胃がん治療の有名(関東地区)

埼玉県 1病院
埼玉県立がんセンター
★診療科目
消化器外科
埼玉県北足立郡伊奈町小室818 ℡048-722-1111 
胃がんの治療成績では、全国でもトップクラスの評価を得ている。また胃がんの内視鏡手術が多い(2003年データでは日本一)ことでも有名。
 千葉県 3病院
国保旭中央病院
★診療科目
外科
千葉県旭市イ1326 ℡0479-63-8111 
胃がんの治療実績において、全国的にも高い評価を得ている病院。がん治療の総合ランキングでも上位にランクされている。
千葉県がんセンター
★診療科目
消化器器科 千葉県千葉市中央区仁戸名町666-2 ℡043-264-5431 
胃がん治療の全国優良病院として名前の挙がる病院。主要な胃がん治療施設としてネット等でも紹介されている。
亀田メディカルセンター
★診療科目
外科 千葉県鴨川市東町929 ℡04-7092-2211 
2004年11月の日経トレンディーで「居心地のいい病院ランキング」で総合第1位として取り上げられられた病院。
 東京都 7病院
癌研究会有明病院
★診療科目
消化器外科 東京都江東区有明3-10-6 ℡03-3520-0111
胃がんの治療実績で全国でもトップクラスの評価を得ている。胃がん手術の術死率0.4%未満で、高い治癒率を誇っている。
虎ノ門病院
★診療科目
消化器外科
東京都港区虎ノ門2-2-2 ℡03-3588-1111 
患者から「良い医者が沢山いる」と評判の病院。ネットや書籍の多くで、全国トップランクに評価している。
NTT東日本関東病院
★診療科目
外科 東京都品川区東五反田5-9-22 ℡03-3448-6111 
胃がんに限らず、ほとんどの診療項目で高い評価を得ている病院。胃がんでも多くのメディアで取り上げられている。
日本医科大学病院
★診療科目
第一外科
東京都文京区千駄木1-1-5 ℡03-3822-21311 
ダメージの少ない手術法と全身免疫相関重視の治療で有名。書籍で実力度全国第9位と紹介されている。
東京女子医科大学病院
★診療科目
消化器外科 東京都新宿区河田町8-1 ℡03-3353-8111 
消化器外来に関して評判の良い病院。設備・評判・診療レベルが高く、検査予約でいつも一杯。
東京都立府中病院
★診療科目
外科 東京都府中市武蔵台2-9-2 ℡042-323-5111 
2002年胃癌での入院は148例で、うち胃を切除したのはは131例(胃全摘:40例、幽門側胃切:70例、その他:21例)と多くの実績がある。
日本赤十字社
医療センター
★診療科目
消化器外科 東京都渋谷区広尾4-1-22 ℡03-3400-1311
手術合併症の頻度が極めて小さいことで評判。胃がんの年間手術数はかなり多く、腹腔鏡手術を積極的に実施している病院。
 神奈川県 3病院
横浜市立市民病院
★診療科目
外科 神奈川県横浜市保土ヶ谷区岡沢町56 ℡045-331-1961 
胃がんの手術件数(2003年データ)では、県内でもトップクラス。患者への対応や施設のきれいさで評判の良い病院。
神奈川県立
がんセンター
★診療科目
消化器外科 神奈川県横浜市旭区中尾1-1-2 ℡045-391-5761 
胃がんの治療成績では常に高い評価を得ている。地元神奈川のみならず、全国的にも有名な病院。
昭和大学
横浜市北部病院
★診療科目
消化器センター 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央35-1 ℡045-949-7000 
胃がんの手術件数(2003年データ)は70件超。食道がんの名医と言われる消化器病センター・井上晴洋助教授がいることで有名。

肺がんセルフチェック

気になる症状や、習慣が自分にあてはまるかチェックしてみましょう。
 男性である
 両親またはどちらかが肺がんになった
 肺がん検診を受けたことがない
 タバコを1日20本以上、15年間以上吸っている
 最近やせてきた
 タバコを15歳以下で吸い始めた
 石綿やコールタールを扱う仕事をしていた
 夫(妻)が10年以上のヘビースモーカーで家でもよく吸う
 光化学スモッグが発生する場所に住んでいる
 間質性肺炎(肺線維症)・塵肺・COPDにかかった、あるいはアスベストと接触したことがある
 痰に血がまじっていたことがある
 せき、たんが長く続く
 排気ガスの多い道路の近くに住んでいる
 原因不明の微熱がつづくことがある
 血痰が出る
 痰の細胞診の検査を受けたことがある
 息が苦しい
 住まいの近くに工場の煙突がある
 ストレスに弱いほうである
 胸が痛い
 声がかれる
 40歳以上である
 胸部ヘリカルCT検査を受けたことがある
 家の前の道路がコールタールである
 上腕に頑固な神経痛がある
 男性なのに女性化乳房がみられる

 気になることが5つ以上ありますと定期健診をおすすめいたします。
 
 何よりもまず早期発見が肺がん対策です。

胃がん治療・手術の名医

氏名
病院名
笹子三津留国立がんセンター中央病院
第一領域外来部長
1976年東京大学医学部医学科卒。オランダ・ライデン大学外科教授等を経て現職。
数多くの症例をこなしており、確実な胃がん手術が出来る外科医と評判です。胃がんの手術数は日本でトップ、多岐な治療法と安定した技術で合併症にも対応しています。
佐野武国立がんセンター中央病院
外科医長
1980年東京大学医学部卒。パリ市キュリー研究所フェロー等を経て現職。
確実で安定感のある手術が出来る外科医と言われています。患者に対する面倒見がよく、温かみのある胃がんの治療が受けられると評判です。
愛甲孝鹿児島大学病院
腫瘍制御学・消化器外科学教授
1969年九州大学医学部卒。米国コーネル大学医学部留学等を経て現職。
センチネルリンパ節理論に基づく研究と臨床を行っており、これまでに約200例の早期胃がんに対して臨床応用し、きわめて良好な結果を得ています。
大谷吉秀慶応義塾大学病院
一般・消化器外科専任講師
1981年慶應義塾大学医学部卒。浦和市立病院等を経て1999年より現職。
慶応義塾大学病院では、内視鏡専門医はもちろんのこと、放射線科診断医、化学療法や放射線治療を専門とする医師がそれぞれの分野で活躍しています。
梨本篤新潟県立がんセンター新潟病院
外科部長
1975年新潟大学医学部卒。米国留学等を経て2004年より現職。
完全な臓器別診療体制を取っており、疾患ごとに必ず専門医が主治医となり、常に同じ熟練医チームが手術・治療を担当しています。
二宮基樹広島市立広島市民病院
外科主任部長
1977年岡山大学医学部卒。同第一外科等を経て、2002年より現職。
早期胃がんに対し全国に先駆けて胃がん機能温存手術を行ってきました。手術のみでは対応できない高度進行、再発胃がんに対しては、外来中心の化学療法を行っています。
濱中久尚東山会調布東山病院
消化器内科
1998年和歌山県立医科大学医学部卒。国立がんセンター中央病院等を経て現職。
内視鏡医と連携し、診断から治療までチーム医療を行っています。常勤外科医のレベルも高く、避けようが無い合併症が起こっても、早急に対応できる環境にあります。
平塚正弘市立伊丹病院
副院長
1976年川崎医科大学卒。大阪府立成人病センター外科等を経て現職。
胃がん手術のスペシャリストで、胃がんに関する手術は縮小手術から超拡大手術まで、どのような手術も平塚医師が行うことが出来ます。
山村義孝愛知県がんセンター中央病院
消化器外科部部長
1969年名古屋大学医学部卒。名古屋大学医学部第二外科等を経て現職。
進行した胃がんの転移や再発で最も多い「腹膜転移」の治療で定評があり、腹膜転移の初期診断とその後の抗がん剤治療で腹膜転移の治癒を目指しています。

胃がんの3大転移

胃がんには次のような3大転移と言われるものがあります。
(1)リンパ行性転移:がんがリンパ管に入りリンパ節に転移します。
(2)血行性転移:がんが血管に入り肝臓や肺などに転移します。
(3)腹膜播種性転移:がんが胃の一番外側の膜(漿膜)を破って、
 お腹の中に種を播いたように広がります。
           胃がん.gif

肺がん 薬物療法

プラチナ(白金)製剤といわれるシスプラチン、カルボプラチンのどちらかに、90年代に登場した新しい抗がん剤(新規抗がん剤)のうちいずれか1種類を選んで併用し、3-4週ごとに4回治療すること(プラチナ二剤療法)が標準的です。大規模な検討の結果、どの組み合わせで治療を行っても得られる効果は大体同じくらいと考えられており、中間生存期間は約1年、1年生存率は50%から60%です。高齢者や、PS不良患者には、新規抗がん剤の中から1種類だけ選んで単独で投与する治療法もよく行われます。
 最近承認されたペメトレキセドには組織型による効果の差があります。すなわち、腺がんを中心とする非扁平上皮がんにおいて、シスプラチン+ゲムシタビン群に比べてシスプラチン+ペメトレキセド群は有意に生存期間を延長することが認められました。従来の抗がん剤では、非小細胞肺がんの中で組織型によって薬剤を選択することはなかったのですが、ペメトレキセドの登場によって、組織型に応じてより適切な治療法を考慮していくことが可能となりました。
 抗がん剤の副作用は薬の種類によって異なりますが、アレルギー反応、消化器症状(嘔気・嘔吐)、血液毒性(白血球減少・貧血・血小板減少)、肝障害、肺障害、腎障害・心毒性、末梢神経障害(しびれ)、脱毛、便秘・下痢などがあります。
 プラチナ二剤治療を行った後、二回目に行う治療をセカンドライン治療といいますが、その治療はドセタキセルやペメトレキセドの単剤使用が標準的です。

肺がん 放射線治療

がんの放射線治療にはライナックなどの大型治療装置で体の外から放射線を照射する方法(外部照射法)と、線源を入れた容器を臓器の中に入れ照射する方法(小線源治療)とがあります。肺がんの放射線治療は高エネルギーX線を外部照射することが多いが、最近は定位放射線治療や粒子線治療(陽性線や重粒子線)への期待も高まっています。
 IIIA/IIIB期の局所進行非小細胞肺がんに対して80年代までは放射線単独療法が行われていました。しかし多くの臨床試験の効果、放射線単独より化学療法の併用が優れ、さらに逐次併用より同時併用が優れていることが明らかにされ現在ではこれが標準治療となっています。放射線治療の多くは一日一回、週5回、一回2グレイを照射して、合計で非小細胞肺がんで60-70グレイ、小細胞肺がんでは一日二回の多分割照射で45グレイ照射することが一般的です。副作用には食道炎、肺臓炎、皮膚炎などがあります。しかし、有害事象も強いので患者さんの状態も考慮すべきです。
 肺門部早期例に対する気管支腔内照射は肺門部早期がんにおいて肺機能を保ちつつ手術例の治療成績と遜色のない結果が得られつつあります。また、このような肺がんにはPDT(Photo Dynamic Therapy;腫瘍に選択性のある薬剤を投与し、レーザーにより化学反応を起こし、腫瘍のみを選択的に障害を傷害する治療)等も行われています。
 また、肺がん脳転移に対しては通常は全脳照射を行われますが、大きさが3cm以下、数が3個以下であれば、ガンマナイフ治療や様々な方向から放射線を集中させる治療(SMART)が行われます。
 
 肺がんの治癒と言うより症状(疼痛や神経障害)の緩和目的・予防目的で骨や脳へ照射が行われることもあります。

スキルス胃がんは悪性度が高い

他のタイプと比べると、スキルス胃がんの悪性度は特に高く、生存率も低くなりがちです。特徴として早期発見が難しいことが挙げられますが、これは医の粘膜の表面に大きな変化を起こさないことが原因になっています。胃壁の中で広がっていくため、たとえ定期検診を受けていたとしても、見落とされてしまうことが多いのです。そのため、発見された時にはおよそ60%の方が転移しています。
 転移はスキルス胃がんの治療法の選択肢を限定してしまうことがありますし、手術を行った場合でも再発の原因になってしまうことが多くなります。一般的には、早期胃がんなら治癒を目指すことができるのですが、すでに転移までしている状態では、話が変わってしまいます。診断としては、胃壁全体が硬くなってから見つかることが多くあります。
 厄介なスキルス性ですが、主に30歳代と40歳代の女性に発症しています。この年代の女性は、あまり胃がんにかかることがないため、検診を受けていないことも多くあります。たしかに、検査をすれば確実に発見できるものではなく、見逃されてしまうことも多いのですが、やはりあきらめることはできません。毎年レントゲン撮影を続け、過去の写真と比較することによって、早期発見できる可能性も残されています。
 生存率を高めるためには、手術のほかに化学療法を用いることで、残された癌細胞に対応することが一般的に考えられます。もちろん、個別に症状や転移の状態、患者さんの全身状態も考慮しなくてはなりません。現状として納得できるほどの成果が出せていないことが多いのですが、名医に診断してもらうことで、少しでも質の高い医療を望むこともできます。
 最新治療の研究では、抗がん剤を小さなカプセルに包んで投与する方法が研究されています。この研究が実用化されることによって、症状の改善は今よりも容易に望めるようになるかもしれません。

胃がんに効果的な食事療法

病院で専門医から治療を受ける場合には、手術や抗がん剤による化学療法、放射線治療が一般的に行われています。しかし、手術には後遺症がありますし、抗がん剤や放射線治療には副作用があり、深刻な事態を招くこともあります。そうした方法のほかに、胃がん治療に食事療法を用いる方法もありますので、参考にしてください。
 予防のために 名医による効果的な治療も、予防にはかないません。なにしろ、最初から食事で胃がんを予防することができれば、闘病生活を送る必要がなくなるのです。消化器官である以上、食べたものの影響を受けることは否めません。
 そこで気をつけたいことは、食事の時間を決めて、毎日規則正しい時間に食べることや、野菜や果物を豊富に摂取すること、過剰な脂肪や香辛料、アルコールの度数が高いお酒を控えること、保存状態の悪い物やカビの生えたものは食べないことが挙げられます。
 これらの注意点を守ったとしても、絶対に胃がんにならないわけではありません。しかし、食生活の乱れが罹患リスクを高めることは間違いのないことですので、リスクを減少させることにはつながります。日々の行動を少しづつでも変えてみましょう。
 術後の場合 胃がんの手術を行うと、胃の一部、または全部を摘出することになりますので、術前と同じ感覚でいるわけにはいきません。食べるものには原則として制限がありませんが、食べ方には変化があります。
 まず、回数を増やして一度に食べる量を減らすことです。無理に多めに食べようとするより、何回かに分けてみましょう。体調がよいと以前と同じ量を口にしてしまいそうになると思いますが、調子に乗ってしまうと後で苦しくなりますので、自重してください。新しい量に慣れるまでは、意識的にコントロールしましょう。
 また、噛むことによって、消化機能の低下を補いましょう。焦らずゆっくり食べるようにしてください。また、回数が増えても、毎日の時間は一定に保ちましょう。お腹が空いた時に好きなだけ口に運ぶのではなく、規則正しい生活を送ることが大切です。アルコールや消化の悪いものは、専門医と相談しながら摂取するようにしてください。くれぐれも体に負担をかけすぎるようなことはしないでください。
 ダンピング症候群 術後の後遺症として一般的なものに、ダンピング症候群があります。ダンピング症候群には早期と後期があり、早期ダンピング症候群は食後30分以内に発生する動機やめまい、脱力感、発汗、顔色の変化、下痢などの症状を示します。早期ダンピング症候群を防ぐためには、食事の時の水分を控えることや、甘くてとろとろしたお汁粉のようなものに気をつけることが必要です。
 後期ダンピング症候群の症状としては、食後2時間から3時間ほど経過してから、冷や汗や倦怠感、めまい、指のふるえ、脱力感が現われます。血糖値の低下が原因となっていますので、食後2時間ほど経った頃に間食をすることで予防することができます。

胃がんの生存率

胃がんは初期症状であれば治癒を目指すことができるほど予後が良いのですが、末期に近づくほど予後の経過は悪化します。
 病期(ステージ)ごとに一般的な5年生存率を見ていくと、ステージ0ではほぼ100%、ステージ1で90%、ステージ2で80%、ステージ3で50%、ステージ4で10%となっています。すべての病期を通算するとおよそ70%となっていますが、末期に近づくと決して良好とは言えない数字であることに注意が必要です。もっとも、難治がんの代表格であるすい臓がんと比べると明らかに予後が良好であり、癌であっても早期発見によって助かる見込みは十分にあると言えます。
 胃壁への変化が小さいスキルス性の場合を除けば、定期的に検診を受けておくことによって初期症状の段階で発見することは可能です。末期になる前に治療を行うことによって、治癒を目指しましょう。悪化するほどに再発の危険も高くなります。
 胃がん検診を行った場合、実際に胃がんと診断されるのは1000人に1人から2人の割合とされていますが、それでも大きな危険を避けるためには受診の意味があります。日本人にとって縁の深い癌ですので、油断しないで下さい。生存率が高いうちに治療しておきましょう。
 他の病院と生存率を比較するときには、通算の数字ではなく、それぞれの病期ごとに比べておきましょう。条件を揃えなくては適正な結果が得られないからです。
 また、特定の病期のみの数字が悪い場合には、十分な症例数が確保できていないケースや、その進行度における治療を効果的に行うための専門医がいないことや、設備が整っていない可能性がありますので、原因を明らかにしておいた方が良いでしょう。

胃がん ペプシノゲン検査とは

胃がんの検査の1つに、血清(血液の一部)を用いた検査方法があります。
 大規模な人数の検査をするとき、第1段階として疑わしい症例を見つけだすのに効率的な方法です。
 胃の細胞から分泌されている酵素に「ペプシノゲンI」「ペプシノゲンII」という酵素があります。この酵素は萎縮(いしゅく)性胃炎に関係が深いことがわかっています。
 血液中のこの酵素の量を測り、IとIIの比率から萎縮性胃炎を予測することができます。
 萎縮性胃炎の粘膜からは分化型の腺癌(せんがん:腺管構造をしているがん)が発症するリスクが高いため、血液検査によりリスクの高い方々を選別し、早期発見につなげます。
 この方法による胃がん発見率は間接X線検査(集団検診で行われている)に近い成績ともいわれています。
 簡便で経済的なこと、また一度にたくさんの検体を調べられる効率性から、集団検診に間接X線検査とともに組み入れられています。

胃がん PET(陽電子放射断層撮影)検査とは

PET(陽電子放射断層撮影)検査は、がん細胞が正常細胞よりも糖分を多く必要とする性質を活かし、陽電子を放出するブドウ糖に似た薬剤を利用し、体内での薬剤の分布を画像化する診断法です。
 CT検査やMRI検査が形態を画像化するのに対し、PET検査は細胞の活動性に応じて薬剤が集まる原理を利用することで、細胞の代謝の状態を画像化する検査です。また、PET検査は1回の検査で全身において、がんの検査を行うことができることが大きな特徴です。
 しかし、全てのがんをPET検査で早期に発見できるわけでありません。薬剤の集積が少ない性質のがんもありますし、消化管粘膜に発生する極早期のがんの発見は困難です。また、薬剤は炎症部にも集まる性質をもつため炎症部とがんとの区別が難しいという問題もあります。
 PET検査で発見されやすいがんとしては、肺がん、食道がん、膵臓がん、大腸がん、乳がんがあげられ、さらに、いままでの検診では見つけることが困難であった甲状腺がん、悪性リンパ腫、卵巣がん、子宮体がんが発見できることが期待されています。
 他胃がん、腎がん、尿道がん、膀胱がん、前立腺がん、肝細胞がん、胆道がん、白血病など場所によっては有用性が低い場合があるともいわれています。
 PET検査は平成14年度に一部の疾患の診断に限って保険が適応されるようになりましたが、その他の適応外の疾患や検診は全額自己負担となるため、かなり高額な検査になります。
 また、薬剤の製造装置および撮影装置の設備費用が非常に高く、検査可能な医療機関は限られています。

胃がん CT検査

CT検査は身体にあらゆる角度からX線照射し、得られた情報をコンピューターで解析するものです。造影剤を使う場合と使わない場合がありますが、造影剤を用いる方法では病変がより鮮明に描き出され、検査したい臓器やその周辺をミリ単位の断層写真として観察できます。
 CT検査の結果はX線検査や内視鏡検査の結果と総合して病気を判断することに役立っています。また、がん治療(化学療法や放射線療法など)の効果の把握などにも用いられています。
 胃がんが疑われた場合の精密検査のひとつとしてCT検査を行います。
 CT検査は、胃がんそのものの発見には有益とはいえませんが、胃がんの周りの臓器への浸潤(しんじゅん)や転移している病変の発見に有用です。

胃がん 超音波内視鏡検査とは

胃がんの超音波内視鏡検査(EUS)は組織の構造が変化する部位で、音波が跳ね返ってくる現象(エコー)を利用して、跳ね返りの強さや部位を画像として映し出す検査です。
 体表からの超音波検査では胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔(ふくくう)の脂肪、骨が、エコーをとらえて画像にする際に妨げになることがあります。
 また、体表からのエコー検査では検査目的とする対象臓器近辺までの画像を得るために超音波の減衰が少ない比較的低周波数の超音波により検査を行いますが、低周波数の超音波検査では分解能に限界があり、高い分解能を持った詳細な画像情報が必要となるがんの壁深達度(へきしんたつど)診断などには適しません。
 その欠点を改良したものが、超音波内視鏡検査です。超音波内視鏡は、内視鏡先端部にエコーを送受信する「超音波振動子」を兼ね備えた内視鏡です。
 超音波内視鏡検査では、超音波が胃など体腔内に溜まったガスを透過できない為、超音波振動子と観察部位との間に水を介在させて対応(脱気水充満法等)をしています。
 胃壁の表面を観察する内視鏡検査に異なり、また、粘膜下の状態をエコー像として観察する役割を果たします。5~30MHzという比較的高い周波数の分解能に優れた超音波内視鏡検査により、粘膜上皮(じょうひ)の病巣(びょうそう)だけでなく、病巣がどのくらいまで深く進展しているか、リンパ節の転移や、周りの臓器への浸潤(しんじゅん)などについての詳細な情報を得ることができます。
 その結果、内視鏡的治療が適応するかどうかの判断、進行性胃がんの場合はどこまで切除するかの境界線を決めるうえでの重要な情報を得ることができます。
      sc033_pic01.jpg

胃がん X線検査とは

胃がんX線検査とはバリウム溶液を飲んでX線写真を撮影するもので、胃の検査には間接X線検査と直接X線検査とがあります。
 間接X線検査は、病変の発見を第一の目標とするもので、時間的、経済性、被験者の負担などから集団検診などで行っています。
 しかし、小サイズのフィルムを使用し、マニュアルどおりの体位で撮影するため、小さな胃がんや部位によっては進行性の胃がんも見逃す可能性があるので、近年、胃内視鏡検査を選択することが多くなっているようです。
 一方、直接X線検査はいわゆる精密検査で行われるX線検査で、2種類の造影剤の量を変えた二重造影法と、圧迫したり体位や方向を様々にかえて撮影する方法があります。
 良性・悪性の鑑別や病巣(びょうそう)の形態、浸潤(しんじゅん)範囲、深達度(しんたつど)の推定ができます。
              sc032_pic01.jpg

胃がん 内視鏡検査

胃がんの内視鏡検査はファイバースコープや先端にCCD(固体撮影素子)を搭載した電子スコープを用いて、直接、消化器粘膜を観察する方法です。
 内視鏡検査は病巣(びょうそう)部を直接観察できることが大きな特徴です。主病巣の位置や大きさだけでなく、病巣の拡がりや表面の形状(隆起(りゅうき)や陥凹(かんおう))、色調などから、病巣の数やある程度の深達度(しんたつど)が判断できます。
 色素内視鏡検査といい、発見困難な凹凸のない病巣は色素と呼ばれる染色液を使って探す方法もあります。
 もう1つの内視鏡検査の大きなメリットは、直接細胞を採り(生検:せいけん)、病理検査ができるため、病気の判定に役立っています。
 胃内視鏡検査は早期胃がんの発見に大きく貢献しています。内視鏡での胃集団検診により発見されるがんの中で約60%は早期がんという成績も報告されています。
 胃内視鏡検査は、のどの麻酔や消化管の運動を抑える処置をした後に、胃内視鏡を口から挿入し、胃の内部を観察します。粘膜の様子、色、形態の変化から胃がんのほか炎症や潰瘍などを見つけることができます。
               sc031_pic01.jpg

胃がん 薬物療法

化学療法は抗がん剤を使用する目的によって、(1)手術で取りきれずに残ってしまった少量のがん細胞を死滅させて再発を予防する(これを術後補助化学療法と言います)、(2)がんに伴う苦痛を改善したり予後を延長させる目的で使用する、の2つに分類されます。
 (1)の術後補助化学療法は、手術で完全にとりきれなかったがん細胞を死滅させることで、手術単独では治らない患者さんを治す治療です。 一方、この治療は手術で治ってしまう患者さんにまで抗がん剤を投与することが問題です。使用する抗がん剤の効果と副作用を検討した結果、ティーエスワンの1年間の投与が有効であることが知られています。
 (2)の目的で用いられる主な抗がん剤は5-フルオロウラシル、シスプラチン、イリノテカン、タキサン系薬剤(パクリタキセルとドセタキセル)です。最初に行うべき治療は5-フルオロウラシル系薬剤であるティーエスワンとシスプラチンを組み合わせた治療法です。
 この他にも、ティーエスワンにタキサン系薬剤を組み合わせた治療法も期待されていますが、現在までに有効性の証明はされていません。この他、ティーエスワンとシスプラチンにタキサン系薬剤であるドセタキセルを組み合わせた3剤併用療法も検討されていますが、その効果や安全性の十分なデータはありません。
 最近の研究で、胃がんの約20%にHER2(ハーツウ)という細胞増殖にかかわるたんぱく質が多く発現していることが分かりました。2009年の米国臨床腫瘍学会において、HER2を多く発現している胃がんにHER2の働きを抑える分子標的治療薬(トラスツズマブ)を併用すると、予後の改善することが報告されました。この薬剤は乳がんの治療薬として使われていますが、近い将来、胃がんにおける治療薬になると期待されています。
 また、手術成績向上のため、手術可能な患者さんに対する術前化学療法の研究も進んでいます。高度リンパ節転移症例に対するティーエスワンとシスプラチンによる術前化学療法は、術前化学療法なしに比べて優れている可能性が高いことが示されています。現在、高度リンパ節転移を伴う症例に対して、術前化学療法がおこなわれるようになってきています。

手術の合併症の予防

今日では医療技術が発達したおかげで、胃がんの手術に伴う危険性もかなり低くなっています。 しかし、手術のあとには、まれに身体に好ましくない状態が生じることがあります。手術がもとで起きる病気を「術後合併症」と呼びます。薬でいうところの副作用に相当します。
 胃がんの手術後、約1~2週間のあいだに発症し、多くの障害が発熱を伴っています。合併症の頻度は、病院や医師の技量、経験によって異なります。また、患者さんの年齢や持病も影響してきます。
さまざまな合併症
 肺炎
 肺の中に痰が溜まりやすくなると、細菌に感染しやすくなり、肺炎を患ってしまいます。とくに高齢の患者さんにみられます。ずっと寝たままの状態はよくないので、できれば少し体を動かして予防するようにしましょう。
 膵液ろう(すいえきろう)
 膵臓の分泌液である膵液が漏れている状態で、感染症を引き起こして発熱します。胃の切除の際に、膵臓の一部を取り除いた場合などに発生します。
 縫合不全(リーク) 
 胃や腸を縫い合わせた縫い目がほころびて、切除した後の消化管をつないだところから、消化液や飲食物が漏れ出すことです。治すためには、飲食物を一時的に摂らないようにしなければなりません。ただし、重症の場合には再手術をして、消化液を体外に排出し、腹腔内の洗浄をする必要があります。
 創感染
 おなかの手術創が化膿して、腫れて痛みが出たり、熱を持ったりします。皮膚を縫い合わせている糸をはずして傷口を開くと、たまった膿を出すことができます。
 腸閉塞
 開腹して腸が外気に触れると、腸の働きが悪くなります。ガスや便がたまって、おなかの張り、吐き気・嘔吐などの症状があらわれます。通常は時間の経過とともに回復しますが、症状が長く続くような場合は、たまっている腸液やガスを抜く治療が必要になります。
 術後の回復は早期離床がポイント
 手術後の合併症は、ほとんどが早期離床をこころがけることによって予防することが可能です。痛みでつい寝てしまいがちになりますが、少し寝返りを打ってみたり、少しずつ歩いてみることが大切です。
立ち上がると、横になっているときよりも深い呼吸ができるようになり、肺に痰もたまりにくくなります。これは肺炎の防止だけでなく、腸の機能回復にも役立ちます。
禁煙を続けることは言うまでもありません。喫煙者は粘り気のある痰が出やすいために、術後の回復の早さにも大きな影響を与えています。

入院の前に確認すべきこと

胃がんの手術の前には、きちんと十分な説明を受けて納得してからのぞむことが大切です。患者さんの問いかけには、医師は必ず丁寧に説明してくれるはずです。
手術には体にも多くの負担がかかり、可能性はごくわずかですが命を落とすことも考えられます。がんをそのまま放置しておく危険性よりかははるかにましですが、自分が受ける手術のことをよく知っておくのは無駄にはなりません。
手術にもメリット・デメリットがありますが、三者の間で十分な話し合いをもつことが重要です。三者とは、医師、患者、患者の家族を指します。
医師は、胃がんの状態、患者の状態などから判断して、最も適した治療方針を提案します。患者は、胃がんの診断は告知されているはずなので、積極的に知ることで治療に前向きに取り組めるようにします。家族は、患者の病状や治療方針を理解することで、精神的な支えになります。
医師に確認しておきたい事項
入院日数、入院費用
具体的な治療の内容
行う治療の目的について
他に受けることのできる治療法はないか
がんの病態についての説明
再発の危険性はどれくらいあるのか
術後の合併症、副作用とその頻度
術後の生活にはどのような影響が出てくるのか

 万が一、医師がすすめる治療法に納得ができないという場合には、まずは十分な説明を受けるようにしましょう。納得ができない理由は細かく述べて、医師に正確に伝えましょう。
どんな治療法を受けるのかを決める最終的な決定権は、医師ではなく患者側になります。

進行がんには拡大手術の方法も

胃がんは進行するにつれて、近辺のリンパ節だけでなく遠くのリンパ節へも転移していきます。胃の周囲にある臓器へも浸潤していくこともあります。そこで、胃の切除だけではがんを治療できない場合には、周辺臓器の一部や、第3群リンパ節まで取り除くことが検討されます。これを拡大手術と呼びます。
ただし、切除範囲が広くなるということは、その分身体にかかる負担も尋常ではなくなります。かえって体の状態を悪くする可能性もあるために、拡大手術はよく検討しておこなわれます。
 胃と共に切除される可能性のある部位
 脾臓(ひぞう)
 脾臓は、古くなった赤血球や白血球を処理する機能をもつ臓器です。成人の場合には、切除してもとくに体に問題はないという報告がありますが、取らないほうがよいという見方もあります。しかし、がんが浸潤している場合には切除はやむを得ません。
 膵臓(すいぞう)
 膵臓の切除は、膵尾部(すいびぶ)という箇所を切除する方法が取られてきました。ただし、最近では合併症のことを考慮してなるべく切除は避けられています。
 第3群リンパ節
第2群リンパ節に転移が確認される場合には、腹部の大動脈の近くにある第3群リンパ節を切除することがあります。ただし、リンパ節の切除は、術後の回復が困難になる可能性があることや、技術的に難しい面もあり、その効果もはっきりとは解明されていません。
他に切除される部位には、十二指腸、胆管、大腸の一部、肝臓の一部などがあります。いずれも高度の進行胃がんの場合に検討されます。

転移の可能性が低ければ縮小手術

縮小手術とは、定型手術よりも胃の切除範囲を狭くしたものです。施行するにはいくつかの条件がありますが、術後の負担や後遺症が軽くなります。消化機能に及ぼす影響が少なくなるので、食生活も守ることができます。
定型手術→縮小手術へ移行するには?
 縮小手術でがんの根治が期待できるのは、早期胃がんであり、病巣が2cm以下の場合に限られます。
リンパ節郭清の範囲を小さくする
リンパ節を切除するリンパ節郭清は、第2群リンパ節の一部を切除することなく残すことができます。これはリンパ節転移の可能性が低い場合におこないます。
胃の局所切除
 ごく早期の胃がんで、リンパ節に転移している可能性がほとんどないと考えられる場合には、胃のごく一部のみを切り取る「局所切除」も可能になります。また、内視鏡では切除しにくい場合もおこなわれることがあります。腹腔鏡などが使われます。
ごく一部の切除なので、胃の機能はほぼ100%保たれますが、リンパ節郭清がおこなえないという欠点もあります。このため、がんが再発する危険性も考えられます。
 幽門保存胃切除
 胃の入り口側と胃の出口である幽門を残す方法です。幽門神経(幽門の開閉をコントロールしている神経)を残すので、胃の排出機能は保たれます。施行条件は、胃の中心部に発生した早期胃がんで、幽門にリンパ節転移がみとめられない場合に限られます。
このように縮小手術は、再発のおそれのない早期胃がんに限られます。再発の危険性を排除するために、手術が適応できるかは慎重に決定されます。

胃とリンパ節を切除する定型手術

胃がんの手術で、これまでにもっとも多くおこなわれてきたものが定型手術です。がんは目に見える病変だけでなく、周囲の細胞にも潜り込んでいることがあります。がんの病巣を取り除いただけでは、がんを見落としてしまい、再発する可能性もあります。
そこで、定型手術では、まず胃を2/3以上切除していきますが、これに加えて、胃の周りのリンパ節も取り除くという方法がとられています。リンパ節には2種類あり、胃に接している第1群リンパ節と、胃に流れ込む血管に沿っている第2リンパ節があります。切除は両方おこなわれます。がんの再発を防ぐためには、このような切除が必要になるのです。
 胃の切除部位のタイプ
 胃を切除する範囲は、がんの部位、転移の有無、浸潤の深さから決定されます。
 噴門側胃切除術
胃の入り口(噴門)の近くに発生した、早期の小さな胃がんの場合におこなわれます。胃の機能はある程度は残すことができます。
 幽門側胃切除術
胃の出口(幽門)から半分程度を切除します。胃の噴門と中心部は残すことができますが、幽門は切除されます。
 胃全摘術
がんが進行した状態で、胃の全体に広がっていた場合や、膵臓の周囲のリンパ節に転移が認められる場合には、胃を全部摘出することになります。

胃がんの内視鏡的切除

胃がんの内視鏡的切除
 早期発見できた胃がんのなかには、内視鏡で切除をするだけで治療が期待できることもあります。術後の副作用や障害もほとんどないため、まっさきに検討される治療法です。
 内視鏡的切除が可能な条件
がんの大きさは2cm以下
・潰瘍が発生していない
・粘膜層内に限局している
・胃がんの組織は分化型
(分化型・・・周囲の組織に構造が近いもの)
以上のような条件を満たしていれば、内視鏡的切除で根治が可能になります。ただし、早期胃がんのなかでもリンパ節転移が起こっている場合には、切除のみでは再発する危険性があります。
 病巣の組織を調べて、がんが予想以上に深かったり、広がっていた場合も内視鏡は使われません。このようなときは通常の開腹手術をして、胃を取り除くことになります。
 内視鏡的切除の手順
まずは、胃の粘膜下層に注射針をつけた内視鏡を使って生理的食塩水を注入していきます。これは病巣をふくらませるためです。
次に、病巣にスネアをかけていきます。
続いて、高周波電流を流して、粘膜と粘膜下層を焼ききります。
最後に、切除した病巣を取り出して完了です。
取り除いた病巣は組織検査にかけられます。粘膜内にしかがんがなかった場合は、経過を観察していきます。その後に開腹手術をするかどうかは、医師と相談して決めていくことになります。一方、がんが粘膜下層まで達していた場合や、リンパ管・血管内にがん細胞が見つかった場合は、手術を受けることになります。手術は本人の体力をみてから慎重に決定されます。

胃がんは手術で治すのがメイン

胃がんは手術で治すのがメイン
 がんというものは、放置しておくとどんどん増殖してしまう一方であり、それを防ぐためには、がん細胞を体内から取り除くことが一番の方法です。胃がんの場合、手術によりがんの病巣を取り除いてしまうのがもっとも確実になります。
進行型のがんには転移もありますが、手術により周囲の組織を含めて取り除くことが有効な手段になります。病巣のまわりには、目に見えないほどの小さながん細胞が散らばっている可能性があるためです。
手術の際には、取り除く範囲と後遺症の軽さのバランスも大切になってきます。胃を切除しても決定的なダメージは受けませんが、切除する範囲が大きくなればなるほど、それだけ手術後の負担も重くなります。
がんを残さずに取り除くには広い範囲を切除することが確実ですが、手術後の生活や後遺症のことも考えなければならないのです。
それでは、手術以外の治療はおこなわれていないのかといえば、そうではありません。手術によりがんを取り除くことが難しいと判断された場合には、抗がん剤による化学療法、放射線療法などを試すこともあります。ただ、胃がんの場合、手術以外の方法で根治させることは楽ではありません。
早期の胃がんの場合でも、見つかれば早めに手術する方針となっています。がんの進行するスピードは予測できないためです。同じ早期胃がんでも、進行が10年単位のものときわめて遅いものも確認されているようです。

胃がんのステージ

治療方針を決めるためには、胃がんのステージを把握することが必要になります。ステージとは、「病期」や「進行度」ともいい、がんの進み具合を表したものです。
当然ながら、がんがあまり進行していない早期の段階のステージであれば、それだけ治る確率も高くなります。
 胃がんのステージは、がんが胃壁のどこまで進行しているか 転移がどこまですすんでいるかの2つの観点から決められます。
 がんの深さ(深達度)
 がんの深さは、T1~T4に分けられています。Tとは、tumor(腫瘍)からきています。
T1:粘膜層、粘膜下層までにとどまっているがん
T2:筋層、漿膜下層まで浸潤しているが、胃の表面には出ていないがん
T3:胃の表面まで出ているがん
T4:周囲の臓器(結腸や膵臓)に浸潤しているがん
 なお、胃がんが、肝臓や肺などの離れた臓器に転移(遠隔転移)してしまっている場合には、進行度にかかわりなく、ステージはもっとも重いⅣと判断されています。
 リンパ節転移の状況
 胃の周囲には、胃に近いほうから、第1群、第2群、第3群という具合にリンパ節が取り巻いています。リンパ節転移の状況は、N0~N3に分けられます。Nとは、lymph node(リンパ節)からきています。
 N0:リンパ節転移が認められない
 N1:胃に接しているリンパ節に転移がある
 N2:胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移がある
 N3:遠くのリンパ節に転移がある
 ステージ分類
以上の2つの観点の組み合わせによって、胃がんのステージはⅠ~Ⅳに分けられています。
(リンパ節への転移の有無によって、A、Bとも分けられています)
ⅠA期 リンパ節転移がなく、粘膜下層までにとどまっている。
ⅠB期 以下のいずれか。
・リンパ節に転移がないが、筋層または漿膜下層まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤である。
Ⅱ期 以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、筋層または漿膜下層までの浸潤である。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤である。
ⅢA期 以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があるが、胃の表面に出ずに、筋層または漿膜下層までの浸潤である。
ⅢB期 以下のいずれか。
・胃に接したリンパ節に転移があり、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
Ⅳ期 さらに遠くのリンパ節に転移があるか、肝臓、肺、腹膜などに遠隔転移が認められる。
早期の胃がんでは、ほとんどステージⅠAまたはⅠBになります。逆に、離れた臓器やリンパ節に転移している場合は、ステージⅣと判断されます。ステージがおおよそ判断できれば、治療方針を決定していくことになります。

肺がんの病期(ステージ)

非小細胞肺がん
がんの病巣の広がり具合で病気の進行を、潜伏がん、0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期に分類します。
【潜伏がん】がん細胞が痰の中に見つかっていますが、病巣部が肺のどこなのかが分からない非常に早期の段階です。
【0期】がんは局所的に見つかっていますが、気管支をおおう細胞の一部のみにある早期の段階です。
【ⅠA期】がんが原発巣にとどまっていて、大きさは3cmを以下で、リンパ節や他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅠB期】がんが原発巣にとどまっていて、大きさは3cmを超え、リンパ節や他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅡA期】原発巣のがんの大きさは3cm以下で、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移が認められますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【ⅡB期】原発巣のがんの大きさは3cmを超え、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移が認められますが、他の臓器に転移が認められない段階です。
【ⅢA期】原発巣のがんが直接胸膜、胸壁に広がっていますが、転移は原発巣と同じ側の肺門のリンパ節まで、または、縦隔と言われる心臓や食道のある部分のリンパ節には認められますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【ⅢB期】原発巣のがんが直接縦隔に広がっていたり、胸膜へ転移をしていたり、胸水がたまっていたり、原発巣と反対側の縦隔、首の付け根のリンパ節に転移していますが、他の臓器には転移が認められない段階です。
【Ⅳ期】原発巣の他に、肺の他の場所、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合です。

胃がんの診断

胃内視鏡検査
いわゆる「胃カメラ」と呼ばれる検査です。
直径10ミリほどの長い管(スコープと呼んでいます)を口から胃の中に挿入して、胃の粘膜面を直接細かく観察し、必要に応じて組織の一部を採取します。このように組織を採取して顕微鏡検査を行うことを生検(せいけん)といい、がんの確定診断をするうえで極めて重要な検査です。
胃カメラというと挿入時に嘔吐反射を伴いやすく、個人差もありますが、もうしたくない辛い検査と言われる人がいます。最近は器械が細径化して比較的楽な検査になりつつあります。それでも反射がつらい場合には鎮静剤を使用することや経鼻内視鏡検査をお勧めしています。
経鼻内視鏡は急速に普及した内視鏡検査です。経口的な内視鏡に比べて径が細い分、画像はやや劣りますが、熟練した内視鏡医が行えばがんの見落としが少ないといわれています。また毎年必ず内視鏡検査を受けるという受容性の高さにより胃がんの早期発見に貢献しています。現在胃癌診断で信頼されているものは胃内視鏡検査ですので安心して受けてください。
機種によって拡大機構や画像強調が可能になり、範囲診断や癌か否かの診断に用いられます。また、内視鏡の先端に小型の超音波装置を取り付けた超音波内視鏡検査によってがんの深さや周囲リンパ節の診断が行われ、がんの広がりを判定します。
胃レントゲン検査
バリウムを飲んで行うレントゲン検査のことです。
粘膜の細かい観察能力では内視鏡に劣りますが、胃の全体像や凹凸の変化をみることに適しています。現在では無症状な人からがんを見つけだす目的で検診や人間ドックで主に用いられています。食道や十二指腸との距離や病変の拡がりを診断する目的で胃癌を手術する前には必ずレントゲン検査を行います。内視鏡検査とX線レントゲン検査は、胃がん診断の「車の両輪」のようなものです。
腹部CT、超音波検査
がんの転移の有無を知るために行います。肝臓、リンパ節、腹水の有無、腹膜への転移を調べます。この二つは性格が異なりますので、どちらか片方だけ検査するときもありますが、正確を期するために両方行うときもあります。
腫瘍マーカー
すべてのがんで見られる現象ではありませんが、胃がんでも一部のがんでは血中に特定の物質を分泌しています。これを腫瘍マーカーと呼んでおり、がんの進行や再発の判定に役立ちます。
腫瘍マーカーが正常範囲内である進行胃癌の患者さんもしばしば見受けられますので過信も軽視もできません。
最近では胃がんの要因にピロリ菌の関与が報告され、血中抗体を測定する場合があります。萎縮性胃炎に分化型胃癌が発生することが多いことを利用してペプシノーゲンを血液で測定して胃がんの発生しやすいか否かを診断します。
最終的には胃がんの有無は内視鏡検査で判定することになりますが、自分自身のピロリ菌や胃粘膜の萎縮の有無を知ることは重要です。

胃がんの症状

胃がんそのものによる症状と、胃がんに付随して起きる胃炎などによる症状とがありますが、その区別はなかなか困難です。 一般的には早期胃癌には症状は無く、がんの進行によって症状が出現します。早期胃癌の症状は、合併する胃潰瘍や慢性胃炎の症状のことが多いと言われています。
 食思不振、悪心・嘔吐食欲がなくなったり、ムカムカして吐いたりすることです。胃がんによって消化管の内腔が狭くなり、食べたものの通過が悪くなって胃が重い感じがし、そのため食欲がなくなったり、吐いたりすることがあります。また合併している胃炎や潰瘍のために悪心・嘔吐が起こることもあります。
 るいそう、全身倦怠いわゆる「痩せる」ことと体がダルイことです。食思不振や悪心・嘔吐によって痩せたり倦怠感が出ることもありますが、たくさん食ベていてもがんに栄養を取られたり、がんからの出血のために痩せたり脱力感に陥ることがあります。
 吐血・下血血を吐いたり便が「のり」のように黒くなったりすることです。
がんの表面が崩れて出血するために起こる症状ですが、合併あるいは併存する胃潰瘍などでも起きることがあります。少量でも持続的に出血していると貧血になります。
 腹痛・腹部不快感みぞおちや臍の上などが痛む場合や食事の前後に腹部に鈍痛やすっきりしない感じがあらわれたりします。がんに特有な症状ではありませんが、多くの患者さんに認められる症状の一つです。
 胸焼け普通、逆流性食道炎で起こる症状ですが、食道と胃の境界にがんができると食物の流れが悪くなり、食後にものがつかえることや食べ物がこみあがってくることがあります。

胃がんとは

胃は、「胃袋」とも言うように、食道に続く嚢状の器官で、食べたものを一時蓄えたり消化したりする働きをしています。食道に続く部分(噴門と言います)と十二指腸に続く部分(幽門と言います)は周囲の臓器に固定されていますが、それ以外の部分は割と自由に動きますので、体の位置(横になっているか、立っているか)や食べたものの重さによって胃の位置が変わります。
胃の入口から出口に向かって、各部位は噴門部、胃体部、胃角部、前庭部、幽門部と言われています。
 胃の内側は粘膜で覆われ、外側は腹膜(漿膜とも言います)で覆われています。その間に胃を動かす筋肉の層(これを固有筋層と言います)があります。
また、この3つの層の間には細胞が少なく線維が多い組織があります。粘膜と固有筋層との間の層を粘膜下層、漿膜と固有筋層との間の層を漿膜下層と呼んでいます。このため、胃の壁は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層から成り立っています。
imag1-2.gif
胃がんは胃の粘膜から発生してきます。胃にはそのほか肉腫や悪性リンパ腫なども出来てきますが、胃の悪性腫瘍の大多数(95パーセント以上)は「がん」によって占められています。したがって、胃の悪性腫瘍といえば「がん」のことを指しています。
 この胃がんはどれぐらい発生しているのかというと、愛知県の衛生部で毎年発行しています「愛知県のがん登録」によりますと、平成17年に全体で27,748名(男性16,371名、女性11,377名)の人が新たに悪性腫瘍に罹られていました。
 男性で最も多い癌は肺がんであり、胃、前立腺、結腸、肝および肝内胆管および直腸とつづき、女性で最も多い癌は乳がんであり、胃、結腸、肺と続いています。全体に対する胃がんの占める割合は、男性18.2%、女性12.7%でした。
 このように、胃がんは食生活の変化や検診の普及で減ってきていますが、それでも日本人にとってもっとも身近な悪性腫瘍の1つといえます。特に注意が必要なのは加齢とともに胃がんの罹患率が上昇することです。

肺がんに強い病院ベスト10

2005年に国立がんセンターがまとめた最新の統計で、男性は1位・女性は2位が肺がんが原因で亡くなっています。今、ヘリカルCTと呼ばれる装置を使った肺がん検診と、体に負担をかけすぎない肺がん手術が注目されています。
 一流の外科医に加えて、抗がん剤治療の上手な腫瘍内科医、画像診断と放射線治療の両方が得意な放射線科医の3拍子が揃った総合力がいい病院です。
神奈川県立がんセンター (神奈川県)
 呼吸器外科 中山治彦(なかやまはるひこ) 部長、
 呼吸器内科 野田和正(のだかずまさ)部長 (電話)045-391-5761
中山治彦外科部長は国立がんセンターで肺がん手術の腕を磨き、年間150例以上をこなしています。「がんの完全切除=がんの根絶」と、「術後の生活に支障をきたさない=QOL(生命・生活の質)の重視」という二点をモットーにしています。
「胸部写真に『影がある』と言われたら、肺がんの専門医のいる病院ですみやかに精密検査を受けましょう。自覚症状がないあkらといって放置してはいけません。早期発見、早期治療はがんの診療において大変重要なことです。また肺がんの手術はどこの病院でも同じようにできるわけではありません。手術数や抗がん剤の治療数が多く、経験豊かな医師のいるところをえらびましょう。」(中山治彦部長)
国立病院機構 刀根山病院 (大阪府)
 呼吸器外科 前田元(まえだはじめ)部長、呼吸器内科 横田総一郎(よこたそういちろう)部長、放射線科 高島庄太夫(たかしましょうだゆう)部長(電話)06-6853-2001
 過去25年間で、4934人が肺がん手術を受けており、手術症例全体の5年生存率は68.9%です。呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理部の関連しているそれぞれの科が合同でカンファレンス(治療検討会)を毎週行い、一人一人の患者に最適の治療方針を決定しています。
「半年~1年に1回は胸部レントゲンを取ること。喫煙者は喀痰検査も。治療に際しては、病気の進行度と、体調を十分考慮して決めること。手術の場合は、必ず禁煙すること。術前から呼吸訓練をしっかり行うこと。抗がん剤治療を受ける場合、副作用対策に関する説明をよく聞き、積極的に取り組むこと」(前田元部長)
国立病院機構 九州がんセンター (福岡県)
 呼吸器科 一瀬幸人(いちのせゆきと)部長、化学療法科 江崎泰斗(えさきやすと)部長、
 放射線治療科 平田秀紀(ひらたひでき)部長(電話)092-541-3231
 内科、外科の区別のない、総合的な肺がん治療が特色です。年間手術数の121例中104例は内視鏡手術(腹腔鏡下および胸腔鏡補助下手術)です。進行肺がんに対しては、新規抗がん剤など、一般病院では使用できない薬剤を用いた治療を行うこともあります。
「最良の肺がん医療を目指すと同時に、スキンシップを通して信頼関係を築き、『病む人の気持ち』を何よりも尊重しています。また、けっして一人の医師の判断で医療を行わないようにしています。診療においては総合的知識、経験が必要と考えるからです。セカンドオピニオンを大いに利用してください」(一瀬幸人部長)
岩手県立中央病院 (岩手県)
 呼吸器外科 半田政志(はんだまさし)科長、呼吸器内科 武内健一(たけうちけんいち)科長、放射線治療科 関澤玄一郎(せきざわげんいちろう)科長 (電話)019-653-1151
半田政志科長は「あの先生は手術が巧い」と評判。あくまで患者の意向を尊重しつつ、肺がん診療ガイドラインに準拠した「テーラーメードの手術」が心情です。
石川県立中央病院 (石川県)
 小田誠(呼吸器外科診療部長) (電話)076-237-8211
国立病院機構 西群馬病院 (群馬県)
 斎藤龍生(院長)、渡辺覚(内科系診療部長)、川島修(呼吸器外科医長)
 (電話)0279-23-3030
東京医科大学病院 (東京都)
 呼吸器甲状腺外科 加藤治文(かとうはるぶみ)教授、呼吸器甲状腺外科 坪井正博(つぼいまさひろ)講師、呼吸器甲状腺外科 大平達夫(おおひらたつお)講師
 (電話)03-3342-6111
京都大学医学部付属病院 (京都府)
 呼吸器外科部長 中山勝裕 (電話075-751-3111)
静岡県立静岡がんセンター (静岡県)
 呼吸器外科 近藤春彦(こんどうはるひこ)部長、呼吸器内科 山本信之(やまもとのぶゆき)部長、放射線治療科 西村哲夫(にしむらてつお)部長 (電話)055-989-5222
兵庫県立がんセンター (兵庫県)
 呼吸器外科 坪田紀明 院長、呼吸器外科 岡田守人(おかだもりひと)医長、放射線科 足立秀治(あだちしゅうじ) (電話)078-929-1151
大分大学医学部付属病院 (大分県)
 呼吸器外科教授 川原克信 (電話)097-549-4411

白血病に強い病院ベスト10

骨髄や脾臓など造血器のがんともいうべき白血病は、
高齢化とともに増加していています。
 頻度は低いですが、発症すると命にかかわることが多いのです。
白血病に強いと定評のある病院を紹介します。
都立駒込病院(東京都)
 
 都立駒込病院血液内科は、白血病などの難治性血液疾患に対する造血幹細胞移植総数が800例を超える。これは全国屈指の移植数だ。
移植はドナー(提供者)の造血幹細胞をどこから採取するかで3種類に分かれる。
骨盤から採取する骨髄移植、新生児のへその緒から取り出す臍帯血(さいたいけつ)移植、
腕の静脈から採取する末梢血移植の3つだ。このほかに、保存していた自分の造血幹細胞を
移植する自家移植もある。
「当科は日本で行えるすべての移植法について豊富な経験を持っています。その経験を
もとに患者さんに最適な移植法を選択して、最良の医療の提供を目指しています」と
坂巻壽部長。
造血幹細胞移植は患者さんがよい状態(寛解期)のときに行えば、70%ほどの長期生存が
得られるという。しかし、白血病患者すべてに移植を行った方がよいわけではない。
「白血病のタイプによっては、化学療法と移植の成績が同じぐらいのものもあります。
移植が本当に必要なのかどうかを正確に見分けることが重要です」(坂巻部長)
国立がんセンター中央病院(東京都)
 国立がんセンター中央病院の造血幹細胞移植グループは、日本で最も早くからミニ移植に取り組み、昨年度までに白血病やリンパ腫などを中心に300例以上の実績を持つ。通常の骨髄移植などでは、移植前に大量の抗がん剤や放射線を用いてがん細胞を消滅させる。しかし、これに伴う臓器への障害もあり、移植は55歳ぐらいまでの患者に限られている。
「ミニ移植とは、抗がん剤の投与量を減らして副作用を軽くし、70歳くらいまでの高齢者や、若くても心臓などに障害のある患者にも移植ができるようにした治療法です」と田野崎隆二医長。
 治療の考え方も、従来の移植とは少し違うようだ。抗がん剤でがん細胞を総攻撃するという考え方ではなく、むしろ造血幹細胞の移植と同時に、患者の体内に入るリンパ球などの免疫細胞を利用して治療する方法である。
「ただし、ドナーのリンパ球は患者さんの正常組織を攻撃して重い合併症も引き起こすため、とくに体力の衰えた方の移植には細心の注意が必要です」(田野崎医長)
兵庫医科大学病院(兵庫県)
 兵庫医科大学病院血液内科は、白血病などに対する造血幹細胞移植を約25年間で450例以上実施という全国有数の実績を持つ。
「とくに難治の白血病治療に対して、HLA(白血球の型)半合致血縁骨髄移植などの新しい移植法を開発し、積極的な治療を行っています」と小川啓恭教授。 通常の骨髄移植では、HLAが一致した血縁のドナーを用いて治療を行う。
しかし、血縁にHLA一致ドナーが見つけられないことも多い。そこで、HLAが半分しか一致していない血縁ドナーからの移植を可能にしたのが、
HLA半合致血縁骨髄移植である。
「HLA半合致血縁骨髄移植は、抗腫瘍効果が高く、病気が進行した状態(非寛解期)の患者さんでは、従来のHLA一致移植よりも、むしろ良好な成績が得られる可能性が
あります」(小川教授)
 また、高齢者(50~60歳)や臓器障害を持っている人には、移植前処置を緩和したミニ移植も行っている。HLA半合致血縁移植とミニ移植を併用した「HLA半合致ミニ移植」は先進的な移植法として注目されている。現在、厚生労働省の班研究(小寺班)として、
多施設共同で、その有用性を確認する臨床試験を行っている。
■病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
東京都立駒込病院  血液内科 坂巻壽部長(電話)03・3823・2101(東京都)
 造血幹細胞移植総数800例で全国屈指。うち、非血縁者のドナーによる骨髄移植240例。
 豊富な移植経験をもとに最適な治療法を選択
国立がんセンター中央病院 造血幹細胞移植グループ
  薬物療法部・高上洋一部長 内科・田野崎隆二医長(電話)03・3542・2511(東京都)

 日本で最も早くからミニ移植に取り組む。白血病を中心に300例以上の実績を持つ。
 臍帯血移植も数多い
慶応義塾大学病院 血液内科 岡本真一郎診療部長(電話)03・3353・1211(東京都)
 患者さんにやさしいチーム・包括医療を重視。年間50~60例の造血幹細胞移植を行う。
 すべての移植に対応できる設備と経験を持つ
虎の門病院 血液科 谷口修一部長(電話)03・3588・1111(東京都)
 間の移植数約150例で全国トップクラス。50~70歳代でも受けられる臍帯血ミニ移植法を
 開発し、治療法の確立と普及を目指す
神奈川県立がんセンター 血液科 丸田壱郎部長(電話)045・391・5761(神奈川県)
 根治を目指した造血幹細胞移植を行う。1985年以来移植数350例。無菌病室20床。
 化学療法と移植医療を病態に応じて実施
名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター 小寺良尚センター長
 (電話)052・481・5111(愛知県)

 骨髄移植のパイオニア。移植総数1000例超え年間移植数約70例で全国屈指。
 綿密な医療計画と最新治療法で患者さんの社会復帰に努力
京都大学病院 血液・腫瘍内科 石川隆之講師(電話)075・751・3111(京都府)  放射線部、検査部など中央診療部門との密な連携で治療効果と安全性を確保。
 化学療法と移植を有機的に組み合わせた治療を行う
大阪府立成人病センター 血液・化学療法科 平岡諦部長
 (電話)06・6972・1181(大阪府)

 化学療法で治しにくい白血病229例に対し、早い時期の移植(非血縁、臍帯血を含む)で
 5年生存率70%以上を得ている
兵庫医科大学病院 血液内科 小川啓恭教授(電話)0798・45・6886医局(兵庫県)
 難治性の白血病にHLA(白血球の型)が半分しか一致していない血縁ドナーからの移植、
 臍帯血移植などを積極的に行う
九州大学病院 第一内科 血液グループ 原田実根教授
 (電話)092・641・1151(福岡県)

  初診時に遺伝子解析を含む検討を行い、化学療法、自己造血幹細胞移植、
 同種造血幹細胞移植を選択し、最適な治療を行っている

口腔がんに強い病院ベスト10

口の中にできる口腔がんは厄介だ。なかでも最も多い舌がんは、あごの下など首周辺のリンパ節に転移する怖いがんである。口腔がんで定評のある病院を紹介します。
東京医科歯科大学病院(東京都)
 東京医科歯科大学病院放射線科では、舌がん(1~2期)の小線源治療を年間60~70例
行っている。これは日本ではナンバーワン、世界でもトップクラスの実績だ。
 この小線源治療は、放射線を出す小さな粒(放射性金シード線源)を舌に10~20個
永久的に埋め込んだり、約4センチの放射性セシウム針を10本ほど舌に一時的に刺して
行う放射線治療である。
「高齢者やがんが小さい場合には、粒を用います。がんが大きくて、体力のある人には
針を使います。放射線によるあごの骨への障害を防ぐために、舌とあごの間にマウスピース
(スパーサ)を装着します。病院の歯科医と連携して、オーダーメードのマウスピースを作製
しています。そのため、放射線障害はほとんどありません」と渋谷均教授。
 外来通院でマウスピースを作製してから、2~3週間入院して治療を受ける。放射線を
出す粒や針を入れるのに要する時間は30分ほど。針は5~7日後に抜く。治療後のケアを
きちんと行ったあと退院となる。
 「小線源治療の5年生存率は、舌がん1期は84%、2期では76%です。手術を行った場合と
ほぼ同じです」(渋谷教授)
 小線源治療は舌がんのほかに口腔底がん、歯肉がん、頬粘膜がん、中咽頭がんにも
行っている。
愛知県がんセンター中央病院(愛知県)
 愛知県がんセンター中央病院の放射線治療部は、十数年前から、進行した舌がんや
歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がんなどに「動注化学放射線療法」と呼ばれる治療を
行っている。この治療は、特に舌がんで良好な成績を挙げている。
 「2002年までの進行した舌がん(3、4期)40例の2年局所制御率は62%でしたが、
2003年以降はシスプラチンを動脈内投与し、同時にその中和剤を静脈投与する方式に
変え、32例(3、4期)の2年制御率は80%に改善しています。従来の放射線単独療法では
制御出来なかった進行舌がんの治療成績は、手術とほぼ同じになりつつあります」
(不破信和部長)
 動注化学療法は、局所麻酔をして耳の前にある浅側頭動脈から細い管(カテーテル)を
挿入して、この管を舌動脈に挿入し、抗がん剤を少量ずつ持続的に注入する。治療時間は
1時間30分程度で高齢者にも治療できる。
「動注化学療法は全身化学療法に比べて、より高い局所効果が得られます。また、
抗がん剤の副作用も少ないのが特徴です」と不破部長。
 放射線治療も同時に行い、総治療期間は6週間ほど。
千葉県がんセンター(千葉県)
 千葉県がんセンターの放射線治療部は、舌がんや頬粘膜がんなどの口腔がんに
強度変調放射線治療(IMRT)を2001年から開始した。これまでに進行した舌がん、
歯肉がんなどの口腔がん40例にIMRTを実施し、全国トップクラスの治療数を持つ。
 「IMRTはがんの複雑な形に合わせて、放射線照射の強度を変えてピンポイントに照射
できます。そのため、従来の放射線治療では問題となりがちな、唾液の分泌低下などを
軽減することが可能です。IMRTでは患者さんの大半は治療して1年前後で唾液の分泌が
認められます。生存率でも手術をした場合とほぼ同じ成績です」と幡野和男部長。
 IMRTは照射前の準備に時間がかかる。コンピューターで照射量を計算し、試し照射を
何度も繰り返して、正確な照射を行う。IMRTの入院期間は1カ月ほど。
 「早期の舌がんなどには小線源治療も行っています。頭頚科とのカンファレンスで、
患者さんに最適な治療方針を決めます」(幡野部長)
■病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
北海道がんセンター 放射線科 西尾正道統括診療部長
 (電話)011・811・9111(北海道)

 低い線量を出す物質(小線源)を用いて治療を行っているため、放射線障害が少なく、
 治癒率は高い。日本で最も進行例を多く扱う
国立がんセンター東病院 頭頚科 林隆一医長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
 口腔がんに対しては手術治療が中心。手術件数は年間100例を超え根治性と同時に
 QOLを保持。進行例では再建外科を積極的に導入
千葉県がんセンター 放射線治療部 幡野和男部長(電話)043・264・5431(千葉県)
 頭頚科とのカンファレンスで治療方針決定。IMRTなどの外部照射や小線源治療を
 駆使して治療成績の向上を図っている
東京医科歯科大学病院 放射線科 渋谷均教授(電話)03・3813・6111(東京都)
 舌がんの小線源治療の年間症例数世界ナンバーワン・クラス。歯科医との連携で
 放射線障害を予防。5年生存率は手術とほぼ同等
東京医療センター 放射線科 萬篤憲医長 耳鼻咽喉科 藤井正人医長 口腔外科 大鶴洋医長 (電話)03・3411・0111(東京都)
 耳鼻咽喉科、口腔外科と強い連携。口腔がん年間50例。放射線で臓器温存。
 舌がんなどの口腔がんの小線源治療は400例の実績
癌研有明病院 頭頚科 川端一嘉部長 (電話)03・3520・0111(東京都)
 舌がんなどの口腔がんの年間手術件数は100例を超え、そのうちマイクロサージェリーに
 よる口腔再建手術は年間30~40例の実績
神奈川県立がんセンター 頭頚部外科 久保田彰部長
 (電話)045・391・5761(神奈川県)

 進行がんでも超選択的な抗がん剤の動脈内投与と放射線の同時併用療法により
 縮小手術を可能にして機能温存を目指す治療を工夫
●信州大学病院 放射線科 鹿間直人助教授(電話)0263・35・4600(長野県)
 早期舌がんを中心にセシウム針を用いた組織内照射を行っている。治療方針の決定は
 耳鼻科や口腔外科と一緒に行っている
愛知県がんセンター中央病院 放射線治療部 不破信和部長
 (電話)052・762・6111(愛知県)

 行がんには抗がん剤を選択的に動脈内投与する動注化学放射線療法を行う。
 舌がんでは手術と変わらない成績を得られつつある
九州大学病院 放射線科 中村和正講師 (電話)092・642・5705外来(福岡県)
 放射線を出す物質(小線源)を用いて、早期舌がんを切らずに治療する。
 1~2期の5年生存率91%と良好

胆道がんに強い病院ベスト10

胆道がんは肝臓で作られた胆汁の通り道にできるがんで、その発生部位によって「胆管がん」と「胆のうがん」に大別される。進行がんで発見されることが多いため、胆道がん全体の約3割は手術ができないといわれるが、このがんの治療で定評がある病院はどこなのか。
順天堂大学順天堂医院 (東京都)
順天堂大学順天堂医院肝胆膵外科は、胆道がんの中で治療の難しい肝門部胆管がんと
上部胆管がんに対して、安全性の高い手術で全国トップクラスの実績を持つ。
「肝切除を必要とする肝門部胆管がんと上部胆管がんに対して、術前に門脈塞栓術を行って
から拡大手術をしています。十数年間で約100例に実施し、入院死亡例は1例だけ。
それも胆道がん以外の原因によるものです。かなり大きな手術も安全に行うことが
できます」(川崎誠治教授)
 門脈塞栓術とは手術で切除する側の肝臓に栄養を送る血管の門脈をふさいで、
肝臓を小さくして、残す側の肝臓の機能を高めておこうというもの。
 例えば、拡大手術で肝臓の右葉を切除するときは、右葉に栄養を送る門脈をふさいで
委縮させる。局所麻酔で2時間ほど。この塞栓術の2、3週間後に肝切除を含む拡大手術を
行う。
「がんが血管や神経に浸潤していれば、その切除が必要になるし、すい頭十二指腸切除も
加わる場合もあります」(川崎教授)
 拡大手術は10時間以上かかるが、術前の門脈塞栓術を含むさまざまな工夫で、手術の
安全性はかなり向上したという。
名古屋大学病院(愛知県)
 名古屋大学病院消化器外科1は、胆道がんの年間手術数79例(05年)で全国トップ
クラスの実績を持つ。また、胆道がんの診療合計数、手術合計数でも抜群の実績だ。
 「1970年代から胆道がんの治療に積極的に取り組んでいます。胆管がん、胆のうがん
ともに、現時点では治療法の第一選択である手術を行えるように努めています」と
二村雄次教授。
 三十数年間で胆管がんは合計605例診療して手術合計数475例、胆のうがんでは
合計355例診療して手術合計数239例に上る。
 「肝門部胆管がんは治療の難しいケースが多いにもかかわらず、当科での手術合計数は
352例に達しています。世界的にも豊富な症例数です」(二村教授)
 この肝門部胆管がん手術全体の5年生存率は22%と良好な成績だ。マンパワーを
必要とする手術後の管理も綿密に実施し、治療成績の向上に努めている。
国立がんセンター東病院(千葉県)
 胆道がんの初診患者数は年間80~90例で全国有数だ。内科、外科、放射線科との
緊密な連携で最適な治療を目指す。
 「胆道がんは胆管、胆のう、乳頭部と部位によって病態が異なります。進行度もさまざまで
病状に応じた治療選択が必要です」と肝胆膵内科の古瀬純司医長。
 手術のできない進行した胆道がんには化学療法を行う。最近では、内服薬の
テガフール・ウラシルと注射薬の塩酸ドキソルビシンの併用療法で効果を上げている。
 「この2剤併用療法は、従来のテガフール・ウラシル単独療法よりも、がんの縮小効果が
2倍以上になることがわかってきました」(古瀬医長)
 胆道がんに対する化学療法をしっかり行える病院は数少ない。同病院はそこでも
リーダー的な役割を果たす。
 がんが大きくなって胆汁の通り道の胆管をふさぐと閉塞性黄疸(おうだん)を起こす。
そこで、ステント留置法にも力を入れる。ふさがった場所にステントと呼ばれる金属製の
筒を留置して、胆管を広げて胆汁の流れを改善する治療だ。
「積極的な治療と同時にQOL向上にはステント留置なども大切です」と古瀬医長。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
手稲渓仁会病院 消化器病センター 真口宏介センター長
 (電話)011・681・8111(北海道)

 正確な進展度診断により胆管がんの60%以上が手術適応となる。切除不能の場合、
 放射線・化学療法、胆管ステンティングを行う
国立がんセンター東病院 肝胆膵内科
 古瀬純司医長 (電話)04・7133・1111(千葉県)

 外科、放射線科との緊密な連携で、切除、化学療法、QOLへの配慮を含め最適な診断と
 治療選択を行う。治験など臨床試験も積極的
千葉大学病院 肝胆膵外科
 宮崎勝教授 (電話)043・222・7171(千葉県)
 胆道がん年間手術約40例。血管合併切除や門脈塞栓術を併用した積極的な外科切除で
 高い根治率。化学療法との集学的治療も行う
東京大学病院 肝胆膵外科 幕内雅敏教授 (電話)03・3815・5411(東京都)
 胆道がん年間切除25例。難易度の高い胆道がんに対し安全性と根治性を追求する
 治療(門脈塞栓術等)で拡大切除し治療成績向上
順天堂大学順天堂医院 肝胆膵外科
 川崎誠治教授 (電話)03・3813・3111(東京都)

 肝門部胆管がん、上部胆管がんの手術数約100例のうち入院死亡1例のみ。
 肝機能を維持する門脈塞栓術などで手術の安全性を向上
国立がんセンター中央病院 外科肝胆膵外科グループ
 島田和明医長 (電話)03・3542・2511(東京都)

 胆道系の閉塞をきたし黄疸を発生した場合でも迅速に対応している。高度な技術を要する
 肝門部胆管がんの手術件数も全国有数
慶応義塾大学病院 一般消化器外科
 島津元秀講師 (電話)03・3353・1211(東京都)

 3次元画像を駆使して胆道がんの浸潤範囲を正確に診断するため、取り残しのない手術が
 多い。他院で切除不能な進行がんも治癒
名古屋大学病院 消化器外科1
 二村雄次教授 (電話)052・741・2111(愛知県)

 安全面に十分配慮したうえで拡大肝切除、動脈・門脈の合併切除再建、
 肝膵十二指腸切除を常に実施し、治療成績の向上に努めている
奈良県立医科大学病院 放射線治療・核医学科
 玉本哲郎講師 (電話)0744・22・3051(奈良県)

 放射線科と連携し、手術困難症例に放射線療法(小線源、定位放射線)と
 IⅤR(ステント、動注化学)を併用した集学的治療を行う
九州がんセンター 消化器内科
 船越顕博医長(電話)092・541・3231(福岡県)

 遠隔転移を有する胆道がんに、UFT、アドリアシンの組み合わせ療法を班会議で
 共同治験中。近々、保険適応予定の抗がん剤も使用

皮膚がんに強い病院ベスト10

皮膚がんで最も多いのは基底細胞がんだが、転移はほとんどしない。
 怖いのはメラノーマ(悪性黒色腫)だ。悪性度が高い上に、非常に転移もしやすい。近年増えている皮膚がんで、高い評価を受けている病院です。
国立がんセンター中央病院(東京都)
国立がんセンター中央病院の皮膚科は、年間約230例以上の皮膚がんの治療を行う。
このうち約100例は、メラノーマだ。年間の皮膚がんの治療数、メラノーマの治療数ともに
全国トップだ。
 「メラノーマは外科手術が中心です。軽い人は腫瘍の周囲1センチ、重い人は2~3センチ
切除します。手術時にはセンチネル(見張り)リンパ節生検を行っています。このリンパ節を
調べて転移がなければ、その先のリンパ節切除はしません。センチネルリンパ節生検を
行うことで、むくみなどの術後の障害を未然に防ぐことができます」と山崎直也医長。
 メラノーマには、術後の再発防止にインターフェロンβと抗がん剤を用いた治療を行う。
リンパ節転移のない軽症の場合(2期)は、インターフェロンβだけ10日間用いる。
リンパ節転移のある場合(3期)には、インターフェロンβのほかに3剤の抗がん剤による
併用療法を5日間行う。退院後もこの再発防止治療を定期的に繰り返す。
「メラノーマの1期の5年生存率は100%、2期なら約90%、3期でも約60%です。
生存率も術後のQOL(生活の質)も格段に向上しています」(山崎医長)
信州大学病院(長野県)
信州大学病院皮膚科は、90年から皮膚の病変を大きく拡大して観察するダーモスコピーと
呼ばれる診断法を取り入れ、皮膚腫瘍の診断精度を向上させている。皮膚病変にゼリーを
塗ってガラス板で圧迫し、光を当てて拡大して見る診断法だ。
 「皮膚がんの中でも、悪性度が高く転移しやすいメラノーマ、局所で無制限に増殖する
基底細胞がん、良性の脂漏性角化症(老人性イボ)、母斑(ホクロ)は、鑑別が難しく誤診
されることがまれではありません。通常の視診では正診率は75~80%ほどですが、
当科ではダーモスコピー診断などを用いて正診率を90%以上に向上させています」と
斎田俊明教授。
 同科の皮膚腫瘍の診断精度の高さは全国最高レベルと評価されている。とくに、日本人に
多い足底のメラノーマの早期病変のダーモスコピーを解明した研究は国際的に注目されて
いる。正確な診断のうえに、皮膚がんに対して手術から化学療法まで適切に行えるように
エキスパートが協力して診療にあたっている。
「メラノーマについては遺伝子治療や温熱免疫療法などの先進的治療法の開発にも
取り組んでいます」(斎田教授)
九州大学病院(福岡県)
九州大学病院の皮膚科では、進行期のメラノーマに対し、樹状細胞療法と呼ばれる治療に
取り組んでいる。
「2002年から進行したメラノーマ13例に臨床試験として行っています。副作用が少なく、
今後の治療法として期待できます」と師井洋一講師。
 樹状細胞は免疫の司令官と呼ばれる細胞だ。がん細胞を攻撃する免疫機能に指令を
出して働かせる役割を持つ。その樹状細胞を患者の血液中から取り出して、患者の
がん細胞を加えて培養し、再び体内に戻す――という治療法である。
「培養中に、この患者さんのメラノーマを攻撃するようにと樹状細胞に覚え込ませます。
がん細胞だけに作用するため、効率がよく、しかも患者の体への負担が少ないという利点が
あります。現時点では目覚ましい効果とはいえませんが、さまざまな工夫を行っています」と
師井講師。
 現在、この臨床試験を行っているのは同科を含めて全国で7~8施設だけである。
■病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
北海道大学病院 形成外科 山本有平教授 古川洋志助手
 (電話)011・716・1161(北海道)

 センチネルリンパ節生検や抗がん剤感受性試験を導入し、皮膚がんの集学的外科治療を
 行う。形成・美容外科手術を応用しQOL向上
埼玉医科大学病院 皮膚科 田口理史講師(電話)049・276・1111(埼玉県)
 メラノーマなどの皮膚がんに年間20例を超えるセンチネルリンパ節生検を行って良好な
 手術成績。ダーモスコピーによる診断も行う
国立がんセンター中央病院 皮膚科 山崎直也医長(電話)03・3542・2511(東京都)
 患者さんにやさしいチーム・包括医療を重視。年間50~60例の造血幹細胞移植を行う。
 すべての移植に対応できる設備と経験を持つ
虎の門病院 皮膚科 大原國章部長(電話)03・3588・1111(東京都)
 年間症例数約150例。的確な診断と十分な説明、高度で経験豊富な手術手技を持つ。
 早期・軽症例には外来手術も行う
信州大学病院 皮膚科 斎田俊明教授(電話)0263・35・4600(長野県)
 日本の皮膚腫瘍学の中心的施設。診断から治療まで専門医が揃っている。
 とくにメラノーマの研究は国際的に高く評価されている
静岡県立静岡がんセンター 皮膚科 清原祥夫部長(電話)055・989・5222(静岡県)
 すべての皮膚がんに対し進行度に応じてあらゆる治療を提供。部位的に手術が難しい
 症例には陽子線療法も積極的に行っている
浜松医科大学病院 皮膚科 瀧川雅浩教授(電話)053・435・2111(静岡県)
 難治性のメラノーマに対して、自らのT細胞を活性化する経皮免疫療法を行う。副作用、
 苦痛もほとんどなく良好な成績
名古屋大学病院 皮膚科 富田靖教授(電話)052・741・2111(愛知県)
 昨年の皮膚がん手術数149例(メラノーマ39、有棘細胞がん25、基底細胞がん35等)で
 全国有数。センチネルリンパ節生検34例実施
九州大学病院 皮膚科 師井洋一講師(電話)092・641・1151(福岡県)
 日本初の高度先進医療・センチネルリンパ節生検を皮膚悪性腫瘍全般に施行中。進行期
 メラノーマに樹状細胞療法を行っている
熊本大学病院 皮膚科 影下登志郎助教授(電話)096・344・2111(熊本県)
 メラノーマの症例数は全国トップクラス。進行度に応じた手術や化学療法を実践。
 センチネルリンパ節生検は3D画面で行う

すい臓がん強い病院ベスト10

すい臓がんは難治がんの最たるものといわれる。
見つかったときはすでに進行していることが多く、
すい臓がんと診断されて手術ができるのは30%に過ぎない。
そのすい臓がん治療で成果を挙げている病院はどこなのか。
東海大学病院(神奈川県)
 東海大学病院消化器外科は、外科、放射線科、内科などのチーム医療で好成績を
挙げている。手術ができたすい臓がんの5年生存率は約25%、手術数も年間約50例で、
いずれも全国トップクラスを誇る。同科の今泉俊秀教授はすい臓の手術をこれまで
1000例以上経験している。
「すい臓の頭の部分(すい頭部)にできたすい臓がんには、すい臓、胆のう、胆管、
十二指腸を切除して、残ったすい臓、胆管などを腸とつなぐすい頭十二指腸切除術を
行います。手術時間は平均約4時間半と非常に短く無輸血です。再発予防のために
術中照射にも取り組んでいます」と今泉教授。
 術中照射とは手術中に、がんを切除した後、がんのあったところに放射線を照射する
治療だ。外科手術室から放射線治療室に患者を移動させて、約5分間放射線を照射する。
 退院後は外来で、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)を中心にした化学療法を続ける。
週1回ずつ3週間注射して1週間休みを繰り返す。約6カ月間行う。
「最近ではほかの経口抗がん剤も試みて、治療成績の向上に努力しています」(今泉教授)
大阪府立成人病センター(大阪府)
 すい臓がんは肝臓に転移しやすいが、大阪府立成人病センターの消化器外科は、98年に
肝転移の予防に有効な術後2―チャンネル化学療法を世界に先駆けて開発したことで
知られる。この療法は手術後に、肝臓につながる肝動脈と門脈の2つの血管から抗がん剤を
注入して、肝転移を予防するという治療法だ。
 現在、同科では手術前に放射線療法でがんの進行を抑えたうえで手術を実施し、術後
2―チャンネル化学療法を加えた治療法などにも取り組み、進行すい臓がん(ステージⅣ)に
対しても40%以上の術後5年生存率を誇る。
 「すい臓がんは、手術をしても局所再発や肝転移が高い確率で起こります。そこで、
局所再発予防を目指した術前放射線療法や、肝転移予防に有効な術後2―チャンネル
化学療法を組み合わせることで、手術後の5年生存率を向上させてきました」と
石川治副院長は言う。
 また、すい臓がんの早期診断のための検診システムも世界に先駆けて導入し、
早期微小すい臓がんの発見に取り組む。
「早期のすい臓がんで手術を行った場合、5年生存率はほぼ100%です」(石川副院長)
名古屋大学病院(愛知県)
  名古屋大学病院の消化器外科2は、81年に肝臓につながる門脈(静脈)に浸潤した
進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発したことで知られる。
「それまでは門脈への浸潤を伴うすい臓がんは切除困難で、手術を行うことが
できませんでした。新しい術式の開発で、手術が安全に行えるようになりました」と
中尾昭公教授。
 この新術式の登場と普及によって、手術のできるすい臓がんの症例数が増加し、
その安全性も飛躍的に上昇したという。 また、術後の再発予防を目的にした抗がん剤の
感受性試験でも治療実績を持つ。手術時に切除したがん細胞の一部をシャーレに移し、
その中に抗がん剤を入れて培養し、効かない抗がん剤、効く抗がん剤を調べる検査である。
 「この検査で個々の患者さんに最も効果的な抗がん剤を選び出して、術後の
補助化学療法を行っています。こうしたオーダーメード治療で成績の向上に努めています」
(中尾教授)
 最近では遺伝子研究を応用した抗がん剤の感受性試験にも取り組んでいる。
 すい臓がんは難治がんの最たるものといわれる。
見つかったときはすでに進行していることが多く、
すい臓がんと診断されて手術ができるのは30%に過ぎない。
そのすい臓がん治療で成果を挙げている病院はどこなのか。
●東海大学病院(神奈川県)
 東海大学病院消化器外科は、外科、放射線科、内科などのチーム医療で好成績を
挙げている。手術ができたすい臓がんの5年生存率は約25%、手術数も年間約50例で、
いずれも全国トップクラスを誇る。同科の今泉俊秀教授はすい臓の手術をこれまで
1000例以上経験している。
「すい臓の頭の部分(すい頭部)にできたすい臓がんには、すい臓、胆のう、胆管、
十二指腸を切除して、残ったすい臓、胆管などを腸とつなぐすい頭十二指腸切除術を
行います。手術時間は平均約4時間半と非常に短く無輸血です。再発予防のために
術中照射にも取り組んでいます」と今泉教授。
 術中照射とは手術中に、がんを切除した後、がんのあったところに放射線を照射する
治療だ。外科手術室から放射線治療室に患者を移動させて、約5分間放射線を照射する。
 退院後は外来で、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)を中心にした化学療法を続ける。
週1回ずつ3週間注射して1週間休みを繰り返す。約6カ月間行う。
「最近ではほかの経口抗がん剤も試みて、治療成績の向上に努力しています」(今泉教授)
●大阪府立成人病センター(大阪府)
 すい臓がんは肝臓に転移しやすいが、大阪府立成人病センターの消化器外科は、98年に
肝転移の予防に有効な術後2―チャンネル化学療法を世界に先駆けて開発したことで
知られる。この療法は手術後に、肝臓につながる肝動脈と門脈の2つの血管から抗がん剤を
注入して、肝転移を予防するという治療法だ。
 現在、同科では手術前に放射線療法でがんの進行を抑えたうえで手術を実施し、術後
2―チャンネル化学療法を加えた治療法などにも取り組み、進行すい臓がん(ステージⅣ)に
対しても40%以上の術後5年生存率を誇る。
 「すい臓がんは、手術をしても局所再発や肝転移が高い確率で起こります。そこで、
局所再発予防を目指した術前放射線療法や、肝転移予防に有効な術後2―チャンネル
化学療法を組み合わせることで、手術後の5年生存率を向上させてきました」と
石川治副院長は言う。
 また、すい臓がんの早期診断のための検診システムも世界に先駆けて導入し、
早期微小すい臓がんの発見に取り組む。
「早期のすい臓がんで手術を行った場合、5年生存率はほぼ100%です」(石川副院長)
●名古屋大学病院(愛知県)
  名古屋大学病院の消化器外科2は、81年に肝臓につながる門脈(静脈)に浸潤した
進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発したことで知られる。
「それまでは門脈への浸潤を伴うすい臓がんは切除困難で、手術を行うことが
できませんでした。新しい術式の開発で、手術が安全に行えるようになりました」と
中尾昭公教授。
 この新術式の登場と普及によって、手術のできるすい臓がんの症例数が増加し、
その安全性も飛躍的に上昇したという。 また、術後の再発予防を目的にした抗がん剤の
感受性試験でも治療実績を持つ。手術時に切除したがん細胞の一部をシャーレに移し、
その中に抗がん剤を入れて培養し、効かない抗がん剤、効く抗がん剤を調べる検査である。
 「この検査で個々の患者さんに最も効果的な抗がん剤を選び出して、術後の
補助化学療法を行っています。こうしたオーダーメード治療で成績の向上に努めています」
(中尾教授)
 最近では遺伝子研究を応用した抗がん剤の感受性試験にも取り組んでいる。
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
手稲渓仁会病院 消化器病センター
 真口宏介センター長(電話)011・681・8111(北海道)
 すい臓がん延べ症例数400例。超音波内視鏡を中心にした診断に力を入れ、
 手術適応には的確な手術、切除不能には化学療法等を選択
東北大学病院 肝胆膵外科
 砂村眞琴助教授(電話)022・717・7000(宮城県)
 治癒切除をめざして補助化学療法、放射線療法、免疫療法を併用。
 抗がん剤の感受性に基づいた個別化治療を導入し、外来治療も重視
千葉県がんセンター 消化器外科
 浅野武秀部長(電話)043・264・5431(千葉県)
 重粒子線治療を組み合わせた治療、ヨーロッパすい臓がん研究グループとの
 国際共同研究、腫瘍溶解ウイルス研究等で治療成績を向上
東京女子医科大学病院 消化器外科
 羽鳥隆講師(電話)03・3353・8111(東京都)
 すい臓がんの年間手術数60~70例。臓器機能の温存を考えながらがん病巣を
 積極的に切除し、術後化学療法、免疫療法等で生存率向上
東京都立駒込病院 肝胆膵外科 
 岡本篤武副院長 鶴田耕二部長 放射線科 唐澤克之部長
 (電話)03・3823・2101(東京都)
 局所進行すい臓がんに対して、術中照射と術後照射、血行の改善、抗がん剤の動注療法で
 2年近い生存期間を記録している
国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科
 奥坂拓志医長(電話)03・3542・2511(東京都)
 すい臓がんの化学療法、放射線療法で実績があり、治療者数は全国トップ。
 標準治療のほか、新しい治療の開発を積極的に行っている
東海大学病院 消化器外科
 今泉俊秀教授(電話)0463・93・1121(神奈川県)
 熟練した外科医の手術、術中照射、外来の化学療法を組み合わせたチーム医療を実践。
 術後5年生存率約25%と好成績を挙げる
名古屋大学病院 消化器外科2
 中尾昭公教授(電話)052・741・2111(愛知県)
 進行すい臓がんに対する門脈合併切除術式を開発し、その症例数も多い。
 オーダーメードの術後補助化学療法で成績向上に努める
大阪府立成人病センター 消化器外科
 石川治副院長(電話)06・6972・1181(大阪府)
 術前放射線療法や肝転移防止に有効な術後2―チャンネル化学療法などを開発し、
 すい臓がん切除成績を画期的に向上させてきた
九州がんセンター 消化器内科
 船越顕博医長(電話)092・541・3231(福岡県)
 局所進行すい臓がんに対しては抗がん剤前投与と化学放射線療法を組み合わせて行う。
 遠隔転移にはゲムシタビンを中心とした化学療法を実施

皮膚がんに強い病院ベスト10

皮膚がんで最も多いのは基底細胞がんだが、
転移はほとんどしない。怖いのはメラノーマ(悪性黒色腫)だ。悪性度が高い上に、非常に転移もしやすい。皮膚がんで、高い評価を受けている病院を紹介します。
国立がんセンター中央病院(東京都)
国立がんセンター中央病院の皮膚科は、年間約230例以上の皮膚がんの治療を行う。
このうち約100例は、メラノーマだ。年間の皮膚がんの治療数、メラノーマの治療数ともに全国トップだ。
 「メラノーマは外科手術が中心です。軽い人は腫瘍の周囲1センチ、重い人は2~3センチ切除します。手術時にはセンチネル(見張り)リンパ節生検を行っています。このリンパ節を調べて転移がなければ、その先のリンパ節切除はしません。センチネルリンパ節生検を行うことで、むくみなどの術後の障害を未然に防ぐことができます」と山崎直也医長。
 メラノーマには、術後の再発防止にインターフェロンβと抗がん剤を用いた治療を行う。
リンパ節転移のない軽症の場合(2期)は、インターフェロンβだけ10日間用いる。
リンパ節転移のある場合(3期)には、インターフェロンβのほかに3剤の抗がん剤による併用療法を5日間行う。退院後もこの再発防止治療を定期的に繰り返す。
「メラノーマの1期の5年生存率は100%、2期なら約90%、3期でも約60%です。
生存率も術後のQOL(生活の質)も格段に向上しています」(山崎医長)
信州大学病院(長野県)
信州大学病院皮膚科は、90年から皮膚の病変を大きく拡大して観察するダーモスコピーと呼ばれる診断法を取り入れ、皮膚腫瘍の診断精度を向上させている。皮膚病変にゼリーを塗ってガラス板で圧迫し、光を当てて拡大して見る診断法だ。
 「皮膚がんの中でも、悪性度が高く転移しやすいメラノーマ、局所で無制限に増殖する基底細胞がん、良性の脂漏性角化症(老人性イボ)、母斑(ホクロ)は、鑑別が難しく誤診されることがまれではありません。通常の視診では正診率は75~80%ほどですが、当科ではダーモスコピー診断などを用いて正診率を90%以上に向上させています」と
斎田俊明教授。
 同科の皮膚腫瘍の診断精度の高さは全国最高レベルと評価されている。とくに、日本人に多い足底のメラノーマの早期病変のダーモスコピーを解明した研究は国際的に注目されている。正確な診断のうえに、皮膚がんに対して手術から化学療法まで適切に行えるようにエキスパートが協力して診療にあたっている。
「メラノーマについては遺伝子治療や温熱免疫療法などの先進的治療法の開発にも取り組んでいます」(斎田教授)
九州大学病院(福岡県)
九州大学病院の皮膚科では、進行期のメラノーマに対し、樹状細胞療法と呼ばれる治療に取り組んでいる。
「2002年から進行したメラノーマ13例に臨床試験として行っています。副作用が少なく、今後の治療法として期待できます」と師井洋一講師。
 樹状細胞は免疫の司令官と呼ばれる細胞だ。がん細胞を攻撃する免疫機能に指令を出して働かせる役割を持つ。その樹状細胞を患者の血液中から取り出して、患者のがん細胞を加えて培養し、再び体内に戻す――という治療法である。
「培養中に、この患者さんのメラノーマを攻撃するようにと樹状細胞に覚え込ませます。
がん細胞だけに作用するため、効率がよく、しかも患者の体への負担が少ないという利点があります。現時点では目覚ましい効果とはいえませんが、さまざまな工夫を行っています」と師井講師。
 現在、この臨床試験を行っているのは同科を含めて全国で7~8施設だけである。
■病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
北海道大学病院 形成外科 山本有平教授 古川洋志助手
 (電話)011・716・1161(北海道)
 センチネルリンパ節生検や抗がん剤感受性試験を導入し、皮膚がんの集学的外科治療を行う。形成・美容外科手術を応用しQOL向上
埼玉医科大学病院 皮膚科 田口理史講師(電話)049・276・1111(埼玉県)
 メラノーマなどの皮膚がんに年間20例を超えるセンチネルリンパ節生検を行って良好な手術成績。ダーモスコピーによる診断も行う
国立がんセンター中央病院 皮膚科 山崎直也医長(電話)03・3542・2511(東京都)
 患者さんにやさしいチーム・包括医療を重視。年間50~60例の造血幹細胞移植を行う。
 すべての移植に対応できる設備と経験を持つ
虎の門病院 皮膚科 大原國章部長(電話)03・3588・1111(東京都)
 年間症例数約150例。的確な診断と十分な説明、高度で経験豊富な手術手技を持つ。
 早期・軽症例には外来手術も行う
信州大学病院 皮膚科 斎田俊明教授(電話)0263・35・4600(長野県)
 日本の皮膚腫瘍学の中心的施設。診断から治療まで専門医が揃っている。
 とくにメラノーマの研究は国際的に高く評価されている
静岡県立静岡がんセンター 皮膚科 清原祥夫部長(電話)055・989・5222(静岡県)
 すべての皮膚がんに対し進行度に応じてあらゆる治療を提供。部位的に手術が難しい症例には陽子線療法も積極的に行っている
浜松医科大学病院 皮膚科 瀧川雅浩教授(電話)053・435・2111(静岡県)
 難治性のメラノーマに対して、自らのT細胞を活性化する経皮免疫療法を行う。副作用、苦痛もほとんどなく良好な成績
名古屋大学病院 皮膚科 富田靖教授(電話)052・741・2111(愛知県)
 昨年の皮膚がん手術数149例(メラノーマ39、有棘細胞がん25、基底細胞がん35等)で全国有数。センチネルリンパ節生検34例実施
九州大学病院 皮膚科 師井洋一講師(電話)092・641・1151(福岡県)
 日本初の高度先進医療・センチネルリンパ節生検を皮膚悪性腫瘍全般に施行中。進行期メラノーマに樹状細胞療法を行っている
熊本大学病院 皮膚科 影下登志郎助教授(電話)096・344・2111(熊本県)
 メラノーマの症例数は全国トップクラス。進行度に応じた手術や化学療法を実践。
 センチネルリンパ節生検は3D画面で行う

腎臓がんに強い病院ベスト10

腎臓は、腰のすぐ上の高さの背骨の両側に1個ずつある。
腎臓がんはある程度大きくならないと自覚症状がほとんど表れず、早期発見の機会を失いやすい。治療の選択肢が広がり、腎臓を残す手術も行われるようになっているが、腎臓がんの治療で定評がある病院は?。
関西医大病院(大阪府)
 関西医科大学病院の泌尿器科は、日本で最も早く腎臓がんに腹腔鏡手術を導入した
病院の一つとして知られる。92年からこれまでの腹腔鏡手術実績は150例以上に上り、
全国有数だ。
 通常の腎臓がんの開放手術では、腹部を15~20センチと肋骨(ろっこつ)の一部を
切開するなど、身体への負担が大きい。しかし、腹腔鏡手術は腹に小さな穴を開け、
内視鏡や超音波メスなどを挿入して、モニターの画面を見ながら行う。開放手術に比べて、
身体への負担が軽く、術後の痛みが少なく、入院期間も短いなどのメリットがある。
「腹腔鏡下の根治的腎摘除術はこれまで120例以上行っていますが、大きな合併症は
経験していません。また、ほとんどの患者さんが、開放手術に移行することなく、
腹腔鏡手術を終えています」と松田公志教授。
 一般的にがんの直径が4センチ以下の小さな腎臓がんでは、腎臓の一部を温存する
腎温存手術が行われる。この場合も通常は腹を切開する開放手術が行われる。
しかし、同科では99年から、腹腔鏡手術の熟練医が、腹腔鏡下での手術を始めた。
「すでに30例以上に行っています」(松田教授)
東京医科歯科大病院(東京都)
 東京医科歯科大学病院の泌尿器科は、98年にミニマム創内視鏡下手術を開発し、
これまでに200例以上の腎臓がんに行っている。ミニマム創内視鏡下手術とは、
腹を大きく切開する開放手術と腹腔鏡手術のそれぞれの長所を生かし、短所の
克服を目指して開発されたものだ。
「この手術は腎臓を取り出すための5センチ前後の小さな1つの傷で行います。
この“傷”から内視鏡を使いますが、モニター画面だけでなく、直接体の中も見えるため、
全体を見ながら安全に行うことができます。腎臓がんの進み具合や出血などの
緊急事態にも、傷のサイズを大きくすることですぐに対応でき安全です」(木原和徳教授)
 手術時間は2、3時間。輸血はまずしない(1%程度)。翌日には十分な歩行ができ、
食事もできる。この手術の対象患者や手術代は、開放手術とほぼ同じ。術後の5年生存率も
開放手術、腹腔鏡手術と同じだ。
「2000年からは腎温存手術もミニマム創内視鏡下手術で行っています。200例のうち
約30例に行い、良好な治療成績です」と木原教授。
東京女子医大東医療センター(東京都)
 東京女子医科大学東医療センター泌尿器科は、腎臓がんの年間手術数40例以上で
全国有数だ。
「がんの直径が10センチ未満なら腹腔鏡手術、4センチ未満なら腎温存手術が可能です。
開放手術ならがんの大きさに関係なく行えます。患者さんと相談し、治療法を選択します」と
中澤速和助教授。
 これらの手術では腎動脈や腎静脈を遮断しながら行う血流遮断法、がんの周囲を
マイクロ波凝固装置などで凝固させて行う無阻血法、臓器を氷で冷やす冷却法などを
用いて、安全に行う。局所に限局した腎臓がん(がんが被膜を超えず直径4センチ以下)
なら術後の5年生存率は98%、手術例全体でも78%ほどと好成績だ。
 ただし、腎臓がん患者の6人に1人は転移がある。この場合にはインターフェロンによる
免疫療法を行う。2~4週間に1回ペースで外来通院。自宅で週3回、自己注射を続ける。
「肺転移だけの場合は約40%に有効です。大きな副作用もないようです。肺以外の転移を
含む場合など、全体の奏効率(がんが消失または縮小)は22%ほどです。生存期間も
延びています」(中澤助教授)
●病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
札幌医科大学病院 泌尿器科
 塚本泰司教授 (電話)011・611・2111(北海道)
病状やクオリティーオブライフを考慮し、開放手術(腹膜外到達法による)や
腹腔鏡手術(腎部分切除を含む)を積極的に行う
東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科
 中澤速和助教授 (電話)03・3810・1111(東京都)
腹腔鏡手術にも積極的。中澤助教授の腹腔鏡手術の延べ数は150例を超え全国有数。
転移症例にはインターフェロンで良好な成績
東京医科歯科大学病院 泌尿器科
 木原和徳教授 (電話)03・3813・6111(東京都)
腎臓がんに対して開放・腹腔鏡手術を中心とした各種の治療を実施。10~20年以上の
長期にわたる経過観察を重視している
仙台社会保険病院 泌尿器科
 庵谷尚正主任部長 (電話)022・275・3111(宮城県)
開放手術と腹腔鏡手術の短所を克服したミニマム創内視鏡下手術を開発。
200例以上の実績。全国への普及活動に積極的に取り組む
新潟県立がんセンター新潟病院 泌尿器科
 北村康男部長 (電話)025・266・5111(新潟県)
年40~70例の腎細胞がん、年10~20例の腎盂がんの手術。看護師、手術部スタッフの
協力で標準治療を踏まえた安全・確実な手術を提供
名古屋大学医学部付属病院 泌尿器科
 小野佳成助教授 (電話)052・741・2111(愛知県)
日本で最初に腎臓がんに対する腹腔鏡手術を行い、現在までに400例以上の
手術実績がある。開放手術と同等の治療成績を挙げている
大阪府立成人病センター 泌尿器科
 宇佐美道之部長 (電話)06・6972・1181(大阪府)
04年の手術数51例。早期には腎機能温存及び低侵襲性腹腔鏡下手術、進行例では
拡大根治的手術を含めた集学的治療で成績向上に努力
関西医科大学付属滝井病院 泌尿器科
 松田公志教授 (電話)06・6992・1001(大阪府)
より侵襲の小さな治療を目指す。比較的大きな腎臓がんには腹腔鏡下根治的腎摘除術、
4センチ以下には腹腔鏡下腎部分切除術を行う
愛媛県立中央病院 泌尿器科
 菅政治部長 (電話)089・947・1111(愛媛県)
腹腔鏡手術に積極的に取り組む。腎尿管がんに対する年間の腹腔鏡手術数は45例。
腎部分切除などで腎機能の温存も図る
九州大学病院 泌尿器科
 内藤誠二教授 (電話)092・642・5615外来(福岡県)
腹腔鏡下根治的腎摘除術や腎機能を温存する腎部分切除術で実績。進行がんには
インターフェロンと樹状細胞併用療法を開発、実施中

膀胱がんに強い病院ベスト10

膀胱は尿を一時的にためておく袋状の器官。膀胱がんの90%は膀胱の内側をおおっている粘膜層に発生する。
 治療後の生存率が比較的高いがんだが、繰り返し発生しやすいという問題があるし、転移すると生存率は著しく低下する。このがんの治療で定評がある病院はどこなのか。
国立がんセンター中央病院(東京都)
 国立がんセンター中央病院泌尿器科は、膀胱がんの全摘手術数が年間54例(04年)で全国トップである。また、膀胱全摘術を受けた患者に対し、自然に近い形で排尿ができる尿路変向術も数多くこなし、実績を持つ。
 膀胱全摘術後の尿路変向術には自然排尿型代用膀胱と回腸導管がある。前者は小腸の一部を切り取り、袋状に縫い合わせて尿をためる新しい袋(新膀胱)を作り、尿道とつなげるものだ。後者は膀胱の代わりに小腸の一部の回腸を尿路として用い腹壁まで尿を誘導、腹壁に採尿具を装着して尿を出す再建手術である。
「尿道にがんが再発する危険が少ない患者さんで、ご本人が希望される場合には自然排尿型代用膀胱を作ります。全摘と同時に行う手術で6時間くらいかかります」(藤元博行医長)
 自然排尿型代用膀胱は見た目もよく、患者の満足度は高いようだという。自然排尿型代用膀胱ができない場合には尿道も摘除し、回腸導管を行う。これも全摘と同時に取り組み、5、6時間かかる手術だ。
新潟県立がんセンター新潟病院(新潟県)
 新潟県立がんセンター新潟病院泌尿器科は、膀胱がんの年間の新規患者数が85人でトップクラス。その70~80%はがんが膀胱内の粘膜やその下の粘膜下層にとどまる表在性の膀胱がんだ。
 この表在性の膀胱がんには内視鏡を用いた経尿道的切除を行う。尿道から細長い電気メスを膀胱内に挿入して、がんを削り取る手術である。手術時間は1時間程度。入院期間は3、4日。同科はこの経尿道的切除を年間209件(04年)実施し、この切除数でもトップクラスだ。
「表在性の膀胱がんは膀胱内の新たな部位に再発しやすいので、内視鏡手術を繰り返すこともあります。また、再発予防のために、手術後、膀胱内に結核の予防接種で使われるBCGや抗がん剤を注入することもあります」(小松原秀一臨床部長)
 膀胱壁の深部、壁外、リンパ節などに進行した場合は開腹手術を行う。また、進行したり転移して手術ができない場合には抗がん剤治療を行う。「4種類の抗がん剤を併用するMVAC療法(エムバック)などを行います」と小松原臨床部長。
筑波大学病院 泌尿器科(茨城県)
 筑波大学病院泌尿器科は、患者のQOL(生活の質)の保持に重点を置き、筋層にがんが入り込んだ浸潤性膀胱がんを対象に、膀胱を温存する放射線化学療法で先駆的な役割を果たす。
「膀胱を温存する放射線化学療法は、90年から現在まで52例に実施しています。再発の恐れが少ない患者に対して行ってきました。この治療で膀胱を温存した患者の5年生存率は76%です。5年無再発生存率は65%です。いずれも膀胱全摘術による5年生存率や5年無再発生存率よりも優れています」(赤座英之教授) 膀胱を温存する放射線化学療法は最初に内視鏡手術でがんを切除し、その後、放射線治療と抗がん剤治療を併用する。放射線は週5回ずつ8週間、同時に2種類の抗がん剤を3週間ごとに3回、局所動注する。
 米国で発表されたデータでも、浸潤性膀胱がんに対する放射線化学療法は手術に近い成績が得られているという。
「近い将来、膀胱を温存する放射線化学療法は手術と同等の治療法になる可能性があります」(赤座教授)
■病院名・診療科・医師名・電話・治療方針・特徴
札幌医科大学病院 泌尿器科 塚本泰司教授(北海道) (電話)011・611・2111
 標準的な治療法を提示し、膀胱がんの進行度、患者の希望に応じて治療方法を決定する。
 自然排尿型の尿路再建も数多く手がける
自治医科大学付属病院 泌尿器科 森田辰男教授(栃木県) (電話)0285・44・2111
 膀胱がんの手術は年間120例、膀胱鏡検査は年間1000例を超える。
 病期に応じた標準的治療を提供。新規抗がん剤の化学療法も行う
筑波大学病院 泌尿器科 赤座英之教授(茨城県) (電話)029・853・3571
 浸潤性膀胱がんに対して膀胱を温存する放射線化学療法で先駆的な役割を果たす。
 他科との連携によるチーム医療を大切にしている
国立がんセンター中央病院 泌尿器科 藤元博行医長(東京都)(電話)03・3542・2511
 年間(04年)の膀胱全摘手術数54例で全国一。的確な判断と高い技術力を持ち、
 取りこぼしをなくし、生存率の向上を目指す
東京医科大学病院 泌尿器科 橘政昭教授(東京都) (電話)03・3342・6111
 浸潤性の膀胱がんには膀胱全摘術を適応せざるを得ないが、自然排尿型尿路変更術や
 勃起神経温存による機能温存手術を心掛けている
新潟県立がんセンター新潟病院 泌尿器科 小松原秀一臨床部長(新潟県)
(電話)025・266・5111
 年間新規患者数は85人とトップクラス。内視鏡手術と膀胱摘除手術、抗がん剤治療を
 要する進行がんに的確な治療方針を提示できる
小牧市民病院 泌尿器科 松浦治部長(愛知県) (電話)0568・76・4131
 膀胱外に浸潤した場合も動注併用の全摘手術で完治を目指す。排尿効率のよい新しい
 型の代用膀胱を造設し、術後のQOLを向上
大阪府立成人病センター 泌尿器科 宇佐美道之部長(大阪府) (電話)06・6972・1181
 昨年の膀胱全摘術数26例。自然排尿型尿路変向や男性機能温存等、QOL保持にも
 重点を置き、放射線化学療法での膀胱温存にも対応
日本赤十字社和歌山医療センター 第1泌尿器科 林正部長(和歌山県)
 (電話)073・422・4171
 05年の膀胱全摘術数は28例。うち80代が3例、90代が2例。
 短時間(平均3時間37分)で安全な手術を行っている
原三信病院 泌尿器科 山口秋人副院長(福岡県)(電話)092・291・3434
 泌尿器科常勤医12人。膀胱がん新患は過去26年で1201人の実績。
 年間(05年)の膀胱全摘術は16例、内視鏡手術は244例