卵巣腫瘍と卵巣がん―胚細胞腫瘍

卵巣は卵巣の表面を覆う表層上皮、ホルモンを作る細胞である性索間質、卵子のもとになる卵細胞という組織から形成されています。
卵巣腫瘍の1つである胚細胞腫瘍は、胚細胞である卵細胞由来の腫瘍です。
幼年期を含む若年層に多い腫瘍です。
良性腫瘍・悪性腫瘍(がん)・良性と悪性の中間の性質を持つ中間群(境界悪性)があります。
胚細胞腫瘍には下記のような種類があります。
成熟嚢胞性奇形腫
胎児が発生する段階の細胞が卵巣の中で腫瘍を形成したもの。
嚢胞内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んでいます。
大きさは通常、直径10cm以下です。
皮様嚢胞腫、類皮嚢腫とも言います。
手塚治虫の漫画、ブラックジャックの中で、ブラックジャックがピノコを作ったのがこの腫瘍です。
良性の腫瘍です。
未熟奇形腫
未熟な体細胞組織由来の奇形腫で、悪性と中間群にまたがる腫瘍です。
卵黄嚢腫瘍
悪性腫瘍に分類されます。
10歳代にみられる腫瘍で、切除と化学療法による治療により、80%以上の生存率です。
絨毛がん
絨毛細胞からなる悪性腫瘍です。
絨毛とは胎盤の外にある細い糸状組織で、これを通じて赤ちゃんは母親から酸素と栄養を受け取っています。
絨毛がんは流産や死産、正常分娩の後に残った絨毛などから発生します。
未分化胚細胞腫
悪性腫瘍に分類されています。
思春期にみられる腫瘍で、卵巣卵管切除による腫瘍摘出と化学療法の併用により、約90%の生存率です。
この他にも、胚細胞腫瘍には様々な種類があります。
多くの種類のある卵巣腫瘍のうち85%は良性であり、卵巣がんではありません。
しかし、卵巣がんは進行が早く自覚症状が乏しいので、注意の必要ながんなのです。
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