の画像との比較、喀痰細胞診)を実施していくことです。

肺がんの予防

肺がんの予防
 疾病を起こす見込みを増加させるものはすべて危険要因と呼ばれます。;疾病をおこす見込みを減少させるものはすべて保護要因と呼ばれます。
 癌(がん)の危険要因のいくつかは回避することができますが、多くは回避できません。
 例えば、たばこを吸うことをやめることはできますが、親からどの遺伝子を受け継ぐか決めることはできません。
 喫煙と特定の遺伝子を継承することをある種類の癌(がん)の危険要因と考えることができますが、喫煙だけが回避することができます。予防は危険要因を回避し、癌(がん)になる見込みが減少するように制御することができる保護要因を増加させることを意味します。
 多くの危険要因を回避することができますが、危険要因を回避することがあなたを癌(がん)にしないと保証するわけではないことを心に留めておくことは重要です。
 さらに、癌(がん)の特別な危険要因を持ったほとんどの人々は現実に癌(がん)になりません。
 癌(がん)の原因となる要因へ他の人より敏感な人がいます。あなたにとって有効かもしれない癌(がん)を防ぐ方法に関してあなたの医師に尋ねてください。
 肺は呼吸器の一部です。肺の機能は血液から二酸化炭素を排除する一方、酸素を供給することです。
 肺がんは、リンパ節あるいは胸の他の組織(別の肺を含む)に広がるかもしれません。多くの場合、肺癌(はいがん)がさらに骨、脳、肝臓のような身体の他の器官に広がるかもしれません。
 肺がんは米国の男性および女性の癌(がん)死の主要な原因です。
 肺がんは、しばしば疾病のための既知の危険要因に関係しています。危険要因のすべてを回避することができませんが、多くは限定可能です。
          タバコ
研究は、いかなる形式でもタバコ製品を吸うことが肺がんの主な原因であることを示します。環境か受動的なタバコ煙も肺がんを引き起こすことに関連します。ニコチンガム、ニコチンスプレー、ニコチン吸入器のような多くの製品が喫煙を中止するための試みに有用かもしれません。さらに、地域、州、全国的な多くの努力は、喫煙割合を縮小することを支援しました。
        ベータ・カロチン
研究はベータ・カロチン使用は比較的高い強度の喫煙者における肺がんの危険を減少させます。
          化学予防
化学予防は癌(がん)成長を逆転するか、抑えるか、防ぐ特定の自然か人造の薬の使用です。化学予防は活発な臨床の研究の領域です。これはまだ標準治療になっていません。
 肺がんの他の危険要因には石綿およびラドン曝露があります。

肺がんの遺伝子治療とは

肺がんの遺伝子治療とは
 最近のめざましい遺伝子工学の進歩によって,多くの病気が遺伝子レベルの異常によって引き起こされていることがわかってきました.病気の原因となっている『異常な遺伝子』を同定し,代わりに人工的に作った『正常な遺伝子』を外部から細胞内に補充して細胞本来の機能を回復させることによって病気の治療を行うというのが遺伝子治療の考え方です.
 世界で初めてヒトに対する遺伝子治療が行われたのは1990年のことです.対象となったのは,ADA欠損症という病気の4歳の女児でした.これは生まれながらにADAとういう大切な酵素を産生する遺伝子に異常があるために正常なADAが作られず,結果として重症の免疫不全を生じる病気です.米国国立衛生研究所の医師団はこの患者に正常なADA産生遺伝子を投与して効果をあげたのです。
 ADA欠損症のように,体に必要な酵素を産生する遺伝子に生まれつき異常があるような病気(先天性代謝異常症)は正常な遺伝子を投与して酵素を補充するだけで治療効果が得られやすいため,遺伝子治療の良い適応と考えられています.
        がん遺伝子とがん抑制遺伝子
 がんの発生や進行にはさまざまな遺伝子が関わっています。これらの遺伝子はその働きから大きくがん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に分けられます。これらの遺伝子に異常が起こるとがんが発生したり増殖したりします。がんを自動車に例えると、がん遺伝子は自動車のアクセル、がん抑制遺伝子は自動車のブレーキに相当します。すなわちがん遺伝子の異常はアクセルが踏み込まれ自動車が加速した状態、がん抑制遺伝子の異常はブレーキが壊れて自動車が止まらなくなった状態と考えられます。このようにして自動車が暴走するようにがん細胞は増殖していきます。
        
          がんの遺伝子治療
 がんに対する遺伝子治療では,これら遺伝子の異常を同定し,『がん原遺伝子』に異常があればこれを不活化する遺伝子を投与するか,『がん抑制遺伝子』が不活化していれば『正常ながん抑制遺伝子』を投与する,といった方法が基本となっています.また,がん細胞に対する免疫能を強化する目的でがん患者さん自身のリンパ球にある種の遺伝子を組み入れて強力なリンパ球に変化させてから再び体内に戻してがんを攻撃させる方法などもあります。
         小細胞肺がんと非小細胞肺がん
 肺がんには主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があります。治療方法は小細胞がんとそれ以外の肺がんでは大きく異なるため、小細胞がん以外の肺がんを非小細胞肺がんと総称します。非小細胞肺がんは、早期のものでは手術が最善の治療法ですが、不幸にもがんが進行してしまった場合には手術で病巣を切除することは困難です。また抗がん剤などの治療も効きにくい種類のがんです。このがんに対して新しい治療法として遺伝子治療が試みられるようになりました。

肺がんの遺伝と家族性腫瘍

一部のがんでは遺伝的な素因をもとに発症することが明らかになっており、このような腫瘍を「家族性腫瘍」と総称しています。
 この中には(1)1つの遺伝子の変異が原因で発症する単一遺伝子性疾患としての家族性腫瘍症候群と、(2)遺伝子が作るタンパク質の機能に微妙な違いをもたらす遺伝子の変化や複数の遺伝子の変化の相互作用に、環境の要因が影響する多因子性がん素因の2つがあります。
 上記(1)の家族性腫瘍症候群については、診断や治療の面で多くの知見が集積され、臨床の現場に応用されつつあります。一般的に家族性腫瘍症候群の特徴として「若くしてがんに罹患した方がいる」「家系内に何回もがんに罹患した方がいる」「家系内に特定のがんが多く発生している」などがあり、このような家系の方はがんに罹患しやすい体質を持っている可能性があります。
 しかし、血縁者にがんに罹患した方が複数いることだけではご自身ががんに罹患しやすいか否かを判断することはできません。一般に家族性腫瘍の確定診断は遺伝子の検査により行います。
 上記(1)では遺伝性大腸がん(FAPやHNPCC)や家族性乳がん・卵巣がんなど多くの疾患で遺伝子診断を行うことが可能です。一方、(2)の多因子性がん素因については未だ臨床応用されている対象疾患はほとんどありませんが、将来は予防医学の観点から活用される可能性があります。
 例えば同じように喫煙していても肺がんに罹患する人と罹患しない人がいます。これは1つの説明として、喫煙の際に生じる有害物質を代謝する酵素に関する遺伝子の個人差が指摘されています。
 がんは誰もが罹患する可能性のある疾患です。あるがんの発症が遺伝的な要因によるものかどうかを診断することは現在ではまだ難しく、がんの遺伝として一般に取り扱われているのは主に上記(1)の家族性腫瘍症候群です。
 がんの遺伝カウンセリングの現場では、個々の症例に応じて、がんの遺伝に関する情報の提供、遺伝子診断や対策のプランニングなどを扱っています。
 現時点では、臨床に有用な遺伝子に関する情報や遺伝子診断の適応となる疾患はごく限られていますが、治療やがん検診の方法がほぼ確立した疾患もあります。がんに罹患しやすい体質を受け継いでいたとしても、適切な健康管理により治療成績の向上が期待できる可能性があります。

肺がんのいくつかの原因

タバコ。
タバコを吸うことは肺がん(肺癌)の原因となります。たばこにある発がん(癌)物質と呼ばれる有害な物質が肺の細胞に障害を与えます。時間を経て、障害を与えられた細胞はがん(癌)になることがあります。喫煙者が肺がん(肺癌)になる可能性は喫煙開始年齢、喫煙期間、1日に吸うタバコの本数、喫煙者がどれほど深く吸入したかで影響されます。禁煙により、肺がん(肺癌)になる確立は大きく減少します。
葉巻きとパイプ。
葉巻きとパイプ喫煙者は非喫煙者より肺がん(肺癌)になる確立は高いでます。喫煙した年数、パイプまたは葉巻きを1日に吸った本数、どれほど深く吸入したかがすべて肺がん(肺癌)の確立に影響します。吸入しない葉巻きやパイプの喫煙者でさえ、肺、口、および他のがん(癌)の危険が増大します。
環境のたばこ煙。
環境のたばこ煙(environmental tobacco smoke:ETS:他の誰かが喫煙する時の空気の煙)によって肺癌になる確立は増大します。環境のたばこ煙、つまり他人の煙を吸うことは、受動または間接喫煙と呼ばれます。
ラドン。
ラドンは、土と岩石に自然に存在する、見えない、無臭で、無味な放射性の気体です。これは肺がん(肺癌)になる障害を起こす可能性があります。鉱山に働く人々はラドンに被爆するかもしれません、そして米国のいくつかの地域においてはラドンは家に発見されます。ラドン被爆により、すでに肺がん(肺癌)になる危険のある人は、喫煙することにより危険を増大させています。自分の家でラドンを測定できる道具一式が多くの金物屋で入手可能です。家庭のラドンテストは比較的使いやすく、安価です。ひとたびラドン問題が改善されたら、肺がん(肺癌)の危険はなくなります。
石綿(いしわた)。
石綿は、繊維として自然に存在するある群の鉱物の名前で、一定の産業で使われます。石綿繊維は、容易に粒子に分解する傾向があり、空中に浮かび、衣服に付きます。粒子が吸入されると、それらは肺に留まる可能性があり、細胞に障害を与え、肺がん(肺癌)の危険を増大させます。研究により、大量の石綿にさらされた労働者は、石綿にさらされなかった労働者に比べて3倍から4倍肺がん(肺癌)の危険を持っていることが示されました。造船、石綿採掘と製造、絶縁体の仕事、およびブレーキ修理のような産業の労働者は石綿にさらされます。肺がん(肺癌)の危険は、また喫煙する石綿労働者の間でいっそう高くなっています。石綿労働者は、雇用者から提供された保護する機器を用い、薦められる勤務方式と安全方法に従うべきです。
汚染。
肺がん(肺癌)と、ディーゼルおよび他の化石燃料の燃焼の副産物などの一定の空気汚染物質への接触の関係を、研究者は見つけました。しかし、この関係ははっきりと定義されず、さらに研究されています。
肺の病気。 一定の結核(TB)などの肺の病気は、肺がん(肺癌)になる可能性を増大させます。肺がん(肺癌)は、結核で傷跡をつけられた肺の部分にできる傾向があります。
個人歴。
肺がん(肺癌)に1度なったことがある人は、肺がん(肺癌)に1度もなったことがない人に比べて、より次の肺がん(肺癌)になり易くなります。肺がん(肺癌)が診断された後の禁煙により次の肺がん(肺癌)になることが防止されるかも知れません。

アスベスト(石綿)と肺がん

「石綿」は、細い糸へ分離することができ織れうる、多くの強く柔軟な繊維として自然に生じる1群の鉱物に与えられた名前です。これらのファイバーは熱または化学薬品によって影響されず、電気を通じません。これらの理由のために、石綿は、多くの産業の中で広く使用されました。4つの型の石綿が営利上使用されました:
 温石綿Chrysotile 、すなわち白い石綿はアメリカの中で現在使用される石綿の約99パーセントを占める。
クロシドライトCrocidolite、または青石綿;アモサイトAmosite 、これは褐色のファイバーを持っている 。
直閃石Anthophyllite、これは灰色のファイバーを持っている。
 温石綿Chrysotile石綿はその巻き毛状の繊維で、鉱物の蛇紋石族serpentine familyにあります。他のタイプの石綿は、そのすべては棒状のファイバーを持っている、角閃石amphibolesとして知られています。
 石綿繊維の塊は、衣服への大気および杖に浮かぶことができる、小さな粒子から構成されたほこりへ容易に壊れる傾向があります。繊維は容易に吸入され呑み込まれ、重大な健康問題を引き起こすことがあります。
 石綿は、1800年代の終わり以来北アメリカで営利上採掘され使用されました。その使用は第二次世界大戦中に大幅に増加しました。その時以来、それは多くの産業の中で使用されました。例えば、建物および建設業は、断熱、耐火材料、防音と同様にセメントとプラスチックを強くするためにそれを使用します。造船業は、蒸気缶、蒸気管、湯管を断熱するために石綿を使用しました。自動車産業はブレーキ片およびクラッチ当て物で石綿を使用します。5,000を越える製品が石綿を含んでいるか、石綿を含有したものを持っています。
 1部を以下にリストします。
 水道設備および下水配管、屋根ふき材および羽目板、電線、防火材料、電気的な配電盤と部品、居住・産業建築資材のために使用された石渡セメントシート、およびパイプ製品。
 クラッチ表面、自動車のためのブレーキライニング、ガスケット、産業摩擦用品のような摩擦製品。
 製品は、テーブル当て物および熱保護マット、熱および電線絶縁、飲料用の産業フィルタおよびシート床張り材料のような石綿紙の材料を含んでいます。
 パック部品、床および屋根葺き用資材および熱と耐火性織物(毛布とカーテンを含んで)のような石綿織物製品。
天井および床タイル、ガスケットとパッキング、絵の具、コーティングおよび接着剤、コーキングおよびパッチング・テープ、ガス燃料の暖炉で使用される人工灰と残り火、プラスチックを含む他の製品。
 1970年代の終わりに、製品が環境へ過量の石綿繊維を放出したので、米国消費者製品安全委員会は、壁板パッチング合成物およびガス暖炉中の石綿の使用を禁止しました。さらに、石綿は、電気ドライヤーのメーカーによって自発的に中止されました。1989年には、米国環境保護局(EPA:Environmental Protection Agency)が、石綿の新用途をすべて禁止しました、1989に先立って確立された用途はまだ認められます。EPAは、損傷した石綿を調べて、かつ石綿の除去あるいはそれをすっかり覆うことにより接触を除去するか、縮小する学校制度を要求する規則を確立しました。
 石綿の危険に関する広範囲の公衆の関心と結び付けられた規制措置は、米国の石綿使用は重要なことに毎年下落しました。石綿の国内の消費は総計1973年に約719,000トンまでになりました。1999年までに約15,000トンまで落ちました。石綿は現在ガスケットの中で最も頻繁に屋根ふき材と摩擦の製品の中で使用されます。
     石綿への接触の健康上有害なものは
 石綿への接触は、いくつかの重大な病気の危険を増加させるかもしれません。
アスベスト症Asbestosis:息切れ、咳、永久の肺障害を起こす慢性肺疾患
肺癌
胸膜中皮腫ー胸と腹の表面を覆う薄膜の比較的まれな癌
喉頭、中咽頭、胃腸管、腎臓のような他の癌。
 
 ほとんど誰でもいつか生活の間に石綿にさらされます。しかしながら、ほとんどの人々はそれにより病気になるわけではありません。石綿から病気になる人は、多くの場合材料と直接接触あるいは実質的な環境上の接触を通じた仕事で、通常定期的にさらされる人々です。
 1940年代の初め以来、何百万ものアメリカの労働者が石綿にさらされました。石綿のほこりからの健康上有害なものは、造船貿易、石綿採鉱および製粉業、石綿織物および他の石綿製品の生産、建築業での耐熱仕事、ブレーキ修理および様々な他の貿易にさらされた労働者に認識されました。倒壊労働者、石壁除去剤、消防士も、石綿ほこりにさらされるかもしれません。政令や仕事慣習の改善の結果、今日の労働者(以前にさらされていない)は、過去にさらされたより危険に直面することが少なそうです。
 より強い露出およびより長い露出によって労働者への危険が増加することは知られていますが、調査者は短期の露出でも個人に石綿に関連した疾病があるのを見つけました。一般に、石綿に関連する疾病になる労働者は、彼らの最初の露出の後に長い間病気の兆候を示しません。石綿に関連する徴候が起こるために10~40年かかることがあります。
 石綿に極度にさらされた労働者の家族が中皮腫を起こす、危険が増加するというある証拠があります。この危険は、労働者の靴、衣類、皮膚および髪の毛により家へもたらされた石綿ほこりへの接触に起因すると思われます。この種の発露出は傍職業露出?(paraoccupational exposure)と呼ばれます。これらの露出を減少させるために、石綿労働者は、仕事場を去る前にシャワーを浴び、衣類を交換することを通常要求されます。
 石綿にさらされたすべての労働者がそれらの露出と関係する疾病を起こすとは限らないでしょう。実際、多くの人が悪影響を受けないでしょう。
 それが、大気へ線維を放出するような方法で破損されないし妨害されない(例えば、のこぎりやドリルを使うかことによって)限り、壁、タイルおよび管のような完成品へ接合される石綿は、健康に危険をもたらしません。石綿粒子が自由で吸入される場合、さらされた個人は石綿に関連する疾病を起こす危険にひんしています。一旦これらの繊維が身体組織へ入れば、それらはそこに無期限にとどまるかもしれません。
 石綿に関連する疾病になる危険は、発見が生じた産業のタイプおよび発見の程度に応じて変わります。さらに、異なるタイプの石綿繊維は異なる健康の危険に関係しているかもしれません。例えば、いくつかの研究の結果は、石綿の角閃石が、温石綿より、肺癌、石綿肺症、とくに中皮腫を引き起こしやすいと示唆しています。それでも、どの繊維も無害であると考えることができません。そして、適切な安全対策は石綿を用いて仕事をする人々によって常に行われるべきです。
 多くの研究が、喫煙および石綿発見の組み合わせが特に危険なことを示しました。石綿にさらされる喫煙者は、非常に肺癌の危険が増加します。しかしながら、石綿露出と喫煙を組み合わせても、中皮腫の危険を増加させません。
 禁煙が石綿に露出する労働者の肺癌の危険を縮小するだろうという証拠があります。人生の間のいつでも、仕事で石綿にさらされたか、さらされたかもしれないのではないかと思った人は喫煙してはなりません。喫煙しているなら、禁煙するべきです。
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 誰が診察を受ける必要がありますか。
 家族接触によって仕事中に、あるいは家で石綿ほこりにさらされた(あるいはそれらが露出されたのではないかと疑問に思う)個人は、経験およびどんな徴候も医師に知らせるべきです。石綿繊維は、尿、糞便、粘液あるいは肺から洗い出された資料の中で測定することができます。胸部レントゲン写真を撮ることや肺機能検査を含む徹底的な身体検査が勧められるかもしれません。胸部レントゲン写真を撮ることは、肺の石綿繊維を発見することができない、しかし、石綿露出に起因するどんな肺の変化も識別することができることに注目することは重要です、胸部レントゲン写真の解釈には、石綿に関連する疾病のレントゲン写真の診断に経験を積んだ専門家支援が要求されるでしょう。他の検査もさらに必要かもしれません。
 前に注意したように、石綿に関連する疾病の徴候は露出後何十年後も明白にならないかもしれません。次の徴候のうちのどれかが出現した場合、身体検査はすぐに予定されるべきです:
息切れ
咳あるいは咳パターンの変化
肺から咳をして出た血痰
胸か腹の痛み
呑み込むのが困難、あるいは長引くしわがれ声際
著しい体重減少

肺がん 腫瘍マーカー

肺がんの腫瘍マーカーはある型のがんを持った患者さんの血液、尿、身体組織中に、正常より高い量にしばしば検知することができる物質です。
 腫瘍マーカーは、腫物自体によって、あるいは肺がんの存在やある良性の状態で身体によって生産されます。
 この事実表は、血液で見つかったいくつかの腫瘍マーカーについて記述します。
 レントゲン写真を撮る、あるいは他の検査を施行した時に、いくつかの型のがん(癌)の発見や診断するための、腫瘍マーカー値の測定は有用でありえます。
 しかしながら、腫瘍マーカー値の測定だけでは次の理由のためにがんを診断するのには十分ではありません:
 腫瘍マーカー値は良性の状態で上昇することがあります。
 腫瘍マーカー値は肺がんを持ったすべての人、特に病気の初期段階で上昇するとは限りません。
 多くの腫瘍マーカーは特別の型のがんに特有ではありません。腫瘍マーカーの値は、複数の型のがんで上昇することがあります。
 肺がん診断における役割に加えて、腫瘍マーカー値は医者の適切な治療計画を補助するために治療前に測定されることがあります。
 いくつかの型のがんでは、腫瘍マーカー値が、病期を反映し、病気が治療にどれくらいよく効くかを予測することに役立ちます。
 患者の治療に対する効果を監視するためにも、腫瘍マーカー値は治療中に測定されるかもしれません。
 腫瘍マーカー値が下降するか正常に戻る場合、それはがんが治療にうまく効いていることを示すかもしれません。
 腫瘍マーカー値が上昇する場合、それはがんが成長していることを示すかもしれません。最後に、治療が終わった後、、再発を調べる経過観察の一部として腫瘍マーカー値の測定は使用されるかもしれません。
 現在、腫瘍マーカーの使用は主に、がんの治療に対する効果を評価し、再発を発見することです。科学者は、がんの早期発見と診断における潜在的な役割ばかりでなく、腫瘍マーカーの前述の用途も研究を続けています。

肺がんの放射線治療とは

放射線療法は放射性物質から出るγ線や大型の加速器により人工的に作り出したX線などをがん細胞に照射することによって、がん細胞に損傷を与え、がん細胞を死滅させる治療法です。基本的に放射線が照射された範囲にだけ治療効果が及びます。
 放射線療法は局所療法であるため肺がんの大きさが小さく、腫瘍が一部分に限られている場合には有効ですが、転移が拡がっている場合などには適応となりません。
 放射線療法は手術と異なり患部を切除することがありませんので臓器の機能を温存することができたり、比較的短時間で外来でも治療ができたり、副作用も比較的少ないなどメリットがあります。
 放射線治療の副作用のうち治療後数ヶ月以上経過してから現れるものの方がより注意が必要で、同じところに二度照射すると副作用の頻度が増し、放射線治療の効果よりも副作用の方が強く現れるため、一部の例外を除いて一度放射線照射を行ったところには再照射しないのが原則です。
    肺がんの放射線治療の目的は2通りある
 肺がんの治療において放射線療法の目標とするものは大きく分けて2通りあります。
 一つは、肺がんを積極的に治療するために行うもので、手術が難しい患者さんに放射線単独で治療を行ったり、抗がん剤との併用による放射線化学療法を行ったり、あるいは手術前・手術後に放射線治療を行うなどの方法があります。
 放射線治療は一般に細胞分裂が盛んなほど効きやすい傾向があります。
 特に小細胞肺がん(小細胞肺癌)では放射線化学療法により腫瘍縮小効果が期待できます。
 一方、非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)は放射線治療に対する反応はあまり良いとは言えません。
 肺がん治療における放射線治療の二つ目の目的は痛みや神経症状を和らげるために行う緩和的放射線治療です。
   肺がんの放射線治療(積極的な治療)
 肺がんを積極的に治療するために行う放射線治療法には、からだの外から放射線を照射する「外部照射治療」や、からだの中から放射線をかける「密封小線源治療」、陽子線などを利用した「粒子線治療」などがあります。
 骨転移・脳転移への放射線療法-肺がんの緩和的放射線治療
肺がんの骨転移や脳転移に伴う痛みなどの症状を和らげるために放射線による症状緩和治療が行われることがあります。
 肺がんが骨転移(転移性骨腫瘍)や脳転移(転移性脳腫瘍)などをきたした際、転移巣に対する放射線治療の主な目的は痛みや神経症状のコントロールになります。
 肺がんの骨転移(転移性骨腫瘍)に対する放射線治療
肺がんが骨に転移すると激しい痛みを感じますが、放射線をかけることで痛みを和らげることが期待できます。
 またもろくなった骨を安定させ骨折対策や脊髄の圧迫による麻痺などの神経症状をコントロールすることも目的となります。
 肺がんの骨転移は頚椎や胸椎、腰椎、骨盤骨、肋骨、胸骨、手足の骨(四肢骨)、頭蓋骨などに多く発生します。とくに頚椎や胸椎、腰椎に転移した場合は脊髄ががんによって圧迫されるため強い痛みを感じたり、神経が麻痺することがあります。
 また、普通ならば骨折することのないような弱い衝撃でも骨折してしまうことがあります。
 骨転移(転移性骨腫瘍)に対して放射線をかけることで痛みが緩和されたり、もろくなった骨を安定化させ骨折が予防できたり、神経症状が改善されたりします。
  肺がんの脳転移(転移性脳腫瘍)に対する放射線治療
肺がんの脳転移に対する放射線治療では、頭痛や吐き気、嘔吐、ふらつき、歩行困難、視力の異常などの症状緩和が目的となります。
 転移は脳の中のどこにでも起こる可能性があり、大きさや数も様々ですから、治療法の選択肢もいくつかあります。
 全脳照射は脳全体に放射線をかける治療法で脳のいろいろな所に転移がある場合などに行います。手術で腫瘍を摘出した後に放射線を照射する方法もあります。また、リニアック装置やガンマナイフによって多方向から放射線を集中してかける治療法も行われています。
       放射線療法の副作用について
 正常な細胞に放射線が照射されると正常な細胞がダメージを受け副作用が出ることがあります。副作用には治療中又は治療直後にでるものと、半年~数年後にでてくるものとがあります。
 放射線治療による副作用が現れるのは照射した部分に限られますので、肺がんの場合には、頭髪が抜けたり、吐き気やめまいが起こることはほとんどありません。
 数ヶ月以内に現れる副作用としては、皮膚が日焼けしたときのように赤くなることがあります。皮膚が弱くなっているため刺激に弱くなります。他に皮膚がカサカサしたり、黒ずんだりすることもあります。また倦怠感を感じることもあります。

肺がんの検査

肺がんの検査は目的によって以下の3つに分類されます。
 肺がんの疑いがあるかを調べる検査
 肺がんを確定する検査
 肺がんの進行具合を調べる検査
 

 肺がんの疑いがあるかどうかを調べる検査
 胸部単純X線検査(レントゲン検査)、胸部CT検査(CTスキャン検査)、胸部MRI検査など<肺がん(肺癌)の画像検査>と、血液を採取して調べる<肺がん(肺癌)の腫瘍マーカー(血液検査)>があります。
 肺がんを確定する検査
肺がん(肺癌)の判定を行う方法には、細胞診と組織診の2種類があります。細胞や組織の一部を採取して調べるこれらの検査を生検(バイオプシー)といいます。
細胞診には喀痰細胞診や擦過細胞診、気管支鏡検査、経皮的肺穿刺検査などがあり、細胞の一つ一つを顕微鏡で観察してがん細胞があるかを判断します。
組織診は検査や手術で採取した組織を顕微鏡を使って調べる方法で細胞の大きさや形、並び具合などを総合的に調べる方法です。
 肺がんの進行具合を調べる検査-病期診断
 肺がんが確定した後は、どの程度進行した肺がんであるのか、リンパ節転移の有無や肺内転移、肝臓転移、副腎転移、骨転移、脳転移など転移があるのか・ないのかを調べることが重要になってきます。
 肺がんの治療方法を決定する過程で、肺がんが肺内にとどまっていて手術適応となるのか、肺の外に進行していて手術が適応とならず抗がん剤の治療や放射線の治療を行う必要があるのかを判断することはとても重要です。
 肺がんの病期(進行の程度)を調べる検査として、胸部CT検査や腹部CT検査、超音波検査(エコー検査)、骨シンチグラフィー、PET検査、脳のCT検査やMRI検査などがあります。

肺がんの特徴と発生原因

肺がんの統計
 肺がん患者数は著しく増加しています。
 日本人男性のがんによる死因の第一位は長らく胃がんでしたが、1993年に肺がんの死亡数が胃がんの死亡数を抜き第一位となりました。女性の場合は胃がん、大腸がんに続いて第3位になっています肺がん (肺癌)死亡数は増加の一途を辿っており、年間死亡者数は5万人を超えています。
 欧米先進国と比べて禁煙対策が遅れている日本では、今後も肺がんの死亡者数がますます高くなっていくことが予想されます。
       肺がんの治療成績が芳しくない理由
 死亡者数が多いのは、患者数が増えていることも一因ですが、それ以上に治療が難しい(難治がん)であることが大きな理由になっています。
     治療成績が良くない理由としては
 肺がんは自覚症状に乏しいため、早期発見が難しい
 肺がんは進行が早い
 肺がんは有効な治療法が限られている
などが挙げられます。
 肺がんになる人は年々増え続けていますが主な原因としては、喫煙になります。本人がタバコを吸わなくても周りの方が吸っているためにおこる受動喫煙も大きなリスク要因となります。
 肺がんの種類(組織分類)肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大きく分類される
 肺がんは、がん組織で分類すると非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2種類に大きく分けられ、組織型の違いにより治療方法も異なってきます。発生頻度が高いのは非小細胞肺がんで、肺がん全体の80%以上を占めます。
 非小細胞がんは「肺腺がん」「肺の扁平上皮がん」「大細胞肺がん」などの組織型に分類されます。
 非小細胞肺がんはごく早期に発見して手術すれば治癒する可能性はありますが、手術後再発・転移した場合や、手術が出来なかった場合には、抗がん剤や放射線治療は効きにくい性質を持っているため一般には治すことは難しくなります。
 これに対して、「小細胞肺がん」は、小さな細胞が密集して燕麦のように見えるため燕麦細胞がんとも呼ばれています。
 非常に進行が早く脳やリンパ節、肝臓、副腎、骨などに早い段階で転移し手術ができないことがほとんどです。また、手術をしても再発率は高くなります。小細胞肺がんは肺がん全体の15%~20%程度を占め、患者さんのほとんどは喫煙者です。
 抗がん剤や放射線治療は非小細胞肺がんに比べて効きやすいのですが、一時的に進行を抑えるのがやっとで、再発・転移しやすく予後は悪いです。

肺がんの再発と肺がんの転移

肺がんは初回治療後に再発することがあります。また、肺がん(肺癌)の診断時点で既に肺内転移や肝臓転移、副腎転移、骨転移、脳転移など遠隔転移していることも珍しくありません。
 小細胞肺がん(小細胞肺癌)は極めて進行の早いタイプのがんであり、がんが見つかった時点で既に全身に転移していることが多いという特徴を持っています。
 非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)も進行が早く、自覚症状にも乏しいため肺がん(肺癌)が見つかったときにはリンパ節転移や他の臓器に転移していることも少なくありません。
 反対側の肺や肝臓、副腎、そして骨や脳など原発巣の肺がんから離れた臓器に転移した場合を遠隔転移といいます。
 
      遠隔転移した肺がん(肺癌)の治療
 肺がんの転移先としては、リンパ節、肺の別の場所、肝臓、副腎、骨、脳などが主になります。
 肺から離れた肝臓、副腎、骨や脳にがんが転移するのは、血液やリンパ液の流れにがん細胞が乗ってそれらの臓器に運ばれ、増殖したものになります。
 肺内転移や肝臓転移、骨転移、脳転移などの症例では手術によってがんを切除しても、全身を血液やリンパ液の流れに沿ってがん細胞が回っているため、他の部位にがんが出来てしまいます。手術は体に大きな負担を掛けますから、一部の例外を除いて遠隔転移した肺がん(肺癌)は手術をしません。
 肺転移(転移性肺腫瘍)や肝転移(転移性肝腫瘍)、副腎転移(転移性副腎腫瘍)骨転移(転移性骨腫瘍)、脳転移(転移性脳腫瘍)など遠隔転移を有するケースでは主に全身治療である化学療法(抗がん剤)が治療の中心となります。他に症状緩和を目的として放射線治療が行われることもあります。
 遠隔転移した場合でも、最初にできた肺がんと同じ性質を持っているため、肺がん治療に使用する抗がん剤を用いて治療を行うことになります。
 肺がんの予後を改善する方法遠隔転移した肺がん治療には限界があります
 肺や肝臓、副腎、骨や脳などに転移した進行肺がん(肺癌)は治癒不可能な疾患であり、治療の目的は症状の緩和にあるとがんセンターや大学病院では考えています。
 しかし、実際には遠隔転移した人でも生活の質を保ちながら、人生を楽しみながら5年、10年と生活を続けているケースも珍しくはありません。

化学療法(抗がん剤)の副作用

化学療法(抗がん剤)の副作用
 骨髄毒性-白血球減少(好中球減少)、赤血球減少、血小板減少
肺がん(肺癌)の抗がん剤治療により血液をつくる細胞がダメージを受け、白血球減少や赤血球減少、血小板減少などの副作用を高頻度で生じます。
 肺がんに対する化学療法では、患者さんが抗がん剤の副作用により死亡することが約2%程度起こると報告されています。治療関連死で最も多いのは白血球や好中球減少による重篤な肺炎や敗血症などの感染によるものですから、これらの血液検査の数値が低下した場合には注意が必要です。
 白血球減少(好中球減少)が起きると肺炎などの感染症を起こしやすくなります。また発熱が続くこともあります。白血球や好中球の減少に対しては、G-CFS(顆粒球コロニー刺激因子)などを使用することがあります。
 赤血球が減少することで貧血になったり、血小板減少により出血しやすくなったり、あざができやすくなったり、注射の跡が消えにくくなるなどの副作用が現れることがあります。
 これらの副作用を骨髄毒性といいます。骨髄毒性は目に見える副作用ではないため一般の方は軽視しがちですが、実は命にかかわることが少なくない副作用ですから抗がん剤の投与中は注意深く骨髄毒性が許容範囲内であるかをチェックする必要があります。
     吐き気・嘔吐・悪心・下痢・便秘・食欲不振
 肺がん(肺癌)治療で抗がん剤が投与されると多くの方で吐き気や嘔吐をおこします。下痢や便秘をする方もいらっしゃいます。
 使用する抗がん剤の種類により吐き気や嘔吐が起きやすい抗がん剤もあれば、あまり激しい副作用を伴わないものもあります。場合によっては極度の脱水症状により衰弱してしまう可能性もあります。
              脱毛
 肺がん治療で使用する抗がん剤によっては脱毛を起こすこともあります。治療が終われば髪の毛は再び生えてきます。
           その他の副作用
 肺がん治療で用いられる抗がん剤の副作用として、動悸や息切れ、体のむくみ、筋肉や関節の痛みなどが現れることがあります。
 手足症候群といって手のひらや足の裏に刺すような痛みがあったり、手足の感覚がまひしたり、皮膚の乾燥やかゆみ、変色などの症状が現れることがあります。
 口内炎や倦怠感(だるさ)、皮膚や爪の変色、味覚障害、肝機能障害、腎機能障害なども副作用で現れることがあります。

肺がんの治療法 肺がんの化学療法(抗がん剤治療)

肺がんの抗がん剤治療はどのような時に行われるのか
 肺がんは進行すると周囲のリンパ節に転移し、さらに血流にのって反対側の肺や副腎、肝臓、骨、脳などに転移します。
 肺がんの転移の可能性が極めて低い局所にとどまった癌である場合には手術や放射線療法による治療だけを行います。
しかし、リンパ節に転移があった場合や、転移は無くとも再発の危険が高いと判断された場合には抗がん剤療法が行われることがあります。
また、肺がんが肺内や副腎、肝臓、骨、脳など遠隔転移があり手術ができない場合にも化学療法(抗がん剤治療)が使われることがあります。
 肺がんの組織型の違いによる化学療法(抗がん剤治療)小細胞肺がん(小細胞肺癌)の化学療法
小細胞肺がんは極めて進行の早いタイプのがんであり、手術の適応となる事はまれですが、一方で放射線療法や化学療法(抗がん剤)には反応しやすいという点で他の肺がんとは異なった特徴を持っています。
 小細胞肺がんの患者さんに化学療法(抗がん剤)を行うと、大凡80%程度の方に反応が見られるため、腫瘍は一時的に縮小することが期待できますが、根治は困難であり、再発してしまうのが現状です。
     使用される抗がん剤-小細胞肺がんの化学療法
 小細胞肺がんの化学療法では、シスプラチン+エトポシド(PE療法)、イリノテカン+シスプラチン(IP療法)、シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン(CAV療法)などが代表的な抗がん剤の組み合わせになります。
 病状によっては、これらの抗がん剤の代わりにエトポシドやカルボプラチン、シクロフォスファミド、ドキソルビシンなどの抗がん剤を使用することもあります。
         非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がん(腺がん(腺癌)、扁平上皮がん(扁平上皮癌)など)は抗がん剤治療お効果があまり期待できません。
 非小細胞肺がんにおいて化学療法が適応となるのは、臨床病期IIIB期あるいはIV期の進行例になります。
 小細胞肺がんに比べると非小細胞肺がんは抗がん剤が効きにくく、腫瘍縮小効果が得られるのは20%~30%程度になります。また、一度効き目があった場合でもがんが耐性を持ってしまい次第に化学療法の効き目がなくなってしまうので、腫瘍縮小効果が認められたケースでも残念ながら根治は困難です。
 非小細胞肺がんでは体力が低下している患者さんに抗がん剤治療をすると、抗がん剤の効果よりも体力を弱めて寿命を短くしてしまうことが懸念されます。一般に非小細胞肺がんの患者さんの場合、化学療法(抗がん剤治療)の効果が期待できるのはPS(全身状態)が0~2までの患者さんです。
    使用される抗がん剤-非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がんの化学療法では、プラチナ製剤とそれ以外の抗がん剤を組み合わせた治療が主流です。
 具体的にはイリノテカン+シスプラチン(IP療法)やシスプラチン+ビノレルビン、シスプラチン+ゲムシタビン、シスプラチン+ドセタキセル、シスプラチン+エトポシド(PE療法)、カルボプラチン+パクリタキセル、カルボプラチン+エトポシド(CE療法)などの組み合わせで治療が行われます。また、単剤ではパクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン(イレッサ)などが代表的な抗がん剤になります。
 分子標的薬イレッサ(ゲフィチニブ)-非小細胞肺がんの化学療法
 非小細胞肺がんの治療ではイレッサという分子標的薬が2002年7月から使われるようになりました。
 イレッサは手術ができない、あるいは再発した非小細胞肺がんの治療薬として承認されています。
 イレッサは吐き気や嘔吐、食欲不振や脱毛、骨髄毒性(白血球減少など)といった副作用は比較的出にくいのですが、肝機能障害や間質性肺炎などの副作用が出る傾向があります。
 特に間質性肺炎は肺が線維化して硬くなり肺活量減少や酸素不足になるため、呼吸困難や咳、発熱などの症状から、悪化すると肺線維症という予後不良の状態になることがあります。一時期、イレッサによる間質性肺炎で死亡者が多く出たため社会問題化したことがありましたが、他の抗がん剤でも死亡する可能性が2%程度あり、決してイレッサだけが怖い薬ではないといえます。

肺がんの血液検査(腫瘍マーカー)

肺がんの腫瘍マーカーの利点・欠点
腫瘍マーカーは正常な細胞からも多少はつくられますが、がん細胞から特に多くつくりだされるたんぱく質や酵素で、がんの有無や種類、進行状態を示す指標となります。
腫瘍マーカーの検査は、一般に血液を採取するだけで用意に検査できるため広く普及しています。また、腫瘍マーカーの数も50を超えるまでになっています。
肺がんでは腫瘍マーカーの数値を調べることで手術後の取り残しがないか、抗がん剤や放射線治療の効果があったか、再発の兆候がないかなどをおおよその目安として判断することができます。
腫瘍マーカーの検査は採血するだけで簡便な方法ですが、いくつかの不確実な面もあります。
腫瘍マーカーは偽陽性を示すこともある
ある程度肺がんが進行しなければ陽性(高い値)を示さないことがある
進行肺がんでも陽性にならないこともある
複数の臓器でつくられるためがんがある臓器を特定できない

そのため、腫瘍マーカーが高い値を示した場合でも、がんの疑いがあるに過ぎず確定検査には画像検査などを平行して行う必要があります。腫瘍マーカーが高値というだけではがんの確定診断はできません。

肺がんの4つのタイプ(扁平上皮がん)

扁平上皮がん
 扁平上皮がんは比較的太い気管支から発生します。
 このために血痰等の症状が割合に出現しやすく、これをきっかけに発見されることもあります。
 扁平上皮がんは肺門型がんが多いため、ある程度進行すると咳や血痰などの症状が現れるようになります。
 さらに進行した場合には喘鳴(ぜいめい)、息切れなどを起こすことがあります。
 さらに胸壁や胸膜に浸潤した場合には胸椎が溜まってきたり(胸水貯留)、胸部痛や呼吸困難が見られることがあります。
 時には、神経が侵されることにより腕の痛みやしびれ、胸や肩の痛み、顔面や上肢の浮腫などが見られることもあります。
 肺扁平上皮がんは、喫煙による影響の可能性が強いといわれています。
 男性の喫煙者率は約5割弱、女性の喫煙者率はほぼ1割となっています。
 年齢層別にみると、20代、30代、40代が多く、高年齢になるにつれて喫煙者率が下がるという結果が出ています。
 喫煙は生活習慣ですし、さまざまな生活習慣病の要因となっていますので、早めの禁煙が大切になります。
 肺扁平上皮がんの予防には、次のことに気をつけましょう。
  禁煙をする
  食生活を整える
  緑黄色野菜の摂取
  ビタミンAやカロチンの摂取

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肺がんの4つのタイプ(大細胞癌)

肺大細胞がんとは
 肺がんの組織学的分類は多様であるという特徴を持っており、さまざまな種類のがんが存在します。
 しかし、肺がんの90%以上は腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4大組織型で占められています。
 肺がんのうち大細胞肺がんは、腺がんや扁平上皮がん等と比較して珍しいがんになります。
 大細胞肺がんは顕微鏡でみると、大きな細胞からなり、腺がんや扁平上皮がんなどの特徴を持ちません。
 神経内分泌大細胞がんという比較的新しく分類されたがんの種類があり、小細胞肺がんに似た性質を持ちます。
 肺の末梢(気管支の細い部分)に発生する肺野型の肺がんが多く、また、扁平上皮がんや小細胞がん程喫煙との関係ははっきりしていません。
        肺大細胞がんの症状
 大細胞肺がんは肺野型(末梢肺野に発生する)がんが多く、初期段階ではなかなか症状は出ません。
 しかし、がんが進行してくると様々な症状が見られるようになります。
 さらに進行した場合には喘鳴(ぜいめい)、息切れなどを起こすことがあります。
 さらに胸壁や胸膜に浸潤した場合には胸椎が溜まってきたり(胸水貯留)、胸部痛や呼吸困難が見られることがあります。
 時には、神経が侵されることにより腕の痛みやしびれ、胸や肩の痛み、顔面や上肢の浮腫などが見られることもあります。
 大細胞肺がんは喫煙と関係が少ないという意見もありますが、本人がタバコを吸わなくとも回りの方が影響される受動喫煙が影響している可能性は高いと考えられています。
 タバコの煙には多くの発癌性物質が含まれていますが、そのうちのいくつかは主流煙(直接口の中に吸い込まれる煙)よりも副流煙(主として他人の吸っているタバコの煙)に多く含まれていることがわかっています。
 フィルターつきのタバコが普及してから大細胞がんを患う方は多くなってきているという事実からも、喫煙・受動喫煙と大細胞がんとの関係はあると考えて良いと思います。
 一般に喫煙指数(1日の喫煙本数と喫煙年数をかけあわせた数値)が600以上の人は、肺癌になるリスクが高いといわれています。
 また、毎日喫煙する人の肺がんになるリスクは非喫煙者と比較して4~5倍、さらに喫煙開始年齢が低いほど肺がんになるリスクが高くなり20歳前に喫煙を開始した場合には非喫煙者の実に6倍もリスクが高くなるというデータもあります。
 一般に10年間禁煙した場合には肺がんに罹患するリスクは1/3~1/2までに減少します。今からでは遅いということはありません。すぐにでも喫煙習慣を見直してください。

肺がんの4つのタイプ(小細胞がん)

肺がんの4つのタイプ(小細胞がん)
 原発性肺がんのおよそ20%が小細胞がんです。
 顕微鏡で見ると、その名のとおり、小さな細胞の集団に見えます。以前は「小細胞型未分化がん」などと呼ばれたことがありますが、現在では「未分化」という言葉は使いません。
 また、燕麦細胞がんと呼ばれたこともあります。これは病理組織を見た感じが「オートミール(燕麦がゆ)」に似ているという事からの命名ですが、日本人にはなじみの薄いものですし、最近では国際的にも使われません。
 小細胞がんは進行が非常に速く、悪性度の高いがんです。一方で、放射線や抗がん剤に対する感受性が高く、治療は内科が主体となります。
 ただし、最近では治療法の進歩に伴って、I期やII期の小細胞がんでは手術も積極的に考慮されます。
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転移性肺がんとは

転移性肺がんとは
 大腸がんや腎がんの細胞は血液に入り他の場所に移動して、そこで成長を開始します。これが転移(てんい)です。がんの治療が複雑で難しいのは転移を起こすためです。
 がん細胞は血液に入り心臓に戻ります、その後肺に入ってガス交換を行い、今度は全身に流れていきます。がん細胞の多くは肺を通過するので、肺への転移がしばしば経験されます。これが転移性肺がんです。
 ここで重要なのは、大腸がん細胞は肺に転移しても肺がん細胞にはならないことです。大腸の細胞ががん化してがん細胞になるのですが、肺に移動しても肺の細胞に変化するわけではありません。これは日本人の夫婦がアメリカに移住して、子供が生まれると日本人の子供が生まれることを考えると理解しやすいでしょう。
        転移性肺がんのでき方
 大腸がんや腎臓がんのがん細胞は、がんから剥がれてリンパ管に入り流れてリンパ節に達し、リンパ節転移を起こします。また、がん細胞はがんから剥がれて血管に入り血液とともに体内を流れ、体の他の場所に転移を形成します。といっても実際、がん細胞がリンパ管や血流に乗って流れていっても、環境が変わるので生き延びるのは難しいです。しかし、多くのがん細胞が流れていれば、中には生き延びて成長するがん細胞もいるのです。
 体にある血液は心臓に還流し、その後、肺に流れ込んでガス交換を行い心臓に還ります。がん細胞が血液に混じって肺に達して生育すれば、肺に転移性肺がんが出現します。
        手術後の転移性肺がん
 例えば、大腸がんの手術後2年目に転移性肺がんが起きたときのことを考えてみます。大腸がんはすでに手術を終わったので、大腸がんは存在しません。この状態で大腸がんの転移が突然肺に発生するのではありません。大腸がんの手術を受けた時点に、すでに肺に小さな転移性肺がんがあったと考えられます。転移性肺がんがあっても、胸部レントゲン検査や胸部CT検査などで転移性肺がんが発見されなかったのです。このような場合は、“大腸がんが肺に再発した”と表現しますが、実際は“当時は発見されなかった転移性肺がんが、今回は増大して発見された”ということなのです。

肺がんの第四の治療法 免疫細胞療法とは

肺がん免疫細胞療法とは、がん細胞を攻撃する機能を持つ免疫細胞(リンパ球)を体外に取り出し、専門の培養施設で加工・処理することで大量に数を増やしたり、機能を付加した上で再び体内に戻す、副作用のほとんどないがん治療法です。
 最先端の免疫学や分子生物学に基づいた先進的治療であり、いわゆる三大治療(手術・抗がん剤・放射線療法)と併用することも可能で、進行がんへの治療効果や、手術後の再発予防効果が期待できます。
 既に、厚生労働省が定めた先進医療として、適応疾患を限定する形で各地の大学病院やがんセンターでも実施されています。
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肺がんは自覚症状がない

肺がんの症状で最も怖いのは、初期の段階で自覚症状が無いことでしょう。
 肺がんは一般的に初期で見つかると治せる可能性が高いとも言われています。
 肺がんの症状は風邪のように咳をしたりするために、軽い風邪程度に考えやすく、早期発見が遅れる原因の一つにもなっているようです。
 仮に検査で小さながん腫瘍が発見されたとしてもすでに進行しているようで、手術は15%程度だそうです。
 そしてもう一つ怖いのは、肺がん自体転移しやすいと言われ、再発する可能性が高いようです。
 転移はとても厄介で、様々な臓器にがん細胞が血液中を流れていくことで、離れた臓器もがん化してしまうというものです。
 肺がんで転移しやすいと言われる臓器として、肺、脳、骨、肝臓、副腎などが挙げられているようです。
 手術が成功したとしても再発する可能性が高いと言われ、手術後に約20%の確率で局所再発や、5割から6割に遠隔への転移が見られるそうです。
 特にタバコを吸う方は検査でレントゲンをして異常なしでも、精密検査を受けてみるのが良いでしょう。

肺がんの脳転移とは

肺がんの脳転移の経路
 血液によって癌細胞が運ばれ、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜に転移します。
       肺がんが脳転移したことによる症状
 原発巣とはまったく別の症状です。
 部位によってけいれんや麻痺、感覚障害、精神症状、ふらつきなどがあり、悪化すると頭痛や吐き気、嘔吐などが現われます。脳の表面を流れている髄液に転移すると背中の痛みや手足のしびれが起きます。
        肺がんの脳転移の治療
 手術や全脳照射ガンマナイフ化学療法があります。
 一般に、抗がん剤は効果が薄いとされていますが、イレッサを使用して良い結果を残している症例もあります。
 大きさが3センチ以下の場合には、全脳照射ではなく、放射線を様々な方向から集中させるSMARTという方法が採用されることもあります。
 手術の場合には、十分な体力が残されていることと、成功した場合に余命が期待できることが条件となります。
 ガンマナイフを適用した後に再発した場合には、再びガンマナイフで治療することや、手術を行う、全脳照射を行うという選択肢があります。
        肺がんの脳転移の予防
 治療のためではなく、予防を目的とした放射線治療を行うことがあります。これを予防的全脳照射といいます。

肺がん治療の名医といわれているドクター

一瀬幸人氏(肺がん 福岡県・国立病院機構九州がんセンター)
 九州がんセンター統括診療部長兼呼吸器部部長を務めています。
 週刊誌や書籍、マスコミ等でもしばしば名前が挙がる、肺がん治療の名医です。
 今まで治療法がなく、治ることが困難であるがん性胸膜炎(一側の胸の中にがんが広がった状態)、胸壁や血管にがんが進展した局所進行肺がんに対し、放射線、化学療法そして手術療法を組み入れた治療法の確立に力を入れています。
 九州がんセンターでは、肺癌、中皮腫、縦隔腫瘍などの胸部腫瘍に対し 内科、外科、放射線科という科ごとの壁はなく総合的、集学的な治療を行っています。
     中川健氏(肺がん 東京都・癌研有明病院)
  
 癌研有明病院の呼吸器外科部長を務めており、吸器疾患、特に悪性腫瘍の外科療法を専門にしています。
 従来手術が非適応とされた進行肺がんに対する拡大手術に取組む一方、負担の少ない縮小手術についても研究しています。
 肺転移に対する外科療法にも積極的に取組んでおり、多くの治癒実績を誇っています。
 肺がんケアの最新情報を紹介した「肺がん患者ケアガイド」を執筆。
   有田健一氏(肺がん 広島県・広島赤十字・原爆病院)
 1974年広島大学医学部を卒業。
 2004年に広島県医師会常任理事(腫癌登録・地域がん登録・医務・薬務・医療秘書担当)に就任しました。
 肺がんに対する抗がん剤治療の中でも特に、早期に転移しやすく悪性度の高い肺の小細胞がんに対して「抹消血幹細胞移植を併用した超大量化学療法」で完治に導く治療法において、全国レベルの実績を残しています。
 有田健一氏らは、全国規模の臨床研究グループの一員として、常に治療内容・成績を検討しながら、この治療法の確立に努力しています。

肺がん治療の名医といわれているドクター

近藤晴彦氏(肺がん 静岡県・静岡県立静岡がんセンター)
 我が国を代表する肺がん手術の第一人者として知られています。
 静岡県立静岡がんセンター呼吸器外科部長を務めており、肺がんに関する著書も多数あります。
 静岡がんセンターでは、診断や治療方針は原則として呼吸器外科・内科・画像診断科・放射線治療科・陽子線治療科との合同カンファレンスで決定しているため、受診される曜日によって治療方針が異なることはなく、決定した方針に従って、呼吸器グループとして各診療科が協力して質の高い診療を提供しています。
   光冨徹哉氏(肺がん 愛知県・愛知県がんセンター)
 1980年九州大学医学部を卒業。
 1989年に米国立がん研究所(NCI)に留学し、肺がんの遺伝子研究などに従事。
 その後九州大学講師等を経て1995年に愛知県がんセンターの副院長に就任しました。
 光冨徹哉氏は平成17年に、日本癌学会とスイスの製薬会社Debiopharm社が設けている日本癌学会学術賞「JCAMauvernay(モヴェルネ)Award(がんの基礎的および臨床的研究領域においてすぐれた研究者それぞれ1名に授与される)」を受賞しています。

肺がんの標準的な手術

肺は右が三つ、左が二つの肺葉に分かれています。
 ぶどうの房が太いつるに右に三つ、左に二つぶら下がっているのを想像してください。それぞれの房には気管支と血管が入り込んでいます。
 この房のうちどこかにがんが発生したとき、房を単位として切り離すのが確実で、技術的にもやりやすいのです。
 一番多く行われているのが房の一つを切り離す「肺葉切除」。
 右肺の場合は上葉と中葉、中葉と下葉という二つの房をあわせて切り離す2葉切除も割合に多く行われます。
 がんが房の根元付近にまで食い込んでいると、右あるいは左の全部の房を取り除く必要がでてくることがあります。片肺全摘出術です。
 全摘出は手術後の肺活量の低下が大きく、身体への負担も大きいので、そうするべきかどうかの判断は慎重になります。
      operation_standard_photo.gif

胸のレントゲン写真の見方

肺がんの知識を得る前に、正常な肺についての知識をある程度深めておく必要があります。そうでないと、一体何の話か分からなくなってしまいます。
 胸のレントゲン写真やCTで目立って見える部分を覚えれば十分です。
下の写真と図に正常のレントゲンで質問の多い部分を示してあります。
 一番大きなポイントはレントゲンは自分の正面に立った人が半透明に見えていると考えるところでしょう。
 黒い部分はX線の通りやすい、つまり空気の多い部分。白い部分はX線の通りにくい部分、筋肉や脂肪、骨などです。
 中心にある白い部分を縦隔と呼び、心臓や大動脈があります。また、縦隔にはたくさんのリンパ節があります。
       roentgen_img.jpg

肺がんの4つのタイプ(腺がん)

腺がん
 唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺などの腺組織とよく似た形をしているがんのことです。
 腺がんは、多くの場合、肺の奥のほうのこまかく枝分かれした先にできます。女性やタバコを吸わない人にできる肺がんの多くがこの腺がんで、肺がん全体の半数程度を占めます。
       type01_photo.gif

肺がんの進行度

肺がんの進行度
        リンパ節転移 
     
         N1
  同側気管支周囲および/または同側肺門リンパ節および肺内リンパ節転移で、 原発腫瘍の直接浸潤を含む
         n1_photo01.gif
         N2
  同側縦隔リンパ節転移および/または気管分岐部リンパ節転移
      n2_photo01.gif
         N3
 対側縦隔、対側肺門、同側または対側斜角筋前、または鎖骨上窩リンパ節転移
       n3_photo01.gif

肺がんの進行度

肺がんは、がんの大きさと広がりによって進行度を分類します。
 その分類には、TNM分類が用いられ、T―原発腫瘍の大きさ、N―リンパ節転移、 M―遠隔転移の組み合わせにより病期が 定められます。 自分のがんの病期(進行度)をきちんと把握しましょう。
        T―原発腫瘍の大きさ
          T1
 腫瘍の最大径が3cm以下で、肺組織または臓側胸膜に囲まれており、気管支鏡的に 癌浸潤が葉気管支より中枢に及ばないもの(即ち主気管支に及んでいない)
       t1_photo01.gif
           T2
  腫瘍の大きさまたは進展度が以下のいずれかであるもの
 最大径が3cmをこえるもの
 主気管支に浸潤が及ぶが、腫瘍の中枢側が気管分岐部より2cm以上離れているもの
 臓側胸膜に浸潤のあるもの
 肺門に及ぶ無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが一側肺全体に及ばないもの
      t2_photo01.gif
          T3
  大きさと無関係に隣接臓器、即ち胸壁(superior sulcus tumourを含む)、 横隔膜、縦隔胸膜、壁側心膜のいずれかに直接浸潤する腫瘍
または腫瘍が気管分岐部から2cm未満に及ぶが、気管分岐部に浸潤のないもの
 または無気肺あるいは閉塞性肺炎が一側肺全体に及ぶもの
       t3_photo01.gif

肺がんの第四の治療法 免疫細胞療法とは

肺がん免疫細胞療法とは、がん細胞を攻撃する機能を持つ免疫細胞(リンパ球)を体外に取り出し、専門の培養施設で加工・処理することで大量に数を増やしたり、機能を付加した上で再び体内に戻す、副作用のほとんどないがん治療法です。
 最先端の免疫学や分子生物学に基づいた先進的治療であり、いわゆる三大治療(手術・抗がん剤・放射線療法)と併用することも可能で、進行がんへの治療効果や、手術後の再発予防効果が期待できます。
 既に、厚生労働省が定めた先進医療として、適応疾患を限定する形で各地の大学病院やがんセンターでも実施されています。
       mechanism_img1_3.gif

肺がんの種類

肺がんを分類すると腺がんや扁平上皮がん、大細胞がんの総称である非小細胞がんと、小細胞がんに分かれます。
 この中でもっとも多いのは腺がんで、肺がんの男性の40%、女性の70%を占めています。次に多いのが扁平上皮がんで、男性の40%、女性の15%ほどの割合です。
 小細胞がんは全体の15~20%ほど、そして大細胞がんはおよそ5%です。こうしてみると、肺がんは腺がんを始めとした非小細胞がんが多いことが分かります。以下でそれぞれの特徴について見ていきましょう。
             腺がん
 肺がんの中で最も多く見られるもので、唾液腺や胃腺などの腺組織と似た形をしています。肺の奥の方の細かく枝分かれした末梢部分に発生する肺野型ことがほとんどです。タバコによる影響は、他のタイプに比べると弱い傾向があり、無症状の段階でも検査によって発見できることがよくあります。
 特に女性に多い傾向があります。肺がんの中でも、腺がんは進行のスピードが様々ですので、一概に速いか遅いかということはできません。
           扁平上皮がん
 皮膚や粘膜を覆っている扁平上皮という組織に似た形をしており、大部分は肺の入り口に近い肺門部に発生します。タバコとの関係が深く、血痰等の症状が出やすいため、これが原因で発見されることが多くあります。
            大細胞がん
 癌細胞が大きいもので、他のタイプに分類できないものが入っていることもあるため、あまり同質的なものばかりではありません。増殖のスピードは速いものの、自覚できる症状がなかなか出ないため、診断時には進行していることもあります。
            小細胞がん
 癌細胞が小さいもので、他の組織型よりも進行が早く、脳や骨、リンパ節、肝臓、副腎などに転移しやすいという特徴を持った悪性度が高い癌です。肺門部にできることが多く、タバコとの関係が比較的強いとされています。
 
 放射線治療抗がん剤が効果的という特徴があります。およそ80%は癌細胞が種々のホルモンを産生していることも、このタイプの特徴でしょう。
 上記が肺がん腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんに分類した場合の、それぞれの特徴です。どの組織型に属するかによって、同じ肺がんでも性質が異なりますので、自分の症状を知るために役立つことと思います。
 非小細胞がんと小細胞がんでは、治療に使われることの多い抗がん剤の種類も変わってきます。多くの方は腺がんに該当すると思いますが、自分がどの組織型に該当するのか、すでに発症している方は確認しておきましょう。治療の際には、それぞれの組織型や症状の進行度、転移の状態にあった治療法を選択する必要があります。

肺がんの再発について

肺がんが再発しやすい時期
 治療後5年以内が多く、その中でも2年までの期間は要注意です。治療が終わったからと言って油断せず、定期的に病院で検査を受けておきましょう。
           再発肺がんの症状
 咳や痰、血痰、呼吸困難といった原発巣の症状に加え、脳転移によって頭痛や吐き気、歩行障害、言語障害が起こることや骨転移によって腰や背中の痛みを伴う場合など、転移先によってそれぞれの症状が出る場合があります。
       肺がんが再発した場合の治療
 再発に対応して行う治療の中心は抗がん剤です。
 手術ができる場合や、放射線治療で対応できる場合もありますが、これは少数の場合で、多くは全身療法である化学療法を必要とします。
        再発肺がんの治療の目的 完治を目指すのではなく、余命を延長することや、日々の生活水準を高めることを目的とすることが多いことに注意が必要です。悪性度の高い小細胞がんだけではなく、非小細胞がんにおいても再発した場合には、完治を望めるケースは多くありません。
 脳や骨へ転移した場合、放置しておくと生活に大きな支障をきたすこともありますので、それを緩和するために放射線治療を行うこともあります。
      再発肺がんに対する抗がん剤の進歩
 抗がん剤を投与しても完治が難しいという現実はありますが、それでも抗がん剤が進化を遂げているのも事実です。たとえば、新しい抗がん剤としてTS-1やカルセド、イレッサがこれに当たります。従来から用いられていたシスプラチンは現在でも重要な役割を果たしていますが、組み合わせて使う薬剤の進歩が見られます。
 また、化学療法は同じ薬剤を使用していると効果が落ちるのですが、タキソテールに切り替えることで大きな効果を発揮することも判明しています。
 抗がん剤の副作用を抑えるための薬剤も登場していますので、副作用を緩和させることによって、患者さんの負担を少なくすることもできるようになっています。
             再発予防
 手術を行う場合、術後に化学療法を用いることがあります。手術によってすべての癌細胞を摘出できなかった場合に、残った癌細胞の増殖を抑える目的で行われます。もし再発してしまうと、完治が難しくなってしまいますので、あらかじめ予防することが重要です。

肺がんの脳転移とは

肺がんの脳転移の経路
 血液によって癌細胞が運ばれ、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜に転移します。
       肺がんが脳転移したことによる症状
 原発巣とはまったく別の症状です。
 部位によってけいれんや麻痺、感覚障害、精神症状、ふらつきなどがあり、悪化すると頭痛や吐き気、嘔吐などが現われます。脳の表面を流れている髄液に転移すると背中の痛みや手足のしびれが起きます。
        肺がんの脳転移の治療
 手術や全脳照射ガンマナイフ化学療法があります。
 一般に、抗がん剤は効果が薄いとされていますが、イレッサを使用して良い結果を残している症例もあります。
 大きさが3センチ以下の場合には、全脳照射ではなく、放射線を様々な方向から集中させるSMARTという方法が採用されることもあります。
 手術の場合には、十分な体力が残されていることと、成功した場合に余命が期待できることが条件となります。
 ガンマナイフを適用した後に再発した場合には、再びガンマナイフで治療することや、手術を行う、全脳照射を行うという選択肢があります。
        肺がんの脳転移の予防
 治療のためではなく、予防を目的とした放射線治療を行うことがあります。これを予防的全脳照射といいます。

肺がんは移転しやすい

肺は、たくさんの血管やリンパ管がはりめぐらされているため、がん細胞が血管やリンパ管に入り込みやすく、転移がおこりやすい臓器です。
 とくに、脳や骨などに転移しやすいため、肺がんは手術による治療が困難で、やっかいながんと言われています。
 その他にも、リンパ節、胸膜、副腎、肝臓などにもよく転移するようです。
    肺がんの転移のタイプには、胃以下のようなものがあります
            タイプ 1           
           血行性転移
            
  血液の流れにのってがん細胞が広がるものです。発生部位から離れた臓器に転移を起こします。
            タイプ 2
          リンパ行性転移
            
     リンパ液のながれにのって広がるものです。
            タイプ 3
             播種
             
 がんのかたまりから、小さながん細胞がはがれおち、散らばります。播種は胸膜や髄膜へおこります。

肺がん治療 病院ランキング

       肺がん治療 ランキング1位
病院名
国立がんセンター中央央病院
東京都中央区築地5-1-1  地図・交通
(代表)03-3542-2511
担当科名 ◎が肺がんランキング対象
◎ 呼吸器外科
○ 呼吸器内科
○ 肺診断グループ
○ 呼吸器内視鏡グループ
○ 放射線治療グループ
肺がん症状・治療・生存率 などの情報
肺がん5年生存率 (PDFファイル)
肺がんの化学療法
ヘリカルCTや顕微鏡CTの記述
セカンドオピニオン
がん予防・検診研究センター
肺がん検診では、胸部ヘリカルCTと喀痰細胞診を実施(3万4650円)。
総合検診+PET(男性18万9000円、女性22万5750円)
がん予防・検診研究センターで行う。
PETは、CTで肺に腫瘍が見つかったが、悪性か良性かの診断が難しい場合などは
有用性が高い。
コメント
日経病院ランキング書籍では、副院長の貴重なコメントが書かれています。
「がんは緊急手術でないため、術後30日以内に患者が死亡した割合(手術死亡率)は技術レベルの基準になる」。
(手術死亡率データの詳細は、書籍で確認してください)
ちなみにですが、日経ランキング本での国立がんセンター中央病院の評価は、
肺がん以外は低くなっています。
但し、これは肺がん以外の治療成績のアンケート回答が
無回答(無効)だったことが原因のようです。
これに対して、中央病院側が反論しているので取り上げておきます。
中央病院側の反論
関連設備
リニアック。小線源治療装置。PET。
国立がんセンター中央病院 : 肺がんランキング等まとめ
日経 : 肺がん治療、関東1位(全国2位)。
宝島 :
講談 : 肺がん名医がすすめる全国30病院にノミネート
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肺がん治療 ランキング2位
病院名
埼玉県立がんセンター
埼玉県北足立郡伊奈町小室818番地  地図・交通
(代表)048-722-1111
担当科名 ◎が肺がんランキング対象
◎ 胸部外科
○ 呼吸器科
肺がん症状・治療・生存率 などの情報
ここまで進んだ肺癌の内科治療
肺がん5年生存率
埼玉県立がんセンター : ランキングまとめ
日経 : 肺がん治療、関東2位(全国3位)。
     がん治療総合評価はAAAの全国4位!
宝島 :
講談 :
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肺がん治療 ランキング3位
病院名
神奈川県立がんセンター
神奈川県横浜市旭区中尾1-1-2  地図・交通
(代表)045-391-5761
担当科名 ◎が肺がんランキング対象
◎ 呼吸器外科
○ 放射線科
肺がん症状・治療・生存率 などの情報
5年生存率(ページ下段)。
セカンドオピニオン
神奈川県立がんセンター : 肺がん関連情報
肺門型早期肺がんに対しては光線力学的治療装置(レーザー治療)による
非切除的な根治療法が導入。
ゲフィチニブ(イレッサ)が認可されている
神奈川県立がんセンター : ランキングまとめ
日経 : 肺がん治療、関東3位(全国5位)。
     がん治療総合評価はAAAの全国2位!
宝島 : 肺がん治療、関東7位(全国21位)。
講談 : 名医がすすめる病院にノミネート
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肺がん治療 ランキング4位
病院名
西群馬病院
群馬県渋川市金井2854番地  地図・交通
(代表)0279-23-3030
担当科名 ◎が肺がんランキング対象
◎ 呼吸器外科
○ 呼吸器内科
○ 放射線科
肺がん症状・治療・生存率 などの情報
5年生存率
セカンドオピニオン
肺がん検診(1万0500円)
西群馬病院 : 肺がん関連情報
肺がん検診では、ヘリカルCTと喀痰細胞検査を実施。
西群馬病院 : ランキングまとめ
日経 : 肺がん治療、関東4位(全国7位)。
宝島 : 肺がん治療、関東9位(全国26位)。
講談 :
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肺がん治療 ランキング5位
病院名
東海大学医学部附属病院
神奈川県伊勢原市望星台  地図・交通
(代表)0463-93-1121
担当科名 ◎が肺がんランキング対象
◎ 呼吸器外科
肺がん症状・治療・生存率 などの情報
呼吸器外科専用HP
5年生存率(小細胞肺がんは省いている)
肺がん検診(CTと喀痰検査で1万500円)
東海大学医学部附属病院 : 肺がん関連情報
胸腔鏡下手術が得意。二窓法を開発。
東海大学医学部附属病院 : ランキングまとめ
日経 : 肺がん治療、関東5位(全国9位)。
宝島 : 肺がん治療、関東3位(全国14位)。
講談 : 名医がすすめる病院にノミネート

肺がんの周期(ステージ)

肺がんの診断がつけられたなら、次にどのくらい病気が広がっているか(ステージ)を決定することが非常に重要になってきます。
  具体的には、肺の原発腫瘍の広がり(T)リンパ節転移(N)遠隔転移(M)のそれぞれについて点数をつけ、その組み合わせでI期からIV期のステージが決められています。
 一般的に、I期からIII期の一部までが手術の対象と考えられています。
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肺がんの症状

肺がんの初期症状にはせき、胸痛、喘鳴、息切れ、血痰、声がれ、顔や首のむくみなどがあります。
 太い気管支から発生するがんは初期症状に咳、血痰などがあらわれて、症状が進むと呼吸困難や呼吸するとヒューヒュー・ゼーゼーとなる症状があらわれます。
 肺胞に発生しやすい腺がんは初期は無症状ですが、進行してがんが大きくなると気管支の圧迫や浸潤によって咳、血痰、呼吸困難、喘鳴などの症状がみられます。
 肺組織内にがんが存在するだけでは痛みを感じませんが、胸膜や胸壁、横隔膜などへ浸潤すると胸痛や背中の痛みを感じます。
 肺がんがリンパ節転移すると、縦隔リンパ節が腫大して嚥下障害や声のかすれ、顔のむくみ、咳、呼吸困難となります。
 その他の症状には、他のがんの症状と同様に疲労感、食欲不振、体重減少などがみられます。
 痛みが出たときなどは要注意で進行がんが初期症状の場合があります。
 咳が続くときもあれば、たんの中でも透明な痰の中に糸状の血又は血の塊が混ざっている時は肺がんの可能性が非常に高いことも多いみたいです。

肺がんとタバコ

肺がんは治りにくいがんの代表であり、肺がんによる死亡を減らしていくためには、まず予防することが重要です、肺がんにならないようにする(一次予防)には、なんと言っても禁煙が重要です。
 喫煙者の肺は黒く汚れています。
 日本では他の先進国と比べて男性の喫煙率が高いのが特徴です。
 一方、女性の喫煙率は低いのですが、近年若い女性の喫煙率が上昇していることが問題となっています。
 一日喫煙本数×喫煙年数を喫煙指数といい、これが400以上の方は肺がんのハイリスクグループとされます。
 たばこの量肺がんになる危険(リスク)には相関関係があります。
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  一日20本吸う人は非喫煙者にくらべておよそ10倍程度肺がんで死亡しやすいことがわかります。
 また、最近は非喫煙者の肺がんも少なくありませんが、その際、他人の吐いたたばこの煙を吸うことによって肺がんになりやすくなることも知られています。
 夫がヘビースモーカーの場合、妻の肺がんの危険は2-3倍程度上昇するといわれています。
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新しい肺がんの治療

分子標的治療
 1980年ころから急速に進歩した分子生物学によって明らかにされてきたがん細胞の増殖・浸潤・転移などの生物学的特徴を裏付ける遺伝子とその蛋白質を,標的とした治療戦略のことです。
 肺がんではイレッサ(ZD1839)が,最も注目されています。
  EGFRは,細胞膜表面に存在する上皮増殖因子(EGF)のレセプターのことで,イレッサはEGFRの特異的チロシンキナーゼ阻害剤です。
 2002年の夏から市販されるようになりましたが、従来の抗ガン剤が無効な例に対して、20%程度の腫瘍縮小、50%程度の症状緩和がもたらされます。
 また、特に日本人の女性の腺がんに限ると、50%程度で縮小がおこると報告されています。
  その他,イレッサと同様にEGFRを標的としたタルセバやモノクローナル抗体のC225やEGFRと相同性を有するHER2/neuに対する抗体で乳がんの治療に用いられているハーセプチンや数種類の血管新生阻害剤など有望な治療薬の卵があります。
           免疫治療
 肺がんに対して標準的治療として確立したものはありません。現在,研究が進んできています。
          遺伝子治療
 まだ,一般臨床の前段階のものです。p53という腫瘍抑制遺伝子をウイルスベクターに組み込ん
でがん細胞に導入します。
         光線力学的治療
 太い気管支に存在する小さな早期がんに対して,腫瘍親和性光感受性物質(Photofrin)を投与し,出力の弱いレーザーでがんを選択的に壊滅させます。
       重粒子線治療,陽子線治療
 元来,物理学研究用の大型加速器から得られる陽子線や重粒子線をがんに照射する治療法です。陽子線や重粒子線は,がん病巣にその効果を集中でき、周囲の組織に強い副作用をひきおこすことなく、十分な線量を照射することができます。

肺がんの化学療法

肺がんは、小細胞がん、非小細胞がん(にわけられ、小細胞癌は転移が早く、発見段階で目に見えなくても、他の部位に転移している可能性が高いため、摘出手術は行わず、抗がん剤の治療対象となります。
 対して、非小細胞がんは、摘出手術、化学療法の両方をがんの進行状況に応じて視野に入れます。
 小細胞がんは、呼吸器系のがんで唯一、抗がん剤に対して高い奏効率(効き目)を示します。また、小細胞がんに比して、非小細胞がんへの抗がん剤の奏効率は低いです。
 抗がん剤の種類はたくさんありますが、肺がんの場合、基本はプラチナ誘導体+その他(イリノテカンなど)の抗がん剤の二剤投与が基本です。プラチナ誘導体には、シスプラチン、カルボプラチンがあり、腎機能のいい人は前者を、悪い人は後者を選択します。
 抗がん剤の副作用としては、嘔吐、骨髄抑制、脱毛、二次発がん(抗がん剤そのものが、がんのもとになり、がんが起こる。)、粘膜症状、消化器症状などがほとんどの抗がん剤で共通に起こります。また、プラチナ誘導体では、これ以外に腎機能の障害が起こります。
  
 副作用が現れる時期は一般的に白血球の数の減少はやや早く、脱毛は中間、二次発がんは遅く、消化器毒性は、早く、腎機能障害は中間で起こってきます。