肺がんと間違えられ易い病気 :間質性肺炎

間質性肺炎は50歳代~60歳代の男性に多く、発病すると乾いた咳などが出る病気です。
間質性肺炎とは、肺が炎症を起こし、肺が硬くなってしまう病気のことです。
肺炎の一種ですが、ほかの肺炎のように肺胞腔に炎症が起きるわけではありません。
間質性肺炎は、肺胞壁を構成している間質という部分に炎症が起こります。
原因は、塵肺・薬剤性肺炎・過敏性肺炎などさまざまです。
塵肺とは、金属や鉱物の粉塵を長期間吸い込んだために起こる肺炎のことであり、薬剤性肺炎とは、薬の副作用により起きる肺炎のことであり、過敏性肺炎とは、カビに対するアレルギー反応により起きる肺炎のことです。
間質性肺炎の約50%は原因不明です。これといった治療法がなく、未解明の部分も多いため、国の特定疾患に指定されています。
原因がわからない間質性肺炎は「突発性間質性肺炎」と呼ばれています。
間質性肺炎の代表的な症状が、空咳や息切れです。
場合によっては、指の先端が広がって分厚くなる「ばち指」が表れることもあります。
肺がんと共通している症状のため、素人ではどちらなのかまず判断がつきません。
また悪化すると、肺がんを合併することも多いため、ますますどちらなのか区別がつきにくくなってしまいます。
激しい咳の連続で、肺胞が破れる気胸が起きることもよくあります。
気胸を発症すると、呼吸困難やチアノーゼなど危険な症状が表れるので注意が必要です。
肺の内部の気管支の末端には、肺胞という球状の袋がいくつも付いています。私たちが難なく呼吸するためには、この袋が正常に機能しなければいけません。
この肺胞同士を結合させているのが、毛細血管やコラーゲン線維から成る間質です。
この部分に異常が起きると、肺胞の仕事であるガス交換を行うことができなくなり、さまざまな症状が引き起こされます。
肺が線維化していくメカニズム
1.間質に炎症が起こると、間質の細胞に傷がつきます。
2.傷を修復するために、コラーゲン線維を生産する線維芽細胞が増殖します。
3.傷が治っても線維芽細胞の増殖は止まりません。どんどんコラーゲン繊維が重なっていき、肺胞壁が厚く硬くなっていきます(これが線維化という状態です)。
4.繊維化が進むと、肺胞腔と毛細血管の距離が遠くなって肺胞が崩れてしまいます。
5.ガス交換が上手くできなくなるため、呼吸が苦しくなります。
間質性肺がんを調べる方法には色々ありますが、まずは問診、打診、聴診などを行います。
聴診でマジックテープを剥がすようなパチパチという音が聞こえたら、間質性肺がんの可能性があります。
間質性肺がんが疑われた場合、胸部エックス線検査や胸部CT検査を行ってさらに詳しく調べます。間質性肺炎であったら、これらの検査で肺にすりガラス様陰影がみられます。
呼吸生理学検査で%肺活量、1秒率、一酸化炭素拡散能の低下がみられた場合も、間質性肺炎が疑われます。なおこの検査で、重症度の判定をすることもできます。
ほかにも赤沈、LDHを調べる血液検査がありますが、これは炎症や治療効果を判定するのにも有効です。
ステロイド薬や免疫抑制剤などで治療
間質が線維化してしまうと、残念ながら元の状態には戻りません。
治すことは不可能なので、治療は進行させないことを目的として行います。
治療は薬物療法が基本です。薬には炎症を抑えるための「ステロイド薬」や、「免疫抑制剤」が用いられますが、どんな人にも必ず効くとは限りません。
日本人では急激に病状が悪化する「急性増悪」がよくみられます。風邪のあとに起こりやすいので、体調を崩さないように日頃から心掛けることが大切です。
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