生体肝移植のドナーについて

生体肝移植のドナーは元来健康な人であるため、健康な人に手術をするということが問題となります。世界中で約3,000例以上の生体肝移植が行われています。そのうち5例の方が手術後の合併症で亡くなられていますが、国内で行われた約2000例においてはドナーが亡くなられた報告は1例です。ただしこの原因は明らかになっております。ドナーに対する手術においても私達は最善を尽くします。しかし、手術後の合併症が絶対に起こらないとは言えません。
ドナーの手術後の合併症で致命的となりうるものとして肺塞栓症があります。肺塞栓症とは、手術後長時間歩かず寝ていることで足の静脈血管の中によどみができ、その部分の血が固まって栓(血栓)を作り、それがはがれ血管を通って肺へ行き、肺の血管をつまらせ、その結果呼吸ができなくなることを言います。前述した2例はこれが原因で亡くなっています。
肺塞栓症は欧米人に多く起こります。肝臓を切った部分からの出血や胆汁の管からの漏れなどが考えられ、もう一度手術が必要になることがあります。創もレシピエントとほとんど同じでかなり大きくなります。また、ドナーは特に問題がなければ手術後約2週間位で退院可能となりますが、レシピエントに提供する肝臓の大きさによってはもう少し長く入院する必要があります。
退院後の職場復帰は事務職では手術後約2ケ月、肉体労働は3ケ月程度かかります。手術前はもちろん、手術後約3ケ月はアルコールの摂取は禁止されます。なぜなら、肝臓がまだ十分大きくならない状態でアルコールを摂取すると、肝臓の機能が悪くなるからです。このようにドナーにもいくつかのリスクや制約を受けることがあります。